表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊樹の眠る場所で、君を想う  作者: 星谷明里
最終章 眠る精霊樹
39/39

エピローグ ─君を想い続ける日々─

✧ 初めての方へ ✧


【全38話完結】

まずはプロローグからお読みいただけます。


https://ncode.syosetu.com/n6628kw/2/


挿絵(By みてみん)

 春の陽射しが降り注ぎ、グラーデの森の奥では大樹が静かに葉を揺らしていた。

 若葉色の葉の間から差し込む木漏れ日が、絨毯のような苔の上にやわらかく降り注いでいる。

 その根元に、フィリアとテオドールは並んで立っていた。


 クロリスは二人の頭上の周りをふわりと飛びながら、嬉しそうに羽を震わせる。


『──よく戻りました、二人とも』


 葉擦れの音と淡い光と共に現れたのは、銀糸のような髪を持つ美しい女性。

 グラーデの大樹の精霊、シルヴィアだった。

 深い森のような瞳が、優しく二人を見つめる。


『長い旅路を共にし、互いを守り、支え合ってきましたね……。その尊い絆を、私は心から祝福します』


 シルヴィアの祝福の言葉に、クロリスがふわりと飛んだ。

 小さな春の花々で編んだ花冠をフィリアとテオドールの頭にそっと載せると、クロリスは満足げに胸を張って微笑む。


 シルヴィアはゆるやかに歩み寄り、二人の手をそっと重ね合わせた。

 温かな光がその上に降り注ぎ、テオドールの左手の薬指に、やがてひとつの形を結ぶ。

 白金の輪に、精霊樹の葉を象った細かな彫刻──フィリアが左手に嵌めている指輪と、お揃いの意匠のものだった。その中央には、翡翠の小さな石が煌めいている。


『これは、グラーデの精霊たちの祝福を宿す証。互いが互いの帰る場所であることを示す、永遠の契りです』


 クロリスが嬉しそうに笑い、『やっとお揃いになったわね』と声を弾ませた。

 テオドールは新たに手にした指輪を静かに見つめ、そっとフィリアの指を握る。


「……これからも、ずっと、あなたのそばにいます」

「はい……わたしも、ずっと……」


 その言葉を包み込むように、大樹の葉がそよぎ、春の風が二人をそっと抱きしめた。


 小鳥のさえずりがグラーデの森に響き、木漏れ日が金色の花びらのように降り注いだ。


* * *


 あれから幾日かが過ぎ、グラーデの村にも本格的な春が訪れた。

 すっかり暖かくなったフィリアの家の庭では、色とりどりの花が咲き誇り、ハーブの香りが風に運ばれていく。

 テオドールは庭先でハーブや花の手入れをしていて、クロリスは近くの花の蜜を味見しては、ひらひらと飛び回っていた。


 フィリアは台所から籠を抱えて出てくる。籠の中には、焼きたての白パンと瑞々しい苺、ハーブティーの小さなポットが入っている。


「休憩にしましょう、テオ」

「フィリア……ありがとうございます」


 日差しを受けて微笑むテオドールの左手には、あの日シルヴィアから贈られた指輪が輝いている。

 フィリアもまた、お揃いの指輪を薬指に光らせていた。


 テオドールは額の汗を拭い、軽いため息を吐いて立ち上がった。その何気ない仕草さえも、造られた体ではなく、今は“人として生きている証”──フィリアの胸に幸せな温もりが広がった。


「摘みたての苺ですよ!」


 笑顔のフィリアに、テオドールも微笑み返す。


「パンも焼き立てです」

「どちらも、美味しそうですね」


 フィリアは籠を差し出しながら、彼の左手の指輪に目をやる。

 その輝きも、少し汗に濡れた前髪も、目に映るすべてが尊くて──これから先も、こうした何気ない日々を重ねていけることに、この上ない幸せを感じていた。


 フィリアはベンチの脇の緑のガーデンテーブルに籠を置くと、お揃いのティーカップと、クロリス用の小さなカップにハーブティーを注いでいく。


『美味しそうね! わたしはハーブティーと苺をいただくわ』


 クロリスはテーブルにふわりと舞い降り、ちょこんと腰を下ろすと、顔ほどもある苺に齧り付いた。『甘〜い!』と幸せそうに微笑むと、ベンチに腰掛ける二人を眺める。


 二人は庭のベンチに腰掛け、仲良くパンと苺を分け合っている。

 クロリスは、その笑顔を見上げて満足そうに笑った。


 遠くから小川のせせらぎが聞こえる。

 森の木々は若葉色に芽吹き、空はどこまでも青い。精霊たちの囁きも春の空気に溶け、村には穏やかな時間が流れていた。


 フィリアはふとテオドールの肩にもたれ、小さく囁く。


「……これからも、ずっとそばにいてくれますか?」

「勿論です……ずっと離れませんよ」


 返ってきたその声は、春の陽だまりのようにあたたかかった。

 二人は微笑み合うと、寄り添って春の庭とグラーデの森を眺める。


『春なのに熱いわねぇ……わたし、小川で涼んでくるわ』


 フィリアが悪戯めいた瞳で微笑むと、ふわりと森の方へと姿を消す。


「フィリア……」


 恥ずかしそうに少し俯いたフィリアに、テオドールがそっと顔を寄せる。栗色の髪に口付けると、肩を優しく抱き寄せた。

 頬を染めたフィリアが、その胸に身を預ける。春風に運ばれる彼女の香りに、彼はもう一度そっと口付けを落とした──


 二人を見守る森は、今日もやさしい風を運んでいる。

 どんな季節が巡っても、この先に何があっても、共に寄り添い笑い合える日々が続いていく──そう信じられる温もりが、今は確かにそこにあった。


 春の風は森を越え、遠い未来へと続く季節の訪れを告げていた。

 寄り添う二人の笑顔が、その未来を明るく照らしている。


 ──これから先も、ずっと。


─fin─

✧ 読んでくださった方へ ✧


フィリアとテオドールの物語を最後まで見届けていただき、本当にありがとうございました。

フィリアたちと一緒に、切なさや温もりを感じていただけたなら嬉しいです。


読んでくださった方の心に、少しでも何かを残せる作品をお届けできていたら、幸せです。


* * *


✧ 応援してくださる読者様へ ✧


リアクションやブックマーク、評価などしていただき、本当にありがとうございます!!

とても励みになっています✨️


これからもロマンスファンタジーを執筆していきますので、また他の作品でもお会い出来ますように……。


星谷明里


* * *


✦ 三作目(完結作品)のお知らせ ✦


挿絵(By みてみん)


不遇な美しい王女 × 許されぬ想いを秘めた護衛──

禁断の主従ロマンスを描く新作 『沙漠の星と花の姫君』


https://ncode.syosetu.com/n8927ky/


王宮愛憎劇や、切なくも甘い主従ロマンスがお好きな方に、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ