城は城でも…
第4話
歩きながらうすうす勘付いていた。低い建物の多い住宅街からハイツ?のような2階建てくらいの住宅街に移り街の中央に近づくにつれ、石垣が伸びていることや、ときおり建物の合間から見えるシルエットから。
(やっぱりか…)
住宅街を抜け開けた場所に堀があった。石垣、石段、中央にある建物、赤い瓦、白塗りの壁、屋根の上に二匹の大きな鳥の像。
「お城…」
そう、城は城でもファンタジーお決まりの西洋の城なんかではまったくない、あきらかに名古屋城とか大阪城とか、和風の城そのものであった。
「城内に入るのは初めてか?」
橋の両脇に控えている甲冑姿の騎士が桜花に両手で敬礼している。(両手…それがここの上司への挨拶かな…)何人か普通の人にはすれ違ったが、その人達もしていなかった様子からそう判断し、一般人は騎士とあまり目を合わせない様子もメモしておく
(やっぱり騎士と国民には壁があるのかな)
「い、いえ。」
キョドキョドとしながらも明らかに一般人もすいすい入って行っている状況から、誰でも入れる=何か用事で入らなければいけない時がある。と判断し返答を濁す
「そうか?緊張しているように見えたが気のせいか。」
「ハイ。」
疑われながらも目をそらせることでそれ以上の追及を避けて進む、中は想像以上にカオスだった。
内装は城、和風そのもの、しかし完全にやっていることは市役所か何かである、床は木で畳は無く全員土足で役員?っぽいきれいな着物の人がカウンターらしいところに座り人が並んでいて名前を呼ばれた人がそこへ行って茶色の和紙に筆で何か書いている。
(よく言って和洋折衷、悪く言って歴史無視ってとこ…)
「新な制度が始まってここも混むようになったな。人事に人が集まってくれればありがたいんだがな。」
流石に城の中に入るとなるとペガサスはダメなのか紐も外して外へ離し桜花だけが歩いて行く
(新しい制度って何かなー気になる…人事に人が来ないってことは騎士団は人員不足?仕事内容にもよるだろうけど大変そうだなぁ)
そろそろ一目に多く付くことからベビーカーを恐ろしいくらい見られているがその件は目をつぶっていただき荷物も乗っているのでそのまま押す
(土足じゃなくなったらさすがにおろして抱っこかなって思うけど土足だしいいよね…すっごい見られているけどいいよね)
空腹で期限の悪い蒼士だけを抱きながらさらに奥へと進む桜花に、和風の作りなのにふすまがない長い廊下に混乱を抱きながらついていく。
「因みにいまどこに向かってたり?」
「私の部屋だ」
「…桜花様の自室…?」
「あぁ、腹が減っているといっていただろう?食堂に行くより持ってきてもらった方が早いからな。」
「あ、ありがとうございます。(やさしい…お米もあるなら食べるものにも困らなさそうだし助かる。)」
蒼士の涙と鼻水でコートが汚れることに小さく抵抗しながらも桜花の采配に頭を下げる。
そうして案内された3階の一室にたどり付いた。3階にたどり着いたとたんに壁の材質がガラリと変わり、部屋の区切りに木製の扉に鉄のドアノブがついているのを見た時は本日何度目かの卒倒しそうになったが、扉を開けた先に広がっていた部屋の内部を見て最早すべてがどうでもよくなった。
カーペットの敷かれた部屋の中央にちゃぶ台。隅にはベット、大きな丸形の窓から入り込む光だけでも今の時間なら十分に明るく独りで暮らすには広めの部屋であることがわかる。壁際には朱色のタンスやクローゼットがおかれていた。
(この世界洋風なのか和風なのか統一して…ぇぇぇっ!!なんなの現代社会なの!?日本の迷走している海外文化に対する疑問か何かなの!?なんでこの世界こんな風に育っているの…?)
「素敵なお部屋ですね…」
「そうか?基本的にダンジョンの付近の探索や王の警備を行っている為ここには寝る時にしかこないがな。…夫が迎えに来るまでここで暮らすといい。」
疑問を胸になんとか絞り出した言葉に返された言葉の意味が理解できず瞬きを繰り替えす。
「…へ?」
「ん?だからこの部屋を好きに使っていいぞ、といったんだ。困った民を見捨ててはならない…今の騎士団でこの言葉を使うことはほとんどなくなってしまったが赤子を連れた貴様を見ているとなんだか放っておけなくてな。」
桜花は真面目な顔のままそう言いながら靴を脱ぎ始め、それに倣ってこちらもすぐに靴を脱ぐ
「えっほっほんとですか?!いいんですか?!こんなどこの馬の骨ともわからぬ者を寝泊まりさせてくれるんですか?!(桜花様すごすぎます空のように広いお心の持ち主!!)優しい。」
「騎士に二言はない…その変わり少しそのベビーカーとやらを貸してくれないか?」
「どうぞどうぞ!(園の備品なので破壊さえされなければいくらでも!)」
その言葉に桜花は初めて笑みを見せてくれた。(イケメンイケメンと思ってたけど笑うとやっぱり美人だなぁ…すごいな異世界)そしてそのまま何やら入口近くの壁に近づくと色の変わった壁に指を触れて何か模様を描き
「3-A鈴木だ、食事の用意を3人分頼む。」
とつぶやくとその色の変わった壁から
「承知しました。」
と返答があった。
壁から
返答があった
(わぁすごーいHEY Ketuってやつだよね、スマートフォーンとかに付属してるあれ…後最近はやりの声で電気付けたり消したりするあれ……んなわけないよね!!ファンタジー的にこれって普通に考えて…)
「魔法…?」
「?そりゃそうだろう?」
(なんだってぇぇぇっこんな地味な感じで化学と見分け付かない程度の魔法が初めて見る魔法だなんてファンタジー好きとしてはなんて微妙な!!うそでしょ!桜花様なら火炎でどーんとか爆風でばーんとかできそうでしそうなのになんでこんなことで魔法!?というか騎士なのに魔法!?ど…どういうこと…)
感動で声に出てしまったが、それに対して振り返りながら不思議そうに返してくれる。危険は感じるが掘り下げる価値はあるかもしれない、と意を決する。そして
「え、魔法って。」
「うにゃあああああ」
「わわわ…」
聞き直した瞬間に瑞樹と蒼士がついに大合唱を始めた。
「ごめんごめん大丈夫?そうだよね、今度は場所見知りだよね、もう帰るって言ってたのに全然知らない場所に来ちゃったもんね怖いよねぇ…ごめんね瑞樹大丈夫だよー」
「蒼士くんもうすぐごはん食べられるからねー大丈夫だよー」
二人を必死に抱き上げあやすことに必死になり桜花はまた両手を広げたまま何もできずにわたわたとする。
「母とは偉大だな…」
「あはは…(実際結婚どころか恋人もいないんですけどねははは)」
勝手に座らせてもらい二人を床におろしてよしよしと宥めカバンに入れていた中に小豆やお米が入っていて音が鳴る玩具(ペットボトルの蓋で作成)を2つ取り出し音をしゃらしゃらとならして二人に渡す、本当ならこれが通るだけの穴をあけたタッパーがあればみんな長時間遊べるんだが、流石に公園に行くのには持っていなかったのでこれだけで飽きらめてもらう。
「また変わった物を…」
「マラカス…ご存じない?(こんなにいろいろある世界なのに?)」
「まら・・・かす?知らんな。」
(楽器にあったとしても騎士だから知らないという可能性もあるかな?)
「マラカスはきっと楽器ですがこれは玩具です。」
目の前で鳴らして見せていると蒼士くんが奪い取ってがじがじとかじってからもう一度返してくれた
「しぇんしぇーこえ。」
「くれるのー?蒼士くんはやさしいねー、瑞樹ちゃんほら、怖くないでしょ?桜花様もとってもいい人だからこわがなくてもいいんだよー。」
まだしがみついている瑞樹を撫でまわしながらナチュラルに蒼士がいつものように’先生’と呼んだことに気づかれないように話題をそらす。
(学校があるとしたら先生という言葉もあるかもしれないよね…そうなったら私のことを先生って呼んでいる状況がおかしいって気づかれちゃうだろうし…というかそうなる前に二人がお母さんに会いたくて泣き出したりしたらバレるよねぇ…頑張って二人とも…なんとしても連れて帰ってあげるから!)
蒼士はあまり物怖じしない性格の為空腹でなければそんなに叫んだり泣いたりすることもないが瑞樹は環境にも人にも反応しやすくかなりの意志の強さがある為もし母を思い出して泣き出してしまったら寝落ちるまで続いてしまうかもしれない…そんなことを考えていると不意に扉をたたく音が聞こえた。
「入れ。」
「お食事をお持ちしました。」
先ほど壁から聞こえた少年の声が聞こえ、扉が開かれる。そこには両手を組んで歩く銀髪の少年とふわふわと宙に浮いた料理があった。
…☆…
主人公がツッコミを放棄し始めていますが本当はもっといいたいようですよ、くどいので割愛しています。