第二章 16 影
「ジャンヌ。もう、落ち着け」
「キュッー。だっだてえ」
ジャンヌは鼻水を垂らしながら泣いていた。今も、カーンとアレクは言葉の槍に自ら刺さりに行っていた。既に一時間ぐらい経っていて、午前二時ほどになっていた。
「そうよ。カーンとアレクはカナの思いだけではなく、ジャンヌの思いにも気付いてたから、黙ってあんなことしてくれたのよ。だったら、カナたちはアシュラに、ツリト君に愛をいっぱい伝えないといけないんじゃない?」
「キュッー。でも、でもぉー」
「カナの言う通りだ。泣くな」
アシュラはジャンヌの両頬を持って大きく引っ張った。そして、その柔らかさで遊びながら笑った。
「実際、ジャンヌも俺と会うことをずっと我慢して来てたってことだろう。でも、今、俺と会えてる。近くにいる。それで、良いんじゃないか。縛られていたのは実はジャンヌもだったってことだろ?だったら、今を、これからを必死に楽しもうや」
「うぅぅぅ。うん」
「とりあえず、風呂だな。カーンとかが普段入ってるお風呂は?」
「あっちの部屋。でも、着替えてくださいね」
アシュラとカナはずっと異空間に戻ってから、密室の部屋に入ってジャンヌの気持ちを宥めていた。着替えもこの部屋で一緒に行っていた。
「じゃあ、ジャンヌ。脱ぐの手伝って」
「はい」
ちゅっ♡
ジャンヌはカナが後ろに振り返ったのを確認すると両頬で遊んでいて顔が近くにあるアシュラにキスをした。その後、すぐにカナの着替えを手伝った。
「あの、このまま黙って三人でお風呂に入りませんか?」
「うん。カナも考えてたんだよね。二人きりになることは既に難しい状況だからこれからは協力する必要があると思ったの。協力関係を結びましょう。ジャンヌ」
「はい」
「俺はやだな。だが、確かにそれはベターかもしれない。だが、ベストじゃない」
「「行くよ」」
「披露宴が終わって一時間近く。そろそろジャンヌも泣き終わっていいと思うのよ。そしたら、次に取る行動は一つしかないと考えるの。リナ、調べて」
「もう、調べてる。リアルタイムで調べれるようになったから。アシュラのおかげでね。今、ジャンヌは泣き終わってカナの着替えを終わらし、三人でお風呂に入ろうとしているわ」
「モナ」
モナはジャンヌの指示でアシュラだけを瞬間移動させた。
「ご苦労」「は?」
アシュラは裸姿で風呂の中に瞬間移動させられていた。当然、周りにいるのは裸姿の女の子たちである。
「これは、俺の自由というものが本格的にないな」
「とりあえず、アシュ。体を洗ってあげるよ。おいで」
「仕方ない」
アシュラはインドラに従った。インドラはこの場を支配していた。否、少し前から支配していた。夕食の時には既に支配していた。だが、アシュラは対等な立場であるため、断ろうと思えば断れる。だが、キスぐらいなら小さい時にもしていたため、断るのも変な気にもなっている。だから、アシュラは素直に従うことにした。それに、一番安心できるからでもあった。
「アシュ、覚えてる?私たちは言葉を覚えるのも、立つのも、浮遊するのも早くてよくこうやって体を洗ったよね」
「まあな。でも、俺たちはもう一人で入れるんだから一人で入るのが当たり前で…」
「やっぱり、弱者の社会で八年間も生きたら考え方が変わっちゃったか。でも、これからは強者の社会で生きるんだから、考えを変えないとダメよ」
「ダメねえ。確かにそうだが、この俺の考え方は別にどっちでも変わらないよ。性格の問題なんだから」
「そうね。性格の問題ね。でも、姉弟で一緒にお風呂に入るぐらい普通よね?」
「そうだな。だが、この状態はおかしいよな」
「おかしくないんじゃない?野生で生きてたら当たり前の考え方だから。やっぱり、考え方が弱者の社会に合わせちゃってるね」
「俺がおかしい⁉否ッおかしくない!」
「はあ。ゆっくり変えないとね。次、私の体お願い」
インドラは話しながらアシュラの頭も体も洗い終えた。手に石鹸を付けて洗っていたのにも関わらず、何も仕掛けていなかった。その様子を見ていたアナたちは勝利を確信していた。
「姉であることを使ったね。あれじゃあ、アナたちの方が勝ちだね」
「だね。リナたちに不自由を強いていながらあの様じゃあね」
「モナたちは暫くアシュラに仕掛けられない」
「セナたちが力を合わせたらインドラ様も余裕なんだけど」
「ユナが、一早く気が付いてたら」
「ユナのせいじゃないよ。サナもユナのが使えるんだから」
「ナナは、インドラ様にホントにあんなことして良かったのか微妙」
「ハナはインドラ様の目が怖かった。あれは二歳年下の目じゃなかった」
「キララはインドラ様が話していた内容は嘘には思えなかった。でも、様子はおかしかったと思うの」
「カナさん。連れ戻さなくて良かったのですか?」
「うん。実は今、カナたちはシックスセンスが使えないから」
「アイちゃん、異変に気付いてる?」
「うん。ケイちゃんも気付いてたんだ。アイには見えてるよ。龍人の少女たちの手の甲にはハートの紋様が刻まれているのが。全員、インドラさんの左手の紋様とおんなじ。それとおんなじのが右手にも刻まれてる。右手の紋様はツリト君だけに刻まれてる。インドラさんは何を企んでるんだろう?」
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