第三章 10 氷解。だが、氷塊はある
「やっと自分以外の温もりを感じれた」
サニーはもう、長いこと十七年も誰にも触れていない。否、触れることができなかった。距離が近づいたり、触れたりってことをしようとすると、どうしてもトラウマを思い出しちゃってシックスセンスを勝手に使っちゃうから。それに、シックスセンスの超引力は何でも凄い勢いで引き寄せられるのに触れることはできないという皮肉が効いていた。だから、この矛盾で心が更にぐちゃぐちゃになっていた。初めは、何度も父さんはサニーに触れようとしてくれてた。でも、何度も失敗してしまう内に次第にしなくなって行った。だから、もう、誰とも触れ合えないんだと思った。サキューバス家の血に恵まれてなんかないって思ってたけど、恵まれてたという事実がサニーを余計に苦しませた。まだ、隔離されたばかりの頃、サルシアと電話で話していた。サルシアは一向に才能が開花するということはなかった。だから、余計に自分の才能が嫌いだった。そんな風にして心が塞がって独りでずっと暮らしていると、独りの輝いている少年、ツリト君が現れた。サニーには眩しすぎた。あれだけの才能を自分より年下の子が簡単に扱っていたから。サニーはコピーのシックスセンスをサルシアから地下空間にいてもコピーできていた。だから、ツリト君のことをついつい調べちゃった。そしたら、忘れている記憶があったり、体内に使えていないオーラがあることを知った。サニーはツリト君のことを強く興味を持つようになり、好きって感情が生まれた瞬間だった。だから、ずっと憧れていた。大きな翼は持っているけど、鳥籠の中にいて自由に空を飛べないサニーとは違い、大きな翼を持っていて完全には羽ばたけないけど空を精一杯自由に飛んでいるツリト君は将に、サニーの理想とするところだったから。そうやって、ツリト君のことを追っている内にメイという少女のことを知った。メイは十分にシックスセンスを扱えていなかったけど、それでも、大きな夢のために頑張っていた。尊敬した。でも、ツリト君にベタベタくっついているのは凄く気持ちがモヤモヤした。嫉妬していたんだと思う。サニーもメイみたいにシックスセンスを十分に扱えるように毎日頑張ってオーラを均一に纏う訓練をしていた。それも、独りになってから、毎日欠かさずに。でも、一向に自由に扱える状態には持って来れていなかったから。だから、凄く頑張った。でも、超引力をコントロールすることなんてできなかった。そんな生活を送っているとツリト君とメイが別れた。凄く嬉しかった。三年後だったかな。ツリト君の更なる進化に驚いた。同時に憧れが強くなった。あんなふうに独りでただただ、シックスセンスを自由に扱うツリト君に。他人に寄り添えて、優しいツリト君に。憧れを強めて行って二年後、父さんが封印の壺に封印された。サニーは多分、簡単に封印の壺を壊すことができた。でも、その後のことが凄く怖かった。サルシアにまた、心労を掛けることになってそれも凄く心がぐちゃぐちゃになる要因になった。父さんやサルシアの件だけじゃない。例えば、カナ。あそこまでツリト君のことを心から思ってて、天空から力づくで降りて来たその自由な行動力。素直に凄いと思った。ジャンヌ。ジャンヌも孤児からカーンとアレクと出会うことで自分の実力を存分に発揮して行き、真っ直ぐにツリト君のことを思っていた。カナもジャンヌもカーンもアレクも皆、皆、サニーの憧れる生き方をしていた。凄く羨ましかった。同時に劣等感に苛まれた。だから、好きになっていた理想のツリト君のように頑張っていつか、思いを伝えて、相思相愛になるんだって決心した。それからも、ずっと頑張った頑張り続けたんだ。一年後、一ヵ月ほど前にカナがとうとう、ツリト君の最後の握手会に行ってツリト君に会って距離を縮めたことを知った。凄くモヤモヤしたし、超引力のコントロールが間に合わなかったのが凄く悔しかった。サルシアが若干二人の距離感を縮める要因を作っていたことには凄くムカついた。サニーの思いを伝えていたのに裏切られたって思ったから。一ヵ月後、ホントにちょっと前、キララって少女がツリト君に出会った初日に子供を作ったって聞いて凄く憤怒した。キララのことを調べた。キララもツリト君のことが好きでそのために、厳しい環境の中、天空から抜け出していたことが分かった。自由に自分の意志で夢を、恋を叶えていて凄いと思ったけど、やっぱり、憤怒していた。更に、カナもキララに負けじと子供を作っていたことも知った。やっぱり凄いと思ったし憤怒したし心がモヤモヤした。こうして、自分の望みを叶えているのにサニーは一向にして叶えられない。圧倒的な才能を持ちながら、トラウマが邪魔して自由に超引力を使え熟せない自分が凄く情けなくて心がぐちゃぐちゃになった。でも、一番、心がぐちゃぐちゃに揺らいで憤怒したのは、憧れのツリト君が遠ざかった瞬間だった。ツリト君は逆レイプされたのにも関わらず二人のことを見捨てない選択をした。それは縛られていると強く感じた。だから、ここ数日は凄く不安定でぐちゃぐちゃだったなあ。それなのに、どんどん、ツリト君は逆レイプされて理想のツリト君から遠ざかるからもう、サニーは自分で自分を抑えれなかった。ツリト君がアシュラ君だって知った。アシュラ君の過去を知って凄くやるせなかった。同じように心の内はぐちゃぐちゃなんだと知った。でも、アシュラ君はそれを乗り越えていた。それが凄く納得がいかなくて、こんなの理想のツリト君じゃないっ!ってカッーってなっちゃってそこからはもう、ホントに覚えてない。気付いたらツリト君と戦ってて、ジャンヌに一瞬で心の内を理解されちゃって、サニーがトラウマを現在進行形で作っちゃってて、もう、耐えられないって思って死のうって思った。でも、独りじゃ怖くてアシュラ君を巻き込むことに決めた。アシュラ君はこんな自分でも最後には優しく包み込んでくれて一緒に逝ってくれるって思っちゃったから。だから、アシュラ君でも対応できないようなサニーの全力をぶつけることにした。完璧だった。でも、アシュラ君は越えて来た。そして、こうして、サニーがずっと求めていた未来を、描きたかった未来を、ツリト君の温かさを直に感じることを、実現してくれた。
「こんなにっ、こんなに温かい思いに触れることができるなんて、サニー、サニー本気で考えても、それを思っていてもなかった」
サニーは大声を出して泣いた。泣いた。いっぱい泣いた。こんなに嬉しい涙は生まれて初めてだ。
「ねえ、アシュラ君。サニー、皆にどうやって顔合わせしたらいいかな?」
「お互いに悪かったところとかはあるだろうけど、素直に気持ちをぶつけるのがいいんじゃないか」
サニーはアシュラと向き合って抱き着いていた。アシュラの腰に脚を回し腕を首に巻いた。顔もすぐ近くに息の掛かる距離にあった。どうして、こんなに密着しているのに顔が当たらないかと言うと、サニーの胸が大きかったからである。
「でも、サニー。怖くて。ホントに何て言ったらいいか分からないの」
「心配させないようにしたらいいんじゃないか。サニーはもう大丈夫なんだって」
「でも、でもでもでも、サニーを心配させないようにするって・・・ねえ、アシュラ君はサニーのことが大好きだよね?」
「そんだけ、自信があるならその方向で押して見たら」
「ねえ、言ってよ。お願い。じゃあじゃあ、嫌なら避けてね」
ちゅっ♡
サニーはアシュラの両頬を持ってキスをした。そのキスはとても長くベロまで入れて来るものだった。アシュラはそのキスは心地よく気持ち良かったが息苦しくなって来たため、一度離れようとしたが中々離れることができなかった。
そっか。サニーはサキューバス家の血の才能を二つとも受け継いでいたな。
やはり、サニーはコピーだけではなく、体の構造を理解し、動かし方を熟知する連動をも受け継いでいるサキューバス家の血に愛された天才なのだ。
サルシアはサニーが起こした大爆発が起こってからアシュラとサニーのオーラを見失っていた。だから、サルシアたちは何の情報も得られぬままただ、黙ってリニアに座っていた。だから、リニアの外に瞬間移動をして現れたアシュラとサニーを見て一安心した。それはネルもサニーニョもジン王も同様で思わず溜まっていた不安の言葉を吐き出すように長いことため息を出した。そうやって、徐々に心を落ち着かせて違和感に気付く。サニーがアシュラの腕に抱き着いていて、二人は若干顔を赤くしていたことに。サルシアは後者の方は余り気にならなかった。それは三人も同様でだった。サルシアとネルと、サニーニョは一斉に立ち上がってリニアから出た。
「「「サニー!」」」
声が揃い一緒に駆け出していた。皆泣いていた。アシュラはサニーから少し離れてジン王の元に向かった。サニーの目からも涙が浮かんでいた。サニーも駆け出していた。ずっと待ち望んでいた。もう、無理だと全員が諦めていた。それがアシュラのおかげで叶った。だが、今はこの家族四人の時間を楽しみたかった。三人はサニーに思い切り抱き着いたため、サニーは地面に倒れてしまった。でも、触れれている。
「ただいま」
「「「おかえり」」」
家族四人がずっと待ち望んでいた瞬間だった。
「ツリト少年。今回のことは本当にありがとう」
「私からも本当にありがとうございます」
「ツリト、ありがとう」
「俺は俺がやりたいようにやっただけだ」
サキューバス家の四人とアシュラは密室の部屋で一緒に話し合っていた。ジン王はカーンに会いに行っていた。そんな中。サニーはアシュラの左腕に抱き着き、大きな胸で挟んで横にぺったりと座っており、サニーニョとサルシアとネルは向かい側に座っていた。
「でも、まさか、積もる話がたくさんあるんだろうなあと思っていたら、まさか、五分ほどで話が終わるとは思わなんだよ」
「仕方ないだろう、ツリト。僕たちは触れれはしなかったけど、定期的に近況報告をしたり、顔を合わせたりしていたんだから」
「私はホントに五歳のころから話していないから何を話せばよいか分からずに」
「私はサルシアと同じかな。サニー。一つだけ言ってていい?」
「いいよ」
「ツリト君だけは止めなさい。何人と関係を持っているか分かったもんじゃないわよ」
「少なくとも十四人とは関係を持ってるね。でも、今後はサニーを含めて多分、もっと関係を持つと思うよ。ねっ、アシュラ君」
「さあなんのことやら」
「なあ、ネル?そんなにツリト少年は女遊びが激しいのか?」
「父さん、激しいってもんじゃない。もう、何人子供を作っているか。こんな奴にサニーを渡すわけには行かないよ」
「でも、ツリト少年と一緒にいることは、サニーが決めたんだろう。だったら、私たちが何言ったって無駄さ。サニー。好きにしなさい」
「・・・うんっ!」
サニーは一瞬驚いてしまった。初めてサニーニョから、父から肯定された、認められたと思ったから。だから、サニーは元気よく返事をした。
「父さん、正気⁉」「父さん正気か⁉」
二人はサニーニョの変化など頭になく、アシュラと言う一人に女を絞れないクズっぷりに対する怒りで頭がいっぱいだった。アシュラは面倒臭そうだと思ったため、逃げることにした。
「俺たちはフロンティアに行く予定だから。それと、疲れたから、癒しの部屋で寝て来るよ。行こう、サニー」
「っ⁉うんっ!」
アシュラは瞬間移動をしてジャンヌのいる癒しの部屋に向かった。アシュラは皆に勘違いをさせてしまっていることに気付いていない。ただ、本当に眠ろうとしていただけだ。だから、ジャンヌ以外、ハートの紋様を刻んで眠っているのを見て確信した。
「インドラはどこにいる?」




