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逆ハーレム可能なサポートキャラクターが自力で打開する話

作者: リーシャ

非常に面倒な事が最近起こった。


面倒という言葉が脳裏に浮かべば即座に放置してしまうセツナは頭を悩ませていることがある。


それは、あと二時間で転校生だと紹介されるだろう少女と、攻略対象と言われる立場の男子がぶつかる瞬間を見た事だ。


ついにこの日がやってきた。


面倒過ぎて目に隈が出来そうだ。


辟易としながら成り行きを見つつ他の人と同じように教室に入る。


先程ぶつかった攻略対象は攻略対象キャラクターという活発な男子。


確かにあの男子ならばぶつかりそうだ。


何となく分かっているかもしれないが、この世界は前世で流行った携帯ゲームである。


ゲームと言えどたくさんあった世界でも、そのゲームはゲームをする乙女達の話題を直ぐに浚った。


ゲームなのにクオリティが高い。


物語のボリュームも豊富。


それだけではなく、続編もいくつか出た。


悔しながら、続編を全てする事は叶わなかったがこの世界ではその知識を使って困難に立ち向かおうと思う。


何の困難かというと、セツナはヒロインではない。


サポートキャラと言われる、言わばヒロインの友人である。


しかし、友人になるつもりは毛頭ない。


というか凄く面白くないと思った。


なんで恩もないのにサポートなんてわざわざまどろっこしい事をしなくてはいけないんだろう。


別に親しいわけでもないし。


鬱々としている間にホームルームが始まって転校生が来るという担任の言葉でクラスが盛り上がる。


おいおい、と呆れる。


こんなに盛り上がらせて転校生を緊張させる気かと半目になった。


ヒロインという立場を抜いても天然の固まりであるというのに。


でも、天然だから普通に自己紹介が出来るかもしれない。


流れに目を扉の方に向けているとガララと音と共に美少女がやってきた。


おおお、とクラスが色めき立っていくのを肌で感じる。


それから二週間後、学校の人気者達が転校生の『アイリス』に夢中になっていた。


夢中になった攻略対象達は脇目も振らずに彼女を中心に逆ハーレムを築いていた。


この前なんて生徒が歩いている廊下の真ん中を通ってまるでお姫様のように男達を侍らせていたと、女子談。


美少女だけど侍らせ過ぎて近寄れない、と男子談。


どっちもどっちな噂や目撃証言が学校を風の様に回る。


先生もどういうべきか戸惑っているらしいと聞いた。


逆ハーレムを築いているヒロインのアイリスは勝ち顔で歩行していると友達から聞いたので、違和感を感じる。


ゲームのアイリスは人に迷惑をかけるような子ではない。


常識ある女の子だ。


ちゃんと迷惑をかけると分かっていると予め何とか止める、だとか。


とにかく苦労するタイプの子。


だが、蓋を開けてみたら良心の呵責というもの知らない子であったのだ。


これにはとても疑問が胸をモヤモヤさせた。


しかも、セツナをサポートキャラと“認識”しているみたいなのだ。 


友人に話しかけているというより、まるで情報だけを聞くだけの人間と対話しているように接してくる。


だけど、舐めちゃいけない。


お忘れなかれ、セツナは転生者だ。


サポートキャラなんて真面目にこなすわけがないというもの。


そんなアイリスの言動に拍車が掛かれば掛かる程違和感は増幅していく。


もしかして、もしかしてなのだが。


己の勘が正しければ彼女も自分と同じ同類なのかもしれない。


日に日にその勘は現実味を帯びてくる。


最後には、彼女が小さくぼそりと声に出した言葉に決定打を打った。


「どの選択肢だったかな」


(はいアウトアウト)


証拠を得た。


この子はヒロインの皮を被ったプレイヤーだ。


内心セコい事をしていると呆れる。


ここはニューゲームやリトライが無い世界なのに、一歩間違えばお終いだ。


そう思っていたセツナだったが、この世界の俗にいう攻略対象達は彼女に魅せられたかのようにメロメロだった。


一体どこの魔性だと辟易。


大体、揃いも揃って取り合いだなんて迷惑過ぎる。


もっと最悪な事に、今ある現実がゲームの本編ではない。


この時間軸はプロローグ、又は手慣らしのような触り部分なのだ。


悲しい事にこれからこのゲームのパッケージに書いてあったゲームのジャンルが始まる。


先に説明しておくと、このゲーム世界をベースにしたソフトはほのぼの学園恋愛物ではない。


ほのぼのとはしていないのだ。


それに少し抜けている言葉がある。


「きゃあ!何!?何が起こってるの!?」


ヒロインの芝居がかった声の方向を向くと教室の地べたの所がパアア、と輝いて光っている。


ああ、始まった。


「うわっ」


「なんだ!?」


「足が動かないっ」


本当は行きたくないが強制的に連れて行かれるポジションだから逃れられない。


内心溜息をついて、スクール鞄とは別のスクール鞄を持ち替える。


これは事前に長い旅路に出るからと揃えた物が入っている鞄だ。


光りに包まれるまでこんなに長いのかと少し苛々した。


この世界の抜けていたジャンル、それは──。


「ようこそ、異世界の巫女様御一行様」


神殿の真ん中にある石台の上にぽつんと座る七人の高校生達。


見たこともないような煌びやかな衣装を身に付ける男性が恭しく頭を下げた。


ここは、いや、このゲームの一番の難所は異世界という現実を飛び越えたジャンル、ファンタジーであった。


何が起こっているのか理解出来てない様子の五人の男子達は今、最初に声を掛けてきた男性に詰め寄っていた。


アイリスは全てを知っているので、他の子達と違って詰め寄ったり、パニックになったりしない。


ここから、ヒロインは現代のクラスメイトと異世界の現地人キャラクターを含めた多人数を相手取って攻略していく。


が、セツナは近くにいた魔法使いから流れるように魔法の杖らしきものを奪い取り魔法陣を書き換える。


公式が出している資料集に実は、的な裏の公式情報を網羅していた。


そこには、召喚についての知識やここをこう書き換えれば、帰れるといったインタビュー、といったものが書かれていた。


ヒロインも読み込んでいるかと思っていたが、ゲームだけして満足していたタイプだったらしい。


それとも、買ったけど好きなページだけ読んで終わったかだ。


こういう時、自分のような先を知る存在は攻略対象者達にヒロインの本性を教えて目を覚ましてあげて、という苦労を背負いこむ人も居るのだろう。


が……が、だ。


よくよく思い出して欲しい。


自分は受験生だ。


受験よりも優先されることじゃない。


少なくとも、血縁者でも友達でもない無関係な彼らに渡す時間はない。


帰る時は時間が経ってないと書いてあった。


頭の中の時間が経ってないとは、一切言及されていないのだ。


彼らこそ、全員一体どうするのだろう。


一年、二年、何年経過した後、帰るのかは知らないが。


彼らだって、今通っている学校の授業や今まで詰め込んだ勉強を思い出して、授業に付いていけたり。


受験に間に合わせて、三年以上分をそこからどうやって、取り返すのだろう?


時間は経過しないが、学んだ分は戻ってこないのだ。


激しい疑問を感じて、描き終え魔法陣が光り、こちらを目を点にして見てくる面々の目が合わないようにした。


風景はキランキランの場所から、教室にあった。


時間が経たないからって、あの魔法陣についてはどう説明されるのだろう。


光ったと思えば攻略対象キャラクター及びヒロインだけが居なくなっていた状況。


特に騒がれなかった。


なにかしらの魔法が働き、彼らの存在を認識できなくなったよう。


セツナは覚えていた。


しかし、もしかしたら気にしなくなるのかもしれない。


魔法の作用によって。


大丈夫、エピローグでは地球に帰るルートがあったよ。


チャイムが鳴り、先生が入ってきたのでカバンを机に掛けて、教科書を開いた。

⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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