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王都警備隊・4  作者: 風羽洸海
番外短編
64/66

オマケSS

4月1日更新。『それを運命と言うならば』のオマケ


 さて着々とリーファの腹が大きくなり臨月が近付いてくると、シンハは別種の不安に駆られはじめた。

 このままだと、太陽神リージアの月が終わらない内に産まれるだろう。とても嫌な予感がする。


 得てして悪い予感は当たるものだ。


 暑さの盛り、無事に産声を上げた赤ん坊の髪は、ふわふわと細いながらも明らかに黒かった。

 それだけならまだ、西方人である母親の濃い髪色を受け継いだと言えなくもないが、ぱちりと開いたつぶらな目が深く鮮やかな緑とあっては、ごまかしがきかなかった。


「よし、大神殿から太陽神の像を撤去する」

「やめて下さい罰当たりな」

「止めるなロト、おまえだって大迷惑だろうが! 世間どころか城内でさえ、なんだやっぱりそういう関係かと俺の子扱いされているんだぞ!?」

「いっそ本当にあなたとリーの子なんだったら、祝福したんですがね」

「「するな!!」」


 当の二人が声を揃えて叫ぶ。そんな騒ぎの中にあっても、問題の赤ん坊は泣きもせず、もぞもぞ動いて自力で揺り籠を揺らしている始末。加護の怪力、恐るべし。


「冗談ですよ。ただシェラ様とも以前から、こうなるんじゃないかと話し合っていましたから、驚きはしませんね」

「そうなのか、シェラ?」


 困惑顔で問いかけたシンハに、王妃は少しだけ困ったように、しかし嫌味のないふんわりしたいつもの笑みを見せた。


「なんとなくですけれど、神々はそういうことをなさるだろうと。わたくしから見れば、あなた方は三人でひとつの家族のようなものですから」

「シェラ様も」慌ててリーファが口を挟む。「それはその、多少は遠慮がありますけど、もう勘定に入ってますんで。そうだきっとあれですよ、この加護はシェラ様の予行演習のためなんじゃないですかね」

「わたくしの?」

「ええ。だってシンハと同じぐらい強力な加護を授かったのなら、この子、ちょっとやそっとじゃ死なないでしょう。だからシェラ様も、赤ん坊に触る練習をしたらいいですよ」


 名案だろ、な、とリーファはシンハを見る。頑丈扱いされた国王陛下は、曖昧な顔で揺り籠の赤ん坊を見下ろした。


「丈夫だろうというのは否定しないが」

「なんだよその顔。落っことしても平気だとか言ってないぞ。いくらオレでもそこまでガサツじゃないからな」

「いや、実際、少々雑に扱ったぐらいでどうにかなりはせんだろうよ。むしろどうにかなるのは大人の方というか……養父から聞いた話だが、俺が乳離れするまでに乳母が五人、面倒みきれんと逃げ出したらしい。動き通しで休まないし素手で玩具や揺り籠を壊すし、這いまわれるようになったらもう悪夢だったとかで」

「……」

「それはまぁ確かに、嘔吐下痢発熱といった普通の赤ん坊が通る道はすっ飛ばしたから、養父もその点だけは心配の要らない子供だったと言っていたがな。何を口に入れようが水に落ちようが平気で、少々火傷しようがすぐ治る。しかし馬鹿力な上に弱るということが一切なかったから、控え目に言って怪獣だったと」


 しみじみと語られる恐怖の幼児期に、他の三人は真顔になって沈黙するしかなかった。

 ややあってリーファが沈痛に唸る。


「シンハ。おまえが責任取れよ」

「誤解を招く言い方をするな! そもそも俺のせいじゃない、文句は太陽神に言え!」

「おまえの神様だろ、おまえがなんとかしろ!」

「無茶言うな! 神像の撤去ぐらいでどうにかなるなら、とっくに国じゅうの像をまとめて倉庫にぶちこんでいる!」

「だからそれはやめて下さいと」



 ――ぎゃあぎゃあ大騒ぎする声が天界にまで届いたのか。

 なんと翌日には、揺り籠の赤ん坊は母親譲りの焦げ茶色の髪と、父親譲りの碧い瞳に変わっていたのだった。




(終)


念のため、このSSはエイプリルフールのおふざけです。

「どんな運命でも」とは言え、もしこうだったら大変ダネー、という話。

本編でもリーの第一子は太陽神の加護を授かるという設定ですが、容姿が変わるほど強力ではありません。普通の範囲。

なおシンハが怪獣だったのは本編設定です。

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