第三章 32 オラが怒られるところだったんじゃぜえ。
「よしっ!親父たちに話は着けたんじゃぜえ。シキラシ。アシュを両親に紹介じゃ!」
シキラシはエルルの言葉で余計に恥ずかしくなり、アシュラにキスを続けた。
「フフフ。どうしましょうか。ノコが皆を送りましょうか?」
「そうじゃな。オラは先に行って来る。ところで、シキラシとアシュはどこじゃ?」
「やっぱり、中々の性格をしているわ」
ニケはエルルがわざと言ったことに呆れた。エルルの言葉でシキラシは更に恥ずかしくなってアシュラにキスを続けていた。正直、ニケもシキラシの思考回路は分からないため謎だが、シキラシは恥ずかしくなるとアシュとキスをするという流れを当然のものとみなしている。だが、それを理解していても未だに毎回、必死に我慢している者がいる。
「アシュ、アシュ、アシュ・・・」
「ギキッキッキッキ。それじゃあ、オラは言ってくる」
エルルは豪快に笑うと大ジャンプして移動した。
「中々の性格だわ。ノコ。じゃあ、早速連れってて」
「でも、シキラシとアシュを待ってあげたいです」
「だって、サウルス」
「ぼ、僕は、今日はもう諦めてるよ。その代わり、シキラシが寝てからアシュを独り占めするんだ」
「それは、厳しいかな。ニケも今日のアシュの摂取量が足りていないから」
「じゃあ、僕はシキラシには悪いけど、アシュを今、貰うしかないね」
サウルスは寝転んでずっとキスをしているシキラシを引き離すと放心状態のシキラシを抱っこしたまま、ニケに預けた。そして、まだ、寝転んでいるアシュラをしゃがん持ち上げるとアシュラは少し放心状態だった。
「アシュ。どうしたの?」
「エルルがシキラシをからかった時、俺の理解を超えた行動があった。エルルの言葉に反応してシキラシが喋りそうだったから、俺はようやく息継ぎができると思って口を開けて離れようとしたら、シキラシは離れずに言葉が詰まっててそれで・・・」
「なるほど。お子様キスじゃなくなってしまったのか。なら、僕が忘れさせてあげる」
「は?」
「僕が塗り替えて上げよう。アシュはちゃんと僕の気持ちを知っているからね。ドキドキがきっと上書きされるよ」
サウルスは勢いのままアシュラにキスをしようとした。ニケが走って来ているのを感じたが無視した。サウルスはアシュラも引き寄せていよいよキスができそうになった時、ニケに後ろから肩を掴まれた。
「っ⁉」
サウルスはニケの静止を振り切ってアシュにキスをした。初キスだ。サウルスはここまでは、ずっと心の準備ができていた。だが、そこからは、まだ・・・。
「やっぱり。サウルスにそこまでする覚悟、違うな、心の余裕は無かったか」
「うっ、うっ」
「うん。よしよし。じゃあ、行くよ」
ニケはシキラシを抱っこして、サウルスは半泣きでアシュラを抱っこしてノコに乗った。
「フフフ。では、行きますか」
ノコは木をすり抜けて森をすり抜けて行ってやがて、視界いっぱいに大きな生物たちがいる場所へ、ノコやエルルよりも遥かに大きいツチノコとカエルがいる村へ到達した。
「これは、想像してたより、大きいわね」
「うん。でも、おいらたち座敷童の一族は普通の人間と変わらないよ」
「まあ、そこは心配してないんだけど、問題はカエルとツチノコが凄く大きいこと。ねえ、ノコ。普段、何を食べてるの?」
「ノコたちツチノコもエルルたちカエルも小食ですよ。その代わり、刺激が強いものを食べてエネルギーをたくさん得ています」
「だから、激辛キュウリをおいしそうに食っていたわけね」
「そういうことです」
「おいらたちはよく、肉を食ってるんだ。ノコたちツチノコと協力してね」
「へえ。良いじゃん」
ニケは抱っこしているシキラシの背中を優しく撫でた。シキラシは嬉しそうに「てへへ」と笑った。一方、アシュラを抱っこしているサウルスはまだ、恥ずかしがっていてアシュラのことをちゃんと見れていなかった。ちらちらと横目でアシュラを見ていた。アシュラはというと疲れて寝ていた。
「サウルス。そろそろアシュを起こして頂戴」
「えっ⁉僕が?」
「サウルスが抱っこしてるじゃん」
「うぅー。アシュ。起きて」
サウルスはわざと胸にアシュラの顔を埋めて話し掛けた。そうして、アシュラが呼吸できなくなって溺れて目が覚めた。
「ぷはっ。はあ、はあ」
アシュラを持ち上げて顔を見た。やはり、恥ずかしいが見ないのも嫌だった。
「やっと、起きた。着いたよ、シキラシたちの村に」
「そうか。・・・サウルス。どうかした?」
サウルスは思い出して顔を真っ赤にさせた。そして、アシュラが「確か・・・」と喋り出した時に恥ずかしさがマックスになってアシュラが喋る内容を聞きたくなくて口を口で塞いだ。キスをしたのだ。
ああ、シキラシはこういう気持ちだったんだ。
サウルスはシキラシの気持ちに共感できつつもやはり、恥ずかしかった。アシュラはいきなりだったため、体を後ろに反らしたが、サウルスが抱っこしているため逃げ場がなかった。
「おいえうえ!」
アシュラは必死にどいてくれ!と叫んでいたが口が塞がっているためその声ははっきりと聞こえなかった。サウルスはそんな声など聞こえていないほど、恥ずかしくなっていて、やがて、「あわわっあ、ぼっぼくは」などとうわ言を呟くようになり、お互いの口が動いた瞬間にアシュラの舌が絡まってとろけて来て、頭に靄が掛かって倒れた。アシュラは顎だけはしっかり引いて受け身を取りながら、倒れて来るサウルスをしっかりと抱きしめた。
「はあ、やっと」
アシュラは安堵のため息を吐いて、サウルスに確認しようとしたことなど忘れた。ニケとノコはそんなサウルスとアシュラを見て、少々呆れて笑った。
「ニケ。サウルスってシキラシより初心なのですか?」
「みたいね。ちゃんと大人の思考力はあるんだけど、恋愛とかになるとね。でも、情けないわ」
「ニケはアシュがこんなことになってるのは、どう思ってるのですか?」
「うーん。凄く複雑。アシュが嫌がっている素振りがあったら、サウルスに無理やり止めさせるけど、案外乗り気だから。アシュも。それに、この状況が普通じゃないってことを自覚してるのもママがアシュやアシュを好きな人たちを止めてない要因。そして、一番の要因はちゃんとアシュも恥ずかしがってはいるってこと。悩ましい」
「なるほど。複雑ですね」
「そうなの。さてと、アシュ。サウルスを連れて一緒に来て」
「ん?おっ、おう」
「じゃあ、行こう。シキラシ行くよ」
「うん。でも、待って、おいらも歩く」
ニケがアシュラに背中を向けようとした時、慌ててシキラシは言った。まだ、アシュラの顔を見るのがやはり、恥ずかしいのだ。ニケはそんな可愛らしい態度を取っているシキラシに微笑ましく思いながら手を握って歩き出した。
「可愛いです」
「ノコもやっぱり中々の性格だわ」
「フフフ」
「っととと。エルルはどこに行ったんだ?」
「エルルはですね、この先にいますよ。乗って下さい」
全員がノコの上に乗るとノコはツチノコやカエル、人たちを次々にすり抜けてやがて、大きく開いたスペースに辿り着くと奥にツチノコ二匹とカエル三匹、人が二人いた。
「見えましたね」
「おかえり。ノコ、シキラシ。それに、アシュたち」
「ただいまです。母さん」
「ん?シキラシの様子が聞いてた様子と違いますよ」
「父さんまでからかわないであげてください」
「ん、そうか?」
「ですです」
「「「ギキッキッキッキ」」」
ああ、親子だなあ。
ニケとアシュラ、移動中に介抱されて元気になったサウルスは同時に思った。ツチノコ、カエルは共に顔は皆似ているが区別は着けれる。だから、三匹のツチノコとカエルを見た時も、親子だなあと思った。だが、カエルたちの笑い声を聞いた時、更に強く紛れもなく親子だと感じたのだ。
「あっ、ママ、パパ!」
すると、シキラシがカエルの奥からやって来た母親と父親を見つけると走って駆け寄った。
「あの子だね。アシュは。シキラシ。どこまでしたの?」
「ママまでからかわないでよっ!」
「はいはい」
シキラシは母親をグーで何度も叩いて不満を態度に表した。母親と父親はその様子を微笑んで見ると母親はシキラシを抱っこして父親と一緒にニケとサウルスとアシュラの前まで歩いた。
「ようこそ。アナザーフロンティアへ。私がシキラシの父のラッシーです」
「シキです」
「どうも。ニケだよ」
「僕はサウルス。アシュと将来結ばれるらしいよ」
アシュラとニケはサウルスのメンタルがすっかり回復をしていることに思わず呆れてため息を吐いた。
「俺はアシュラ。フロンティアの現実世界の運命の人らしい」
「ああ。知っているさ。アシュ。君のことはね。私たちはずっと、待っていたのだから」
「シキラシが言ったことはホントだったんだな」
「そうだとも。私たちは君が生まれるために色々と努力をしたのだからね」
ニケは少し熟考した。
アシュが生まれるために色々とテコ入れをした。つまり、ニケたちの遺伝子が絶えず生き残るように介入をしていたことになる。シキラシの年齢を考えるとラッシーとシキとはそう年齢は変わらない。ここ最近で介入をしたとすれば、デストロイの襲撃、父さんが死んだとき。じゃあ、その時に一番介入するべきはニケかミケ。でも、デストロイに対抗できたのはゼウスと父さんだけ。あの時、一番の進化を遂げていたのは父さん。もし、座敷童の一族が介入していたなら、ニケたちが分からなかった父さんの急成長の理由に説明を付けれる。
「ラッシーたちは父さんに力を与えたの?」
「ああ。私は、私とシキはツリトに力を与えた。力及ばず死んでしまったがね」
「何が原因だったの?」
「それは、カシャ。君の母さんとゼウスも知っている。ツリトが死んでしまったのは、私たちがリスク回避するための未来を読み切れなかったからだ」
「カエルの未来予知も天狗の未来予知が万能ではないように万能ではないのね」
「ああ。カエルと天狗では根本的に違う。天狗は明るい未来だけを。カエルは簡単に言うと本人が望まない死に至るまでの未来しか見れない。根本的なところがホントに違うんだ」
「そう・・・」
「それって」
ニケがそうなのね、と言おうとした時、アシュラが声を張り上げた。それに、驚いて全員の視線がアシュラに集まった。サウルスとニケは困惑していたが、アシュラが言わんとすることをすぐに察して息を呑んだ。シキラシは体をピクッとして母をグーで何度も叩くのを止めて、恐る恐る振り向いた。ラッシーとシキはアシュラの余りの聡い頭に憐れむように悲しそうな顔をして、ツチノコの親子はあちゃあという感じの顔をして、カエルの親子はエルルを少し睨んだ。
「エルルは俺が死ぬ未来しか見ていないってことだよな。確か、インドラが死ぬ未来では間違いなく星は滅びていた。って言ってたもんな。他にも、俺がインドラを救える可能性を聞いたら、焦るんじゃないぞって。つまり、インドラが死なない未来も見ていたってことだ」
「ギキッキッキッキッキ。じゃが、オラはこうも言った。先祖からのメッセージを聞けとのお。魂の形を理解しろとものお。つまり、望まぬ死を迎える未来に靄が掛かったんじゃ。アシュがもし、魂の形を理解した場合は。それに、今日、アシュはシキラシから二つの力を付与されたのお。じゃけえ、自信を持つんじゃ。それとも、不安かあ?」
沈黙が流れた。皆がアシュラの返答を待っていた。アシュラは下を向いて笑った。空元気を魅せた。
「否。こんだけの力を授けられて不安なんてないさ。悪い。ついつい悲観的になっちゃってたわ。そもそも俺が描きたいように描く未来は誰にも邪魔させないって決めてるから」
「ギキッキッキッキ。オラが怒られるところだったんじゃぜえ。・・・痛っ⁉」
エルルの父さんと母さんが舌でエルルの顔を叩いてエルルが痛がる素振りを見せて初めて急に作られた暗い雰囲気が明るい雰囲気に変わった。




