第三章 09 サニーの決心/ジャンヌの共感/アシュラの適応
「なるほどね。じゃあ、サニーはすぐに決着を着けないとアシュラ君の自由を守れないわけか」
「そう。だから、俺がサニーのトラウマを乗り越えさせてサニーの本当の望みを叶えさせる」
「嚙み合わないね。だったら、サニーはアシュラ君を強引に眠らせてゆっくりと今のアシュラ君の在り方は自由を失っているかを教えてあげる」
「あっ、俺のシックスセンスはコピーしない方がいいぞ。あれは、俺の肉体のタフさを持ってして初めて使えるものだから」
「知ってる」
サニーはアシュラの重心を崩してから左手に超引力でアシュラを引き寄せると右手で背後に超弾力を食らわせた。今度は壁を貫くことなくその場でずっとゼロ距離から攻撃を食らわせた。
「そうやって、ずっと超再生し続けていたら、さすがに斬撃プラス縛りには対応できないよね?」
「俺に構わずやれよ。俺は死なないから」
サニーは斬撃を四方八方からほぼゼロ距離で飛ばされた。最初の内はすぐに超再生していたが、次第に斬撃を斬撃で斬るようになって行った。
「なっ⁉」
「いいのか?お腹の星が四つ目、点灯したぜ」
「クッ!」
サニーは攻撃を止めた。
「もうそろそろでサニー。俺はお前の心を容赦なく踏み入る」
「それまでに、絶対、サニーの理想のアシュラ君のために一旦行動不能にするっ!」
サニーは瞬間移動をして考える時間を取ろうとした。当然、カーチェイスならぬ瞬間移動チェイスをするつもりだった。しかし、
「何で、追って来ないの⁉」
「ふう。さすがに、きつすぎ」
アシュラは膝間付いていた。いくら、シックスセンスで超再生していても確実に精神的にダメージは残ってしまう。その痛みに耐えながら斬撃を捌くのは至難の業だった。
「かと言って、オーラの供給を斬るのはサニーも練度が高いから多分もっと時間が掛かる。はあ、厄介この上ない」
アシュラは肉体を膨らませた。心拍数も急激に異常に少なくなり体力の回復スピードが上がった。
「この姿になるのはあの時以来か」
アシュラはゼウスとの決戦を懐かしく思いながら大きく深呼吸した。
「肉体は大丈夫か。さてと、俺は空気中に霧散しているオーラの残滓も吸収できる」
アシュラはもう一度大きく深呼吸をした。
「あんまり、回復させると油断させれないか」
アシュラは膨らんだ肉体を元に戻した。
ジャンヌはアシュラに会いに行く勇気がなかった。サニーと戦っているから。だから、大きな部屋を作っていた時だ。
「ねえ、何でまた来たの?」
「何でって、ツリトさんのサポートをするためよ」
「そっか。いい子だね。でも、その、神速のライフル貰ってくね」
「嫌よ。それに、私はもう、持っていないわ。ずっと構えてタイミングを伺っていたのを見られたのかもしれないけど、この通り、私は持っていないわ。だから、撃ちなさい」
「は?」
サニーはいきなり、高速のオーラの弾丸を食らった。
「部屋の強度は二倍となる」
追い打ちとしてカーンのオーラを貯蔵している疑似水晶を使って部屋の強度を高めた。当然それだけでは終わらない。
「撃って、撃って、撃って、無限に撃ち続けて」
ジャンヌは部屋の外側に部屋を作り続けた。
「私は少しでもツリトさんの役に立つ」
ジャンヌが作っていた大きな部屋は神速のライフルを壁に埋め込むことで自動に狙撃してもらう部屋だった。ジャンヌが一回目に作った部屋は鏡張りの十秒だけ時を止める部屋だった。この部屋はジャンヌは干渉しないという縛りの元に、成り立っている。二回目以降はただ、砂が敷き詰められただけの部屋だ。
何で、体が動かないの?鏡。待って。止めて。見たくない。見たくないのにっ!止めてよっ!
サニーは心が掻き乱された。
「私があなたに、引き寄せられた時、一瞬だけ部屋が見えた。鏡が無かった。テレビもカバーが掛けられてた。だから、もしかしたらって思ってたの。サニー。あなたはあなたを嫌ってるんでしょう?私も八年前までは私が嫌いだったからさ。後ろめたい気持ちがある時は自分自身を見たくないよね。でも、ツリトさんがその後ろめたさから逃れるきっかけをくれた。サニーも素直に助けてもらいなよ」
その言葉はカーンの言霊を使って直接、サニーの頭に響いていた。
「折角、可愛い顔なのにそんな暗い顔ばかりしてたら勿体ないよ。ツリトさんが好きなら笑ってアピールしなよ。気付いてる?ツリトさんに夢中でサニーが恐れていた人を傷つけることを今、バンバンやっていたのよ」
丁度十秒が経ってサニーは動けるようになっていた。サニーはジャンヌの言葉に確かに心を抉られていた。サニーはその事実を認識して、最も恐れていた暴力を振っていたことに気付きキャパオーバーした。
「サニーはもう、迷惑を掛けたくない。後から気付くようなことになるなら、生きたくない。それに、サニーはもう、アシュラ君と一緒になれない。なら、せめて、最後は二人きりになりたい」
サニーは超弾力で全ての部屋を弾いた。それは、空間をも弾いていた。ジャンヌは神速のライフルが埋め込まれている壁、強度が非常に高い部屋にいたが弾かれてしまった。
どういうこと⁉
ジャンヌはサニーがアンチシックスセンスを使えることを知らない。空間に干渉できることも、もちろん知らない。だから、凄い勢いで弾かれていて背中に強い打撃を受けて意識が飛びそうになった。
アシュラはサニーとジャンヌが交戦していたのを少し回復させた後にすぐに気付いた。だから、サニーの強いオーラの練度を認識した時、ジャンヌをすぐに瞬間移動させてお姫様抱っこした。
「無茶しすぎだ。折角のメイド服がボロボロじゃないか。癒しの部屋に行きな」
アシュラは超再生で腫れた肌からボロボロの内臓までを元気な状態に再生した。
「うん」
ジャンヌのオーラはもう、ほとんど残っていなかった。だから、アシュラはジャンヌを癒しの部屋に瞬間移動させた。
「はあ、疲・・・」
茫然とした。アナ、リナ、モナ、セナ、ユナ、サナ、ナナ、ハナ、カナ、キララ、メイ、ケイ、アイが手に刻まれたハートの紋様を光らせて眠っていた。インドラの姿は無かった。
サニーはアシュラと戦う前に神速のライフルのシックスアルファーだけを超引力で手に入れた。サニーは適当に試し打ちをした。まずは、超引力だ。超引力の弾丸は空間を引き寄せながら高速で異空間を広げながら遠くにまで飛んで行った。反対方向に超弾力の弾丸を撃った。空間を弾きながら同じように飛んで行った。
「ジャンヌのおかげで、進化しちゃった。でも、これなら、最後はアシュラ君と二人きりになれるかな」
「俺は死なないぞ。ジャンヌに気付かされたんだろう。また、トラウマが増えたか?」
「うん、もう、今度は耐えれそうにない。多分、時間が経つごとに後悔の念が募って来る。だから、やりたいことを見つけたよ。最後は、アシュラ君と一緒にいたい。ごめんね」
「逃げるのか?」
「うん。きっと内側から崩壊しちゃうから。でも、独りじゃ怖いから。サニーの描く未来の手伝いをしてくれるんでしょ?」
「ああ、してやるよ。でも、それは遥か先だがな」
「うん。そう言うと思ってた。だから、力づくで殺らせてもらうね」
サニーの目には涙が流れていた。だが、瞳は濁っていなかった。寧ろ綺麗に澄み渡っていた。その、蒼色の瞳はまるで快晴の空の色だった。アシュラと一緒に死ぬこと以外全てを諦観したサニーは何故か、今までで一番可愛くて綺麗に見えた。アシュラにはそう見えてしまった。だから、
「俺を独占したいなら生きて必死に独占して魅せろ。ジャンヌたちに負けないぐらい輝いてその超引力で俺だけに魅せて、その超弾力でジャンヌたちを退けて魅せろ。そうしていれば、トラウマなんか簡単に乗り越えられるさ」
「じゃあ、それぞれの描きたい未来を描くために、いざ尋常に」
「「勝負」」
二人は瞬間移動をして、距離を取った。サニーはアシュラと一緒に逝くために、アシュラはサニーの全てを引き出してサニーにトラウマを乗り越えさせるために。ジャンヌは神速のライフルシックスアルファーを構えた。
どっちだ?
サニーは超引力を黒色のオーラの弾丸をアシュラに向けて撃った。アシュラは直線上に合わせて空間を斬る斬撃を飛ばした。が、その弾丸はアシュラのその斬撃すらも引き付けてアシュラの元に向かった。だから、アシュラは自身に空気砲のような斬撃を下から上に飛ばして宙に舞って浮遊した。超引力の黒色の弾丸は空中で止まり、勢いが増して球上に大きくなって行った。
「マジか⁉こんなの食らったら間違いなく死んじまう」
アシュラは浮遊しながら何発も飛んできている超引力の弾丸を避けながら何度も空間を斬る斬撃を飛ばしていた。いずれも引き寄せられて斬ることができないのだが。そうやって、何度も凌いでいると、辺りは黒色の大きな成長し続けている黒い球ばかりになった。それはやがて、お互いを吸収しながら大きくなり、巨大な黒い球ができた。
「ヤバッ。どんどん成長してるな」
アシュラはサニーの後ろ側に瞬間移動をしてから空間を斬る斬撃を無数に飛ばした。サニーはそれを当然のようにして、アンチシックスセンスの超弾力の弾丸を神速のライフルシックスアルファーで撃った。しかも、いきなり銃口をかなり大きくしてだ。その弾丸は白色にしていた。分かりやすく区別を付けることによって威力を高めているのだ。超弾力の白色の弾丸は無数の空間を斬る斬撃をも弾きながらアシュラを貫こうと飛んでいた。堪らず、アシュラはサニーの上空に瞬間移動をした。超弾力の巨大な白色の弾丸は球状になり、どんどん成長して行った。やがて、超引力の黒色の球と超弾力の白色の球は同じ大きさに育っていた。しかし、五つ星が黒く光った。
アシュラはようやく、サニーに適応した。
「サニー心の内に踏み入るぞ」
「残念だけど、もう遅いよ。サニーとアシュラ君は一緒に死ぬんだからね」
サニーの瞳からは涙が流れていた。だが、その顔には達成感に満ちていて酷く美しく、綺麗で可愛いい笑顔を魅せていた。アシュラは思わず、魅入ってしまった。
「これで、サニーとアシュラ君は二人きりになれる」
黒色の超引力の巨大な球と白色の超弾力の巨大な球がサニーを挟もうと高速で移動した。
「サニーのオーラの影響は俺とサニーだけ無視ができる」
アシュラは適応の認識を拡大した。
大爆発が起こった。それは、異空間をどこまでも拡張する爆発だ。アシュラたちの星の百倍の面積をも誇る爆発だ。何もかもを無くす爆発だ。
そんな中、二人だけが無傷で宙に浮いていた。上半身裸の目付きの悪い少年が涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも美しくて綺麗で可愛い顔をした少女を後ろから抱きしめていた。




