6話『遊美奈だけ異世界の常識に囚われない重要人物』
異世界は、広かったと痛感する遊美奈だった。
それは、大地に限らなかったのだ。
「…ノスフェラトゥス…これって…まさか。」
何も言うほか無かった。
だが、これだけは言いたい気持ちに駆られる。
ノスフェラトゥスでさえも頭を抱えてしまうぐらいの光景が見えていたのだ。
目の前に、"ある光景"を見るまでは。
「…何も言うな、盟友…迂闊だったのは、我も同じ事だ…明らかに、"大海"だろう。」
大海。
それは、陸地と陸地の間にある広大な海原。
かの有名な偉人は、こう言っていた。
『大きな困難となる問題を解決するのは、やってみないことに諦めるの辞書はない。』
確かに、旅を諦めることは出来ない。
遊美奈のこれまでの頑張りは、無駄ではないとも言えるのだ。
だが、一番の問題を除くとするならば…の話だ。
「…言っておくが、我は…日が出ている時は、飛ぶことが出来ない…すまない。」
そう、ノスフェラトゥスは夜行性に特化している魔王の特殊な生態。
日中に出ているときは、人の姿として魔王の王の字も無いのだ。
非常にまずい問題は、遊美奈の荷物は二人で運んでも二往復する必要がある物資。
これから向かうのは、その向かいの陸地にある王都エルグラシア。
其処に届けて欲しいとある女神に頼まれたのだ。
「…依頼放棄、しちゃっても…良くね?」
「…いや、しっかりと届けようではないか…困るのは、王都に居る…騎士団なのだぞ?」
そもそも、王都の女神が帰っていないのが原因で困っていると聞いたはずなのだが。
その駄女神からの依頼に何故、遊美奈が引き受けたのかは数時間前に遡る。
旅に出る時に、ある女神が呼び止めた。
その女神とは、秩序神だった。
「あの、遊美奈様。私の国家である王都に届けて欲しい物資があるのですが良いですか?」
「報酬…何、出す?」
(女神に報酬をふっかける人間は、始めて見たんですけども!?結様も吃驚なさってるし!?)
遊美奈は、無報酬で働くことはしたくなかった理由があった。
一つは、遊美奈の力量を判断して依頼を出すこと自体が可笑しく感じていたのだ。
当然、女神は無慈悲に人間の悩みを聞き、その答えを自ずから解決の道を導くのが仕事。
それを、人間に頼み事をするとしたら何かのリスクを負うのではないかと考察をしていた。
そして、誰もが気になるのが二つめの理由。
それは、遊美奈にとって理に叶うお願いを聞いてしまったら引き受けることを辞退出来てしまう。
そんな不条理な条件をふっかける事が出来てしまったらゲームがクリアになっているだろう。
だとしたら、遊美奈にとっての最適な判断だとすると先ほどの言葉の通りなのだ。
「では…この異世界にある異世界女神教会に通せる手形を、託しましょう。それで、宜しいですか?」
「…OK。」
たったの一言で了承をする遊美奈は、いともあっさりと答える。
秩序神にとっては、この上ない破格な条件だと云える通行手形を簡単に作り出した。
創造神でさえも管理しているこの異世界の管理システムを把握し切れていない今、この条件は良かった。
むしろ、人間の代表として他国を回ろうとしている遊美奈に皆は、関心をしていた。
それもそうだろう。
遊美奈の一言一言が、この異世界の管理システムごと変えてくれる救世主なのだから。
「…とは言っているが、我は…魔王…異世界の女神が蔓延っている場所に、行く気は無い。」
魔王神は、魔王としての威厳に関わる事情があった。
異世界の女神教会には、ブラックリストが存在していたのだ。
その中に魔王神の名前が入っているため、入ろうにも入れない事情が残っていた。
「…たぶん、大丈夫…そこは…任せて。」
「…これも、言っておくが…人間の姿になるのは、条件次第では好かんぞ…そのことを踏まえて貰おう。」
遊美奈に怖じ気ついているような素振りは、一切無かった。
むしろ、人間自体を嫌っている様に見えるのは、女神たちだけだったのかもしれない。
だが、結の方を見ているノスフェラトゥスは、顔を赤らめて顔を背ける様子だった。
「魔王神様…どうか、遊美奈のことを、お願いします。
この子、落ち着いている時は、何を考えているのか解らないかもしれませんが。
きっと、魔王神様のお力添えをするかもしれませんのでどうか、生きて帰ってきてくださいね。」
結がノスフェラトゥスを説得するかのように視線を向けた時に気付いたようで両手を掴んで懇願してきた。
ノスフェラトゥスは、彼女の目を見るがそのあどけない瞳に負けたのか、赤面して頷いてしまった。
「……。」
そんな光景を見るや魔王神の本心を垣間見える事が出来たのは、ごく一部の女神たちだけだったのだろう。
結の依頼を受けたノスフェラトゥスと秩序神の依頼を受けた遊美奈は、旅に出て一時間でその壁にぶつかった。
「…船、借りる?」
「いや…夜まで待てば、飛べるが…眷属たちに頼んでみるも、可能だろう。」
魔王神のカリスマにして此処に来て真に発揮する場面が来た。
そう思っていたのもつかの間だった。
「お困りですか?おや?魔王神様じゃないですか。此処でお会いできるとは、奇遇ですな。」
海の中から巨大な竜の鱗を装備として纏い、胸にボリュームがあるかのような弾力感。
そして、なんとも言い難いような破廉恥の度が過ぎている水着姿の美女が目の前に現れた。
「おぉ、リヴァイよ…久しいじゃないか。この海にいたのか。気付かなかったが。」
「ノス様として君臨していたお姿のままなのですね。これはこれは、人間の子をお連れしているとは?」
話が分からないが、もしかして昔の時の友人かと遊美奈は、紐解いてみた。
リヴァイと呼んでいたことにある記憶を呼び起こしていた。
かつて、人間の水災害を海外で引き起こしていたとされているリヴァイアサンの名称を思い出した。
水災害の元凶となっている海竜が何故、異世界の女神の居る世界に姿を現しているのだろうか?
気になっていた遊美奈は、そのリヴァイさんに聞いていることにした。
「…リヴァイアサン…何故…女神のいる異世界、居るの?」
「おぉ、小娘よ。聞きたいか。それはだな、初代の魔王神様に召還されたのだよ。」
意外にも、召還の言葉に吃驚をしなかった遊美奈。
それもそうだろう、遊美奈も似たような状況でこの異世界に生きている身体ごと召還された。
つまり、今回の召還条件はもしかしたらと思っていた遊美奈。
「…なるほど。」
「だが、忘れるな…リヴァイは、此処では破壊龍とも呼ばれている…気をつけろ。」
ノスフェラトゥスは、リヴァイの驚異を教えるかのように遊美奈に忠告をした。
命を惜しくは、リヴァイに会ったら逃げろと言うのが正解なのだろうが此処では、無駄な話だろう。
何せ、リヴァイのテリトリーに居るのは、遊美奈一人だけだったのだから。
「…理解…気をつける。」
遊美奈は、リヴァイの方をじっと眺めていると在ることに気付いた。
それは、リヴァイの身体の所々に古い生傷があったのだ。
「…傷、まだ…痛む?」
「ん?あぁ、これらの傷は、もう癒えたよ。人間にやられた傷じゃないからね。」
このリヴァイは、もしかしたらと考える遊美奈は、その傷をそっと優しく触ってみる。
傷を癒せるカードがポゥッと光るが何せ古い傷を治すことは出来なかった。
それほどの深刻なダメージを与えたとなると、女神達が付けた傷なのかと考えた。
「おや?不思議な力だね。その力、昔…どこかで、見た覚えがあるが……うーん。」
「…時に、リヴァイよ…我らの話を聞く気は、無いか?」
ノスフェラトゥスは、考えているリヴァイを遮るかのように話題を変えた。
そう、対岸に見える大陸の移動方法を気にしていた遊美奈とノスフェラトゥス。
リヴァイは、その状況を見てある方法を提案してみた。
「それなら、海の女神であるネプチューンに頼んでみようか?あいつなら、手助けしたがってたみたいだし。」
「そうか…それなら、我が頼みに行こう。遊美奈、此処でしばらく待ってくれるか?」
リヴァイとノスフェラトゥスが、遊美奈の了承を得て海の中の海女神のところへ向かった。
遊美奈は、待っているしばらくの間にある出来事が待ち受けていた。
後書きにてキャラクターの紹介は、前作と同じ感じにしています。これから読んで下さる人たちにお知らせがあります。9月に入ると学業に専念するため卒業するまでの間の小説の投稿頻度が減ることになってしまいます。ですが、最終回を作るってことはありません。まだまだ、この作品は続いて行くのでご安心をしてください。それとですが、個人的なことなのですが報告をすることにします。来年の2019年による活動は、さらに忙しくなる予定であります。なぜかというと、執筆活動だけでは生活をしていくことが出来ないため少しずつですが稼ぐためにもバイトをしていくことになります。これからも、こんな作者ですが応援をして下さると嬉しく思います。本当は、これからもバトルものやRPGみたいなストーリーも盛り込んでいきたいので読んでくれると嬉しいなぁと思っています。では、此処まで読んでくださって有難う御座います。失礼します。