第二章 34 メモリブレット
カナはようやく天空から地上にツリトに会えることができると歓喜していた。だが、地上に降りた時、素直に歓喜できなくなっていた。見たことのない建物、景色が視界に溢れていた。
「外の世界がきな臭いことになってることは知ってたけど、…まさかここまで酷いとは思ってなかったなあ」
目の前にはたくさんの建物が崩壊していた。その建物を崩壊している原因は視界に入っていた。大きなライフルで次々に街を撃っていた。王都を中心に撃ち続けていた。カナが舞い降りたのは偶然にもショワ王国の王都だった。
「とりあえず、無視はできないよね」
カナは瞬間移動をして大きなライフルを構えている黒色のオーラを纏った白色のフードを被ったデコイ教信者の元に行った。カナは容赦しなかった。顔を横に一回転させた。ついでに小さくなっていったライフルも回収した。これが、カナと神速のライフルの出会いだった。続いて次々に神速のライフルを持った信者を殺して行き神速のライフルを回収した。
「よしっ。これで、被害は大分小さくなるかな。でも、地上に黒ってそんないないはずなんだけどなあ。それと、皆老けすぎ。あーあ。早くツリト君に会いたいなあ」
カナは十個、神速のライフルを回収していた。つまり、十人以上殺している。正確には三十人以上は殺しているが。初めて人を殺すが躊躇いは全くなかった。カナにも人を殺すのは抵抗がある。だが、人を無残に殺している者には何の抵抗もなかった。だから、ピンピンとしていて、ツリトに会いたいと心に余裕もある。
「あっ!いきなり三人黒が現れた。白いフードを被ってないということは……。敵じゃないかな」
カナは瞬間移動をしていきなり三人の目の前に現れた。ちゃんと両手は上げて神速のライフルは地面に落としてだ。だが、当然、疑いの目で睨みを効かせて来た。
「カナは敵じゃないよ」
「ウールフ君。どうだい?」
「全くう、危険があ、見えない」
可愛い。かっこいい。それに、胸デカい。
一人、完全に油断していたが緊張の初対面の挨拶が行われる。
「ねえ、カナは何をしたらいい?」
「その前にこれは?」
「カナが殺して回収した」
三人は息を飲んだ。カナは笑顔でそれを言ってのけた。だから、間違いなく確かなことが分かった。
この子は強い。
三人は同時に思った。
「カナ。俺はカーンだ。ホントに手伝ってくれるのか?」
「うん。その代わり、ツリト君に会わせてね」
二人は思わず噴き出した。こんな状況で出て来るのがこの言葉なのかと。二人はルーフたちがいなくなったことにショックを受けているが恐怖も覚えていた。カナはそんなことは知らないのは分かっている。だが、二人の間に流れていた緊張の糸が切れた。一人はカナに思い切り睨みを利かせていた。ジャンヌは悟っていた。
この女は間違いなくツリトさんと何が何でも関係を持とうとする。
もちろんジャンヌにもカナにもこの時点でその確証はない。だが、女としての本能のセンサーがビンビンに鳴っていた。だから、ジャンヌは決めたのだ。
絶対に会わせない。
「ねえ、皆どうしたの?」
「いや、何でもない。では、二手に分かれよう。俺とウールフ君、ジャンヌとカナ。この二手に分かれてデコイ教を排除しよう」
「ちょっと待ってっ!」
「じゃあなあ」
カーンとウールフはお互いに小型拳銃を撃って瞬間移動して消えた。
「ふーん。そういう力か」
何してくれてんだ、この禿げ!
「はあ。ちょっと待ってて」
「分かった」
ジャンヌは空間を歪ませて消えた。
「へえ。中々やる人はいるなあ。情報整理かな」
カナはリナのシックスセンスを使った。デコイ教の情報を調べた。
「うんうん。なるほど。今のデコイになってから黒のオーラの信者しかいなくなった。つまり、トップを叩けばいいわけだけど、さすがに顔を見たことないからどこにいるか分からないか。でも、南部の一番デカい教会、事実上の本拠地にいるよね。ジャンヌが来たら連れて行って貰おうかな」
カナは少し頭を整理して今後のことを考えているとジャンヌが小型拳銃を持って歪んだ空間からやって来た。
「これを使って」
「これは?」
「カーンの言霊のシックスセンスが保存されてるの。今は、格納庫に飛ばすようになってる。瞬間移動したかったり、他にも何かしたかったりした時はその都度、新しく何か言ったら実現できる」
「格納庫?」
「デコイ教信者を収容しているの」
「なるほど。いいね。なら、ちょっと試し打ちしてもいい?」
「いいけど」
カナは適当に二三発撃って瓦礫をどかした。
「うん。こんな感じか。五秒だけ解除」
「ちょっ、何をする気なの?」
カナは自身のオーラに小型拳銃のオーラ砲を撃った。
「いや、オーラに当たっても効果があるのかなあって」
「一旦解除したじゃん。どういうつもり?」
「覚えたんだよ」
「覚えた?」
「じゃあ、ジャンヌ。デコイ殺しちゃおっか」
カナは神速のライフルでオーラ砲を撃ってジャンヌとカナ自身をデコイ教の南部の本拠地に飛ばした。
「サルシア。信者たちがすぐ近くまで来ている。行こう」
「……」
「行きなさい。サルシア。サニーに頼んでみるから」
「姉さんに⁉」
「だから、行きなさい」
「待ってくれ、母さん。僕はそれは危険だと思う」
「なら、サルシア。あなたに任せてあげる。その為にも今は目の前の敵を殺しなさい。蹂躙して来なさい」
「…分かった。じゃあ、母さん。姉さんには頼まないでくれ」
サルシアは母と封印の壺を家に帰した。
「ふう。最速で殺る」
サルシアはサニーニョがいなくなってから急速に老け始めた大量の信者たちの行進に突っ込んで行った。サルシアに躊躇が無くなった。
「ホントは楽に死なせてあげるつもりだったが苦しんで死んでもらう」
サルシアはオーラを斬ることはできる。が、現時点ではデコイ教信者を正常に戻すことはできない。だから、傀儡にすることにした。目には目を。歯には歯を。デコイに操られている状態を傀儡と呼ぶならサルシアも操った者も傀儡と呼ぼう。傀儡には傀儡を。
サルシアは突風を吹かせた。その突風は砂利を乗せている。次々と信者に傷を付けて行った。いずれにも目に映る者全てが殺す対象と縛りを付けた。
「勝手に後は殺し合ってくれ。リザーリア。僕はデコイに会って来る」
ライはジェット機に乗っていた。ジェット機に黒色のオーラを纏わせていた。だが、それだけではなかった。雷刀を差していた。これにより十分ほどでデコイ教の南部の本拠地に向かっていた。
「まさか、使い捨てとはいえ、こんなものを作っていたとは。天晴れです」
メイが、ではなく前皇帝カマセが作らせていたものだった。いつか、デコイ教を一瞬で潰すために用意していたものだった。
エケセテ帝国は元々信者をたくさん殺して入国審査も厳しく行っていたため現在確認できる信者は一人もいない状態になっていた。メイはさすがに皇帝であるため行くことはできなかった。メイは絶賛指揮を執ってデコイ教信者の残党がいた時のために残っていた。
「「「娑婆の空気は美味い!」」」
八人が天空に出て最初に出た言葉がこれだ。雰囲気に呑まれている。
「ナナはとりあえず、カナが今、何してるか知りたい」
「確かに、ナナのシックスセンスをあんなに使っていたのは気になるもんね。ちょっと待ってて。調べるから」
リナは、皆、どうやってカナが結界を解いたのか知りたいと思っていた。
「待って。カナがインドラ様に…勝った⁉」
「「「嘘でしょ⁉」」」
リナは今しがた得た情報を皆にも共有した。皆も疑って冗談だと思っていたのが本当だと知り、絶句した。八人の間に沈黙が流れた。それぞれ、冷静に考えた。そして、同じ結論に達した。
殺される。
この一言に尽きる。八人は身が震えた。力づくで自分たちを連れて帰れる龍人たちはいくらでもいる。だが、一人だけは別だ。
「「「インドラ様」」」
八人の声は揃った。八人はインドラ以外はなんやかんや天空から逃げ出したことは許してくれると踏んでいた。だが、インドラは別だ。天空の結界もインドラが作ったものだ。八人が一番心配していたのはカナのことだった。だから、リナはすぐにインドラの情報を得て皆に共有した。インドラは今は眠っていること。シューンはカナの逃亡は許していたこと。
「「「ふう」」」
八人全員一安心した。シューンはカナは許していて姉たちは許したとは言っていない。だが、八人は楽観視した。
「アナはカナに会いに行きたいかな。労いたいし。皆もそうでしょ?」
「「「うん」」」
ユナを除いた全員が頷いた。だから、自然とユナに視線が集まった。
「ユナたちはカナに内緒で作戦を立てたよねえ。だから、カナはインドラ様に降伏しても良かったはずなんだよね。でも、カナはそれをしなかった。しかも、一人だけで地上に降りた。と言うことはだよ、カナはカナで作戦を立ててたんじゃないかな。つまり、カナはもしかしたら怒ってるんじゃないかな?」
「「「……」」」
「ユナたちはサポートするしかないんじゃない?カナの」
「「「サポート?」」」
「うん。カナはユナたちの妹だよ。考えることは同じはずよ。きっとカナはツリト君に会うために地上に降りたはずよ」
「ウールフ君。きりがないな」
「カーンさん。これはあ、便利だなあ」
カーンとアレクは皇居に迫って来る信者たちをひたすら格納庫に飛ばしていた。皇居にはエージソンシリーズの大砲がある。大雪を晴らすための大砲だ。奪われるわけにはいかない大事なものだ。二人は皇居の周りでとにかく小型拳銃を撃ちまくっていた。
「デコイを殺す⁉」
「うん。行こっか」
ジャンヌはいきなり出て来た女、カナの突拍子のない発言に反応が遅れてしまっった。
「どこに行くの?」
「南部の本拠地」
「いる確証は?」
「ない。でも、たくさんいるらしいよ」
ジャンヌはスマホを取り出して衛生映像を見た。アレクが作ったものだ。確かに半径五キロの円ぐらいに警備の信者がたくさんいた。
「どうやって殺そうと考えてるの?」
「うーん。勢い?」
「……」
ジャンヌは怒りを通り越して呆れを感じていた。仮にデコイがいたとして具体的な作戦も無しで勢いで殺すと言っているのだ。新たなデコイに変わってからまだ、誰もデコイの姿を見たことがなかった。理由はいくつかあるが一番は何重にも替え玉を用意していたからだった。そのためにルーフやウールフはデコイ教の国内の活発している侵攻を止めることができていなかったのだ。それを勘と勢いでどうにかしようと言うのだ。呆れるのも仕方ないだろう。
「何さ。実際に見せてあげるよっ!」
カナはジャンヌのいまいち信用していない顔を見て、口いっぱいに空気を溜め込んで握り拳を作った。そして、神速のライフルを構えるとジャンヌを撃って自分自身も撃った。
「とうちゃーく」
「いきなり敵の目の前に現れてどうするのよっ!」
ジャンヌはカーンの言霊によって瞬間移動したカナが現れるなり頭を思い切り叩いた。カナは思わず顔を顰めた。
「痛っ!」
「どうすんのよっ!すっごく睨まれてるんだけど!どうやって落とし前着けるんだよ、ねえ!」
「この子、不良だったのかあ。カナ、がっかり。メイド服着てるからお淑やかな子かなあって思ってたのに。はあ」
「いい加減にしなさいな、カナ!もっと緊張感を持ちなさいよっ!」
「ほらほら前見て。もう来てるよ」
カナはジャンヌの体を持ち上げて向きを変えた。ジャンヌは怒気で満ちた顔からすぐに血の気が引いた顔になって力が抜けていた。
「はあ。仕方ないなあ」
カナはジャンヌを左脇に抱えて宙に浮くと右手で神速のライフルを構えた。神速のライフルにもオーラを纏わすとどんどん大きくなっていった。
「わっ!ホントに大きくなった。これぐらいでいいかな。確か、格納庫に飛ばすとか言ってたなあ」
カナは右手だけで持てるギリギリの大きさまで神速のライフルを真上から次々に撃って行った。カーンのシックスセンスで次々に消えて行っている。地上からは爆炎、突風、クネクネ曲がる水、雷、光、闇、などの遠隔攻撃隊が次々にカナを狙っている。左脇にいるジャンヌはうわっ、あっ、へっ、などなどいちいちリアクションを取っていた。カナは軽く笑いながらセナのシックスセンスに変えながら撃ちまくっていた。だから、地面にはオーラの塊が所々に落ちていた。
「大分、減って来たけどまだまだいるなあ。ジャンヌ。ちょっと負ぶられて」
「負ぶられて?」
「そう」
カナはジャンヌを手放すと少しだけ降下した。ジャンヌは絶叫しつつもしっかりとカナの首に腕を腰に脚を回してしがみついた。
「よくできました。さてと。馴れて来たから大きくしていくよ」
ジャンヌは凄く力強く抱き着いて来ていてカナは可愛いなと思いながら神速のライフルを大きくした。神速のライフルは銃口が異様にデカくなっていた。
「さて、ドン。ドン。ドン。ドン。ドン。……………」
カナはどんどん、ドンドン言いながら撃って行った。ジャンヌは見惚れてしまった。カナの顔や体にもそうだが、実力がずば抜けていることにだ。
「凄い」
ジャンヌは口から思わず零れてしまっていた。今までに生で凄いと思える人に出会ったのは正直三人目だった。カーン、アレク、そしてカナ。ジャンヌはこの時に確信した。
私たちがこれから作る国の女王にならなければならないのはカナだ。
「よし。かなり減ったね。残りは教会内にいる信者だけね」
ジャンヌがカナに見惚れていた間にカナは半径五の円にいたデコイ教信者を全員、格納庫に連れて行っていたようだ。
「じゃあ、正面突破で行こっか」
「え?こっから撃っちゃえばいいじゃん」
「ダメよ。デコイは殺さなきゃ」
「でも、正面突破って……」
「ほら、行くよ」
カナは地面に降下して行った。その間神速のライフルを右手で持てるサイズに変えていた。今度は銃身が長くて銃口が細かった。スピード特価型だった。
「よし行くよ。今度はジャンヌも手伝ってよ」
「えっ⁉ええ」
ジャンヌはカナに圧倒されっぱなしだった。目的を一瞬忘れてしまうぐらいに。カナはぴたっと閉ざされているドアの前に行くと神速のライフルを構えた。
「どうせ、硬くなったり鍵してたりトラップ掛けていたりと色々してるんだろうけど。今のカナには全部無意味だよ」
カナは扉に向かって発砲した。ドアは消え去ると思っていたが消え去らなかった。
「相当なオーラ量、オーラの練度だね」
「うん。もう、助からないかもね。だから、せめて早く楽に逝かせてあげよっか」
デコイは黒色のオーラを信者に纏わすために、寿命をエネルギーにしている。今、扉のオーラの練度が上がっていると言うことは、寿命の消費量がかなり多いと考えられた。だから、カナは助からないと考えて威力を上げることにした。銃弾を作る。今さっきまではオーラをぶつけていただけだった。だから、威力はなかった。だが、銃弾にしたことで縛りを作ったのだ。この縛りは今回のケースではかなりプラスな要素しかないが、普通に使うとなるとかなり使いづらくなる。だから、縛りなのだ。カナは神速のライフルでカーンのシックスセンスが使える銃弾を螺旋回転を加えながら発砲した。これが、カナがメモリブレットと認識して初めて使った瞬間だった。
「メモリブレット。って名前にしよっかな」
「嘘でしょ⁉」
ジャンヌの視界には目の前の扉が消えて風圧で中にいる信者たちが飛ばされている光景が入っていた。
「あちゃあ、やりすぎちゃった」
カナは片眼を閉じて少し顔を顰めて軽く笑っていた。
「じゃあ、ドンドン、お願いね」
ジャンヌはカナの規格外さに目が引いてカナの指示に一拍遅れた。
「うっうん」
二人は次々にデコイ教信者を撃ち抜いて行った。カナの方が速く正確に次々と撃ち抜いて消えて行っていたが。すぐに一掃した。
「余裕だなあ。じゃあ、どんどん行くよ」
二人は一つ一つ部屋を消しては信者を飛ばして行くのを繰り返した。やがて、豪華な扉だけが残った。
「ここだね。ジャンヌが大将首を取っちゃう?」
「ホントに凄い胆力だわ。冗談はいいからカナが殺ってよ」
「じゃあ、美味しい料理を鱈腹用意してよね」
「いくらでも用意しますよ」
「じゃあ、ちょっと倒れるかもしれないから宜しくね」
「え⁉どういうこと?」
「お願いね」
カナはジャンヌの疑問には答えずに目の前の豪華の扉をカーンのシックスセンスを記憶した銃弾、メモリブレットで撃ち消した。扉の中にいた信者たちは先ほどまでの信者とは違い風圧では飛ばされなかった。精鋭たちだった。老化も早かった。カナは距離を高速で詰めて来たり引き寄せて来たりしている信者たちを次々に撃ち抜いて行った。
「少しはマシだけど、所詮は借り物の力だね。ジャンヌ。大丈夫?」
「ええ。カナさんの後ろにいますから。アレがデコイですかね?」
丁度真上にある太陽の明かりに照らされている一人だけ豪華な白い着物を着ている男が大勢の信者に囲まれていた。奥に行くにつれて虚ろな目をしていた。
「間違いないね。ジャンヌ。大丈夫?」
ジャンヌが撃っていたオーラ砲は相手の防壁に押されていた。撃つ速さを防壁を作る速さが上回っていた。カナはジャンヌのフォローをしながら、どんどん信者たちを格納庫送りにしていた。
「ちょっとだけ、厳しいです」
「素直で宜しい」
カナはジャンヌが構えている小型拳銃に円盤状のオーラを広げた。防壁のようなものを作った。
「何ですか、これは?」
「防壁的な感じかな」
カナはセナのシックスセンスを使ったのだ。これにより、前からの攻撃はほとんど防げるようになった。ジャンヌは攻撃だけに集中できるようになり発砲速度が上がった。防壁の生成速度を上回った。
「よしっ。じゃあ、ぱっぱと終わらせようか」
カナはジャンヌの様子を見て発砲速度を上げた。次々に信者は格納庫に飛ばされた。やがて、虚ろな目をした集団だけとなった。一人の信者の前の空間が歪んだ。そして、カナとジャンヌの前にも空間が歪みだした。信者たちはその歪んだ空間にたくさんの刃物、暗闇、水などなどを接着させて高速で飛ばしたのをワープさせようとした。が、遅かった。カナはメモリブレットの螺旋回転の回転数を上げて先に撃ち抜いた。信者たちの攻撃の塊を格納庫に飛ばしたのだ。信者たちは驚愕を隠し切れずに慌ててしっかりとオーラを練ることをせずにシックスセンスをバラバラに使うようになってしまった。それを見逃すカナではなかった。
「あらら。カナたちより弱いんだから連携しないと」
「凄い」
ジャンヌはカナの規格外さに改めて感心して、カナは余裕の表情を見せていた。そして、とうとう、一人だけが残った。デコイだ。デコイは既に消耗していた。老けたのではない。寧ろ、青年ほどの年齢だ。
「やあ。降伏してデコイ教を畳んでくれない?」
「私にか?笑わせる。殺せ」
「ふざけるな。また、転生するつもりだろう!」
デコイはシックスセンスは違えど性格は同じであることはカーンやルーフ王との話し合いで推測を立てていた。
「転生?フッ。私がしているのは転生などではない。その更に上だ」
ジャンヌは鋭く睨み付けて小型拳銃のオーラ砲でデコイを殺そうとした。が、カナに止められた。カナはジャンヌの薄い胸を揉んでいた。
「何をするの、カナ!」
「落ち着いて。普通に殺したらデコイの輪廻は断ち切れないよ。だから、任せなさい。カナが終わらせてあげるから」
カナはメモリブレットをインドラのシックスセンスにした。これは賭けだった。カナの体力は万全ではない。一度、インドラのシックスセンスを使ったことによる疲労が溜まっている。だから、もう一度、インドラのシックスセンスを使った時、肉体の損傷がどうなるか分からなかった。一回目は充血、筋肉の硬直、意識が一瞬飛んだ。それをセナによる回復と、姉たちの龍の血の吸収により何とか体力を戻した。今回はそれはない。だが、ナナのシックスセンスで肉体の強度は確実に上がっている。
「デコイは魂ごと滅さなければならない。だから、このメモリブレットは全てを焼き尽くす炎となる」
インドラが撃ったメモリブレットは螺旋回転を加えながら両腕を広げたデコイの心臓を貫通した。そして、デコイの肉体は燃え始めた。その炎は肉体を焼き尽くした後も燃え続けていた。宙を浮いて暴れまわっていた。
このままではマズイ!私はまだ、デストロイ様のために何もできていない。こんなところで終わるわけにはいかないのだ。何か手はないのか手は!状況を打開するための手は!どうする。どうする。今の社会では確実に外の奴らなど敵ではなかったはずだ。なのになのになのにっ!何たる失態。私は生きなければならない。生きないといけないんだ。まだなんだ。星の魂を掴めていないっ!
炎は教会の一部を焼き尽くして外に出ると次の依り代を探した。ジャンヌは炎を追おうとした。が、ようやく気付いた。カナが倒れていたことに。カナは大量の血を口から零して倒れていた。
「カナさんっ。カナさんっ!」
ジャンヌは追うのを諦めてカナを癒しの部屋に運びに行った。
デコイの魂は信者を探していた。デコイは今回の戦いで外の世界を乗っ取ることはできると思っていた。フロンティアは外の世界に干渉しない。だから、できると踏んでいた。
ああ、クソッ。フロンティアの奴らが関わりやがったんだ、絶対。畜生、畜生。考えればエージソンシリーズが送られたのは何故だ⁉そもそもエージソンは生前にあんなにエージソンシリーズを作っていたのか?しかも、おんなじのを。俺は嵌められていたのか⁉いや、今はそんなことはどうでもいい。クソッ。信者を無駄遣いしてしまった。次善策をちゃんと考えるべきだった。クソッ。ク…⁉
「君がデコイだな。僕は君を許さない」
目の前にいたサルシアは抜刀のようにして剣を抜きデコイの魂を居合切りした。
「その魂は二度と融合しない」
サルシアは魂を斬ることができないが焦げた跡に傷を付けることができた。これにより、デコイは依り代を失った。だが、サルシアから逃げた。
「うんうん。逃げると思っていましたよ。でも、僕からは逃げ切ることはできません」
雷の一閃がデコイの魂の焦げ目に雷撃を加えた。デコイの魂は弱った。
次から次へと。どうして、私の魂に攻撃を加えられた⁉クソッたれクソッたれ!
「おい。封印の壺の開けろお」
知るかっ!私のオーラを使ってそれは使っていないんだ。
「貴様の声は俺たちにも聞こえる」
「ん⁉チッ。知るか。封印の壺はもう二度と開けることはできない」
「動くな」
「クソッ。動かない」
「アレク。何か収納できないか?」
「そうだねえ。さすがに封印の壺は作れないけど僕なりのものを作って見るよ」
アレクは創造の設計ペンを生み出すと地面に設計図を書き始めた。
「どれぐらい掛かりそうだ?」
「五分で作って見せる」
「ウールフ君弱らせておくか」
「だなあ。このままでも良いだろうがもっとだなあ」
ウールフはシックスセンスを使った。ウールフの毛がより鋭利に尖るようになった。ウールフは両手を部分獣化して何度も平手打ちをした。デコイの魂はどんどんと傷.付いて行った。すると、サルシアとライも現れた。ライは走ってサルシアは瞬間移動で。
「やあやあ。まさか、ショワ王国に黒が三人いるとは思いませんでした」
「僕も驚いた。それで、デコイはどうだい?」
「見ての通りだあ。中々口を割らない」
「二人の力でどうにかならないか?」
「僕は無理ですね」
「僕がやろう」
マズイマズイマズイマズイマズイ。魂の形を変えたことでこいつらのシックスセンスの影響を受けなくなった。だが、私の安全は依然確保されていない。クッ!
サルシアによって傷つけられた。サルシアにデコイの足掻きは気付かれてしまった。
「デコイには定期的に傷を付けないといけないみたいだ。まずはっと。これで魂の融合はできない。念のため何回もしとくか」
サルシアは高速でデコイの魂を傷つけた。実に百回の上書きを行った。
「次はデコイについて知っていることを話して貰おうか」
これもサルシアは百回上書きを行った。
「デコイ教の起源と真の目的は?」
「デコイ教の起源はデストロイ様のため。目的はデストロイ様のために星の魂を見つけること。至極単純だ。故に、私は必ず死なない」
デコイは魂が焼かれるのを抵抗するのを止めた。今まで築き上げたものは全て捨てることを決心した。魂は急速に焼き尽くされた。
私は一からまた再築する。必ずだ。その為にも賭けに勝たせてくれよ。
「「「「「デコイが燃えるっ!」」」」」
サルシアは急いで炎を斬ろうとした。だが、斬れなかった。魂を焼き付くしてしまったのだろう。
「「「「「やられた」」」」」
五人の目にはデコイの魂が一気に焼かれて消えた。だが、実際は違った。デコイの魂は一気に燃え上がることで視線を誘導して真下にいた地中の虫に入ったのだ。
何たる屈辱。この私が虫に成り下がった。しかも、オーラの色も青。一番下に。畜生。畜生。畜生。必ず復習してやる。あのクソメスッ!
ここで、一つ語ろう。サルシアはデコイの魂は融合して大きくなっていると勝手に勘違いしていたが、実際は魂を喰っていたのだ。融合するのと喰うのでは全く違う。融合はちゃんと処理をしないと精神が重なる。だが、喰うのは精神が重なることはない。これほど大きな差があるのだ。
五人は情報を引き出せずに逃げられてしまったことを後悔した。
デコイはカナへの憤怒、憎悪、復讐心を煮えたぎらせて人間の依り代を探した。




