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TSURITOー繋げた未来  作者: カバの牢獄
第三章 愛の紡ぐ未来
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第三章 26 アシュは良い性格をしてる。

「何でよっ!何で僕は連れてってくれないのさ!」


 超人の村を出てニケがアシュラとインドラを連れて天空に戻ろうとした時、サウルスが強く抗議した。サウルスは瞬間移動ができないため、空に浮かぶ土地、天空に行くにはニケの助けは必須なのだ。時刻はまだ、昼なので全然いてもよかったのだが、昨日のシューンの疲れようを見ると早く戻った方が良いと判断したのだ。


「だって、竜だし。それに、ちゃんと馴染めるの?」

「ムッ。でもでも、アシュさえ抱っこできれば・・・」

「ちゃんと、一週間に一回ぐらいは会いに来てあげるから。ねえ?」

「サウルス。もしかして、竜の村にいるのが辛いの?」

「うぐっ⁉」

「じゃあ、サウルス義姉さんは河童の村に住めばいいよ」

「別に、竜の村には神竜がいるもん!」

「そっかあ。じゃあ、河童の村でミケと楽しく暮らしな」

「神竜がいるもん!」

「分かったから。じゃあ、ミケ、お願いね」

「うん。一週間に一回じゃなくても全然構わないよ」


 ニケは眠っているアシュラとインドラを二人とも豪快に抱っこしながら瞬間移動をして天空に戻った。




「さてと、アシュ。インドラのことを頼んだよ」


 オーラを使い果たして眠ってしまったアシュラと単純に疲れて眠ってしまったインドラを布団に寝かせるとニケはシューンの元へ瞬間移動をした。


「うん。こりゃあ、疲れることをしてるね」


 シューンは龍王たちと間違いなく遊んでいる。ただ、おままごととしながらもかなり一方的にダメージを受けていた。


「じゃあ、今度はミラ、ウォー。三人で必殺技だっ!」

「ですです」「うんっ!」


 ウォーは水鏡を目の前とシューンの前に出現させるとミラは水鏡に灰色の炎を投げ入れた。灰色の炎はすぐに目くらましに変わりシューンの視界を塞いだ。そこで、セツナが肺を大きく膨らませると炎と水を融合した咆哮、氷の咆哮を放った。シューンはそれを目の前の空気を壁にするイメージをして防いだ。


「じゃあ、次はクリとっ!」

「クロコクの合体技だね!」


 今度はクリとクロコクが同時に白龍の咆哮と黒龍の咆哮を放った。と絶え間なくシューンに攻撃していた。まだ、五歳とはいえ、シックスセンスに目覚め龍の力を扱えるようになって来ると試してみたいという好奇心を抑えられないし、実際にやって見ると楽しいというのがあるのだろう。子供と言うのは時に残酷とは言うが、ニケはさすがに可哀想だと思って間に入ることにした。


「第二の領域、展開」


 ニケはシューンと龍王たちを自身が作った領域に入れた。ニケは一歩だけ踏み出した。まずは、炎水龍王のセツナだ。ニケは一歩踏み出すだけでセツナの目の前に現れててセツナを抱っこした。


「一人目」


 そして、すぐ隣にミケとウォーが手をと触れる距離にいたがもう一歩踏み出してウォーの前に現れた。ニケはウォーも捕まえて抱っこした。


「二人目」


 ニケはもう一歩踏み出した。今度はシューンの前に現れた。


「二人をよろしく」


 ニケは軽く投げてシューンに預けるともう一歩踏み出した。今度はミラを捕まえて抱っこした。


「三人目」


 ニケはもう一歩踏み出した。シックスセンスを使えないことに戸惑っていたナリを捕まえて抱っこした。


「四人目」


 ニケはもう一歩踏み出してシューンにミラとナリを預けた。そして、残っている黒龍王と白龍王の二人を見た。二人はお互いに抱き合って怯えていた。ニケは一歩踏み出した。


「これで、五六人目」


 ニケは二人を同時に抱っこすると一歩踏み出してシューンの元に移動した。


「皆、シューンが優しいからって、ちょっと調子に乗りすぎね」


 ニケは普通に笑っていたが、元々、三白眼で目付きが悪いため龍王たちは身を寄せ合って「キャー!」と叫んだ。




「シューン。あんな一方的にやられっぱなしだったら、体力がいくらあっても足りないでしょ?」


 神龍の家に戻ったニケはシューンが一方的に攻撃を食らっていた理由を問い詰めた。龍王たちはアシュラとインドラの元に駆け寄り頬をツンツンして遊んでいた。


「俺様は二日ぐらいなら耐えられると思って」

「二日ぐらいなら、ね。でも、二日ぐらいを耐えられたとしても、龍王たちは味を占めてまたやりたいって言って来るよ、きっと」

「うぐっ」

「気付いたようね。良いこと、次からはちゃんと先のことを考えて行動すること。でないと、シューン。もっと強くなれないよ」

「おっ、おう」

「分かったら、いいわ。でも、あの子たち、ホント元気ね」

「だろ」


 ニケたちは龍王たちがアシュラとインドラを交互に抱っこして遊んでいるのを微笑ましく見ていた。


「アシュがいつ喋り出すかが見ものね」

「それって、やっぱり、ホントなのか?」

「まあ、信じられないだろうけど、ホントよ。アシュは多分、良い性格をしてるから、一番皆が油断するタイミングで話し始めると思うのよ」

「そこまで、精神的に成長してるのか。恐ろしいな」


 龍王たちは今度は指を握って貰おうと人差し指を突っ込んだり抜いたりしていた。アシュラとインドラの両手で四人が遊んでいてインドラの顔を上からセツナが覗いていて、アシュラの顔を上からウォーが覗いていた。


「やっぱり、アシュは表情が芳しくないのです。インドラの笑い声だけが聞えて面白くないのです」

「セツナもアシュは諦めた。今日はきっとダメな日なのよ」


 ウォーはジーと見ていた表情から変顔もしてみた。だが、中々笑わなかったため、両手でアシュラの口角を無理やり上げた。


「むう、目が笑ってないのです。手強いですね」


 ウォーは目を見開いてアシュラの瞳を凝視した。気付けばどんどん、顔が近づいていたことに気付き、アシュラの顔の全部が見れなくなったため、少し顔を上げようとした。アシュラの口角が上がった。


「わっ!」


 龍王たちは思わず尻もちを着いて声を張り上げた。そして、シューンも目を見張って驚愕していた。ニケはさすがに笑っていた。


「やっぱり、良い性格をしてる」

「ホントに精神的に成長しているんだな」


 ウォーは突然のアシュラの行動に徐々に顔を赤くしてキレた。だから、すぐに、立ち上がってアシュラを懲らしめようと手を伸ばした。


「なっ⁉」


 オーラを纏ったアシュラは浮遊した。アシュラはニケの元に移動しようとした。だが、ウォーは水鏡を出現させてアシュラの進路を塞いだ。


「大人ではないウォーに大人気ないというのは少しおかしいが、赤ちゃんにすることと違うな」


 アシュラは悪びれずに皮肉った。ニケはもう呆れて笑うしかなかったが、シューンたちはアシュラが話したことに驚愕して開いた口が塞がらなかった。ウォーは少し遅れてアシュラの言っていることを理解してウォーの目の前にある水鏡に腕を伸ばしてアシュラを捕まえようとした。


「うーん。大人しく捕まるか」


 アシュラはあっさりとウォーに捕まった。そして、オーラを纏うのを止めた。ウォーがアシュラを腕に抱くと龍王たちはアシュラに集まった。ウォー以外は純粋にアシュラへの興味だ。ウォーは水のベッドを宙に作るとアシュラを置いて両頬をつねろうとした。その瞬間、アシュラの体が膨らんだ。ウォーはアシュラの頬を摘まむことができなかった。だから、口の中にいっぱいの空気を溜め込んで叫んだ。


「アシュッ!」


 アシュラは膨らむのを止めると再びオーラを纏い浮遊して今度はニケの元に辿り着いた。


「ふう。からかい甲斐があるなあ」


 アシュラはニケの胸で一言呟いた。ニケとシューンは苦笑した。確かに見ていて龍王たちの反応が可愛らしくて面白かったが、このアシュラの態度は将来的には駄目だと感じた。


「シューン」

「ああ。イメージしろ。アシュは今日、ニケとは離れられない」

「なっ、まさか・・・⁉」


 アシュラは驚愕の表情をしてシューンとニケを見た。二人とも優しい笑顔でニッコリしている。だが、シューンがシックスセンスを使ったということでアシュラはこれから起こることを悟った。


「ウォー、皆。アシュを捕まえたよ」


 ウォーはパッと表情を明るくして一目散にアシュラに駆け寄って頬を割と力を入れて何度もつねった。ウォー以外の龍王たちは驚かされた仕返しに一回だけアシュラの頬をつねった。アシュラはずっと弄ばれた。




「はあ。酷い目に遭った」


 アシュラは疲れ果てて眠ってしまい、目が覚めた時にはたくさんの光り輝く星が広がっていた。体には柔らかい感触があり気持ち良かった。


「起きたみたいね、アシュ。ちょっと無理しすぎよ」

「無理ねえ。俺はただ、からかっただけだよ」

「だって、この状況を見事に作ったんだからね」


 ニケたちは今、温泉に入っていた。シューンは独り、神龍と向き合っていた。龍王たちはインドラを抱えてキャッキャッしていた。アシュラには一切目を向けずに。だから、ニケはアシュラの面倒を見ていた。


「皆がインドラを可愛がる状況をね」

「俺は狙ってそんなことはしていないよ。ただ、自分の意思を表現できる方法を一度手にいれると、何回も試してみたくなるだけさ」

「意固地ね。良い性格をしてる。でもね、そんなやり方を続けるのは良くないよ」

「っ⁉」

「インドラを守るために仲間を増やそうとすることは凄ーく良いこと。でもね、そうやって、アシュ自身を蔑ろにするのは凄ーくダメなこと」


 アシュラは泣いた。生まれて初めて泣いた。お腹の中でシックスセンスの影響で精神がどんどん成長して行き、インドラも同様なことが起きていると確信して、守らなきゃって思って、どうにかして、会話をする方法を思いついて、実践して、必死に自分なりに頑張って来たアシュラが背負っていた重圧が少しずつ緩くなって来て、ニケの、母の優しさに精神が少しずつ溶けて来て、気付いたら涙が零れた。


「よしよし、頑張ったね。頑張ったね。ママも覚悟を持てとか言ってプレッシャーを掛けてごめんね。これからは、ちゃんとママやパパも頼ってね」


 アシュラは泣いた。ようやく、赤ちゃんらしく泣いた。声を張り上げて泣いた。泣いた。


「大丈夫。大丈夫」


 ニケはアシュラを優しく包んで背中をさすった。その様子を遠めで見ていたウォーたち龍王はアシュラに申し訳なく思って泣いた。インドラも雰囲気に流されて泣いていた。

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