何でオレがシュンシュンと一緒に2人だけで行動しているかと言うと、ちゃんとした理由が有るんだ。
事の発端はシュンシュンが観ていた異世界映画の影響だと思う。
シュンシュンが「 異世界映画の世界に行ってみたい 」って言い出したんだ。
≪ 日本国 ≫の様な≪ 島国 ≫は、≪ 大陸 ≫との交流は無い筈なんだけど──、異世界映画の世界観はまさに≪ 大陸 ≫の世界観と類似している。
不思議な事も有るもんだ。
そんな事もあって、オレはセロに相談してみた。
オレは毎年、3回だけセロの大陸転移魔法を使って故郷の≪ エルゼシア大陸 ≫へ帰国している。
3回中2回は顔も知らない両親の命日に墓参りする為、≪ レドアンカ ≫に在る自宅へ帰省している。
3回中ちゅう1回は≪ カルセ王おうライル都と ≫に在る実じっエノバラ父ぷンティスの実家──《 バセリナ城じょう 》へ帰省する。
《 バセリナ城じょう 》では王身族内だけが集まって、盛大なパーティーが開ひらかれる。
皆みんなでオレの誕生日を祝う為の盛大な誕生日パーティーだ。
オレの実じっエノバラ父ぷンティスは元国王オレの祖父と前王妃オレの祖母との間あいだに産うまれた正真正銘,生きっ粋すいの皇子様で正統な跡取りだったけど、前王妃オレの祖母みたいに殺ころされない様ようにと《 バセリナ城じょう 》から逃にがされて、旅芸人に預けられたらしい。
旅芸人に預けられたまま、旅芸人の長おさになった実じっエノバラ父ぷンティスは、滞在していた≪ ゴイエンデル街まち ≫が大おお火か事じに見舞われて、子供を助ける為に命いのちを落としたらしい。
実じっエノバラ父ぷンティスは自分が≪ エルゼシア大陸≫を統治するエルゼシア国王の実じっ子しだという事実を知らぬまま亡くなってしまったらしいんだ。
実じっエノバラ父ぷンティスは≪ レドアンカ都みやこ ≫を旅立だつつ前、実じつソフティア母ぼリーチェへ母親オレの祖母の形見を渡していた。
実じつソフティア母ぼリーチェが病やまいで亡くなった後あと、母親オレの祖母の形見は実じつソフティア母ぼリーチェの形見として、幼いオレに手渡されたんだ。
オレは指輪に紐を通とおして首に掛けっぱなしにしてて、エルゼシア前王妃前妻の形見の品しな── “ 王家の指輪 ” だなんて全まったく知らなかった。
オレの身体からだには元エルゼシア国王じいちゃん,前エルゼシア王妃ばあちゃん,幻まぼろしの皇子となったエノバランティス父さんの血が流れていた訳だ。
セロと出逢って、セロと旅を続ける為に人間である事を止やめて、人間を捨てた今のオレの身体からだには血なんて流れてないんだけど──。
そんな訳で──、来らい月げつは3回中ちゅうの2回目の帰国に当たる。
故郷の≪ エルゼシア大陸 ≫に帰国して、≪ カルセ王おうライル都と ≫の中に在る《 バセリナ城じょう 》に帰省しないといけない週が来くるんだ。
その時ときに、シュンシュンも一緒にオレの故郷エルゼシア大陸に連れて行く事になった。
シュンシュンは異世界ファンタジー映画を観て “ 冒険者 ” に興味を持っていたから、適当な≪ 村 ≫に在る《 冒険者ギルド 》で冒険者登録をして、冒険者として暫しばらく過ごさせてあげよう──って事になったんだよな。
そんな訳で、《 バセリナ城じょう 》で行おこなわれた盛大なオレの誕生日パーティーが終わった後ご日じつ──、セロに古代エンシェント魔法マジックで《 冒険者ギルド 》の在る≪ ゼシュカノ村むら ≫へ転移してもらった。
因ちなみにセロは、《 バセリナ城じょう 》に残っている。
オレを産うんでくれた実じつソフティア母ぼリーチェの兄あにである伯お父じのアルソリュンドさん,≪ レドアンカ都みやこ ≫での育ての兄貴にいさんのマーフィ,オレに剣術を教えてくれたラオインダの3人から「 剣術の稽古を付けてほしい 」って頼まれたからだ。
今でも十じゅう分ぶん過ぎる程ほど強つよいってのに、これ以上強つよくなってど・う・す・る・つまりなんだ……。
セロが居いてくれないから、オレは冒険者の先輩として1人でシュンシュンの相手をしないといけなくなった。
そんな訳で、現在は《 冒険者ギルド 》の《 待ち合い室 》の中って事だ。
惷麗
「 ──この茶菓子スイーツ、意外にイケるな♪ 」
マオ
「 シュンシュン……。
{ 自分が “ 女の子 ” って事、忘れてないか~~ }」
惷麗
「{ 忘れてないぞ! }」
マオ
「{ 先まずは言葉遣づかいを “ 女の子っぽく ” した方が良いいんじゃないか }」
ギルドの従業員スタッフが運んで来きてくれた紅茶ティーを飲みながら茶菓子スイーツを食べる。
他ほかの冒険者達は次つぎ々つぎと名前を呼ばれて《 待ち合い室 》を出て行く。
惷麗
「 ──中なか々なか呼ばれないな 」
マオ
「 登録の書き換えってのは直すぐには出来ないんだ。
冒険者パーティってのはメンバーの入いれ替わりが多いんだ。
複ふく数すうの冒険者パーティの登録を書き換えもしないといけないから、大変だよな 」
受付嬢から呼ばれるのを待っている間あいだに、他ほかの冒険者パーティが入はいって来くる。
どうやらAエイ級冒険者,Sエス級冒険者が多く所属しているギルドみたいだ。
惷麗
「 Aエイ級冒険者,Sエス級冒険者って、あんまり強く無さそうだな 」
マオ
「{ こら、シュンシュン!
聞こえる声で言うな!
冒険者ってのは、無駄に好戦的な奴が多いんだ。
目を付けられたら厄介なんだぞ }」
惷麗
「 知るかよ。
弱そうだから “ 弱そう ” って言ってるだけじゃないか。
“ 弱い ” なんて断言はしてないぞ。
子供の戯たわ言ごとを一いち々いち腹を立てる冒険者なんて、程てい度どが知れてるだろ?
真しんに誇り高いSエス級冒険者,Aエイ級冒険者は子供の戯たわ言ごとを真まに受けたり、腹を立てたりはしないもんだ。
仮に腹を立てて文句を言って来くる奴が居いるなら、そいつは小こ者ものだ。
Aエイ級,Sエス級を名乗るには相応ふさわしくない三流冒険者だろうよ! 」
マオ
「{ シュンシュン……。
オレに尻しり拭ぬぐいさせる気かよ? }」
惷麗
「 先輩が後輩の尻しり拭ぬぐいをするのは立場的に当然だろ?
可愛い妹を守ってくれよな、兄にいさん♥ 」
マオ
「 トラブルメーカーな妹を持った覚えは無いけどな!! 」
???
「 随分と楽しそうにお喋りしてるな、子供達! 」
マオ
「{ ほら見ろ!
シュンシュンが余計な事を喋った所為で目を付けられたじゃないか! }」
惷麗
「 可愛い僕をナンパしたいんだろ? 」
マオ
「 何なんでだよ。
自意識過剰も程ほど々ほどにしとかないと、“ 痛い奴 ” って思われて白い目で見られるぞ…… 」
惷麗
「 はぁ?
自意識過剰で何なにが悪い!
大抵の人間は自意識過剰なんだよ。
それを表おもてに出さずに隠してるだけだ。
自意識過剰、大おおいに結構! 」
マオ
「 胸張って言うことじゃないからな 」
???
「 おぃおぃ、2人で無視シカトしてんじゃねぇよ! 」
マオ
「 子供じゃなくて、成人してるよ。
《 冒険者ギルド 》は成人しかないと登録が出来ないからな。
オレは20歳で、妹は15歳な 」
???
「 口くちの悪い可愛い子ちゃんは成人なり立てか! 」
惷麗
「 聞いたか、マオ!
コイツ、僕の事を “ 可愛い子ちゃん ” って言ったぞ!
どうだよ、やっぱりエロいナンパ野郎じゃないか! 」
マオ
「 シュンシュン……。
“ 口くちの悪い ” を聞き流すなよ。
今からナンパする奴が相手に “ 口くちの悪い ” なんて言うか! 」
惷麗
「 ──それもそうか?
おい、コラ!
無ぶ礼れいで不ぶ躾しつけな冴えない箒ほうき頭あたま野郎!
良よくも可愛い僕に向かって、“ 口くちの悪い ” なんて悪わる口ぐちを言ってくれたな!
誠心誠意、真ま心ごころを込めて僕に謝罪しろ! 」
マオ
「 コラ、シュンシュン!
相手に喧嘩を売るんじゃない! 」
惷麗
「 僕はコイツに侮辱されたんだぞ。
此こ処こは怒って良いい筈だろ。
マオも可愛い妹が貶けなされたんだから、ちゃんと怒れよ 」
マオ
「 どの口くちが言うかな…… 」
???
「 君きみ達──、先輩冒険者に対して随分な態度ね。
失礼じゃないかな? 」
惷麗
「 くっ──、無駄にデカい胸を揺らしながら口くちを挟むんじゃない!
あっちへ行ってろ! 」
マオ
「 だから、シュンシュン!!
──世間知らずで礼儀知らずな妹で御免なさい!
男おとこ兄弟に囲まれて育ったから口く調ちょうが乱暴で──。
これからち・ゃ・ん・と・躾ていくから、今回は大おお目めに見てください! 」
胸のデカい女
「 ですって──。
どうするの、ゲイルト 」
ゲイルトと呼ばれた男
「 妹の尻しり拭ぬぐいは兄あにがしなければな。
妹の代かわりに殴られる覚悟は有るか? 」
マオ
「 ……………………シュンシュン、殴られてやれ 」
惷麗
「 はぁ?
何なんで僕が殴られないといけないんだ!
大だい体たい、殴るって何なんだよ。
冒険者ってのは暴力で解決させるのが好きなのか? 」
マオ
「 “ 好戦的な奴が多い ” って言ったろ。
オレを殴るのは構わないけど──、明日あしたの朝は怪物モンスターの巣窟で目を覚ます事になるけど良いいの? 」
ゲイルトと呼ばれた男
「 どういう事だ? 」
???
「 怪物モンスターの巣窟だって?
何なに言ってんだ、コイツは? 」
マオ
「 オレの所属してる冒険者パーティの名前は〈 Sサムシング・Gグレート 〉なんだ。
リーダーはマギタ魔法使いで転移魔法を使える。
オレは常つねに監視されていて、プライバシーってもんが無いも同然なんだ。
どんな理由であれ、オレが “ 殴られた ” って事をリーダーが知ったら──、明日あしたがアンタ等らの命めい日にちになるって事だよ 」
ゲイルトと呼ばれた男
「 あ・の・全身白ずくめのマギタ魔法使いがリーダーの〈 Sサムシング・Gグレート 〉だと?!
──ガオス,ホベアク,ケリナー、奴ヤツ等らには関わるな! 」
ガオス
「 はぁ?
何なんで急に? 」
ホベアク
「 おぃおぃ、こんな子供の言う事を真まに受けるのかよ? 」
ケリナー
「〈 Sサムシング・Gグレート 〉のマギタ魔法使いって確たしか──、“ 超越のトランセンド魔法使いマギタ ” って言われてなかったかしら?
マギタ魔法使いの間あいだでは、“ 絶対に関わったら駄目 ” って言われてる危険人物よ!! 」
マオ
「 マギタ魔法使いには危険視されてるのか……。
色いろ々いろとや・ら・か・し・て・た・もんな……。
妹が一方的に悪いんだけど、リーダーに免めんじて今回は大おお目めに見てくれないかな? 」
ゲイルトと呼ばれた男
「 ……………………良いいだろう。
今回の事は無かった事にしてやろう。
明あ日すが命めい日にちになるのは御免だからな 」
マオ
「 有あり難りがう──。
ほら、シュンシュンもち・ゃ・ん・と・謝れよ 」
惷麗
「 ………………………………………………悪かった…………フン! 」
マオ
「 シュンシュン!
態度が悪いぞ。
はぁ……………… 」
ゴーイングマイウェイなシュンシュンの態度に頭を悩ましていたら、受付嬢から呼ばれた。