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王都警備隊・4  作者: 風羽洸海
想いの証
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七章 想いの証 (3)


 モルフィス侯爵の屋敷は、そうでなくとも前当主逝去から落ち着かない毎日であったが、今日はさらに混乱していた。

 朝食が済んだ頃を見計らって王城からの使者が現れ、ほどなく国王陛下が訪問する、と告げたのだ。非公式ながらも侯爵家に対する詮議である、と言われては、喪中を理由に追い返すことなど出来はしない。今この場は逃げられても、貴族議会を召集され、名家の当主らが居並ぶ前で吊るし上げられるだけだ。

 謝絶も延期も許さない一方的な通告に、当主一家はもちろん召使達も驚き慌てて右往左往。

 客を迎える最低限の準備さえ整わない内に、王家の紋章を戴いた馬車が到着した。徒歩だった先日とは異なり、重要な訪問である証拠だ。馬車から降り立ったシンハも、いつもの庶民的な服装ではなく、礼装の数歩手前といった雰囲気である。

 ホールで出迎えたディノスとアリオの兄弟は、国王の後ろに秘書官が従い、さらに予想外の人物がいるのを目にして、それぞれに驚きを表した。

「神官長! もう王都に到着されていたのですか。お知らせ下されば迎えを遣りましたのに」

 ディノスが動揺を抑え、恐縮しつつ気遣う風情を強引に装う。だが表情と口調には責める色が明らかだった。なぜ国王の所へ先に行くのか、預かっているのは当家の相続に関る遺言状なのであって王家が口出しすべきことではない筈だ、と。

 そんな強気も、シンハが一歩進み出た途端に霧消した。先日と異なっているのは、衣装や乗り物だけではない。ディノスとアリオは無意識に後ずさり、そうしようと考えるまでもなく跪いていた。自らの主君が太陽王と呼ばれる所以を、身をもって思い知る。あまりの威圧感に、顔を上げる事も出来ない。

「ディノス=ヴェーゼ、ならびにアリオ=ヴェーゼ」

 厳しい声に名を呼ばれた二人はぎくりと身をこわばらせ、一段と深く頭を下げた。出来ることならこのままどんどん小さくなって、取るに足らない虫に身を変えてでも逃げ出したい、そんな気分にさせられる。その頭上から、いささかの容赦もなくさらに峻厳な気配がのしかかった。

「両名に質す。神々に誓って真実を答えよ」

 兄弟がそれぞれ短く承諾の返事をすると、見えない圧力が少し和らいだ。ほっと息をついて顔を上げた二人に、シンハは冷ややかなまなざしを向けて言った。

「本来ならば、領主は己が領内を通行する人々の安全を守るべき立場だ。にも関らず、おまえ達は長距離乗合馬車の認可権限を利用して不逞の輩をあえて営業させ、薬を用いて乗客を惑わせた上で所持品を奪った疑いが持たれている。何か申し開きがあるか」

 兄弟は揃って顔をこわばらせた。ディノスが忌々しげに弟を睨みつけたが、その視線の意味が何であるか部外者に忖度させる隙を与えず、アリオが声を張り上げた。

「陛下、誤解です! 確かに私は一部の馬車業者を通じてその……そう、旅行者の監視をしておりました! しかしそれこそ安全を守る為なのです、一般の旅人には何らの危険もありません、決して私利私欲のためでも、邪な目的があってのことでも……」

 ぺらぺらまくし立てていた舌が、緑の双眸に射られて凍りつく。言い訳を飲み込んだアリオに向かって、シンハは底冷えする声を返した。

「神官長に一服盛って宿場に足止めしたのは、私利私欲ではないと? 御者は既に街道警備隊の取り調べを受け、おまえの指示でやった、と白状しているぞ、アリオ。遺言状が届くのを遅らせて、何をたくらんでいた。レウス殿がわざわざ親書を遺し、血縁でもない俺に立ち会いを頼んだのも、どうやら杞憂ではなかったようだな」

「そ、それは……」

 アリオは口ごもって目を伏せ、沈黙する。シンハは時間稼ぎを許さず、鋭く命じた。

「マリーシェラ殿に会わせて貰おうか」

 その声音は明らかに事務的で情など含まれていなかったにも関らず、アリオは突破口を見つけたとばかり素早く顔を上げ、立て板に水の勢いで熱弁した。

「陛下、これは義母の為を思ってした事でもあるのです。陛下が義母に特別な想いを懸けておいでなのは存じております、なればこそ、すぐにも陛下のお召しに応えられるよう、当家の様々な手続きや慣習から自由にして差し上げることが、義母にとっても幸せであろうと」

「アリオ」

 怒りに満ちた低い声が、見えない鉄槌となってアリオの頭に落ちる。耐え切れずアリオはよろめき、両膝を床についてうなだれた。

「おまえは確かついさっき、神々に誓って真実を答えることを承諾したはずだが、もう忘れたのか。それとも、加護はあれども人の身にすぎぬ俺が相手なら、なんとでも言い抜けられると思ったか」

 静かに言いながら、シンハはゆっくりアリオに近付く。ディノスが慌てて横に避け、アリオは床にうずくまったまま小さく震えだした。シンハはそれを見下ろし、侮蔑と苛立ちをこめて舌打ちした。

「俺を舐めるのも大概にしろ。愛想と追従で都合の良いように操れるなどと思うな。これ以上、責任逃れを続けるつもりなら、この場で貴様を逆さに吊るして真実を吐き出すまで揺すってやるぞ」

「陛下、どうぞご容赦を」

 見かねたように割り込んだのは、ディノスだった。シンハが振り向くと、彼は跪いたままながらも顔を上げて言った。

「弟の虚偽と失態、代わって幾重にもお詫び申し上げます。遺言状の到着を遅らせ、その間に義母を説得して相続放棄の誓約を取り付けよう、と言い出したのは、確かにアリオです。しかし私もそれを承諾しました」

 これ以上怒らせてはまずいと察して潔く認めたディノスは、身をこわばらせたまま一旦沈黙する。目隠しをしたまま杖で足元の道を探すように、彼は慎重に言葉を選びながら、一言一言、先へ進んだ。

「父が義母を溺愛していたことはよく存じておりましたから、あまり……多すぎる財産を、彼女に遺されていては困る、と。私欲の為であることは否定いたしません。ですが領地を健全に経営してゆくのが、当主の務めでありますゆえ、どうか斟酌を賜りますよう。アリオも、次男ゆえ土地の相続がかなわぬ身。もとより受け取れる財産が限られているところへ、義母にすべてを持ち去られては立ち行かぬと、そう案じたのでしょう。彼にも守るべき事業や家族がございます。乗合馬車という、利用できる手段もたまたま持ち合わせていたがゆえに魔が差した、と……そう、お目こぼしは頂けませんか」

 この通り、と彼は床に額がつきそうなほどに低頭する。庇われたアリオは、ほっとするどころか、屈辱に顔を歪めて兄を睨んでいた。シンハはそれを視界の隅でとらえ、ディノスに向かって言う。

「当主にして兄たる義務を果たそうというのは立派な心がけだが、当人は余計なお世話だと思っているようだぞ。なあ、アリオ」

 白々しい口調でシンハはアリオに向き直る。途端に相手は青ざめ、無言のまま再びうつむいた。

「思い付きなどではなく、入念な計画に基づく行動だと主張したいのではないか? 自分の手で街道を掌握できると考え、実際に今までは問題なくやれていた。長男の“控え”に過ぎなくとも、能力は立派にあると証明したいだろう。その歳で兄に庇われるなど、さぞ腹立たしかろうな」

 シンハは言葉尻でニヤリとした。アリオの手が床の上で握り締められたのを見て取ったのだ。

 確かにアリオは年少者だが、それはあくまで長兄から見ての話だ。今まさに彼を見下しているシンハよりは五歳ばかり年長であるし、領地には妻子もいる。

 兄に“出来の悪い弟”扱いされたところへもって、王とは言え未婚の若造から馬鹿にされ、アリオの自尊心は生木を裂くように割れた。

「なぜだ……っ」

 怨嗟に歯軋りしながら、彼は床を見つめてうめいた。

「なぜ、リージアはあなたに加護を与えたのだ。いや、それは良い、神々の御心など分からない。だがなぜ、あなたが王位にあるのだ……!」

「アリオ! 何を言いだすか、口を慎め! 立場をわきまえろ、おまえは陛下のお慈悲を乞わねばならんのだぞ!?」

 ぎょっとなってディノスが制止する。だがアリオは震えながらも黙らなかった。

「なぜだ!? 本来ならショウカ様がその地位にあるはずではないか! 情けで譲られたに過ぎない王位を笠に着て……!」

「なるほど」応じたシンハは平静だった。「やはり貴様の後ろにいるのはラウロス公か」

「――!!」

 兄弟が揃って同時に息を呑んだ。兄は驚愕の眼で弟を見つめ、弟は失言に気付き真っ青になって。

 息詰まる沈黙の後、シンハがゆっくりアリオから離れながら言った。

「おまえ達の耳にも届いているだろう。カリーアの司祭の鞄が盗まれた件だ。手口からして王都のケチな盗人ではなく、街道を掌握する領主の誰かが黒幕だろうと踏んで、穏便に済ませようと噂を流したわけだが……なかなか鞄が出て来ない。ということは、恐らく単独ではなく、実行犯とその雇い主である貴族、そしてさらに上から糸を引いている者がいるため、臨機応変に対応出来ないのだろう。さて、あの街道沿いで、他の貴族の上に立てるような者はと言えば……」

 そこまで話が進んだ時、表で騒々しい人馬の声が上がった。と思う間もなく、数人の足音がバタバタと迫り、取り次ぎも無く扉が乱暴に押し開けられた。

 息を切らせて飛び込んできたのは、噂の主、ラウロス公にして王弟たるショウカ当人だった。護衛の近衛兵もわずかに一人。よほど急いで駆けつけたらしく、肩で息をしている。

「来たか。知らせが間に合ったようだな」

 シンハが薄笑いで迎える。ショウカは一言も発せないまま室内の様子を見回し、息を鎮めながら国王に向き合った。

「兄上……なんという乱暴な。気付いておいでだったのなら、私を通して下されば済むものを」

「そうして今回だけ盗まれたものを取り返し、あとは引き続きおまえとアリオに『街道の監視』をさせておくのか?」

 シンハは皮肉っぽく言い返してから、真顔になった。声に怒りが滲み出る。

「王国の東西を結ぶ大動脈とも言える街道は、誰もが迅速安全に往来可能だからこそ、国内に物資情報を行き渡らせることが出来るんだ。それを勝手都合で阻害しようなど、心得違いというものだろうが。ラウロス公ともあろう者が、理解していないとは思わなかったぞ」

 非難されて、ショウカはぎゅっと眉を寄せ、歯を食いしばる。数呼吸の後、彼は苦い口調で反論した。

「すべての人や貨物を逐一調べているなら、過剰な統制だとの非難も妥当でしょう。しかし、実際に身元や所持品、積荷を調べるのは、ごく限られた場合だけです。王国の要たる旧都を治めるならば、見るべきものには目を光らせておかねばならない。悪事を企む者まで好き勝手に泳ぎ回らせておくのでは、領主の座にありながら眠りこけているのと同じです」

 迷いのない真っ直ぐな論を叩きつけ、ショウカはシンハを毅然と睨み返す。床で這いつくばったままのアリオが期待に輝く目を上げたが、王と王弟は一瞥もくれなかった。

 短く、灼けつくような沈黙。そして、ショウカが絞り出すようにうめいた。

「兄上は、お甘い」

 直後、その場の空気が一瞬ですべての熱を失った。ショウカが顔をこわばらせる。恐れに見開かれた青い目に、凍った怒りを凝縮した凄烈な微笑が映った。

「おまえがそれを言うのか」

 静かな声は、氷柱(つらら)の槍となってショウカを貫き、よろめかせた。

 ――俺は散々、おまえのせいで命を狙われてきたんだぞ――

 言葉にされない、してはならない公然の秘密が、二人の間に深淵を穿つ。普段は覆い隠されているそれを、シンハは短い一言で思い出させたのだ。

 誰もが声を失い、時までが沈黙する。だがシンハはふと何かを思い出したように、二階へ続く大階段を見やって、怒りの色を消した。

 いつもの気さくな態度に戻り、彼はくるりとショウカに向き直る。

「おまえの懸念は領主としては恐らく正当なものだろうし、厳しい制限を設けて慎重に用いるなら有効な手段と言えるかも知れん。だが今のやり方を許しておくことは出来ない。現に、アリオ=ヴェーゼは手にした権力を濫用し、遺産相続が己に有利になるよう小細工を弄したからな」

「何ですって?」

 聞き返したショウカの表情と声音も、つい先ほどの危うい一幕がなかったかのようだった。顔をしかめてはいるが、その目には信頼が戻っている。

「レウス殿が亡くなったばかりで、もう跡目争いですか」

「跡目はディノスが継ぐ。それは動かしようがない。だがレウス殿が、気の毒な身の上の妻にたっぷり財産を遺していたら、最後の言いつけを馬鹿正直に遂行しては大損だと考えたらしいぞ。奴にとっては、“いつもやっている事”の延長、ちょっとしたついでに過ぎない感覚だったんだろうさ」

 厭味っぽく言いながら、シンハは口角だけの笑みを浮かべてアリオを見やる。ショウカがその視線を追い、忌々しげに「不心得者が」とつぶやいた。

 己の立場を理解したアリオが、怒りと恐れに見る見る顔色を変えた。

「そんな……殿下、あんまりです、御身の為に力を尽くして来たではありませんか!」

 悲鳴じみた嘆願に、横からディノスが救済を絶望した顔で、今更遅いことを言う。

「アリオ、おまえは一体いつからそんな真似をしていたのだ? 父上はそのような事を許されなかっただろうに」

「うるさいッ!!」

 途端にアリオが、理性のたがが弾け飛んだように叫んだ。

「あなたに分かるものか! 何もしなくても領地をすべて手に入れ、いつだって、長男というだけで父上に愛され目をかけられ贔屓にされて! あの手この手で歓心を買わねばならない弟の苦労など、夢にも思わないでしょうね! 先に生まれたというだけで、安泰な地位に胡坐をかいてきた、あなたなんかに分かる筈がないんだ!!」

「なっ……ふざけるな!!」

 幼稚だが根源的、かつ積年の恨みをぶつけられて、ディノスもまた激昂する。

「おまえはどれだけ独り占めすれば気が済むんだ! 父上も母上も、おまえをやたらと甘やかし、私と同じ過ちを犯してもおまえだけは許され、土地を継げぬのだからとそれを補って余りある優遇をされてきたくせに! この上まだ、遺産からせしめられるだけせしめようというのか、業突く張りの守銭奴め!!」

「はっ、本音が出たな、守銭奴はどっちだ! あなたは私に銅貨一枚たりとも譲りたくないんだ、父上のものはすべて自分に受け取る権利があると言うんでしょうが!!」

 貴族たれども所詮、兄弟喧嘩は兄弟喧嘩、ということらしい。しかもそこに金が絡んでいるとなったら、欲も感情も剥き出しになるというものだ。

 シンハがうんざりとため息をつき、天を仰ぐ。いささか面倒臭そうな顔になったロトの背後では、神官長が遺言状の入った懐を押さえて頭を振った。こんなありさまの兄弟に、大事な遺言状を渡せる由もない。

 互いに床に膝をついたまま、今にも取っ組み合いを始めんばかりに睨み合う兄弟二人。

 その頭上に、ラウロス公の言葉が落ちた。

「控えよ、アリオ=ヴェーゼ。遺言状の内容が何であれ、そなたにこれ以上、乗合馬車事業の運営を許してはおけない」

「……っ! 殿下、私を見捨てられるのですか? 今回の事も、殿下から任された務めを果たせなくなる恐れを抱けばこそ、思い切った手段に出たのです。それを……!」

「見苦しいぞ」ばっさり斬り捨てたのはシンハだった。「さっきは義母の為だと言い、今度はショウカの為か。そうやって他人のせいにばかりしているから、“控え”の地位から抜け出せないんだ」

 馬鹿が、と言わんばかりの声音には、取り付く島もない。アリオは唇をわななかせて王と王弟とを見比べていたが、不意に顔を歪めるや、

「くそっっ! 誰も彼も……!!」

 泣き出しそうな声で罵り、ばっと立ち上がって駆け出した。向かったのは、大階段。

「アリオ、待て!」

 ディノスが呼び止めようと叫び、ロトが捕らえようと追う。この場にもう味方がいない、庇ってくれる者も盾に出来る者もいないとなれば、次に彼が向かう先は一つだ。

 アリオが階段を飛び越えそうな勢いで、一段目に足をかける。その、直後。

「あっっ!?」

 素っ頓狂な叫びを上げて、彼はそのままの勢いで、階段に体当たりした。早い話が、全身でまともに倒れ込んだのである。手をつくことも、身を捻ることもできないまま、段の角で額や鼻を強打する。酷い音がしたので、鼻骨が折れたかもしれない。

「うわぁ、ただの足ひっかけがこんなに見事に決まるの、初めて見た」

 絨毯敷きの階段に抱きついたままぴくりとも動かないアリオの傍らに、忽然と、場違いな人影が姿を現す。言うまでもなく、先に潜入していたリーファである。

 ショウカや衛兵達がぽかんと絶句しているのとは対照的に、シンハは快哉の笑みを広げ、ロトも愉快そうに彼女のそばへ駆け寄った。

「驚いた、いるのは知ってた筈なのに、本当に今まで気付かなかったよ」

「へっへっへー。そうそう、これ、こいつの部屋で見つけたんだけど、渡しとく」

 リーファはなぜか得意げに胸を反らし、ベルトの小袋から紙包みをひとつ取り出してロトに手渡した。中身はケシ汁の乾燥末らしき、黒い物体である。ロトはわずかに開いて確認すると、しっかり包み直してポケットにしまった。

 それを見届けたリーファはホッと息をつき、足元で呻くアリオを見下ろして同情的な顔になった。

「あー、痛そうだなぁ。ロト、早いとこ手当てしてやってよ」

 意訳すると、これ以上面倒を引き起こされないうちに、とっとと身柄を拘束してしまえ、となる。ロトは苦笑で同意し、ラウロス公の護衛兵の手を借りてアリオを引っ立てた。

 邪魔がなくなって階段が空くと、リーファは脇に退き、シンハに向かって仰々しく一礼する。

「囚われの姫は二階右側三番目の部屋においでです。どうぞ、陛下」

「ぶっ飛ばすぞ」

 照れ隠しなのか、周囲の目を意識してか、シンハが物騒な返事を寄越す。それでも彼は小さく咳払いすると、なんともややこしい表情をしつつ、階段を上がって行ったのだった。


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