第三章 29 三大生物
「来て」
アシュラとサウルスとニケはツチノコに跳び乗って割れた空間の中に入った。そして、辿り着いた先に待っていたのはーーーーー
「「「綺麗」」」
雲一つない青空と開けた土地だった。その光景はとても、幻想的で感動するものだった。
「とりあえず、そのキュウリをノコに上げてくれるかな」
アシュラはニケからキュウリを受け取るとマッシュルームヘアの同じぐらいの身長の子供に手渡した。
「はい」
「ありがと」
「ねえ。名前は?」
「おいらはシキラシ。こんな、見た目だけど、女の子だよ」
「ホントだ」
アシュラは顔を近付けて観察した。シキラシは顔を急激に赤く染めてあたふたした。それを必死に誤魔化そうとして、ノコに話し掛けた。
「ノコ。お食べ」
「照れちゃって、シキラシ。可愛い」
シキラシの顔は照れて真っ赤になっていたが、前髪で見えにくくなっていた。だが、それよりも驚くべきことは、ツチノコだ。先端に、顔に近づくにつれて太い蛇のような巨大生物が話したことだ。その声は若干高い声をしていた。
「ねえ、前髪切ったら?」
「なっ、何で⁉」
「折角の可愛い顔が勿体ない」
アシュラはナチュラルにシキラシの髪に触れておでこが見えるように髪の毛を勝手に分けた。
「かっ、勝手に触るな」
シキラシは顔を真っ赤にして尻もちを着いた。アシュラは不思議そうにしながら、ニケとサウルスを見た。ニケはニヤニヤとサウルスは真剣な顔をしていた。
「ねえ、ニケ。シキラシは・・・」
「うん。あの反応は、人見知りか脈ありかのどちらかね。でも、脈ありの方に、私の中では天秤が傾いてるよ」
「そう言うことか」
アシュラはシキラシの手を引いて立つのを手伝った。
「あ、ありがと」
「うん。どういたしまして」
ツチノコの頭の上に立っていたシキラシはツチノコの前にキュウリを投げた。ツチノコは大きく口を開けたためアシュラたちは重心が崩れてこけそうになったがサウルスはニケが、シキラシはアシュラが浮遊して持ち上げた。
「さて、俺たちを呼んだ理由を教えてもらおうか?」
「ーーーー何で今⁉」
シキラシはアシュラに触れられたことに固まってからすぐに気を取り直して顔を真っ赤にしてジタバタさせた。
「いや、逃げ場がないから」
アシュラは後ろから耳に息を吹きかけた。シキラシは細かに震えてとうとう、完熟トマトほど顔を真っ赤にさせた。それを見ていたニケとサウルスは思わず声が揃った。
「「やっぱり、アシュは良い性格をしてる」」
「だって、初対面でこんなにもからかえるんだから」
「思えば、僕も結構からかわれたな」
二人がしみじみとアシュラのことを見ている間にもシキラシはアシュラにからかわれ続けてやがて、降りた。
「おっ、おいらがアシュを呼んだのはそっちの世界の運命の人、後に英雄になってもらわないと困るからだよっ!」
沸騰したシキラシはそう叫ぶとその場で崩れ落ちた。だから、アシュラは確認するために、ツチノコに聞いた。
「ホントなの、ノコ?」
「あら、もう名前を憶えてくれたの?嬉しいわあ。そうよ。ノコも詳しくは知らないけどエルルがそう、言ってたわ。だから、最近、ノコたちはフロンティアでアシュを探してたの」
「ありがとう、ノコ」
「で、シキラシ。俺たちに何をしてくれるんだ?」
「うぅぅ。疲れた」
アシュラはしゃがんでシキラシの顔を真正面から見つめた。シキラシは、顔を赤くして目を逸らした。
「それは、そのうち、来るよ」
「じゃあ、それまで、何する?」
アシュラはわざとに顔を近付けた。新鮮な反応で楽しんでいた。シキラシはアシュラの肩を掴んで距離を取ろうとしたが、アシュラはお構いなしだった。
「うーん。ノコに走ってもらう?」
「いいね。じゃあ」
アシュラはシキラシを抱きしめて座った。シキラシは当然バタバタして抵抗したがアシュラは放さなかった。その様子を微笑ましく見ていた二人も座った。
「ねえ、サウルス。ニケの上に座る?」
「何で?」
「だって、寂しいんでしょう?」
「フン!」
サウルスは顔を横に向けるとアシュラを抱きしめに走ろうとした時、ニケに後ろから抱き着かれた。
「今の二人に入って行くのは野暮でしょ」
「放して」
「行きます」
ツチノコのノコの高い声が響いた。そして、景色が一瞬で変わった。だが、不思議なことに風を感じなかった。
「シキラシ。これも?」
「うん。ノコの、ツチノコの力だよ」
「速いな」
「これでも、遅い方なんだよ。だって、ノコはまだ、二歳なんだから」
「は?」
「二歳?」
「俺も、もうそろそろで二歳だけど・・・」
「嘘じゃないよ!おいらも二歳だし」
アシュラはシキラシの胸を揉んだ。まだ。平たいが弾力はある。シキラシは体が一瞬ビクッとしたが、すぐに振り向いてアシュラを睨んだ。
「ホントに嘘じゃないんだから!」
「おっ、おう」
「信じてくれたならいいけど・・・、ねえ、もっとくっついて良い?」
「ん?」
「くっつくよ」
シキラシはアシュラに正面から抱き着いた。アシュラは急な態度の変化に驚いた。だから、
「ノコ。どゆこと?」
「おんなじサイズの子とは普段、全然会わないの。それに、知っちゃったから」
「何を?」
「そ」「ダメッ!」
「ごめんごめん。恥ずかしかったね」
「全然、恥ずかしいことじゃないもん。何なら、証明してあげるっ!」
「何を意地になって・・・」
シキラシは躊躇なくアシュラにキスをした。アシュラは突然の不意打ちにさすがに照れた。
「意地になってなんかない。いずれ起きるかもしれないことを先にしてるだけだから」
「それは・・・」
開けた土地をずっと這って走っていたノコが急に止まった。気が付けば目の前には森が広がっていた。ノコは一回だけ跳ねると木をすり抜けてまた、這って走った。
「すげえ。これも、フロンティアで遭遇出来ない一つの理由なのか?」
「うん。でも、フロンティアではこれに加えて透明になって、気配も消してるの」
「へえ。これで、二歳なんだもんなあ」
「まだ、疑ってる?」
「疑ってない。疑ってない」
「むう、ホント?」
シキラシは前髪で隠れた瞳でアシュラを見つめた。顔は間違いなく赤くなっているのだが先ほどからの積極性にアシュラは照れていて思わず目を逸らした。
「やっぱり、疑ってる」
シキラシはアシュラの顔を両手で掴んでもう一度キスをした。アシュラは思わず背中を倒して寝転んだ。尚もシキラシはキスをしていたため、サウルスは我慢の限界に達した。ニケに拘束されたいたが、お構いなしにサウルスだけ瞬間移動をした。
「アシュから離れなさい」
サウルスはシキラシを無理やり抱いてアシュラから引き離した。
「ノコ。あなたたちは何を知ったの?」
ノコは丁度、森を抜けて再び開けた土地が視界いっぱいに広がったところで止まった。そして、サウルスたちの視界は急に暗くなった。
「ようやく、来ましたね」
「もっ、もうちょっと、アシュと楽しみたかったのに・・・」
ドンッ!
不思議と地面の土は舞い上がらなかった。サウルスたちは顔を上げた。そこにいたのは巨大なカエルだった。
「エルル。何してたの?エルルのせいで、おっ、おいら、ちょっとおかしく・・・」
「ノリノリでしたよ」
「ギキッ。先走ったんじゃろ。まあ、どの道、会いに行く予定じゃったが。その様子じゃと、ホントにしたんじゃな」
「エルルは、知ってたの?じゃあ、何で、すぐに来てくれなかったのさ!」
「そりゃ、オラは日課の水浴びをせんと行かんかったじゃけえ」
ツチノコと同じぐらい大きいカエルがツチノコとシキラシと仲良く話していた。ツチノコから降りたニケとサウルスの太ももに座ったアシュラはその様子に呆気に取られていた。
「ねえ、ニケたちはここを見たこともないし、聞いたこともない。ここは、どういうところなの?」
「ここは、フロンティアが別れる前に弱者の逃げる場所となったところじゃ。そっちの世界の初めての河童カラワラに助けられての。名付けてアナザーフロンティア。オラたちはこのアナザーフロンティアの三大生物と呼ばれておる」
「「「三大生物?」」」
「ノコたちツチノコは現実世界の情報を得ることを主として」
「オラたちカエルは未来を占い」
「そして、おいらたち座敷童の一族は星の安寧を保つためにフロンティアのキーパーソンに力を与える。だから、おいらたちが三大生物なのさ。このアナザーフロンティアでね」
シキラシはツチノコとカエルの横で両手を開いて高々に語った。アシュラたちはその様子を見てただただ、シキラシを
「「「可愛い」」」
と思った。そして、三大生物の役割を聞いて確信をした。
「俺とインドラのシックスセンスに座敷童が一枚噛んでいるな。そして、俺には、インドラを止めるための力が足りない」
「ギキッ、ご名答じゃあ」
エルルは豪快に笑って満足そうに微笑んだ。だが、アシュラはどうしても聞きたいことがあった。確信はしているが、確かめたかった。
「ところで、エルルも二歳?」
「ん?そうじゃが?」
アシュラは深呼吸をした。
「いくらなんでも、お前らデカすぎだっ!」
ニケとサウルスはアシュラの突然の切り替えしにに思わず噴き出していた。




