第三章 01 再会
それぞれがお風呂から上がってもカーンとアレクは怒れる国民の相手をしていた。カーンとアレクはそろそろ面倒臭くなって来ていて対応が雑になって来ていた。
「はあ。私たちは女王が、カナがいなくなっても問題なくカナヤ新興国の統治を行える」
「僕がいるからね」
「ふざけるなっ!」「今はそんな話をしていないんだっ」「カナ女王に行った仕打ちを教えろっ!」「お前らみたいなクズならカナ女王にもっと酷いことをしているだろう!」
思わずため息を吐いて応えるカーン、マイペースなアレク、カナのために怒る国民、がお互いに睨みを利かせていた。
「これは、平行線だな。明日はというか、今日は建国記念日だったろ。大丈夫かあ?」
「大丈夫なんじゃない。二人とも体力あるから明日のイベントも問題なく済ませれるはずだわ」
「ジャンヌ。俺はそんなことは聞いてなかったんだがな。ところで、明日は何をするの?」
「色々するみたいだけど、特に目立った催しはないわ。ホントは間に合わせたかったんだけど、私もアレクも間に合わなかったから」
「何を?」
「封印の壺の解放」
アシュラとジャンヌは二人でカーンとアレクの様子を見に行っていた。他の女子たちはインドラと一緒に酒を飲んでいた。アシュラとジャンヌが二人でゆっくりしているのはアシュラがインドラにお願いしたからであった。そして、平行線の会話の中で出て来た爆弾発言だ。当然のことだが、アシュラは封印の壺に封印されている人は知らない。だが、封印の壺が一年前たくさん発見されていたことはニュースで知っていた。だから、封印された人はいるだろうと思っていたが、建国記念日で披露するほどの人物となると、考えられる人物は限られていた。
「そういうことか。だったら、俺が今、解放して見せよう。カーンとアレクも疲れているはずだしな。さすがにずっと怒声が飛び交っているのはあんまり気分が良いものではない」
「・・・分かった。案内するねっ!」
ジャンヌは思わず声を弾ませて抱き着いていたアシュラの右腕に更に密着した。
「ここが、封印の壺を保管していた部屋。何重にも鍵が掛けられていて私とカーンとアレクしか開けることができないの」
ジャンヌは一つ一つドアを開けて奥に奥に進んで行った。そして、最後に分厚い思いドアを開けた先には封印の壺が三つ綺麗に保管されていた。ただ、部屋には至る所に傷や凸凹、穴などがたくさんあった。だから、三つの封印の壺が綺麗に保管されていることに違和感を感じるほどだった。
「これで、封印の壺は全部なのか?」
「うんうん。サキューバス家にもう一つあるみたい」
「なるほど。じゃあ、ここにあるのは・・・」
「ウールフの大事な人たち」
「そうか。だったら、ウールフをここに呼ぶか」
アシュラはジャンヌと二人でショワ宗教国の皇居にウールフの元に瞬間移動をした。ウールフは大きなテレビでカーンとアレクが滅茶苦茶言われているのを腹を抱えて笑っていた。
「よっ!」
「うぉっ!」
「やっぱり、反応は可愛いわね。ウールフ」
アシュラとジャンヌはウールフの真後ろに瞬間移動をしたのだ。ウールフは完全に油断をしていて虚を突かれてしまった。
「それで、どうした?」
「再会だ」
「再会ぃ?・・・っ!」
「ツリトさんが開けれるって」
ウールフはすぐに顔色を変えて立ち上がるとアシュラの両肩に手を置いた。そして、アシュラの目をマジマジと嘘でないかを確認するために見ていた。
「安心しろ。俺の実力は分かっているだろう?」
アシュラはしっかりとウールフの目を見返して大げさに胸を張った。そして、口角をわざとに上げた。
「久々の再開なんだろう。笑ってろよ。ウールフ」
「・・・ああ。・・・ああ。・・・ああっ!」
それはこの一年抱えていた悲しみ、苦しみから少しだけ解放された瞬間だった。ウールフはその場に崩れ落ちて声を抑えて静かに泣いた。
「それでえ、ツリト。ホントにできるのか?」
「ああ。まず、誰から復活させる?」
目の前には三つの封印の壺が間隔を開けて置かれている。一番左の封印の壺の周辺はいっぱい傷が付いていて凸凹して穴も開いていた。真ん中の封印の壺は一番左ほどではないが周辺がボロボロだ。そして、一番右にある封印の壺の周辺はとても綺麗で手が付けられているようには見えなかった。
「シリウスちゃんだよね?」
「・・・」
ウールフは顔を赤くして黙ってしまった。
「なるほど。じゃあ、決まりだな。右から順番に復活させよう」
「えっ!」「っ!」
二人は同じように驚いた。ジャンヌは思わずアシュラの腕を強く抱きしめて少し眉間に皴を寄せて、ウールフは思い切り目を鋭くさせて睨みを利かせていた。アシュラはわざとに遊んでいたがここまで反発されるとは思わなかったため思わず笑った。
「俺はあ、シリウスからがいい」
「「ふーん」」
二人は声を揃えてニヤニヤと顔を赤くしているウールフを見た。ウールフはその二人の反応で増々顔を赤くしていく一方だった。
「まあ、でも、一応様子見しといた方がいいんじゃないか?いや、二人とも落ち着けって。確か、アレクの研究で命の別状はないはずだって考えられているんだろう。でも、一年も封印されていたら、何かしらの変化はあるかもしれん。そうなった時にウールフの大好きな愛しているシリウスが変わっていた時、耐えられるか?おい、睨むな。だから、おそらく、ウールフが嫌っている奴から開けることで一回安心してから開けた方がいいんじゃないか?ってことだよ」
徐々に抱き着く腕の強さを強めていたジャンヌもアシュラを鋭く睨んでいたウールフも目を大きく見開いて力を抜いて考え始めた。
「「確かに・・・」」
「じゃあ、ちょっとだけ待ってくれえ」
ウールフはそう言うと何やら封印の壺に近づいて持ち上げて移動させようとした。二人は思わず笑ってウールフの肩を叩いて握りその行為を止めさせた。
「ウールフ。私、そう言うの良くないと思う。自分がやった行いは隠しちゃダメだよ」
「ウールフ。俺はそのままの方がいいと思うぞ。ピンチはチャンスとよく言うが、ある意味この恥は愛を伝えるための最大の武器となるぞ」
「と言うとお?」
「この差がウールフの心理状態を分かりやすく示しているんだ。つまり、ウールフの思いが言葉よりも分かりやすく伝わるってことだ。どうだ?何だかこのままの方が良い気がしてきたろ?」
「なるほど。ツリトさんの言うことも一理あるかも。どうするの、ウールフ?」
「決めたあ。まずは、クソ親父からだあ」
ニヤニヤ。二人は同時にクスクスと笑ってウールフを挑発した。顔を赤く染めているウールフは獣化して狼の顔になって表情を分かりにくくした。それでも、照れているのが分かってまた、面白くなっているのだが二人は弄るのをさすがに止めてあげた。アシュラは一番右にある封印の壺の前にしゃがんだ。そして、オーラを纏って触れた。
「まずは、意識認識の拡大だ。封印の壺は無理やり開けても中の人には無害である。よし、斬るか」
アシュラは鋭い斬撃、空間を斬る斬撃を封印の壺に飛ばして封印の壺を真っ二つに割った。そして、出て来たのはオーラの練度が著しく高くなったルーフだった。ルーフの顔にはたくさんの髭が生えていたが頬がコケていたり、髪が剥げていたりなどの悪影響は一切なく元気な姿だった。
「親父い」
「ああ、不覚不覚。僕自身が内側から開けようと頑張ってたのに結局できへんかったやん。でも、助かったで、ツリト君。よう、頑張りはった」
「親父い」
「ジャンヌ、顔つき変わったねえ。ええことあった?ってか、聞くまでもないか。ツリト君と結ばれたんやね。おめでとう」
「親父い」
「せやけど、また、ツリト君に助けられてしまったわ。しかも、自分底が見えへんようになっとるやん」
「親父い」
「そんな何度も呼ばんでええよ、ウールフ。僕、ちゃんと信じてたから」
ルーフはウールフに歩み寄りウールフを抱きしめた。ウールフとルーフの目には涙が浮かんでいた。
「ジャンヌ。失敗したな。ウールフの涙が枯れつくしてしまってね?」
「うん。私もそう思ってたの。まさか、ウールフがこんなに泣くとは思ってなかったから。予想外だったわ。私もこんな風になるなら最初にシリウスちゃんにするべきだったわ」
「そこの二人。何、親子の感動の再会に水を差してるん?素直に良かったねえって泣いてええんよ」
「後ろ見てみ」
「後ろに何かあるん?」
ルーフはアシュラの助言に従って素直に後ろを向いた。ルーフの横顔が綺麗に悲しみに変わった。
「僕ってこんなにウールフから嫌われてたん。ちょっとショックやわあ。でも、二人が失敗したって言った理由が何となく分かってしまったわ」
「チッ」
「早っ!もう、態度が昔のように戻ってしまった。嘘やん。めっちゃ嬉しかったのに」
「チッ」
さすがに見ている二人も気の毒になってしまった。ルーフってウールフからこんなに雑に扱われてたんだと思うと余りにも可哀そうに思えて来ていた。
「それで、聞きたいんだけど、中ってどんな感じなの?」
「うーん。エネルギーの循環がされているんか全然腹は減らんかった。ただ、なんもなくて凄ーく暇やったわ」
「それって、よく無事で出て来れたわね」
「せやね。自分でもビックリしてる。せやけど、僕の場合はちょっと特殊やと思うんよ。と言うのも僕はオーラの練度を上げてて時間を潰してたんやけど多分寝て待とうと思ったら待てると思うねん。つまり、普通は寝て待つからそんな時間を感じんようになっとるはずやねん」
「なるほどね。じゃあ、次はルーフの奥さんにしよっか?」
「せやね。宜しゅうね」
「ウールフ。構わないか?」
「俺にい、聞くな」
今度は三人でニヤニヤしてウールフを見た。
「早くしろお」
「はいはい。封印の壺は無理やり開けても中の人には無害である」
アシュラは鋭い斬撃、空間を斬る斬撃で封印の壺を真っ二つにした。中からは目を擦って眠そうにした女性が現れた。
「ここは・・・ようやく出られたのね」
テリオはウールフとルーフの姿を視界に捉えると嬉しそうに微笑んだ。そして、ジャンヌとツリトを見て更に嬉しそうに微笑んだ。
「ジャンヌちゃん、顔つきが変わったね。すっごく可愛い」
「ありがと」
「ツリト君って近くで見ると思ってたより凄いのね」
テリオはアシュラに顔を近付けてた。翠の目でアシュラをマジマジと見つめた。その距離は金髪の髪がアシュラに触れるほどだった。テリオはアシュラに抱き着いた。
「本当にありがとうね。もう一度、皆に会えるとは思ってなかったから」
テリオはアシュラから離れるとルーフとウールフの前に移動した。
「ウールフ。努力が足りないんじゃない」
テリオは既に涙を流していたウールフに抱き着いて背中をポンポンと叩いた。
「さて、感動の再会が二つ終わったところで、次はいよいよウールフの大本命だ。俺たちはどうする?」
「私は二人きりにさせてあげたい」
「僕は近くでマジマジと見てたいわ」
「母さんも愛息子の晴れ舞台は見たいわ」
「じゃあ、ニヤニヤと端の方で見とくか」
「でも、ウールフがそれを許すと思えへんのよね」
「でも、見たいじゃない。何かいい手はないかしら」
「ねえ、私に良い考えがあるんだけど」
四人でコソコソとウールフがいる前で堂々と話をして作戦を立てた。
「ウールフ。皆、部屋から出て行くって。俺は封印の壺の封印を解いたらすぐにこの部屋から瞬間移動をして出るから」
「ウールフ。頑張ってね。応援してる」
「僕も応援しとるよ」
「母さんもよ。頑張ってね」
三人はそれだけ言い残すと部屋から出て行った。ジャンヌはすぐ横に新しく部屋を作った。その部屋は透視の部屋だった。
「ニヤニヤ。ウールフ。どうするんだ?」
「どうするってえ?」
「どこまで進めるつもりなんだ?」
ウールフは元々赤く染めていた顔を更に赤く染めると分かりやすく後づさって同様して見せた。
「進めるかっ!そもそも、まだ、そういう関係じゃない!」
「可愛いなあ。じゃあ、始めるぞ」
「可愛い?」
「封印の壺は無理やり開けても中の人には無害である」
アシュラは封印の壺に手を触れると鋭い斬撃、空気を斬る斬撃で封印の壺を真っ二つに斬った。中からはウールフと同じ灰色の髪をした女性が出るや否やすぐに近くにいた人に抱き着いた。
「信じてたよ、ウールフ。ウールフなら封印の壺を開けることができる・・・って」
まるで、封印の壺が開けられるのを待ち構えていたかのように出て来た女性シリウスは視界に映る鬼の形相をした人狼を見て思わず体を震わせた。
「ねえ、・・・ツリト君。どうしよう?」
「俺に聞かれても。とりあえず、離れなよ」
「うん。でも、ウールフが凄ーく怒ってて。ツリト君きっと放したら殺されちゃうよ」
「俺は他人の彼女を寝取る趣味はないよ。ということで、後は頑張って修復しな」
アシュラはシリウスの抱擁から逃れるとシリウスを持ち上げてウールフに向かって一直線に投げてから瞬間移動をしてその場から逃げた。
「ツリトさん。何してるのっ!」
「まあまあ。せやけど、僕は面白かったよ」
「母さんもある意味、良かったんじゃないかと思うわあ」
二人は相変わらずニヤニヤと笑ったままウールフの様子を楽しそうに見ていた。ジャンヌはアシュラの最後のシリウスを投げたことを怒ってツリトをパンパンと殴っていた。全然痛くないために非常に可愛らしい。
「うっ、ウールフ、怒ってる?」
シリウスはアシュラに投げられてそのままウールフの体にダイブしていた。ウールフは抱きしめてから地面に受け身を取って倒れていた。
「別にい。俺は怒ってなんかないさあ。ただ」
「ただ?」
「ズルいと思っただけだあ」
「ふふっ。何それ。仕方ないなあ。私はちゃんとウールフのこと好きだよ」
ちゅっ♡
「キャー」「ヒュー」「わあ」「ははっ」
隣の部屋でその様子を見ていた四人はそれぞれ違う言葉を発っしながらも若干、顔を火照らして二人の幸せそうな様子をニヤニヤと見ていた。
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