第二章 30 ウールフの進化
一年後、十八歳になったジャンヌはアレクの発明の手伝いはする必要はなくなった。フロンティアで得た野生の生物たちがカーンも含めて三人のオーラの練度を上げた。ジャンヌの異空間はアレクの活動を活発化させた。アレクは着実に未来都市ニューフロンティアの準備を進めていた。それと、同時並行でガーンダムをモチーフにしたロボットも作り始めていた。
「効率のいい方法を探さなきゃなあ」
アレクはロンギヌスの制作に時間が掛かることに困っていた。と言うのもアレクが書く設計図は複写コピーすることはできないためだ。コピーをすると作ったロンギヌスの効果が下がってしまうからだ。そして、最もアレクの心に占めているものは別にあった。
「これじゃあ、ロボットを作る時間が増やせない」
一方その頃、ジャンヌとカーンは新たな孤児を一緒に保護しに行っていた。今日は北部に保護されている新しい孤児たちに会いに行っていた。何故、カーンとジャンヌが一緒に向かっているかと言うと、カーン一人だと、デコイ教の襲撃者の対応が難しくなったからだった。いくら、オーラの練度が上がったからと言ってたくさんの人数で攻撃されたら対処できなくなってしまうのだ。カーンとジャンヌは圧倒的な力を得ることができていなかった。と言うのも二人とも戦闘向きのシックスセンスではないからだ。アレクが武器を作ってくれてはいるが、それでも所詮武器なのだ。圧倒的力を出すことはできないのだ。今日は、と言うより二人で行動するようになってからはカーンが施設の外で待ち、ジャンヌが施設の中に入って直接保護する流れとなっている。この施設の代表はデコイ教信者ではない。それはルーフ王から直接派遣されているからであった。そのため、ジャンヌはパッパと話を済ませて保護する流れとなった。
「こんにちは」
「こんにちは。それで、ホントにデコイ教信者が近くをうろうろとするようになっているみたいですね」
この頃にはジャンヌも敬語を使えるようになっていた。ジャンヌは空からの映像でそれを確認していた。
「はい。それをルーフ王に報告したらあなたたちを頼るようにと」
「はい。お任せ下さい。では、子供たちのところへ案内をお願いします」
ジャンヌは六十代ぐらいの白髪頭の女の後に続いた。子供たちは扉の向こうにいるのだろう。ノックして扉を開けた。目の前には両手両足を縛られた子供たちがいた。彼ら彼女らは全員怯えていた。代表はドアを閉めてジャンヌを見た。
「やっぱりね」
「私たちは既にあなたたちのことは知っていましたから。全力で殺させていただきます」
「乗っ取りババア。最近の悩みの種だったんだよね。殺させてもらうよ」
ジャンヌはメイド服を着ている。スカートはロングで髪もロングだ。ジャンヌはオシャレで簪を着けていた。それを引き抜き手に持った。そして、ポケットからは疑似水晶を取り出した。その疑似水晶はカーンのオーラが保存されている。
「この簪は目の前のババアの首を貫くまで止まらない」
施設の代表、デコイ教信者に操られている、に向かってジャンヌは回転を加えて婆さんに向かって投げた。対する婆さんも黒色のオーラを纏ってオーラを鞭のように形成してジャンヌに向かって撓らせた。鞭の速さは常人では目で追えない。だから、ジャンヌに間違いなく当たる。はずだった。ジャンヌが投げた簪が普通のものであったらば。ジャンヌが投げた簪はアレクが作ったものだ。簪は防壁をコマのように纏って婆さんの首を貫いた。
「ごめんね。私たちがもっと早く来ていればあなたはデコイ教に操られることはなかったかもしれないのに」
ジャンヌは異空間から掃除機を取り出した。これもアレクが作ったものだ。この掃除機で死体と部屋の血を吸い取った。同時に自分に付いた血も吸い取った。簪もそのまま吸い取らせた。軽く体を伸ばすと子供たちがいる部屋に向かう前に外にいるカーンに会いに行った。
「はい」
「おう。助かる。ちょっとだけ待っててくれ」
カーンは自身に付いた血を掃除機で吸い取ると近くに転がっている五人の死体と血を吸い取った。
「怪我は、お互いにないようだ。行くか」
「うん。ちゃんと飴玉持った?」
「ああ」
二人はお互いの体を確認して頷き合ってから子供たちの保護を行った。
「お疲れ。ジャンヌも飲むかい?」
二人は異空間で待つアレクと合流するとそのまま晩御飯を取った。保護した子供たちは同じ境遇の先輩たちに任せていた。と言うのも、やはり、大人を見ると怖がる傾向があるからだ。また、ジャンヌとアレクに少しだけ恐怖があるからだ。怖い黒色のオーラを纏った婆さん含め六人を殺した者たちにそういう思いを抱いてしまうのは仕方のないことなのかもしれない。
「うん。ガンガン飲む」
「ほどほどにな」
ジャンヌはショワ王国の法律でお酒を飲める年齢になっていた。独りこそこそ飲んでいたが。そして、酒は強かった。一度、二人の前で飲んだ時、軽く勝った。だが、酒は一般的には体に有害とされているためカーンは止めた。
「でも、それって私に通用するかな?私エルフだよ」
「それもそうだね。今度、僕がジャンヌの体を調べようか?」
「そうだな。それもいいかもしれない」
「私を無視して勝手に進めないでよ。やりたくない。だって、凄―く時間が掛かりそうだもん」
「だね。絶対、僕たちのただの人の条件と当てはまらない何かがありそうだからね」
「それも、そうか。しかし、今回、余りにも露骨だった」
「だね。今回はちょっといつもより好戦的になってた。ルーフ王たちが本気でデコイ教を崩壊させようとしいるのかも」
「ウールフ。何でできんの?僕、言うてるやろ。オーラに干渉するやり方を見つけえやって。せやのに、何でまだできひんの?殺意が足りん?」
「分かんねえよ」
「言うてるやろ。デコイ教信者を殺すんとちゃうくてデコイそのものを殺すんよ。何でできへんの?」
「って言われたって。黒色のオーラを纏うわ、それぞれちゃんと違うシックスセンスだわでいまいち掴めないんだよなあ」
「仕方ない。ホンマはやりとうなかったんやけど、無人島に行こか」
「じゃあ、一ヵ月間頑張ってや」
ルーフは船に乗って北部のフロンティアの近くの無人島に連れて行った。そこでもやはり、黒色のオーラを纏った生物しかいない。かつて、ルーフも一ヵ月間籠ったことがある場所だ。ルーフはウールフを無人島に降ろして帰ろうとした。が、見つけてしまった。
「ウールフ。服脱いで」
「チッ」
ウールフは服の中にギリギリ一ヵ月間耐えられるほどの食料を隠し持っていた。本当にギリギリ一ヵ月間何もしなければ生き残れる量だったがダメだ。
「僕が期待してるんはオーラの練度が上がることだけとちゃうんよ。ウールフのシックスセンスの使い方の進化やで」
「さてと、ウールフには頑張ってもらうとして僕も直に会いに行こか。ツリト君に」
「疾くと御覧あれ」
ツリトは圧倒的に進化していた。魚に斬撃を飛ばしながら精神の世界が見えるようになっていた。これで、今日の握手会の異常者を探していた。ツリトが相手にしている悪人はデコイ教だけではない。奴隷商、詐欺師、裏社会の連中、などなどときな臭い連中はたくさんと来ている。それでも、問題なく解体ショーや握手会をできているのは完全にツリトの判断によるものだった。ツリトは悪人の存在をおじさんやおばさんには一切伝えていたない。それは、ツリト自身に害をもたらされていないからであった。ツリトが問題が起こる前に全て対処しているからであった。だから、今日もいつも通り、悪人に良心を取り戻させて誰かからの支配も消している。ただ、その握手会に列には並んでいないが二階から黙って興味深げに向けている視線があった。
「ふーん。ホンマにデコイ教信者を正常に戻しとる。ほいで、他にもたくさんの悪人を更生させとる。凄いな、ツリト君」
ツリトはいつも通り、海に斬撃を飛ばして無人島に走って帰った。家に帰ると一昨日獲っていた熊の残りを汚れを弾いてから焼き始めた。副菜としてキュウリもしっかり斬撃を飛ばして斬った。
「へえ。凄いね。ツリト君。僕感心したわ。ウールフはおんなじことできるかな?まあ、ええわ。ちょっとお願いがあるんやけど構わん?」
「狼人、か。この無人島にはいないはずなんだけどな。で、何?」
「ちょっと、僕のオーラを斬ってくれへん?」
ツリトは目の前にいる狼の顔をした人の精神を見た。害意はなかった。だから、望み通りオーラを斬った。
「うん。なるほど。ちょっと、練度を上げるさかい頑張ってや」
ツリトもオーラの練度を上げて行った。オーラに斬撃を何度も何度も飛ばした。そして、五割ほどのオーラの練度で纏った時にようやくオーラを斬ることができた。
「中々やるね」
「僕がこの言われようか。ちょっと凹むわ。でも、ありがとうな。ようやく掴んだわ。オーラの感覚っちゅうものを」
ルーフはデコイ教を本格的に崩壊させるためにオーラの研究をしていた。と言うのもデコイを殺してもすぐに新たなデコイが現れるからだ。これが非常に厄介なのだ。だから、ずっと研究させていたし、していた。だが、中々掴めていなかった。オーラの感覚を深く理解することはできていなかった。だが、今日、理解した。
「ちょっと、軽くオーラを纏ってくれん?」
「いいけど」
ツリトは言われた通り軽くオーラを纏った。何となくやろうとしていることは分かっていたため、近くの枝にオーラを纏った。そして、それを軽くルーフに投げた。枝に纏われていたオーラは均一に纏われなくなり弾けて変な方向に飛んだ。
「うん。ホンマにありがとうね、ツリト君」
ルーフは最後までツリトに狼の顔の姿のまま相対した。
「ちょこっと、ウールフの邪魔をしに行こか」
ウールフは思ったより苦戦していた。自身が身に着けていた隠形が通用しなかったからである。気配は消せても匂いは消せない。そのため、不意打ちができなかったのである。そして、野生の猪を辛勝で殺したため完全に舐められてしまったのである。ウールフは真面に眠ることができなくなっていた。今までに感じたことのない死への恐怖を感じた。今もウールフは食料にと殺していた猪を置いて逃げていた。
「クソッ。獣化するしかないかあ」
ウールフの獣化は制限時間があり一時間ほどしか維持できない。
その様子をクスクスと笑いながら、船からウールフの様子を伺っている男がいる。ルーフである。ルーフは怪しい笑みを浮かべた。
「ふう。結局この五日間、俺はあ草しか食えてねえ。どうしたものかあ」
ウールフは圧倒的に強くないため野生の獣に舐められていた。常にスリーマンセル以上で奇襲を掛けられていた。ウールフに足りないもの。それは圧倒的強さ?否。圧倒的殺意である。獣は、生き物は本能的に殺意を感じる。ウールフには殺意が足りていなかった。殺意。これは何から感じるか。オーラの練度は殺意を高めるための一つの手段である。殺意を感じさせるものは雰囲気である。如何にヤバい奴なのかを伝える雰囲気なのだ。それは違和感を与えること。表情、声音、行動、感情、全てが一致しないことだ。この違和感を感じた時、生物は初めて本当の恐怖を感じる。ツリトの場合は単純に圧倒的に強かったから獣たちは本能的に逃げていた。しかし、ウールフはその段階にいない。では、違和感を覚えさせることが重要になるが果たしてそれができるか?それか、短期間に強くなれるか?
ウールフは砂浜に座って休憩をしていた。生物が寄って来たらすぐに移動しての繰り返しだ。それを遠くから観察していたルーフは悪い笑みを浮かべた。
無人島に置き去りにされて十五日、体力も減って来てはいたがオーラの練度が上がって来ていた。そのため、体はかなり軽く動いていた。食料も手持ちサイズの虫や草で最低限は取っていた。また、気配の消し方や独りになる方法などなども掴めて来ていた。今は猪の群れに気付かれずに後ろを歩いていた。
うん。この調子だなあ。気配の消し方も体内に流れているオーラを如何にゆっくり流すかが大事なのかも感覚で分かってきたあ。
二十日目。ウールフはとうとう、殺意で獣たちを退けることに成功した。オーラの練度が上がったことも大きかったがやはり、殺意の向け方の工夫が大きかった。心穏やかにしながら獣を前にした瞬間、全オーラを練度を上げて纏ったのだ。すると全員一斉に走って逃げ出したため後ろから簡単に仕留めることができた。この日、二十日ぶりに肉を食うことができた。
二十五日目。ウールフは獣たちのシックスセンスを使わせた状態で組手をしていた。獣たちは黒色のオーラを纏い、シックスセンスは単純に筋力アップが多かった。そのため、ウールフはどうしても後手に回り何度か冷や冷やする場面があった。
二十六日目。残り五日間。この日は朝から上手く行かなかった。と言うのも邪魔をされているからであった。ウールフがオーラを纏って生物を仕留めようとするとオーラの流れが不自然に初心者が起こす失敗を何度もしてしまったためである。ウールフは最初、いよいよ疲れが出て来たのかと思った。だが、二回目もすぐに起こり違うと確信した。気配は感じない。だが、急にオーラの流れが乱れる。こんなに気配を消せて、爆発したようにしてオーラの流れを乱すのは間違いなく父であるルーフしか考えられなかった。
「クソ親父めえ」
ウールフは獣の気配がない場所に移動して、なるべく安全を確保することに決めた。しかし、四方八方で爆発を起こされて獣たちが集まって来てしまった。結果、ピンチに陥ってしまった。その日は一日中走り続けて逃げることに精一杯だった。
二十七日目。右足に怪我を負った。四方八方からの爆発とオーラの流れが乱れることによる動きの不自然さとパフォーマンスの低下により怪我を負った。言うまでもなくルーフが怪我をさせた。ウールフは殺意だけを常に飛ばして独りにとにかくなった。爆発を最低限度の動きで躱すように気を遣った。
二十八日目。軽く走るぐらいには右足は回復した。だが、昨日と同じようにして殺意だけを飛ばし続けた。間違いなく見ている父を騙すために。
二十九日目。右足はほとんど回復した。軽く走りながら開けた道を目指した。しかし、開けたところには獣たちも集まっていた。
「どうやら、考えることは同じみたいだなあ」
三十日目。最終日だ。敢えて独りになれるところに移動した。どうもラスト五日から父が攻撃をして来ている。この父の攻撃が無人島にいるどの獣よりも厄介だった。ウールフはいい加減疲れたため早いことルーフと決着を着けたいと考えていた。ウールフは敢えて地面に寝転んで休憩した。ルーフ相手に本気で挑むための準備だ。そのウールフの大胆な行動にルーフは思わず頬が緩んだ。
「僕、それは圧倒的強者がすることとちゃう?と思うんやけど」
ルーフは敢えてウールフに位置を悟らせたままウールフが仕掛けて来るのを待った。五時間が経った。ウールフはルーフのプレッシャーに気疲れしていた。ルーフの精神的な攻撃をウールフは確実に受けていた。ウールフは自分から動くことに決めた。気配がある方にウールフは飛び込んだ。気配ごと爆発した。
「やられた」
ルーフの方が一枚上手だった。ルーフは自身のオーラの気配を消して、木に自身のオーラを少し纏わせることでウールフの裏を取ったのだ。ルーフはウールフのオーラを爆発させた。ウールフは吹っ飛んで木にぶつかり全身に衝撃が走った。
「チッ」
「うんうん。咄嗟の受け身はよくできてたねえ。最終日は僕がみっちり相手してあげる。掛かっておいで」
ウールフとルーフの対決は日が暮れるまでずっと一方的だった。ルーフがウールフのオーラを爆発させることでルーフは一発もウールフから攻撃を食らわなかった。が、ウールフのルーフへの殺意は徐々に上がっていた。ウールフは攻撃を食らいながらシックスセンスを使う準備を整えていた。隙を作ろうとオーラを最小限に纏って動いていた。これにより、ルーフのオーラの爆破の威力を抑えていた。毎度毎度、血を流してこけて吹き飛ばされることはなくなった。ウールフとルーフはお互いに獣化する切り札を持っていた。使いどころをずっと探っていた。と言ってもルーフは獣化する必要はないのだが。ウールフは木に身を隠した。ルーフはすぐ近くでオーラをガンガンに纏っている。ルーフが爆発させた。すると木が爆発して折れた。ウールフは瞬間、獣化してシックスセンスを使った。ルーフを殺すために与えられたのはルーフのオーラを弾くだった。
「到達したあ」
ウールフは一直線に走りルーフの喉元に爪を立てた。ルーフは両膝両肘を爆発させた。はずだった。ルーフは爆発を失敗した。否、できなかった。ルーフは笑った。
「やるやん」
ルーフは空気を爆発させた。爆発はオーラを使った後の結果なため近くにいるとどうしても食らってしまう。ウールフは構わず一直線に走った。否、誘導されていた。それでも構わず、ウールフは進んだ。ウールフは喉元に本気で刺そうとした。ルーフは肘打ちの構えを取った。咄嗟に止まり回り込もうとした。が、ダメだった。そのまま裏拳を食らってしまった。この五日間で負ったダメージはかなりのものがある。そして、先ほどのルーフの一撃は手加減されていたにも関わらず、一瞬気絶してしまった。その間にもウールフは足払いをされて倒された。
「せやから言うてるやろ。もっと攻撃に工夫しいやって」
「チッ」
ウールフは地面の石や枝にオーラを纏わせてルーフに投げた。何度も何度も投げることで距離を取った。この攻撃は意外に効いていた。ルーフは空気を爆破させることで防いでいるが一瞬視界が確保できなくなり気配だけで探ることになる。だが、ウールフはここに来て隠形のレベルが上がった。また、色々とオーラを纏わせたことにより、気配が掴みにくくなっているのもある。ウールフは体力を使い果たすことにした。惜しみなく色々なものにオーラを纏わせて投げて投げて投げまくった。どれも、ルーフは空気を爆発させることで防いでいた。視界は塞がり、聴覚も騒音で余り機能せず、気配を肌感覚ぐらいでしか読むことができずにいた。肌感覚と言ってもほとんど分かっていないのだが。そのため、ルーフは直前まで気付かなかった。すぐ後ろで気配を消したウールフがいたことを。ウールフは項に爪を突き刺そうとしていた。ルーフは膝の力を抜いてそれを躱した。そして、ローキックを振り返りながら行った。ウールフはそれを予想していた。左手に持っていた石をアッパーの軌道で直前まで隠して投げた。よってルーフは顎に一発食らって飛ばされた。ルーフはギリギリオーラを顎に集中させて防いだため全然ピンピンとしていた。
「うん。よくやったねえ。僕じゃなかったら今ので死んでたよ。でも、まだ戦い方に無駄があるんとちゃう?」
「チッ」
「ウールフ。自分、さっきから舌打ちしかせんやん。何をそんな怒っとるん?」
「チッ。別にい。結局、一発だけ食らわしただけでえ、力尽きちまったあ」
「しゃあない、しゃあない。せやけど、これで、僕やツリト君とおんなじ次元に行けたねえ。頑張ったやん」
ウールフはその場で寝転んで眠った。体力を使い果たしてしまったのだ。
「あっ、起きたよ。テリオさん」
ウールフは傷一つない裸の状態でベッドの上で寝ていた。一ヵ月間の怪我、主にルーフに付けられた、をこの二日でテリオが確実に丁寧に治療していた。これはテリオのオーラが金色でシックスセンスが治癒だったからできたことだ。それでも、二日経っても起きなかったためルーフはかなり叱責されていた。
「ホントだ。目を覚ましたみたいね。ウールフ、調子はどう?」
「かなり、良い感じい」
「良かった。心配してたんだからね、ウールフ」
シリウスはウールフの顔を見て話していなかった。目線は下半身に行っていた。ウールフは顎を下げて身体を見た。
「何で、裸なんだあ⁉」
不意のことでウールフは羞恥心を感じざるを得なかった。




