第二章 24 重労働
「私はイキシチ王国に行くんだっ!」
「まあまあ、ジャンヌ。待ちなよ」
「ジャンヌ、俺はあと五百個ほど子供部屋を作れと言ったよな?」
ジャンヌは異空間から飛び出し、逃げようとした時にアレクに後ろから抑えられてカーンに道を塞がれた。ジャンヌはカーンとアレクの拠点に移動してから二週間ほど、毎日、アレクと共に異空間を広げては部屋を作ってを繰り返していた。その間、カーンは更に子供の数を増やしてとうとう、三千人を超そうかとしていた。そのため、ジャンヌとアレクは寝る間も惜しんで二人で作業していた。ジャンヌは自家栽培の部屋も広げないといけなくて本当に馬車馬の如く働いていた。ツリトのニュースも碌に見れずに頑張っていた。ジャンヌがツリトのニュースをテレビで見ようとするとアレクがガーンダムアニメを掛けて断固として譲らなかったのだ。ジャンヌは心の癒しを求めて外に出ようとしていた。
「何で、私がこんなに一生懸命働かないといけないのよっ」
「「ジャンヌが便利だから」」
「声揃えるなっ!それに、アレクの発明で何とかなるじゃんっ!」
ジャンヌの異空間は掘れば掘るほど広げられる。尚、掘り起こしたものは消える。そして、異空間を広げること自体はアレクが発明した超大型ドリルで可能なのだ。だから、子供を拾いスペースで遊ばせることは可能なのだ。迷子になってもカーンの言霊で何とかなるし。そこまで考えてジャンヌは逃げようとしていた。
「ほら、見ての通り、僕もフラフラなんだよ。ジャンヌだけ逃げるのは許さないよ」
「アレクは良いわよね。休憩の時は心の癒しがあるんだもの。ジャンヌの癒しは何一つないっ!こんな環境、早く逃げ出したいわっ!」
「カーン。どうする?」
「そうだなあ。暫く抑えといてくれ。俺が髪の毛に効く絶品ワカメ料理を作ってこよう。毛が生えて来たらジャンヌも喜ぶだろう」
カーンはジャンヌとアレクの反応を聞かずにこの場から離れた。カーンは悩み事はたくさんあるが頭を掻かなくなっていた。
「おいっ、コラ、待て!女の子が剛毛になっていいことあるかっ!せめて絶品スイーツにしろ。季節のフルーツを使った奴!おい、聞いてんのか、この禿げー!」
カーンは無視して早歩きになった。アレクはただただ笑っていた。
カーンはワカメをたっぷり使った温かいうどんを持ってきた。うどんもワカメを練り込んだものだった。
「ち・が・う・だ・ろ。この禿げ、違うだろおっー!」
ジャンヌはカーンが座っている椅子を後ろから、わざわざ立ち上がって後ろに回り込んでからたくさん蹴った。
「おい、食事中にはしたないぞ。メイド服を着ているならせめてちゃんと淑女としての振舞いを身に着けるんだ。それと、冷めると余計にぬるっとなるから早めに食べた方がいいぞ」
「おいっ、禿げ。どんだけワカメ入れたんだ?私をおちょくってるのか?なあ⁉」
「ちゃんと味は美味しいから。それにちゃんと肌の艶も良くなるから安心しろ」
「スイーツを用意してよねっ」
ジャンヌはようやく席に着いて大人しく食べ始めた。その間、アレクはテレビのリモコンをちゃっかり我が物にしてガーンダムのアニメを見ていた。ジャンヌはもうツッコむ元気がなかった。そんな様子をカーンとアレクは微笑ましく見ていた。
「ようやく、ようやく、完成したわあ」
「ああ。これで、当分は大丈夫だろう」
二人は五日かけて子供部屋を五百個作った。それと並行してお風呂を五十個ほど、トイレは百個、自家栽培の部屋は十個。新たにお菓子の部屋を十個、アスレチック場を五個とたくさんの部屋を作った。ジャンヌはアレクの設計図をスキャンして最新型の誰も作ったことのない新しいものばかりを作った。アレクはアレクで部屋の装飾や無人バスなども作ったりしていた。二人は当然、疲労困憊になっていた。体力の消耗が激しかった。途中、カーンの言霊で回復スピードを上げていたがそれでもオーラを使い切りくたくただった。
「お疲れさん、二人とも。明日からショワ王国南部ぐらいの大きさまで異空間を広げてくれ、ジャンヌ。アレクは未来都市の準備に取り掛かってくれ」
「いいんだね」
「ああ。ジャンヌも宜しく頼む」
「……おい、禿げ。死ねや。十二歳の少女を馬車馬の如く働かせやがって。二十日間ぐらい連続勤務だぞ。休みを与えろよ。働き方改革を要求する。よって、私は明日からツリトさん探しの旅に出る。働き方改革が行われるまで私はイキシチ王国でツリトさんを探す。アレク、オーラのレーダー的なものを持ってたよね。寄こしなさい。私は解体ショーを見に行ってツリトさんに会って仲良くなってみせるんだから。ちゃんとこの異空間を隠れ蓑としておれるようになってるから安心してね。だから、カーンとアレクは私を快く送り出してくれるよね。って言うか私がこの短期間でツリトさんにどれだけ会いたいか分かってるよね。乙女の願いぐらい叶えさせてよ。私こんなに頑張ったんだよ。そろそろご褒美があってもいいと思うんだ。そもそもカーンとアレクは私にもっと感謝するべきよね。私が助けてあげたおかげで大勢の子供たちを避難させることができたんだもんね。私が来た時食料と言う食料が一切なかったよね。他にも子供たちが部屋にぎゅうぎゅうにいてすごーく窮屈そうだったよね。しかも、お風呂も一週間に一回ほど。衣服も私の自家栽培の部屋で獲れた絹や糸とかからもたくさん作ったよね。あっ、そうだ!アレクが自家栽培の部屋でこっそりお酒作ってなかった?何か知らない樽が置いてあったんだよね。なのに、私専用のジュースなんて作ってないよね?こんなに私にお世話になってるのに私を喜ばす努力を一切してないよね?なのに、私にこれからも休まずに寝る間も惜しんで働けと?……ふざけんじゃないよっ!私にリラックスする時間を与えろと言ってるのよ。おかしいじゃないの!」
二人は呆気に取られていた。ジャンヌが余りにもつらつらと呪文のように呟くからだ。そのうえ、間を置いたと思ったら感情を爆発させるからだ。カーンとアレクは二人で顔を見合わせて気の毒そうにした。
「ジャンヌ。ツリトは月一しか解体ショーをしないことになった。それと、ショワ王国は最近子供が突然消えているため鎖国した」
「……………ガーン」
「つまり、僕たちは積極的に活動することが難しくなったんだね?」
「ああ、イキシチ王国や、エケセテ帝国に行くことは難しくなった。ついでに言うと孤児施設はルーフ王の命令で監視が付いてる。だから、今までいなくなった孤児たちの情報を探してるんだ。そんな時にジャンヌが外に出て見ろ。大変なことになる」
「アレクなら気付かれずに、って言うか瞬間移動、もしくはワープできる発明品を作れるんじゃないの?」
「作れると思うけど、オーラの消費量がかなり掛かると思うんだ。一回、ツリト君に会って座標を刻むとかしない限り」
「……ガーン」
「まあ、そういうことだから、明日からも頑張ってくれ」
「どうして、どうして、そこまでなるまで黙ってたのよっ!」
「だから、この短期間で合計二千人ほど子供たちの避難数を増やしたんだ。でないとクリーンな方法で助けることはできないから。それでだけど、明日からはジャンヌもついて来てもらう」
「待って。異空間を広げるんじゃないの?」
「広げるは広げるけど、毎日半分のオーラをドリルにチャージしてくれたらいい。ジャンヌは俺の手伝いをしてくれ。警戒を和らげるのを手伝ってもらいたいんだ」
「ちょっと待って。私が手伝う必要なくない?私は私自身の部屋を作りたいし」
「はあ。仕方ない。ショワ王国の北側、王都の高級料理を御馳走してやるからこれでどうだろうか?」
「してやるから?」
「するからどうだ?」
「仕方ないわね。はっきり言いなさいな。私が黒であることをルーフ王に報告するつもりなんでしょ?」
「バレてたか。そうだ」
「もちろん、高級料理は食べるけどね」




