第三章 23 サウルスは一直線
「クソガキって。酷いじゃないか」
「・・・」
サウルスは込み上げて来る怒りを一回沈めるために大きく深呼吸をした。そして、冷静になって今一度考えてみた。
「シックスセンスの影響?転生とか」
「多分、違う。俺が産後一週間ぐらいでここまでの成長を遂げているのは、転生ではなく、俺自身のシックスセンス。うわっ、自分で言ってて恐ろしいな」
「・・・。頭脳系?」
「違う。俺がここまで産後一週間で話せているのは多分、お腹の中にいる時からの記憶があるからかもしれない。だって、俺のシックスセンスはおそらく適応と意識認識の拡大だ」
「ちょっと待って。お腹の中の記憶がある?それと、なんでそこまで断定できるの?」
「ああ。俺はお腹の中にいた時の記憶がある。それと、なんで、断定できるか?ってことだけど、まず、こんなに話せているのは音という分からない情報を言葉と認識して意味ある情報として意識してその情報をたくさん得ることでこの情報はここでこう使うんだって意識認識を拡大しているからだ。それを為しているのは、俺の体がそうできるように適応したからだと考えると繋がるだろう?」
「でも、それって、異常に脳が発達しているって線もあるんじゃない?」
「でも、産後一週間でこんなに話しているんだぜ?それに、疲れるからあんまりしたくないんだけど」
アシュラはオーラを纏った。
「嘘、でしょ⁉」
「実はシックスセンスも使ってるんだ、今?」
「何を?」
「歯が無くてもベロを上手いこと使えなくても話せるって」
「これは、神龍の遺伝子のおかげ?それとも、河童の遺伝子のおかげ?」
「知らん。両方で俺ができてるんだ。そんなの野暮だろ」
「まあ、確かに。とりあえず、納得はしてあげる。してあげたうえで聞くけど、さっきニタッて笑ったよね。僕のこと」
「いああい」
「このクソガキ!こうなったら、いやでも、その憎たらしい顔を変えさせてやる!」
「あんあえー!」
「ふざけやがって・・・」
サウルスはアシュラを腕に抱くと真上にジャンプしてシックスセンスを解除して猪の上に乗るとそのまま飛び降りて、猛スピードで、アシュラには先ほどのシックスセンスを施して、空気抵抗を無視させている、森の中を駆け抜けた。
男の子はこういうちょっとしたスリルに興奮するものでしょ?
と自信満々にアシュラの顔を見るがアシュラは真顔だった。
ああ、こいつ、弄って来てる。僕で遊んでる。クッソ性格悪っ!
サウルスは体に竜鱗を纏った。そして、アシュラは自分のシックスセンスで怪我をしないのは分かっているから木に当たりながら、尚、サウルス自身も木に当たらずに木を倒せる、猛スピードで一直緯線に駆け抜けた。だから、サウルスはもう一度、自信満々でアシュラの顔をドヤ顔で覗いた。
やっぱり!何?さっきまで憎たらしかった顔が凄く可愛く見える。凄く笑顔が輝いてるじゃん。
だから、サウルスは一直線にその後もずっと走り続けた。木を何本、何十本、何百本、何千本と倒して行ったため、フロンティアの王が動いた。
「さあ、どうだった?」
日が間もなく暮れようとしていた時、サウルスはユグドラシルの近くまで走っていた。自分が走って来た道を振り返ると綺麗に一本線道が整備されたように開いていた。そして、ここまで休憩なしに走った成果はドヤとアシュラの顔を見ると
「何よ、その目は!」
アシュラはオーラを纏った。
「何時間もおんなじことされたら、さすがに飽きるわっ!」
「うっ、嘘でしょ⁉男の子って面白いことや楽しいことって永遠にできるんでしょ?」
「知らん!少なくとも俺はすぐに飽きてたよっ!」
「ガーン」
サウルスはアシュラを抱いたまま、両膝を着いた。凄く衝撃を受けた。
「じゃあ、僕がテラノにずっと鬼ごっこやかくれんぼをしようと言っていたのは逆効果だったのかっ!」
「なるほどね。そりゃ、サウルスは独り身になるわけさ」
サウルスは思わずアシュラを睨んだ。でも、その睨んだ目も徐々に弱くなって行き、やがて、涙が溢れて来た。アシュラはサウルスの涙が顔に落ちて来たので浮遊して離れた。そして、サウルスの頭にそっと手をポンポンと叩いた。
「今更気付いても遅いけど、この反省を次に生かしな」
「アシュー」
サウルスは情けなくもアシュラの胸に顔を埋めて泣いてしまった。それをユグドラシルから見ていたゼウスは注意しに行くタイミングを失って唖然としていた。
「アシュラ。さすがは、ニケの子だが、サウルス。情けなさ過ぎるぞ。このゼウスが呆れて何も言えぬとは」
サウルスはようやく泣き止んだ。泣き止んでアシュラを見て頬釣りをした。
「おえっ!」
「疲れちゃった?」
「うん」
「そっか。じゃあ、これから、帰ろうね」
「うん」
「待て。サウルス」
「ぜっ、ゼウス!」
サウルスは行きよりも速い全速力で来た道を走った。だが、すぐに進む速度が著しく遅くなった。ゼウスが目の前に現れた。
「今回は許そう。だが、次はないぞ」
「ひっ、ひいぃーーー!」
サウルスはゼウスの迫力に脚が震えた。巌のような顔をしているため余計に怖かった。
「それと、アシュラ。喋れるか?」
アシュラは首を振った。
「余り、ここまでの騒ぎを起こすな。今回は貴様が誘発させたようなものだ」
「おえあ⁉」
アシュラは自分を指さして驚いた。
「あんえおえあええあえああいえあいんあおっ!」
「貴様がサウルスをその気にさせたからだ。次はないぞ」
「おい、ういああっああいあえうお?」
「このゼウスが直々に育ててやろう」
「それは、無し。アシュはニケの愛息子だよ」
ニケ、ミケ、インドラ、エマ、シャーン、シャラン、キュウ、テラノが瞬間移動をして現れた。
「このゼウスもそんなつもりは全くない。ただ、脅し文句として言ったまでだ」
「なら、アシュには全く効いてないよ」
アシュラはポカンとした顔をして何を言ってるのか分からいという感じでとぼけていた。だが、ニケにバレていたことが分かったから、残り少ないオーラを纏って答えた。
「顔が怖いだけで全然、脅しにも何にもなってなかったよ」
「「「ぷっ」」」
全員が噴出した。ゼウスの表情が固まったからだ。ゼウスがここまで面食らうのは珍しいだろう。アシュラは体力を使い果たして眠ってしまったため、浮遊が解けた。サウルスは急いでキャッチして抱きかかえた。
「だって、ゼウス」
「フン。今回は無効だ。どけっ!元に戻す」
ゼウスは十個ある腕の内上から三番目の腕を独り恋人つなぎをした。そして、オーラを纏うとサウルスが壊した自然が元に戻った。
「次から気を付けよ、サウルス」
「・・・はい」
ゼウスは背を向けて「飛べ」と言って消えた。サウルスはアシュラの顔を愛しそうに見ていた。
「それにしても、サウルス義姉さん。アシュと凄く仲良くなってるね」
「どこから、知ってるの?」
「さて、どこからでしょう?」
「聞いてるのは僕だよ」
サウルスは思わずニケを睨んだ。ニケは含み笑いをしていた。後ろにいた皆も同じように含み笑いをしていたため悟った。泣いていたことはバレているのだと。
「それにしても、アシュが話せるなら先に言ってよね」
「あれって、やっぱりマジなのよね?」
「ばりばり、話してたわ。アシュ曰く、適応と意識認識の拡大って言ってたけど、子供になにか、シックスセンスを与えていたの?例えば、妊娠中に食べた尻子玉はお腹の子に与えられるとかあるの?」
「そんなこと、なかったよね、ミケ?」
「うん。ニケ姉。ミケもそんな話、一切聞いたことない。ゼウスは確かアシュに責任があるって言ってたからホントにただ、シックスセンスに目覚めたのが早かったのかもね」
「でも、だとしたら、インドラももう、目覚めてる?」
全員の視線がインドラに行った。インドラは視線を向けられて目を丸くして手を振っていた。
「とりあえず、その心配はなさそうね、ニケ姉」
「うん。でも、残念だわ。アシュが初めて話す言葉を生で聞けなかった」
「お見事。お見事って言ったわ」
「そっか。ママとかニケとかおっぱいとか言わせたかったのに」
「サウルス。久々に笑顔を見たよ。今日は楽しかったかい?」
「・・・・・・うん。楽しかったよ」
サウルスはテラノからの質問に今日一の笑顔を魅せた。だが、そこに愛してるという感情は含まれていなかった。サウルスは腕に抱えているアシュラを大事そうに胸に抱いて見た。
「今日は、ありがとう。アシュ」
サウルスはアシュラのおでこにキスをした。その様子を皆が快く見る一方、ニケだけがサウルスの、サウルス自身も気付いていない感情を見抜いてニッコリとしていた。




