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1.女性にぶつかる前に慰謝料の用意を!

 この時代の男の魅力は可愛さだって?

 ああ、わけが分からないっ。


 20××年。男女平等の合い言葉は、女子の肉食化、男子の草食化を増幅させ、日本のバランスを少しずつ崩してた。そこに突如現れた、初の女性内閣総理大臣。圧倒的政治力でたちまち日本を安定させた彼女が掲げた目標、それこそが『女尊男卑』であった。

彼女曰く、「女は賢く、美しくあれ。男は寛容に、力強く支えよ」。聞こえはいいけれど、ようするに男は我慢しろってことだろう? 従順な男ほど、可愛いと評価される。世界は女性のなすがまま、男達はおもちゃと化したのだった。


 俺、ひかるは高校二年生。中性的な童顔の俺は、素直だった幼い頃は、女の子みたい、天使だ、可愛い可愛いと年上のお姉様方にモテまくっていた。しかし、なにかと身の危険も感じたりしたわけで……。

「肉食女子なんて知るかっ! 俺は男前になって、黒髪さらさらの、儚げな大和撫子に、俺の三歩後ろについてきてもらうんだからなっ!」

気づけばそんな夢を抱えるようになった。

 ところが、高校になっても一般的に見て可愛いの部類の顔である俺は、どんなに拒絶してもただのツンデレと受けとられるらしい。大和撫子なんて絶滅したと、友人には苦笑されるしまつだ。うるさいっ、俺の最後の希望にケチつけるなッ!


 駅を出た俺は、小走りに学校へ向かっていた。遅刻という訳ではないが、トレーニングみたいなものだ。腕時計を確認しつつ、曲がり角にさしかかった時、突然衝撃があった。

「うひゃっ!」「っ!」

間抜けな声を出して尻餅をつく。

「ど、どこみてんだよ、危ないだろバカッ!」

勢いがついていたからちょっと痛かったため、涙目で叫ぶ。

「すいません、大丈夫ですか?」

相手の少女は倒れなかったらしく、俺に手を差し伸べてくれた。

 彼女の姿を見て、俺ははっと息を止めた。

 黒髪のセミロング、優しげな雰囲気、品のある仕草。

(こ、これは……ッ?)

「あ、えっはい……」

「怪我はされていませんか?」

言葉に甘えて思わず手を掴んでしまった。女子に謝られたのは初めてで、調子が狂う。この時代の女性は慰謝料を請求するタイプさえいるのに。

(やま、と……)

「よかった」

(やまとなで……)

 その時、ふと彼女の目が鋭く光った。

「でも、走っていて危なかったのは、あなたの方だと思います」

「ゴメンナサイ」

にっこり笑顔の彼女。反射的に素直に謝ってしまった。ん、あれ……?

(大和撫子、なの……か?)


 ちなみに俺は、大和撫子を文献でしか見たことがない。


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