第三章 05 サニーの希望
「サルシア、まだまだオーラの流し方に無駄があるぞ。もっとスムーズにだ」
「クッ!」
あれから、九年の月日が流れた。サニーは十二歳で成長期に入っていた。九年前のあの日からサキューバス家の地下の練習場はサニーの住処となり使えなくなったため、稽古をする時は近衛騎士の稽古場で行っていた。今、戦っているのは、近衛騎士のナンバー2と呼ばれているリザーリアだった。リザーリアは同じ近衛騎士の仲間にオーラ量を増やして貰ってサルシアと戦っていた。サニーニョはそれを横目で見ながら素振りをしていた。
「サルシア、肉体の連動も悪い。もっと全身の動きを洗練しろ!」
サニーニョは的確にサルシアの欠点、反省点を見つけては逐一報告していた。だが、サルシアはオーラの流し方が悪いのは分かっていても肉体の連動が悪いと言うのはいまいち分かっていなかった。
だから、僕は父さんみたいにその才能は受け継いでいないんだっ!
「ルアアアアアアアアッ!」
サルシアは気合を入れ直して、とにかく、剣を振った。振って振って振るしかできなかった。だが、その攻撃は確実にリザーリアの体力を奪って行き、やがて、リザーリアが纏う鎧は解けた。
「今日は、いつもより早かったな」
「まだ、っ、まださ」
サルシアは息切れしている呼吸を整えていた。今、やっていた打込稽古は単純な体力強化のためだった。体力があるということは、オーラ量が増えたり、練度が上がったりと得られるものは多いのだ。
「じゃあ、サルシア。次は私とだ。シックスセンスを使って死ぬ気で掛かって来い」
「はあ。はあ。僕は今回こそ勝って魅せる」
「やはり、まだまだだな。死ぬ気で掛かって来ないと私には勝てんぞ」
サルシアは地面に倒れていた。まだ、オーラの流れをサニーニョと戦う時、圧倒的強者と戦う時に、上手く綺麗に纏えることができないのだ。だから、毎回、良いところ無しで負けてしまう。そのために、体力強化をしていたのだ。
「お前は、成長期だ。これから、オーラの量が上がり、練度も上がるだろう。だが、そのままだといつまで経っても私には勝てん。己を犠牲にする覚悟がないと強くはなれんぞ」
『では、疾くと御覧あれ』
テレビの前の少年は自分の実力を存分に発揮していた。少年、ツリトは鳥籠に入っていない自由な大きな羽を持った鳥だ。同じ、殺傷力の高いシックスセンスを持ち、同じ黒のオーラを纏う。
「いいなあ。サニーもあんなふうに大きく羽を広げて自由に飛んでみたい。ツリト君みたいに皆から必要とされう人になりたいなあ」
十四歳になったサニーは地下の稽古場を生活館溢れる環境に模様替えしていて随分と女の子らしい部屋になっていた。普段の生活としてはベッドでただダラーと寝転んでテレビを見たり小説を読んだりゲームしたりと遊んでいた。そして、今は、昨日から噂程度に手に入れていた情報のツリトを画面越しに見ていた。ツリトはサニーにとって憧れの存在、推しとなった。
「ツリト君、カッコいいなあ」
「よもや、サルシアと同世代でもう一人黒が現れるとは。しかも、この少年、サルシアより、強い。下手したら私よりも強いんじゃないか」
「父さんよりも強いのか?」
「私は金だ。それにシックスセンスは重心を崩すだけ。だから、この少年、ツリト君の方がポテンシャルは上だ。それなのに、オーラの流れが綺麗すぎる。おそらく、私は条件が有利ではない限り必ず負ける」
「父さんがそこまで言うほどなのか」
「サルシア、もう近づかないで。これ以上近づくと危ないかもだから」
サニーは家族と月に一回だけ面会している。サニーニョは会うとシックスセンスが暴走してしまう。ネルは五メートルほど、サルシアは十メートルほど感覚を開けたら近付けるようになっていた。だが、サニーは直接顔は見ていなかった。
「どうしたの?」
「いや、今日はビッグニュースがあったでしょ。どう、思ってるのかなってさ」
「ツリト君でしょ。サニー、凄く好きになっちゃた」
「・・・それは、あの生き方にってこと?」
「うん。それもあるけど、その。まあ、顔も。というか、ツリト君の自由をずっと応援したいと思った」
「それって、好きってことでしょ?」
「別に、恋してるわけじゃないよ。それより、どうなの、サルシア。サニーを助けられるほど強くなってるの?」
「まだ。でも、いつかきっと、僕がサニーのシックスセンスに縛りを付けて魅せるから。サニー」
「もう、ずっと待ってるよ。サニーが自分でコントロールできる方が早くなるんじゃない?」
「かもね。競争だ」
「うん。バイバイ」
「うん」
ジャーーーーーーーーーーー。
サニーは今、シャワーを浴びていた。シャワーにはカメラが仕掛けられていない。だから、サニーは白色のオーラを纏った。基本、母であるネルかサルシアにしか会っていない。普通ならコピーのサキューバス家のシックスセンスは無意味である。だが、サルシアがいたため無意味ではなくなった。サニーはサルシアがコピーしたシックスセンスを更にコピーしたのだ。だから、ツリトの情報を調べていた。
「えっ⁉記憶が全然ないじゃないっ!それなのにあんなに空を飛ぶ鳥のように自由に振舞ってたの。なんて、素敵なの。しかも、あの斬撃のシックスセンスは使用してまだ、二日目。どういうこと?十歳までシックスセンスが目覚めなかったの?」
サニーは泡を落としてお風呂に入った。そして、あらゆる可能性を吟味した。一つしか思い浮かばなかった。
「こんなに不思議なことばっかりある子って間違いなくフロンティアの子じゃないの。凄い。今ってどれぐらい上手にシックスセンスを使えてるんだろう。ん⁉精神にも斬撃を飛ばした⁉まさか⁉じゃあ、ツリト君ならサニーのこのシックスセンスの暴走、サニーの精神的な問題を解決できるんじゃ・・・。会いたい。でも、きっと、まだ、サニーは真面に外を出て歩けない。増々、会いたい理由が生まれちゃった」
サニーが久しぶりに心躍り、胸が高鳴り、心からの欲求が生まれた瞬間だった。
「ツリト君にウジ虫が付いちゃった。しかも、黒だ。いいなあ。サニーも会いたいなあ。ツリト君の自由を縛らなかったらいいけど・・・。色仕掛けをするなんて。まだ、十歳とはいえ、羞恥心ってものがないのかしら。でも、そこらへんはサニーには分からないや。でも、ツリト君は喜んでるらしいし」
サニーは人間関係を持ったことはほとんどない。だが、普通の感性はちゃんと持っていた。
「父さんが、ツリト君に会ったなんて・・・許せない」
サニーはソファーで寛いでテレビを見ているとそのニュースが流れた。サニーのシックスセンスが暴走した。サニーは己にあらゆるものが引き寄せられた。部屋のあらゆる家具がサニーの視界を塞いだ。サニーは何とかすぐに正気に戻った。だから、部屋が歪むことはなかった。代わりに部屋かあガスが噴出してしまった。もしもの時のために自動で噴出するように設定してあったのだ。
「ああ。そっか。暴走しちゃったんだ。部屋は・・・元通りにしてくれてる。はあ。提案して良かった。まさか、ホントに使うことになるとは思ってなかったけど」
サニーは旧仮眠室、今は自分の部屋から出て稽古場に向かった。そこには一枚の紙が置かれていた。
大丈夫か?
筆跡からしてサニーニョだった。
「父さんなりの精一杯の配慮ね」
サニーは父であるサニーニョを見ると否応なしに勝手にシックスセンスが暴走してしまう。だから、文字だけ残したのだろう。サニーは自然と笑顔が漏れていた。
「大丈夫だよ」
「めっ、メイがツリト君に気持ちを伝えた!」
おおよそ二年の月日が流れた。サニーは十六歳だ。身長は更に伸びて胸も大きくなって来ていた。いつものようにお風呂の中で白色のオーラを纏いツリトの情報を集めていたところ、メイが気持ちを伝えてキスをしたことに気付いた。この二年。メイの気持ちも調べていたため、ドラマを見るようにサニーは勝手に盛り上がっていた。
「ツリト君も好きっぽいけど、ついて行かなかったのね」
サニーは思わず胸を撫で下ろしていた。頬も緩んでいた。
「あれ?何でサニーは喜んじゃってるんだろう?」
三年の月日が流れた。サニーは朝の日課のオーラの流れの瞑想、及び、オーラの練度を上げるトレーニングをしていた。瞑想が終わると右手に剣を引き寄せた。
「さてと、素振り素振り」
サニーは独りでいると引き寄せる対象の選択が行えるほどに成長していた。そして、素振りなど一通り体を鍛え終わると朝シャンをしに行った。
「それにしても、この胸は邪魔だなあ」
サニーは十九歳になっていた。身長の成長は完全に止まったのだが、胸の成長は止まっていなかった。サニーは動きにくいと感じるほど大きくなって最近の悩みの種になるほどだった。
「今日は、ツリト君の初めての握手会の日。一日中生配信を見るんだから」
「凄い。最近、目障りなデコイ教信者を正常に戻してる。しかも、何人も。それに、ずっと見えにくいようにオーラを纏って警戒もしてる。凄い成長をしてる。さすが、ツリト君だあ」
サニーはラフな格好でテレビで二画面を見ていた。会場全体の映像とツリトをアップした映像だ。ツリトの異常な力がサニーの目から見ると凄く分かった。
「えっ⁉ツリト君がルーフ王と会ってる。しかも、余裕で勝ってる。やっぱり、強いんだ。もう、絶対、ツリト君はサニーの異常を正常に戻す力を持ってるはず。それに、ツリト君の目付きが更に鋭くなってカッコよくなってるから、せめて数時間は我慢できるほどになれるようにして、外に出る許可を貰うんだ」
サニーは一日の日課の風呂場で白色のオーラを纏ってツリトの情報を手に入れて決意を固めた。もう、とっくにツリト中心の思考になっていた。
「どうしたの。サルシア?」
「ようやく、僕もオーラに干渉できるようになったんだ。だから、サニーのオーラに付けたいんだ」
「ホント?」
「うん。でも、なるべく抵抗しないように抑えていて欲しい。まだ、ギリギリできる段階だから」
今は顔を合わせて話し合うことはできていた。ただし、五メートルは距離を取って置かないといけないのだが。
「それは、無理だよ。多分、サニーは暴走しちゃう。サルシアはそれでも、サニーのオーラに干渉できるの?」
「っ⁉確かにそうだ。けどっ」
「分かったわ。三秒で決めて。三秒で決めれなかったら催眠ガスを充満させるから」
サニーは優しい笑みを浮かべてサルシアを見た。サルシアは迷いが生まれていた瞳から覚悟が決まったのか真っ直ぐな瞳になった。
「分かった。僕を信じてくれ」
「うん」
サルシアは剣を剣の柄を握って構えた。居合切りだ。サニーとサルシアは灰色のオーラを纏ってお互いを見た。お互いが頷いた。サルシアが一歩踏み出して抜刀した。サニーは強い衝動を抑えるのを我慢していた。あの、どうしようもなく、シックスセンスを使いたくなる衝動を。だが、無理だった。サルシアの足が宙に浮きサニーに勢いよく近づいた。だが、寸でのところで止まるのだ。
ああ。サニーは結局、どんなに近づけることができても触れることはできないんだ。
サニーの目からは涙が零れていた。
二年後。大事件が起こった。デコイ教がショワ王国を中心に侵略を開始した。ネルは真っ先にツリトの状況を握手会のライブ配信で確認した。
「これって、全員デコイ教信者じゃない。どうして、被害が全く・・・。まさか、全員のデコイのオーラを斬っているの?凄い。それを誰にも気付かれずに。底が見えない・・・」
サニーはツリトの実力に感嘆しつつも心配でずっとライブ配信を見ていた。だから、母のネルが封印の壺を持って近づいていたことに声を掛けられるまで気付かなかった。
「サニー。父さんが・・・」
「っ⁉」
サニーは一瞬で悟った。デコイ教がエージソンシリーズ封印の壺でサニーニョを封印したことを。
「できそう?」
「正直、分からない。解くこと自体は簡単にできると思うけど・・・もしかしたら殺しちゃうかも?」
「っ⁉」
「いや、知っての通り、サニーは父さんに近づくと著しくシックスセンスが暴走しちゃうでしょ。開けた瞬間に父さんが出て来てもし、暴走しちゃったらどうなるか、分からないなって」
「我慢できそうにない?」
「うん。今でもあの時のことを思い出すと暴走しちゃいそうだもん。しかも、あの時は五歳だった。今、本気でもし、使ってしまうことになったらと思うと・・・」
サニーは震えていた。
「ごめん。無理に頼んじゃって。サニーはサニーのペースでゆっくりとその力に馴れたらいいわ」
「ああ。サニーはまだ、鳥籠の中にいて、翼を広げられていない。ごめん、母さん。お願い」
「母さんの方こそごめん。嫌なことを思い出させちゃって」
ネルは地下室から出て催眠ガスを噴出した。サニーが苦しまないように。ネルは、ガスが抜けてからサニーをベッドまで運んだ。その部屋はツリトのグッズで溢れ返っていた。
「ああ。そっか。危ない所まで行っちゃってた。昨日の事件はどうなっちゃったんだろう?」
サニーはテレビを点けてスマホを取り出した。サニーは一人一人情報を手に入れることは可能だが全体の顛末を知りたい時はメディアを使った方が早かった。
「そっか。ツリト君は何も無かったんだ。でも、結構話題になってる」
サニーはやはり、ツリトの情報から先に手に入れていた。そして、すぐにビッグニュースを見つけた。
「ショワ王国がショワ宗教国?しかもカナヤ新興国の建国?どういうこと?」
サニーはまず、デコイの詳細を調べた。
「ほぼ、死んだと同然ね。でも、宗教国にしたのはそういうことか。偉いさんのご機嫌取りは大変ね。でも、このデコイを弱らせたカナって何者?」
次にカナの情報を調べた。
「天空から来た⁉何で⁉ツリト君への異常な興味⁉侮れない子ね」
その後も色々と情報を入手してカナが出した結論は
「カナとジャンヌは要注意ね」
サルシアはサニーの一件から新しく作ったもう一つのサキューバス家の施設で封印の壺の前に相対していた。イキシチ王国だと深夜に解決したデコイ教の事件から一日経っていた。近衛騎士の仕事を終えて真っ先に向かったのだ。今日は国境付近の被害の対応していた。あらかた、終わったところで、すぐに瞬間移動して帰って来たのだ。
「母さんのシックスセンスで肉体の回復はしている。言い訳は効かない」
サルシアは思わず息を飲んだ。自分で自分にプレッシャーを掛けたからだ。ジン王からも既に言われている。
『サニーに頼んでみるといいんじゃないか。サニーニョは死にはしない』
だが、サルシアはジン王からの助言は断った。この言葉にはサニーニョに何か悪い変化が起こって解放ができるということだと考えたからだ。
「僕が父さんを解放する」
サルシアは自身の体にオーラに傷を付けた。
「僕の肉体のリミッターを外せ。そして、オーラの練度も無理やり上げろ」
サルシアはスマホを出して一分のタイマーをスタートさせた。
「っ!」
サルシアは何度も何度も足元に置いた封印の壺に剣を振った。だが、一向に傷を付けることができなかった。体が明らかに悲鳴を上げていた。それでも振って振って振って振って・・・。やがて、タイマーが鳴って視界が白く染まり意識が飛んだ。
「明日、ツリトの最後の解体ショーと握手会に行くんだ」
「ふーん」
「怒ってるのかい?」
「別に。ただ、間に合わなかったなあって」
「だね。僕も母さんも叶えてあげたかったんだが。僕が頼りないばかりに・・・ホントにごめん」
「仕方ないわ。サニーは大人しくここにいる。でも、絶対土産話を持って帰って来てね」
「うん。任せてくれ。とびっきりの土産話を持って帰って来るさ」
サニーはずっとツリトに会うためにも頑張っていた。ツリトに会うために暴走を抑えようとしていたがサルシアとネル、二人しか試していない、にどうしても触れるまで至ることができなかった。これでは他人と真面に話せるかも怪しい。会うこと、見ることすらも。それは、ジン王の助言からも分かっていた。
だから、サルシアは声の調子を落としたサニーにわざと大きな声で胸を張って答えたのだった。
「では、疾くと御覧あれ」
サルシアがツリトの解体ショーを見た時、ツリトのオーラを生で見た時、衝撃を受けた。あまりにも綺麗すぎた。練度が高かった。習得しているものが余りに洗練されていた。
「生でみるとより凄いな。ツリトの斬撃は僕たち家族にできた壁を斬ることができるのかもしれないな。サニーが注目するほどなんだから」
サルシアは握手会までの間、市場をうろうろしていた。久しぶりの休日だったため楽しむことにしていた。お土産にツリトグッズを買おうと列に並んだ。前の人はたくさん買っていて若かった。ただ、はっきりと顔を認識できなかった。サルシアは目にだけ白いオーラを纏ってより深く観察した。すると、神速のライフルを持っていることが分かった。
なるほど。カナ女王か。僕も認識阻害はしているが凄いなあ。カナヤ新興国の天才発明家アレクは。今のところは僕だけが気付いているみたいだし、見なかったことにしようか。会ったってことが知れると面倒臭そうだし。
サルシアはゆっくりと待って列に並んだ。カナが両手いっぱいに勝っていたことにさすがに引いたがサルシアもサニーにたくさん買うつもりだったからお相子だった。
「はい。サニー。今から握手会に行って来るよ」
「いいなあ。ツリト君をここに瞬間移動してよ」
「さすがにダメかな。迷惑を掛けていい間柄じゃないんだから」
「だよね。行っておいで。サニーはこのグッズを楽しんでるから」
「うん」
「はあ。良かった。嬉しそうにしてて。ん?」
カナが神速のライフルを使ってたくさんの荷物を撃って瞬間移動させていた。
「神速のライフルにカーンのオーラを使ったのか。便利だな」
握手会でツリトを見ていた時、更に驚いた。噂はあったが実際にツリトが悪人を善人に戻している姿を見ると驚かざるを得なかった。
「サニーは初めて見た時からこの力に気付いていたのかな。だから、ツリトに惹かれていたのかもしれない。もしかしたら、サニーのことをどうにかできるのはツリトなのかもしれない。でも、サニーのことは僕が何とかしたい」
負けた。僕が同世代に初めて。完全な敗北だ。しかも、今まで溜めていたお金を全て。ホントにツリトはサニーの問題を解決できるかもしれない。でも、サニーのことは僕が何とかしたいんだ。そのためにも僕はっ、ツリトの本気を引き出してツリトより強いことを証明するっ!
ダメだった。相打ちに持ち込んでもツリトは大怪我は大怪我だが大した大怪我じゃない。しかも、手を抜いていたツリトにだ。クソッ!悔しいがツリトは間違いなくサニーに並ぶ天才だ。
「それにしても、あんなところに八年もツリトは独りで住んでいたのか。凄いな」
サルシアは軽くシャワーを浴びてサニーの元に向かった。
「やあ。待たせちゃったね」
「ホントよ。それでそれで、どうだった?」
「うんとね。カナさんと良い感じに・・・、ごめん。無神経だった」
サニーはサルシアからの報告を楽しみに待つために昨日は敢えて、ツリトの情報を得ていなかった。だから、要注意として定めていたカナがツリトと良い感じになったと知り落ち込んだ。それが、表情に態度に現れていたのだろう。
「気にしないで。何で、そんなことになったの?」
「それは、僕の他にも帝国のライ、ショワのウールフ、カナヤ新興国のカナが来ていたんだ。で、ライが皆で本気で戦い合おうって言って、それで、五人でサバイバル戦を一回、二対二を三十回したんだ。そこで、カナさんがツリトを守っていたから距離がぐっって近づいてさ」
「ツリト君の強さはどうだった?」
「強かった。底が見えなかった」
「そっか」
サニーは何故か嬉しそうに笑っていた。
サニーはサルシアが仕事に出て行った後、より詳しい状況を確認するために白色のオーラを纏った。そして色々と情報を集めた結果、憤慨した。
「どう見てもサルシアがツリト君とカナの恋のキューピットにさせてるじゃないっ!サルシアのバカ。バカバカバカッ!」
サニーは自分が熱くなっていることに気付いていなかった。
「明日、ツリト君がようやく王都に来るっ⁉じゃあじゃあ、家に連れて来てよ。招待しなよ。カメラでその様子見たい」
「残念だけど、監視として最高級ホテルの屋上の部屋を用意されているんだ」
「じゃあ、そこにはカメラがあるの?」
「付けるらしいけど、僕が全て取り外す。さすがに可哀想だ。まあ、僕が取り外さなくてもツリトなら気付くだろうけどね」
「そうね。じゃあ、また、土産話お願いね」
「うん。任せといて」
サルシアが背中を向けて地下室から出て行こうとしていた。サニーは白色のオーラを纏って透明のチップを剣の柄に付着させた。
サニーはお風呂に入っていた。ここには唯一カメラが付いていないからだ。
「よしっ。サルシアがツリト君と会った。じゃあ、このチップをツリト君の体に。よしっ。付着完了。さあさあ。今日は何をするんだろう」
検問所を抜けてツリトは王都に入った。すると、ツリトはトイレに向かった。
「キャッ。どうしよう。見ちゃおっかな。よしっ。見よう」
などと独りだけで盛り上がっているとツリトは出し終えてチャックを閉めると手を洗った。そして、水滴を取るためにマシーンの中に手を入れるかと思いきや、斬撃で水滴を飛ばしていた。その時に一緒にサニーが付着させていたチップは飛ばされて壊れて消えた。
「ノーーーーーーーーーっ!」
サニーはお風呂の中で絶叫した。
「どうだった?」
「楽しかった。趣味とかはあんまりなさそうだけど、凄く優しい」
「うんうん」
「味の好みも分かったよ。今日はまあ、お互いを知り合う感じだったかな。で、明日はキララっていう女の子のマジックショーに行くんだ」
「へえ」
その後も一時間ほど会話が弾んだ。そして、サルシアが去った後、サニーはいつものようにツリトの情報を得た。ついでにキララの情報も得た。
「この子も要注意人物じゃないのっ!」
今日もサルシアは来た。が、騎士の仕事を再開したからとすぐに帰って行った。不思議に思いながらサニーはツリトとキララの情報を得た。今日もサルシアから話を聞いてから調べようと思っていたからだ。だから、ツリトの情報を得た時、オーラが暴走してシックスセンスを発動してしまった。催眠ガスが流れて眠ってしまった。
「ツリト君が自由からかけ離れてしまった。サニーの理想のツリト君が失ってしまう」
サニーは朝起きて、涙を流していた。意識的に何も手に付けないようにしていた。布団に籠っていた。
二日後、ようやく動き出してテレビを点けた。ツリトの件がテレビに流れていた。
「ああ。どんどん羽がもがれてる。これじゃあ、サニーとおんなじ鳥籠の中に入っちゃう」
二日後。ツリトが空を飛んで何か危険を退けていた。サニーはオーラを纏ってツリトの情報を得た。サニーは信じられなくて何度も何度も見た。深呼吸してお風呂にリラックスのために入った。
「サニーはアシュラ君の自由のために動く」




