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TSURITOー繋げた未来  作者: カバの牢獄
第二章 カナヤ新興国
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第二章 25 パパ活

「ウールフ。今日は僕と組手や。殺す気で来てや。僕も殺す気でやるから」

「チッ。どうせ俺は軽くあしらわれるんだあ」

「じゃあ、やるでえ」


 ウールフはルーフの周りを緩急をつけて歩いた。同じ姿勢で徐々にスピードを上げて歩いた。ウールフが何人にも重なって見えるようになった。


「うんうん。言い感じとちゃう?でも、オーラの練度を上げてスピードを上げるんやったらもっと分かりにくくせんとあかんね」


 ルーフは砂浜を爆破させて砂煙に自分の姿を隠した。ウールフは尚も、緩急をつけて歩いていたが足払いをして倒された。そのまま、ルーフはウールフのお腹を踏もうとした。ウールフは咄嗟の判断で体を横に転がし辛うじて避けることができた。距離を取ったままウールフは手に持った石にオーラを集中させてルーフに弾き飛ばした。ルーフはそれをキャッチして見せてそのままウールフとの距離を詰めた。ウールフはここで自身のシックスセンスを使った。ルーフを殺すための力として筋力増加が与えられた。


「チッ」


 もっと便利な能力出ろよっ。


 と思いながらも両手を部分獣化した。爪を立てて、ルーフがやってくる進路に右腕を伸ばした。利き腕だ。ルーフはそれが見えた。だから、左側、ウールフの右側に移動して横からストレートを食らわそうとしたがウールフが左手を内側に伸ばしてルーフの心臓を狙って来た。それをルーフは殴ろうとしていた腕を曲げて肘でのの左手の甲を下に弾き、左フックを腰に食らわすと同時に爆破を起こした。


「ふう。もう一段階欲しかったなあ。僕とやるんやから三手目、四手目をちゃんと考えとかあかんやん。自分阿保なん?」

「だから、両腕はブラフさあ」


 ウールフは締めていた背中の筋肉を一回緩めて左後ろ回し蹴りをルーフの頭にむかって食らわした。が、ルーフはそれを予期していて左腕で受け止めると右足で前蹴りをしてウールフを蹴り飛ばした。


「うん。この三手目は予想できとったよ。大技に行こうとし過ぎやね。分かるよ。僕相手に何度も攻撃できるチャンスはないもんね。でも、そんな大技は動きが大きい分、隙ができるに決まってるやん。ホンマは足払いだけでも良かったんやけど、失敗やったから前蹴りしてもうたわ。どないするん?」


 ウールフは全身獣化した。オーラ量を増やして気配も分かりにくくなった。そのまままっすぐとルーフに一直線に走った。


「突進かあ。芸がないなあ」


 ウールフは爪で地面の砂を引っ掻いて砂埃を起こすと一直線に貫手を行った。その貫手はルーフの首に刺さろうかとしていた。が、その貫手は刺さることなく足元を逆にタックルされてウールフは顔面に掌を当てられた。


「僕の完全勝利やねえ。最後のは良かったんとちゃう?迷いが一瞬生まれるからね。そこで最短距離を行ったんはええ判断やったと思うわ。けど、二回目以降は工夫せなあかんやり方やなあ。だって、次からは相手は後ろに下がる準備をするさかい」

「チッ」

「チッ。って酷いなあ。僕も傷つくんよ」


 ウールフは背中を向けて足早に離れた。テリオがウールフの背中を治癒していた。服を受け取るとそのままシリウスの元に向かった。


「テリオ。先方はもう来たかい?」

「うんうん。まだ。ウールフも同席させる?」

「危険な存在かどうかは僕も分かるから。それに、殺し合いをするわけとちゃうからええんとちゃう」

「じゃあ、母さん用意して来る」




「チッ。また、負けたあ」

「もしかしたら、ウールフ、ツリト君よりも弱いんじゃない?」

「殺傷力は強いからなあ。そういう面では弱いだろうけどお、俺の方があ活躍の幅が広いはずだあ。それに暗殺するとなると殺せると思うしい」

「そんな風に見てたの、ウールフ?物騒ねえ」

「ちっ、違う」

「まあまあ、今日はお客さんが来るみたいだね」

「だなあ。俺はあ、参加しなくていいみたいだあ」

「それなんだけど、テリオさんが迎えに行ってあげてって」

「母さんが?はあ。面倒だなあ」

「じゃあ、行くよ」




「ねえ、何で私たちが王様に会いに行くことになったの?」

「俺たちの活動がバレたからさ」

「もしかして緊張してる?だから、私を連れて来たの?だったら、アレクを連れて来た方が良かったんじゃない?」

「アレクはダメだ。万が一バレた時にダメージがデカいから。俺たちの最終的な目標は国を作ること。その中枢にいるアレクの存在はバレるわけにはいかない」

「私を連れて来たのは何で?」

「なんとなく」

「ふーん。この貸しはデカいわよ。で、待ち合わせ場所はここで合ってるの?全然、来ないじゃん」


 カーンとジャンヌは飛行機を降りて待ち合わせ場所の喫茶店で一服していた。だが、一向に待ち合わせ相手が来る気配がない。


「何でか分からないのか?」

「何で?」

「周りを見てみろ」


 ジャンヌは両手で持っていた温かいココアを机に置いて周りを見た。皆、カーンに視線を集めていた。


「カーンに視線が行ってるじゃん。もしかして、顔バレしてるの?」

「違う。ジャンヌのせいで変態だって思われているんだ」

「何で私のせいにするの!」

「十二歳の少女が若禿の男と一緒に喫茶店にいる。これ自体はまだ、許容範囲だ。だが、問題はお前の格好だ。ロングスカートのメイド服を着ていることが問題なんだ。今、周りの人が思っていることは、あの禿げ、メイド服を着させてパパ活してる、だ。ジャンヌは身長がちょっと高いから十六歳ほどで見られてるだろうがな。だから、待ち合わせの人も無闇に声を掛けにくいんだ」

「なるほど。じゃあ、間違ってないね。ジャンヌは見返りを求めて一緒に来てるからね」

「はあ。移動するぞ」


 カーンはジャンヌの腕を掴んで移動したことで余計に店内はざわついてしまった。そして、人気のないところで少年と少女が目の前に現れた。




「びっくりしちゃった。ホントにメイド服を着て待ってるなんて」

「シリウスさん。何が悪いの?」

「全然悪くない。寧ろ可愛い」

「ホント?」

「うん。ホント」


 二人の少年少女に案内されて二人は皇居に向かって人気のない道を歩いていた。ジャンヌはシリウスとカーンはウールフとは年の差があって会話はしていなかった。ウールフも自分から話し掛けることはしなかった。


「ねえねえ。ジャンヌは黒だって聞いたけど、ホントなの?」

「まあ、うん」

「へえ。どんなシックスセンスなの?」

「それは…」

「ごめん。軽率だったね。こんなところで話す内容じゃなかった」

「気にしないで」

「ここを真っ直ぐ進んだらルーフ王がいるから」


 ウールフとシリウスは揃って礼をしてその場を離れた。カーンは少し冷や汗を掻いていた。




「やあやあ。よくぞ来て下さいました。カーンさん。そして、ジャンヌさん。まずは、現状をお教え願います」

「はい。私たちはデコイ教のせいで孤児になった子を主に保護しています。孤児施設にはデコイ教の信者が来て子供に良い印象を与えていたのが許せなくて始めました。現在は四千人近く保護しています」

「ふむ。食料や住まい、その他もろもろ大丈夫なのかい?」

「はい。食料、住まいもろとも大丈夫です。教育も医療も充実していて私が考えたプログラムを行ってもらってます」

「ふむ。なら、ショワ王国が預かってる被害者も預かって貰おうかな」

「「っ⁉」」

「勘違いしないでくれ。面倒を見るのが嫌というわけではない。デコイ教の調査に本腰を入れたいんだ。新しいデコイの動きが最近過激になってるのは知ってるだろう。余はそろそろデコイ教を退けたい」

「条件があります。その調査結果は逐一私に報告をお願いします。ジャンヌの力になれるかもしれませんから」

「ふむ。いいだろう。だが、こちらからも一つ言っておく。信者は余たちが殺す。主らが手を汚す必要はあらぬ」

「了解です。一つお願いがあります」

「何だ?」

「いずれ、南部で建国して宜しいですか?」


 ルーフは鳩が豆鉄砲を食ったようになった。そして、笑った。


「ふむ。良いぞ。正直、広すぎて統治も大変なんだ。だから、デコイ教が南部で勢力を広げてしまったんだろうね。だから、できるなら構わん。ちなみに主のオーラは?」

「青です」


 カーンは青色のオーラを纏った。練度も全然だった。ルーフは含み笑いをしたようにジャンヌは見えた。


「まあ、頑張ると良い。主には行動力がある。新たな政治体制を作ると良い」

「ありがとうございます」

「他に何かあるか?なら、ショワ王国一番の料理人に飯を用意させてある。是非、食べると良い」

「ありがとうございます」「ありがとうございますっ」


 ルーフとカーンは同時に笑った。


「堂々としていて良い。気に入った」




「ルーフ。どうしたの?」

「何、大したことではない。カーンは大胆だが、慎重だと思ってな。こうして、テリオが盗み聞きしていたことに気付いていたし、外部からの盗み聞きの可能性にも気を回していた。ここは全く心配がないのにな。でだ、カーンは国を作るだけの力があるのだろうな。ということは」

「「黒」」

「暗喩で伝えてきよった。うん。中々におもろいやん」




「ねえ、どうして、あんな事言ったの?」


 ウールフとシリウスがいなくなった後、誰もいなくなったところで料理を前にしてジャンヌがカーンに聞いた。ジャンヌは見るからに高級そうな盛り付けの料理に箸を伸ばしていた。


「何、許可は取っておいた方が良いからね。それと、それが可能なことも伝える必要があった。本気であると示すために」

「ふーん。これおいひいよ」

「ジャンヌ、大した度胸だな」


 カーンはジャンヌの場の空気に飲まれず、恐れ知らずで、誰に対しても変えない態度を心から感心した。


「カーン、老けた?」




「満腹満腹」

「満足してもらったようで何より何より。因みにやけど、今からこっちの孤児を連れて行くことできるん?」

「ジャンヌ。どうだ?」

「うーん。一週間だね。一週間本気で準備したらできると思う」

「そっかそっか。じゃあ、カーン君。僕、この一週間の間に色々手配して集めとくね。ざっと五十万人はいるから頑張ってね。じゃあ」


 ルーフはオーラを纏ってすぐに音を立てずに逃げて行った。カーンのスマホに着信音が鳴った。宜しく。だけ書かれていた。


「ヤバくね?」

「ああ」

「私今からイキシチ王国に行く」

「一緒に地獄に行こうじゃないか」


 カーンは逃げようとするジャンヌの腕をがっしりと掴んだ。




「そっか。それで、ジャンヌはカーンと手を繋いでたんだ」


 ジャンヌは逃げようとしたがカーンの言霊によって強制的に手を繋いだ状態で拠点の地下空間まで戻った。ジャンヌは必死に繋いでいた手を何度も何度も何度も洗っていた。


「でも、困ったね。こっちの孤児施設もまだまだあるのに五十万人かあ。今は南部の一番大きい街ぐらいしかスペースがないのに、これを半分の時間で百倍ほど広げないといけないのか。ジャンヌ。地下空間を移動できないのか?」

「できない。地上と同じ座標にしか繋げられない」

「アレク、何か凄い奴を発明できないのか?」

「できたとしても、一週間では難しいさ。燃料の問題があるからね。オーラを無限に使えるシステムがあればいいんだが…」

「電気をオーラに変えれないの?」

「なるほど。だけど、発電方法はどうしようか。超巨大タービンを磁力で回すか。それをカーンの言霊でパワーアップさせると。どうかな?」

「いいんじゃないか?」

「待って。それなら、もっといい方法がある」




「まさか、こんな方法があるとは驚いた。ジャンヌ。やるなあ」

「僕もこれは驚いた。これで、無尽蔵のオーラを得ることができる。とりあえず、今から僕は改良したドリルを作って行くよ」

「ジャンヌに感謝しなさいよね」


 三人の目の前には、アレクが作った絶対に割れないガラスを間に挟んで、宙に浮いたタービンがあった。タービンは目にも止まらぬスピードで回り続けていた。天井と壁は二色に彩られていた。タービンの円柱を半円の円柱になる境目で赤と青の床、天井に分けている。隣、向かい合った色は異なっている。ジャンヌが作った部屋は磁力の部屋。超強力な磁力が部屋全体に働く部屋である。並大抵の人は磁力に押し潰されるほどである。ジャンヌは辛うじて一分だけ耐えれたぐらいだ。タービンはもちろんアレクが作っており、耐久力と浮遊力と高発電効率を兼ね備えた優れものである。この二人の力により永遠にタービンを回し続けるシステムを作ったのだ。そして、今は発電量をとにかく多くするためにカーンのシックスセンスが付与されている。部屋の磁力を上げたのだ。これにより、大量の電気を生み出したのだ。そして、その電気を蓄電しているのが三人がいる部屋だった。その蓄電システムの隣に繋がっている発明品が電気をオーラに変換するものだった。今、電気をアレクのオーラに変換していた。アレクはそのための特別な椅子に座っていた。


「とりあえず、それぞれ僕が作った疑似水晶にオーラを溜めてくれ」


アレクは十個ほど溜めると部屋の外に行った。次はカーンが椅子に座ってオーラを疑似水晶に溜めた。


「ジャンヌ。俺のオーラはドリルに使っててくれ。ドリルの回転数を上げるようにして言霊を使うんだぞ」

「どこに行くの?」

「南部の孤児施設で子供たちを保護しに行く。デコイ教の活動が更に過激になる前に。だから、なるべく早くこの異空間を広げてショワ王国全体とリンクしてくれ。今のリンクしてる範囲じゃあ間に合わん。とにかく、今リンクしているところは今日中に保護するからさ。頼んだ」


 カーンはジャンヌにそう言い残すと疑似水晶を十個、ジャンヌに渡してすぐに部屋から出て行った。ジャンヌは軽く聞いていたが一人になって十個分のオーラを溜めてから気付いてしまった。


「あの、禿げ。私に子供部屋をたくさん作っとけってことじゃないかっ!」


 ジャンヌはカーンが直接、伝えなかったことに強い怒りを覚えた。

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