✒ 続・怪物狩り 1
──*──*──*── 翌日
──*──*──*── フィールド
マオ
「 シュンシュン──、そっちに行ったぞ! 」
惷麗
「 よし来た!
封印解除──!!
現れ出でよ──、死乃人ぉ!! 」
シュンシュンは手に持っている召喚術士用の長い杖を器用に振り回すと、何処かで “ 聞いた事のある様な ” 台詞をノリノリで叫ぶ。
シュンシュンが杖の先っぽを地面を付けると、地面に沢山の陰陽陣が出現した。
黒色の不気味な陰陽陣からは、死体と闇呪術を使ってシュンシュンが作った悪趣味な死乃人が大量に現れた。
全身が真っ白で筋肉モリモリムキムキマッチョな容姿をしたのっぺらぼうだ。
腰巻きを身に付けて大事な部分を隠しているのは、良心の現れだと思いたい。
シュンシュンはボフラビット狩りを死乃人に任せる事にした様だ。
死乃人は死体だから、ビリビリしている一角が肉体に刺さったとしても感電死はしない。
握力も腕力も有るから、ボフラビットの息の根も簡単に止めれると考えたのかも知れないな。
死乃人を使えば、ボフラビットの20体くらい簡単に狩れるだろう。
セロが居てくれたら、睡眠魔法で深く眠らせて、“ キュッ ” と息の根を止めるんだけどな。
………………まぁ、セロが素直に睡眠魔法を使ってくれるとは限らないけどぉ──。
惷麗
「 マオ──、見ろよ!
ボフラビットを40体も狩ったぞ!
楽勝だな! 」
シュンシュンが嬉しそうに両手を振っている。
他のDランク冒険者から見たら、シュンシュンの能力は明らかに反則技だと思う。
シュンシュンは召喚術士だから、召喚した式神や死乃人に戦わせて、自分は高見の見物を決め込む側になるって事だ。
“ チート ” ってヤツだな。
マオ
「 40体は大量だな、シュンシュン。
よし──、テントに戻って1体ずつ額から一角を抜いて解体しよう 」
惷麗
「 マジかよ……。
40体もか? 」
マオ
「 当たり前だろ。
オレは足りない分のザザミカの葉を集めて来るから、シュンシュンは先にテントへ戻っててくれよ 」
惷麗
「 分かったよ……。
取り過ぎるんじゃなかったな…… 」
さっき迄、子供みたいにはしゃいでいたシュンシュンが嘘みたいに肩を落としてガッカリしたのは見なかった事にしとこう。
──*──*──*── 森の中
オレは1人で森の中へ入ると、ボフラビットの肉を包装する為に使うザザミカの葉を集める。
序でに気配を消して、昨日仕掛けた罠の様子を確認して回るけど、ノブラットもサーペビスも罠に掛かっていなかった。
未だ、1日目だもんな~~。
マオ
「 ──よし、これだけ有れば、包装に失敗しても十分足りるな。
テントに戻るか 」
森の中を歩いていると何処からか悲鳴が聞こえた。
他の冒険者も森の中で怪物を狩っていた筈だ。
冒険者の悲鳴かな?
マオ
「 仕方無いな……。
死んでも自己責任だけど、見捨てるのも目覚めが悪いもんな 」
オレは気配を消して、悲鳴が聞こえた場所へ向かって歩く。
悲鳴のした場所へ近付くに連れて、誰が戦闘中なのかが分かる。
マオ
「 助太刀してやるか。
戦ってる怪物は──、グマルモンかよ。
おかしいな……グマルモンって此方では生息してない筈だぞ。
まさか、あの川を泳いで渡って来たのか?? 」
疑問を感じつつも、オレは鞘から愛剣を引き抜いて構える。
興奮状態なのかグマルモンと対峙している冒険者は、かなり苦戦している様だ。
勇敢にもグマルモンと戦っている冒険者は2名だ。
1名は負傷しているのか痛みを堪えて踞っている。
地面が血で汚れているのをみると、他にも大量出血をしている冒険者も居るみたい──いや、3名は既に息絶えている様だ。
グマルモンの鋭い爪の攻撃を受けたんだと思う。
死体の一部が無いのは、グマルモンに噛られたからかな?
2体目は首と左腕が無い死体で、3体ん目は下半身が無い。
どうやら食欲旺盛なグマルモンみたいだ。
オレは重傷を負って踞っている冒険者に、マオキノから渡された体力回復薬を渡す事にした。
ポーチの中から体力回復薬を取り出して、負傷している冒険者の男に手渡す。
一体どんな意図で作ったのか分からないけど、セロが作った体力回復薬だ。
依存度が上がると “ ヤバい ” って事は、体力回復薬としての効果は大いに期待が出来ると思う。
抑だ、あのセロが効果の無い回復薬を態々用意する訳が無いんだ。
怪しさ爆発級の回復薬では有るけど、タダで渡すのは勿体無いから、冒険者には後で金貨1枚を支払ってもらうとしよう。
こういう事は、ちゃんとしとかないとな!
マオ
「 これを飲んだら戦闘が終わる迄、隠れてろ。
金貨1枚、支払ってもらうからな★ 」
負傷している冒険者
「 あ……あぁ……。
分かった…………感謝する…… 」
オレはグマルモンを相手に戦闘している2名の冒険者に加勢する為に動いたけど──、足を止めた。
何でかって?
冒険者達に襲い掛かっているグマルモンの背後には、怪我を負って血を流しているグマルモンの子供の姿が見えたからだ。
怯えた目で子グマルモンは、勇ましく果敢に冒険者に挑む親グマルモンの背中を見ている。
そんな姿を見てしまったら、冒険者達に助太刀する気が一瞬で消え失せた。
傷を負った子供を守る為に親が立ち塞がるのは、人間も怪物も同じって事だ。
子グマルモンが負っている傷は、どう見ても切り傷だ。
冒険者達が斬り付けた傷なんだろう。
どうやら子グマルモンは1体じゃなくて他にも居るみたいだ。
こういう時に人間の冒険者を助けないオレは、“ 人間は助ける価値が無い ” って強く感じてしまうんだよな。
熟嫌になる──。
オレは気配を消したまま2名の冒険者を気絶させた。
その後、セロに教えてもらった覇気を発して、グマルモンの戦意を喪失させた。
怯んだグマルモンには、苦手だけど回復魔法を掛けてやる。
大人しくなった親グマルモンが庇っている子供のグマルモンに近付いて、回復魔法を掛けて負っている傷を癒す。
因みに体力回復薬を使わないのは、どんな効果がグマルモンの子供に現れるか分からないからだ。
折角助けたのに体力回復薬が原因でどうにかなってしまったら目も当てられないからな。
マオ
「 ──よし、これで大丈夫だ。
もう1体だな 」
先に回復魔法を使った子グマルモンよりも深傷を負っている子グマルモンにも回復魔法を掛ける。
苦手な回復魔法だけど、何回も使って熟練度を上げていて良かったと思う。
熟練度が低ければ、この深傷を負わされた子グマルモンを助けられなかったかも知れないからだ。
マオ
「 ふぅ──。
息が安定して来たな。
傷口も癒えたし、栄養も有るものを食べれば元気になるな 」
オレは冒険者の死体を子グマルモンに喰べさせる事にした。
2体の死体から装備品と所持品を拝借──回収してから身ぐるみを丁寧に剥ぎ取る。
真っ裸にした死体を子グマルモンの前に置いてやる。
マオ
「 肉だけじゃ足りないかな?
野菜や果物も有った方が良いかな? 」
オレはポーチの中からマオキノが持たせてくれた新鮮な野菜と瑞々しい果物を取り出す。
農作業が大好きなマオキノが丹精と真心を込めて作ってくれた食材だから怪物にも美味い筈だ──と思いたい。
親グマルモンはオレの行動に戸惑っているみたいだ。
まぁ、当然だよな。
オレは親グマルモンに敵意が無い事を伝える事にした。
マオキノが持たせてくれたキノコンの欠片をポーチの中から取り出す。
このカラッカラに乾燥している高野豆腐みたいなキノコンの欠片に水を与えると──、何とマオキノに早変わりするんだ!
シュンシュンには内緒だ。
マオキノ:分身体
「 マオ様、如何なされましたかエリ? 」
マオ
「 マオキノに頼みが有るんだ。
このグマルモン親子を本来、生息している筈の森まで帰してあげてほしいんだ。
途中、冒険者達に襲われない様に護衛もしてもらえないかな? 」
マオキノ:分身体
「 御安い御用ですエリ!
グマルモンの親子を無事に本来の生息地へ送り届けますエリ 」
マオ
「 うん。
頼むよ、マオキノ。
襲って来た明らかに悪い冒険者達はマオキノの御飯にして良いからな 」
マオキノ:分身体
「 言質、有り難う御座いますエリ♥ 」
マオ
「 序でに、どうしてグマルモン親子が川を渡ってまで此方側に来たのか調べてくれないかな。
あっちの森で動物や怪物が平穏に暮らせてない様な状況だったら、マオキノの能力で問題を解決してあげれないかな? 」
マオキノ:分身体
「 マオ様ぁ~~!!
なんてお優しいですエリ!
分かりましたエリ。
向こうの森で何が起きているのか徹底的に調査しますエリ。
森に生息している動物や怪物が安心して暮らせる森に戻る様に尽力しますエリ!! 」
マオ
「 有り難うな、マオキノ。
じゃあ、グマルモン親子の事は頼んだよ。
オレはグマルモン親子を襲った冒険者達から事情聴取しないといけないから── 」
マオキノ:分身体
「 畏まりましたエリ 」
オレはグマルモン親子の事をマオキノに丸投げ──もとい、任せる事にした。
これでグマルモン親子の安全は完全に確保された事になる。
一件落着だな!
さてと──、オレは生き残った3名の冒険者達から話を聞かないとだ。
それはテントに戻ってからでも良いかな。
回復薬を手渡した冒険者の姿を探したけど、何処にも見当たらなかった。
まさか、1人で逃げたのか??
流石は冒険者だな。
オレは気絶させた2名の冒険者の足を掴んで、地面の上を引き摺りながらテントへ戻る事にした。




