✒ 助っ人 3
──*──*──*── キャンプ地
マオ
「 アベル、プディはどうやって呼ぶんだ? 」
アノスベルド
「 普段は僕の影の中に潜んでます。
口笛を吹くと出て来てくれます 」
アノスベルドが口笛を吹くと、アノスベルドの影に波紋が出来る。
影の中から赫色のスライムが出て来る。
鮮血と言うよりも真っ赤に輝くルビー色に似ている。
マオ
「{ 綺麗な色だな…… }」
アノスベルド
「 ──有り難う御座います!!
セロフィート様と幻夢様からも “ 綺麗 ” って御褒めの言葉を頂いたんです(////)
マオ様にも “ 綺麗 ” と言ってもらえて嬉しいです(////)」
おぉう!?
どうやら無意識に声が出ていたみたいだ。
マオ
「 ゼリーみたいにプルプルしてそうだな。
弾力って有るのかな? 」
惷麗
「 【 ◯よ◯よ 】って名前の落ちゲーに登場するスライムみたいだな。
目は付いてないのか? 」
アノスベルド
「 スライムの目は体全体ですよ。
スライムの凄いのは死角が無い所です 」
マオ
「 えっ?
そうなのか?
スライムって死角が無いんだ?? 」
惷麗
「 目が無いのは死角を無くす為なのか──。
そう言えば、ゲームソフトに依っては目の無いスライムも居たな── 」
マオ
「 シュンシュン…… 」
惷麗
「 何だよ!
僕だってTVゲームで遊んだりするさ!
飽きっぽいお前と一緒にするなよ! 」
アノスベルド
「 ──惷麗さん!
主人に向かって “ お前 ” って何ですか!!
失礼じゃないですか!! 」
マオ
「 アベル、良いんだよ。
オレは未だ〈 皇 〉じゃないし、今は兄妹っていう設定で冒険者をしてるんだ。
アベルも入るから兄妹弟になるけど── 」
惷麗
「 そうだな!
マオの事は “ 兄さん ” で、僕の事は “ お姉様 ” って呼んで敬うんだぞぉ 」
マオ
「 シュンシュン……。
貴族じゃないんだから、“ 様 ” は要らないだろ 」
アノスベルド
「 お兄さま…………。
素晴らしい響きです、マオ様!(////)」
マオ
「 アベル、“ さん ” で良いからな。
“ 兄さん ” な? 」
アノスベルド
「 分かりました……。
マオ兄さん,シュン姉…… 」
惷麗
「 おい、コラ!
何で僕は “ シュン姉 ” なんだ?
ちゃんと “ 惷麗お姉様 ” って敬意を込めて呼べよ! 」
マオ
「 シュンシュン、弟が可愛いからっていじめない!! 」
惷麗
「 はぁっ?!
可愛くないし!
僕の方が数百倍は可愛いし可憐だろうが! 」
マオ
「 対抗心を向けない!
御免な、アベル。
シュンシュンの言う事は聞き流して良いからな 」
アノスベルド
「 はい、マオ兄さん♥ 」
惷麗
「( チッ──。
マオの前だからって良い子ブリやがって!!
気に入らないねぇ!!
マオもマオだ!
大親友の僕をもっと優先しろよな! )」
シュンシュンはムスッとした顔でオレとアノスベルドを見ている。
どうやらシュンシュンの機嫌を悪くしたみたいだ。
キャラメルを作って機嫌を直してもらうとしようかな。
マオ
「 アベル、プディの戦い振りを見せてくれるかな? 」
アノスベルド
「 はい!
プディ──、今から怪物を屠るよ!
準備は良いかい? 」
プディ
「 ぷてぃ! 」
マオ
「 …………………………は?? 」
惷麗
「 …………………………ん?? 」
マオ
「 気の所為かな?
今、プディが鳴いた?? 」
惷麗
「 おぃおぃ、馬鹿を言うなよ。
スライムだぞ。
声帯が無いのにどうやって鳴くんだよ?
空耳だろ 」
マオ
「 そ…そうだよな!
オレも鳴くスライムが居るなんて聞いた事無いし 」
プディ
「 ぷてぃ? 」
マオ
「 ………………………… 」
惷麗
「 ………………………… 」
オレとシュンシュンは言葉を失ったまま、アノスベルドの使い魔を見た。
鮮血のスライムはプルプルと体を揺らしている。
アノスベルド
「 あの……進化したスライムは声帯が無くても鳴けますよ?
プディは知能が高くて、理解力も有りますから── 」
プディ
「 ぷてぃぷてぃ 」
マオ
「 進化したスライム──凄いな!! 」
セロめぇ!
一体どんな無属性スライムをアノスベルドに渡したんだか!
会った時に問い質してやるんだからな!!
惷麗
「 鳴くスライムなんて知られたら、実験台確定だぞ。
人前で絶対に鳴かせるなよ。
セロフィートと幻夢は知ってるのか? 」
アノスベルド
「 知ってるけど?
幻夢様は、プディが連れ去られない様に闇呪術を施してくれたよ 」
マオ
「 へぇ?
幻夢さんが──。
どんな闇呪術なんだろう?? 」
惷麗
「 試してみたら良いだろ。
明らかに素行の悪い冒険者の前にコイツを放り出すんだ。
見た目の珍しいスライムだ。
新種のスライムだと思って捕まえ様とする筈だ。
鳴けば尚更な 」
マオ
「 態と連れ去らせるつもりかよ 」
惷麗
「 掃除だよ、掃除。
冒険者の信頼や評価を故意に下げる厄介者達を片付けるだけさ 」
マオ
「 全くさ……。
分かったよ。
心当たりの有る冒険者パーティが居るから、そいつ等で試そう。
アベル,プディ──、良いかな? 」
プディ
「 ぷってぃ~ 」
アノスベルド
「 大丈夫です!
プディもどんな闇呪術を施してもらえたのか気になるみたいです 」
惷麗
「 決まりだな!
よし、早速確かめようじゃないか! 」
マオ
「 シュンシュン、楽しそうだな~~ 」
という訳で──、オレ達はフィールドで傍若無人に振る舞っている迷惑極まりない冒険者パーティを探す事にした。
──*──*──*── フィールド
新米冒険者達に近付いては、助言するフリをして騙そうとする悪徳冒険者は直ぐに見付かった。
選りに選って自分からオレ達のパーティに声を掛けて来るなんて、運の無いパーティだな。
冒険者者:男A
「 おぃおぃ、フィールドは何時から子供が駆け回っても良い安全な場所になったんだぁ~~? 」
冒険者:男B
「 ボクちゃん達ぃ~~、危ないから≪ 村 ≫に戻れよ。
連れて行ってやるから、所持品は寄越すんだぜぇ 」
アノスベルド
「 何て品の欠片も無いゲスい人間なの。
顔が悪いと頭も悪いのかな? 」
惷麗
「 言うなぁ、アノス。
コイツ等は冒険者の中でもザコ中のザコだから、頭も顔も頗る悪いんだ!
“ 冒険者の面汚し ” って言う奴等だから相手にするな~~ 」
マオ
「 コラ!
何で2人揃って相手に屈辱して、神経を逆撫でする様な事を言うかな~~ 」
プディ
「 ぷてぃぷてぃ~~ 」
アノスベルド
「 プディも『 失せろゴミクズ共! 』って言ってるよ 」
惷麗
「 どんだけ口の悪いスライムだよ……。
流石は進化したスライムだな! 」
アノスベルド
「 (* ̄ ^  ̄*)当然だよ!
プディは世界に1体しか存在しない稀少な鮮血のスライムだもん!
鳴くスライムなんてエルゼシア中を探したって見付からないよ!! 」
シュンシュンとアノスベルドはここぞとばかりに冒険者パーティを刺激しては、プディを稀少価値の高いスライムだと褒めちぎりまくる。
一寸やり過ぎじゃないかな?
目の前の冒険者パーティと戦闘になったらどうする気だよ……。
マオ
「 2人共其処迄にしとけよ。
明らかにオレ達より先輩の冒険者パーティだぞ。
あの──、妹と弟が失礼な事を言って御免なさい…… 」
オレは気弱で弱腰な兄っぽく見える様に、オドオドしながら話し掛けてみた。
冒険者:男C
「 随分と威勢の良い無礼千万な妹弟だなぁ~~。
兄貴は頼りねぇ──ってのによぉ~~。
優しい先輩の俺達が後輩の礼儀ってのを教えてやろう 」
惷麗
「 はぁ?
お前等なんて御呼びじゃないんだよ!
蠅は蠅らしく怪物の糞にでも集ってろ!
汚物蠅さん達ぃ~~ 」
アノスベルド
「 怪物の死骸に群がってる蛆虫以下でしょ。
御呼びじゃないから消えてよ 」
プディ
「 ぷてぃぷてぃ! 」
うわぁ~~~~。
冒険者達の血管が浮き出てピクピクしてるよ……。
今にも血管が切れそうだ。
幾ら計画だとしても言い過ぎじゃないかな??
マオ
「 コ…コラぁ~~2人共ぉ~~。
汚物蠅とか蛆虫以下とか言ったら失礼だろ? 」
惷麗
「 失礼なもんか。
事実を言ってるだけだろ 」
アノスベルド
「 そうだよ、マオ兄さん。
弱い冒険者をカモまくる事しか脳の無いゴミでしょ。
謝る必要無いよ。
寧ろ謝るのはゴミクズ達の方だし 」
演技だからって、ノリノリだな……。
冒険者達にプディを連れ去らせる計画を忘れてるんじゃないのか~~?
どう収拾するつもりだよ……。
冒険者:男D
「 チッ──。
口の悪いガキ共だぜ! 」
マオ
「 うわっ!! 」
オレは冒険者の1人から押されて、地面に尻餅を付いた。
勿論これも演技なんだけど──、セロがこの場に居たら、この冒険者達は完全に詰んでた。
セロには「 演技だから! 」って言っても通じないからな~~。
惷麗
「 マオ!
大丈夫かよ! 」
シュンシュン、めっちゃ棒読みだな。
ついさっき迄は完全にノリノリだったのにいきなり棒読みって……。
どうやらシュンシュンには演技力の期待は出来ないみたいだ。
アノスベルド
「 餌の分際で僕のマオ様に手を上げたな──。
コロス── 」
あれぇ~~~~??
アノスベルドは演技を忘れて本気でキレてる??
さっき迄の可愛い子兎なアノスベルドは何処にぃ~~~~??
マオ
「 吸血鬼って子供でもキレるとヤバイのかよ…… 」
惷麗
「 穏便が吹き飛んだな~~ 」
マオ
「 穏便ねぇ?
そんな気、更々無かっただろ? 」
プディ
「 ぷてぃ!! 」
何かプディまで怒ってる??
でも、可愛いなぁ~~(////)
スライムは怒っても可愛いのか??
アノスベルド
「 プディ──、殺れ── 」
プディ
「 ぷてぃ! 」
マオ
「 アベル、落ち着け!
演技だよ、演技!!
3人で話し合ったじゃないかな!
忘れちゃったのか?? 」
アノスベルド
「 もう遅い── 」
アノスベルドは顔に似合わないドスの効いた声で言う。
マオ
「 どっからそんな物騒な声が出て来るんだよ!?
アベルは未だ10歳だろぉ~~?? 」
惷麗
「 あぁ~~そう言えば、吸血鬼の1年って人間の100年じゃなかったか?
10歳って事は、少なくとも1000年は生きてるって事になるよな。
ハッハッハッ、若作りのジジイだな! 」
マオ
「 笑い事かよ!!
プディを止めないと── 」
オレは慌てて地面から立ち上がった。
プディを止めようと動いたけど、どうやら手遅れだったみたいだ。




