零 「噂話」
初執筆。正直まだ高校生なもんで、右も左もわからないまま、当たればよし感覚でやっていきます。拙い点はご容赦ください。アドバイスもお願いします。
今回の作品のタイトルに「ペルソナ」や「シャドウ」という単語を使っておりますが、某ゲームとは一切関係ありません。あしからず。
今から三日ほど前、俺は帰り道に奇妙な手鏡を拾った。
いつもならあまり気にしないような物のはずなのだが、なぜか気になったのだ。
「なんだこれ、変な形してんなぁ」
真っ黒な淵や、特に装飾が施されてないところを見ると、女性用であるということはまずありえないと言ってもいい。しかし、サイズは駅のホームで化粧直しに使うような物と似ている。
まだ新品なのか、もしくは、持ち主がよほど大切に管理していたのだろうか。持ち手にも背面にも、傷は一切見られない。
(誰の物か知らんが、これも何かの縁。貰っていきますか)
手鏡を学校のサブバックに入れようとして、俺はある異変に気づく。
鏡に映るはずの自分が映っておらず、まるで火の玉な物体が浮かんでいる。
「なっ・・・・!?」
あまりのことに驚き、何度も目をこする。恐る恐る、もう一度鏡を見ると、そこには自分の――比良里京弥の姿がしっかりと映っていた。
「・・・・やっぱ気のせいか」
大きな溜め息と同時に、緊張感が一気に抜ける。京弥は改めて鏡をカバンに仕舞うと、足早に帰路についた。
そして今日、七月七日。時刻は午後一時を過ぎたところ。
世間はやれ七夕だ、やれ今年の天の川は彼女と見るんだとか、いつも通り退屈だ。
あれ以降、手鏡は触っていない。気味が悪いし、かといって捨てようとは思わない。何故捨てようと思わないのか、おれ自身もわからない、実に不思議な話だ。
「きょーうーやっ!」
机に突っ伏して寝ていた俺の背中に、名前を呼ばれると同時に痺れるような痛みが走る。どうやら叩かれたようだ。
「やっぱり千里か。てゆーか、お前クラス違ーしいちいち背中叩くのやめてくんない?普通に痛いんだけど」
痺れの残る背中を押さえながら振り向くと、幼馴染の友人――村上千恵が無い胸を張って仁王立ちをしている。
「おっす京弥、また昼寝してんの?」
「そーだよ、悪いか?」
まだ少し眠気の残る目をこすり、安眠妨害への謝罪を求める。しかし、当の本人は意にも介せず
「別に悪くはないけどさー・・・・って違う違う!京弥は聞いたあのウワサ?」
あのウワサってどのウワサだよ。てか謝罪無しなの?と考えるも、そもそも彼女は幼いときから本能の赴くままに行動していたので、仕方ないと割り切った。一度大きな溜め息をつき、向き直る。
「ウワサ?なんの?」
「あ、やっぱ知らないんだ」
やっぱって想定済みなのかよ!この野生動物に「やっぱ」って言われたよチクショウ!
「いやさ、出所はわかんないんだけど妙な噂が流行っててさ。なんていうか怪談寄りの話なんだよね」
「怪談?学校の七不思議的なのが、この学校で流行ってんの?」
「七不思議じゃないっぽいんだけど、どうやら最近、この学校から何人か行方不明者が出てるんだって」
千恵の声のトーンが少し下がる。
「確かに他のクラスから、何人か行方がわかってない生徒が居るって担任から聞いたけど・・・・それがどうかしたのか?」
「うん、ここからが噂ね」
千恵が呼吸を整える。気持ちは本気のようで、俺も唾を飲み込む。
「どうやら行方不明者全員、失踪する三日前に何かしら拾ってるらしいんだよ」
「何かって・・・・何?」
「それはあたしも知らん」
大事なところがわからないのかよ。緊張の糸が切れ、全身から力が抜ける。
深い溜め息をついていると、天井のスピーカーから、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。
「あ、予鈴なちゃった。でもでも!この噂は本当だからね!わたし嘘ついてないからね!」
そう言い残し、足早に千恵は教室を去っていった。残された俺は、カバンの中にある手鏡に視線をむける。
(あれを拾ったのも三日前だったっけ・・・・じゃあ今度は俺が行方不明に・・・・?)
いや、単なる噂話だ、そう思い今は考えるのをやめた。
午後の授業開始のベルが鳴り響く。