第三章 42 決着
インドラは神竜の力を使って寸勁を放った。その寸勁は、神竜の力は衝撃の瞬間移動だ。アシュラはそれを見切った。だから、衝撃が来た時、その衝撃もアシュラが操っているオーラに滞留させた。
「インドラ。本気で来いよ。今のこの状態は適応してるから」
「アシュ。もう諦めてよ。私は、アシュを守りたいの」
「お互い肩を並べて歩けば良いじゃないか。お互いが守り合えばいいじゃないか」
「違うの。できないの。アシュは前線に立ったらダメだから!」
「奪われたらってことか。でも、そんなの強い奴は誰でもおんなじだろうよ」
アシュラは体を膨らませると小刻みに拍手して自身の周りを回っているオーラの滞留に拍手が起こした風と一緒に合体させて回した。
「インドラ。ゼロ距離で掛かって来いよ。俺の尻子玉を取ろうって言うならな」
「どうなっても、知らないよ」
インドラは分身を五人出現させて浮遊した。分身五人は、神龍と神竜の鱗を纏っていて大きく肺を膨らませた。
「咆哮か。さすがに、自殺行為だろう」
インドラはアシュラの血を吸収した時に、神龍と神竜が持つあらゆるシックスセンスが整理された。これは、アシュラの適応がインドラの内部から影響されていた証拠だった。その影響はインドラの眼にも間違いなく影響を与えていた。インドラは神龍が持っていた希少なシックスセンスを強化した。眼のシックスセンスを内部に使って。その影響は計り知れず、インドラの壊れかけていた精神を壊すには、アシュラへの愛を忘れさせるには十分だった。インドラが見つけた神龍の希少なシックスセンスーーーーー
「シックスセンスの強化」
神龍に何故、シックスセンスの強化を行うシックスセンスを持ったものをたくさん、食べさせなかったか。これには、いくつか理由がある。一つ、そもそも、そのシックスセンスを持つものがそんなにいないとから。一つ、そもそも、野生動物にそのような力を持ったものがいなかったから。一つ、希少なシックスセンスは龍の血に耐えれなくなった人間を龍が食べたから獲得したものだから。故に希少なのだ。
インドラは神龍の力の誘惑に負けて、眼のシックスセンスを強化することで、新たなステージに立つと同時に、アシュラへの愛を忘れてしまうほど、デストロイへの殺意を増幅させてしまったのだ。
インドラがデストロイへの殺意を増幅させた理由。それはーーーー
分身五人による炎龍、水龍、雷龍、黒龍、白龍の咆哮を神竜の力の衝撃の瞬間移動をしてアシュラに放った。アシュラは皮一枚でギリギリ全て力の流れを変えて滞留させた。だが、アシュラの視界が塞がった。
「そろそろ、反撃するか」
アシュラは蓄積していたインドラの攻撃を操ってインドラに飛ばした。インドラは黒炎でそれを燃やしきった。
「パワーアップ!?そんなことをしたら、もっと、具体的に未来を見てしまうだろう!」
アシュラはインドラが破滅の道に進んでしまったことに、思わず叫んだ。強烈な焦燥感に駆られた。
「精神が、持つはずがない!」
アシュラはインドラを見た。インドラは先ほどよりもより顔がぐちゃぐちゃでオーラが禍々しく荒れていた。そして、何よりも危なかったのは赤色に輝く眼に影が差していた。星の紋様だけが輝いていたのだ。その星の紋様は、まるで、赤色の星が別の星と重なって見えなくなる星食をイメージさせた。
「星食。私を次のステージに連れて行ってくれる眼だよ。激情を増幅させる眼でもあるけどね」
アシュラはすぐにインドラを眠らせなければと瞬間移動をしようとした。だが、その瞬間にインドラの眼からオーラが放たれた。それは、今のアシュラの脳の処理速度、タキサイキア現象により映像がゆっくりと流れる状態でも見切ることができない速さだった。アシュラは重力反転で空に勢いよく引かれてしまった。
マズイマズイマズイマズイ。
アシュラは遅れながらもその力の流れを変えて滞留させようとするとインドラにより鳩尾に強い衝撃を与えられた。アシュラは力の流れを変えるよりも早く瞬間移動で一度逃げた方が得策だと判断したため、瞬間移動をしようとした。だが、インドラのアシュラへの鳩尾は二段構えだった。アシュラの体に電流が走った。アシュラは歯を食いしばった。
「まだまだ、行くよ。アシュは耐久直が高いからね」
インドラは雷龍の力で雷を纏った状態で寸勁を放ち、衝撃の瞬間移動をしていたのだ。インドラは続け様に、今度は右手に左手を覆って両手で振り被って一発放った。
「ーーーー」
アシュラは意識が一瞬飛んだ。インドラの神龍と神竜の鱗を纏った攻撃は電撃により、筋肉の弛緩が起こったことで倍増していた。アシュラのお腹が貫通するほどの威力である。インドラはそれほどまでに、アシュラへの愛を忘れていた。だが、実際にはアシュラのお腹を貫通しなかった。お腹を貫通するほどの強い衝撃を受けた瞬間に、外部から力が働いたから。
『咲け』
ミケの仕掛けだった。ミケが大事な人のみに行っている仕掛けだ。ミケが作った作物を食べることにより、発動する一度だけ体を全回復させる仕掛けだ。
アシュラはこのおかげで体が回復してインドラの攻撃から逃げるための瞬間移動を行うことができた。
「はあ。ギリギリ。使うしかない。相当無茶してるのに、更に無茶を重ねるしかないのか。インドラに勝って、インドラと話して、安心させるには安い代償かもな」
アシュラが今日、適応して来たものは、セツナの神龍の血、インドラの神龍と神竜の血、アシュラの神龍の血がなくなったことへの対処、眼で体が壊れないようにさせるための隈取、タキサイキア現象だ。そして、適応させようとしているものは、インドラの眼のシックスセンス。意識認識の拡大をしたものは、刻印の延長、力の流れを変えること。既に、相当なことをして無理をしている。インドラの攻撃を受けながら。既に十分以上の疲労を感じている。そんな状態で新たなことを適応させようとしていた。
「『身壊』」
ニケがゼウス相手にやった河童の禁忌の技。アシュラは肉体の強化を行った。ハイスピードの血液循環に体を耐えるように適応させたのだ。
「インドラの攻撃はあの眼になってから、質も変わったが、何より、優しさが無くなった。精神が崩壊して来ている」
インドラは空間を歪ませてアシュラの前に瞬間移動をした。
「最速で決めるよ。どうやら、それは長くなれば長くなるほど、厄介みたいだから」
「っ!?」
違和感。
アシュラは二回目の違和感を感じた。一回目はインドラの足元に寝転んで瞬間移動をした時にすぐに、蹴られたこと。それからも、違和感はあったが、先ほどのインドラの発言は強烈に違和感を抱くものだった。『身壊』の仕組みを知っているとしてもおかしかった。
「瞬間移動をして俺を見る前から言った。つまり、正確に、ホントに起こる極々短時間の未来を見ながら戦っているのか⁉」
「今は、星食。見ているんじゃない。体感したような感覚を得ているの」
「どんだけだよ⁉」
アシュラは『身壊』を最大限できるまで時間を稼ぐことにした。血液の流れをハイスピードにするのも徐々に慣らす必要があるのだ。
アシュラは高速で浮遊して飛んだ。インドラに背中を向けないように飛びながら体を膨らませて何度も拍手した。インドラはアシュラの体が膨らむたびに黒炎を神竜の力を使ってゼロ距離で飛ばすしかできなかった。その黒炎はアシュラと当たると同時に分解された。
「私が体感した未来よりも早く『身壊』に適応してる?」
インドラは焦燥感に駆られた。そして、アシュラを追うことを諦めた。
「厄介な状態で決めきらないと」
インドラは何度やってもアシュラに眠らされる未来までを見ていた。だから、何度も別のアプローチを試した未来を見たがダメだった。だから、一番最善の未来を試していた。
「アシュを焦らせれば焦らせるほど私の望む未来に近づく」
アシュラは焦れば焦るほど、視界が塞がりやすかった。それが、インドラの出した結論だ。視界が塞がると言っても少ししか塞がらないのだが。インドラは眼にオーラを溜めて待ち構えることにした。
「追って来ない?」
アシュラはインドラが追って来なかったため、自分のオーラを滞留させて体の周りをぐるんぐるんと螺旋回転させて回させた。そして、『身壊』に慣れた時、インドラの前に体を膨らませた状態で瞬間移動をした。
「インドラ。最終決戦だ。ちゃんと、話し合おう」
「デストロイ!」
インドラは更に眼のシックスセンスを強めていた。そして、神竜の力を使ってオーラの量を増幅して質を上げていた。そのオーラは禍々しく荒れていて、インドラの精神状態をそのまま表しているかのうようだった。
アシュラは手の甲を背中の後ろで合わせてインドラを見て微笑んだ。インドラは星を三つずらして重ねた紋様を刻んだ瞳でアシュラを凝視した。
アシュラに風が吹いた。力が抜けた。
「第一の領域」
ニケがアシュラとインドラをも含めてオーラを纏えない一番目の領域に入れた。アシュラとインドラは肉体の限界はもう来ていた。動けていたのはオーラを纏っていただけ。だから、二人とも倒れて眠った。ニケは裸のまま倒れて眠った二人を見て涙を流していた。そして、アシュラに近づいて抱きしめた。
「ごめん。アシュ。ママは、何もできなかった。ごめん。ごめんね。ごめんね。・・・」
ニケはアシュラに何度も謝り続けた。




