第二章 15 カナとジャンヌの幸せのために
「アシュラ!」
カナはニューフロンティアのロンギヌスの上空で待っていた。アシュラをツリトではなくアシュラと呼んでいた。アシュラを見るなり抱き着いて来た。
『制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を下す。制裁を……』
「で、皆はジャンヌの異空間にいるんだな?」
「行こっか」
二人はジャンヌの異空間に瞬間移動した。
今回、カナヤ新興国で起こった被害はゼロである。その要因にはアレクとジャンヌの貢献が大きかった。まず、アレクのロンギヌスが今回、非常に重大な役割を果たした。ロンギヌスは避雷針となり、雷を集めていた。これが、各地に一定間隔で建っていたことは大きかった。そして、地方のロンギヌスを出現させて、雨水を海に放出、そして、ロボット決戦時にカナヤ新興国の領土全体を異空間にワープさせたジャンヌの役割はそれ以上に十分な働きをしていた。自身のオーラを使い切るほどまでして、国の安全を確保したのだ。新興国のMVPは文句なしにジャンヌと言えるだろう。
扉を開けると、カーンとアレクがいた。カーンはアシュラを見ると握手をして来た。
「よく、あの男を殺ってくれた。ツリト殿のおかげで一つ、世界の危機を取り除けた」
「皆の協力があったからさ。だが、この部屋に流れている陰の気はなんだ?」
アレクは、スーパーラージビッグがウィーチに切断された瞬間を何度も繰り返し見ては落ち込むを繰り返し、ブツブツと呪文を唱えるように呟いていた。その気配は空気を悪くするものだった。
「見ての通りだ。アレクのスーパーラージビッグが私の言霊付きで負けたことに大きなショックを受けているんだ。部品は一から作り直さないといけないしね」
「はははっ、そうかそうか。まあ、この経験を生かして更なる進化を遂げるだろうよ」
「ツリト殿の言う通りだ。アレクはきっとこの経験を生かして前に進んでくれる。それはそうと、今回のツリト殿の活躍に何か褒美を渡したい」
「おっ!」
「期待されているな。私が渡そうと考えているのは二人の門出のためのパワードスーツなんだが、どうだ?」
「ツリト君。さすがにないよね?」
「良いんじゃないか」
「は?」『は?』
「寧ろそれしかないな」
「じゃあ、千キロの重りのパワードスーツを渡そう。肉体の強化に励んでくれ。アレク、出してくれ」
アレクは、相変わらずブツブツと言いながらボタンを一つ押すと地面からパワードスーツが上がった。
「これは、アレクが作ったものだ。スペックは保証する」
「ちょっと待ってくれ。これじゃあ、カナと一緒にお揃いにできないじゃないか」
カナから強烈なパンチを頭から食らった。
「ごめん。カーン。ツリト君の頭を冷やして来る」
「ああ、そうか」
カーンは一瞬鳥肌が立ったが、すぐに気を取り直し、何にもなかったかのように返事をした。
『チッ』
インドラはパワードスーツが実際に渡されなくて少し苛ついた。少しでも、アシュラの好感度を下げてアシュラと二人きりでいたかったからだ。アシュラはお姫様抱っこされてモニター室を出た。その足でカナが向かったのはキララたちがいる部屋だった。
「お待たせ」
アシュラをお姫様抱っこして帰って来たカナに皆、目を丸くして驚いた。一同はカーンが提案していたものを知っていたため、アシュラが誤った回答をしたのだとすぐに理解した。そして、一番に駆け付けたのはこうなることを何となく予想していたキララだった。
「やっぱり、アシュラはあれを選んだんだね」
「うん。さすがにありえないわ。しかも、二つ用意しろって」
「あなたたちはそれで、ホントにアシュラを好きなの?好きな人が選んだものには、はい。あるいは、喜んで。の二択しかないでしょう」
インドラはアシュラの手の甲から出た。そして、カナたちの態度を咎めた。
「まあ、そこらへんは置いといて、あなたたちには罰を与えないとね」
インドラは声色を明るくして笑顔でそれぞれを見やった。両目はハートの紋様を刻んだままであった。インドラはアシュラにキスをすると、頭に手をやった。インドラのオーラがアシュラの体内に入りアシュラは気絶から目を覚ました。
「アシュ。ちょっと、席を外して。この子たちにお仕置きするから」
「分かった」
カナたちは膝をがくがくさせて怯えていた。
「席を外せと言われても、時間を持て余してしまうなあ。ケイとアイに会いに行くか」
ケイとアイはアシュラに天候荒しを止めるように指示された後、この異空間に来ていたが長いプレッシャーから解放されて、一日オーラを使いっぱなしだったため、倒れてしまっていた。そのため、癒しの部屋に連れて行ったということをカナから聞いていた。ジャンヌもこの部屋で休憩していると聞いていた。アシュラはその部屋を見つけ扉を開けた。
「やあ、ケイ、アイ、ジャンヌ?」
「ジャンヌさんはさっき部屋から出て行ったよ」
「そうか。ウィーチは俺が殺した。もう、大丈夫だ」
「「そっか。ありがと」」
二人は先にカナたちからこのことは聞いていた。だが、アシュラの口から聞いたことで脆くなっていた涙腺から涙が一気に溢れ出し、声を上げて泣いた。二人はアシュラに抱き着いて泣いた。泣いた。
心が落ち着いた二人はアシュラの両腕に抱き着いていた。そして、そのまま、家庭環境、ツリトに興味を持ったきっかけ、サンドラとウィーチに攫われたこと、サンドラがウィーチの暗示をいつも解いていたこと、暴力を振っていたこと、ツリトに実際に会えて嬉しかったこと、今のツリトへの思い、などなどを順番にゆっくりと話した。二人は余りにも強烈で悲しくて、生きづらくて、環境に恵まれていなかった。そして、その分、ツリトへの憧れ、愛が膨らんでいた。
「「ねえ。ずっと一緒にいてくれる?」」
「それは、難しそうだけど、今は隣にいていいよ」
「アイちゃん。ケイたちの思いを伝えるためにお願い?」
「うん。ケイちゃん。アイもツリト君を堕とすにはこれしかないと今考えてた」
アシュラはアイのシックスセンスはよく分かっていないため、しばらく拘束されると考えた。そのため、先手を打つことにした。と言うより、この場を収めるため、姑息な手段に出た。
「ジャンヌとも会いたいからその後、時間があったら」
「「そっか。ついて行っていい?」」
「いいよ。どこに行ったか分かる?」
「分かるよ。ツリト君の頼みなら何でもできるよ。アイに任せて」
ケイとアイはアシュラを挟みながらジャンヌが向かった部屋に向かった。そして、扉の前に辿り着くとアイはドアノブに手を掛けて開けようとした。が、鍵が掛かっているのか開かなかった。
「開かないのか?」
「うん。開けたい?」
「ああ、開けれるなら開けてくれ」
アイは扉を開けた。扉の中はピンク色の明かりが点いていた。アシュラは嫌な予感がしつつも足を進めた。そして、扉を閉めると、体からオーラを感じなくなった。それは、ケイとアイも同じようで腕をギュッと絞められた。三人で顔を見合わせてもう一つある扉に手を掛けた。扉を開けると裸姿で腰を一人で振っているジャンヌがいた。ジャンヌは一瞬驚いて見せたがすぐにアシュラに飛びついた。隣にいた二人も力が緩くなり、柔らかさが増した。おかしいと思った時にはアシュラの意識はなかった。
意識が戻ったのはジャンヌの叫び声を聞いた時だった。
「えっ、あ、うあーーーーー!」
その叫び声はその場にいた全員の意識を覚醒させた。
「なっ、何でツリトさんがこの部屋にいるんですか⁉いえ、そんなことよりもどうして、この部屋に入れてるの!」
「それは、アイのせい。それより、この部屋は何の部屋なの?」
「ケイも意識がない。ツリト君はある?」
「俺もない。でも、すっぽんぽんってことは…」
一早く、ジャンヌが下半身を見た。続いてケイもアイも下半身を見た。アシュラは隣にいたジャンヌのを見た。やはりだった。ベッドには血の塊が三カ所あった。
「「「っ⁉」」」
ジャンヌはツリトをガン見した。
ケイとアイはそれぞれ顔を見て頷き合った。
ジャンヌとケイ、アイの取る行動は違った。ジャンヌは固まってしまった。ケイとアイは、否、アイはすぐにオーラを纏った。
「折角のチャンスを無駄にしたらダメだよね」
アイはケイとジャンヌの体にも光を照らした。それは一瞬だったがその行動は火を見るよりも明らかだった。確定させたのだ。
「「ツリト君。見捨てないでね」」
「待って。待って待って待って。嘘でしょ⁉私がツリトさんと子っ、子供を⁉」
「完全にお前のせいだろ、ジャンヌ!」
アシュラは自棄になってジャンヌのぺったんこの胸をひたすら揉んだ。
「うぅぅ。ごめんなさい。ツリトさん」
「まず、この部屋の説明をしろ」
「はい。ここは性的興奮状態に無理やりなる部屋ですぅ。でも、ちゃんと、外から誰も入れないように設定してたんですぅ」
アシュラの上にジャンヌが座っており、逃げようとしたから捕まえた、両隣にケイとアイがアシュラに身を寄せて座っている。二人は今がチャンスと見て、アシュラを誘惑していた。
「ジャンヌ。俺を散々、クズ呼ばわりしてたけど、何で、こうなった?」
ジャンヌはまた、逃げようとしたため、アシュラは無理やり強引に胸を揉んだ。ジャンヌはもう自棄になった。
「だってえ、ツリトさんに興味がない人なんているんですかあ」
「「いないね」」
「は?」
「好きに決まってるじゃないですかあ。あんなに、目立って自由を満喫しようとしていた姿に好きにならない黒なんていませんよ。それでも、私がツリトさんをクズと言ったのはカナさんだけではなく、キララさんとも子供を作ったって聞いたからですぅ」
「「えっ!」」
「納得は、…してやる。だが、何でこの部屋を作ったんだ?」
「女の子だってムラムラしますぅ!」
「設定ってどんな設定にしてたの?」
「一時間、ムラムラするのが続く。オーラを纏えなくなる。この部屋に入ると服は自動的に脱げた状態になるですよぉ」
ここで、アシュラはインドラを思い出した。急いで右手の甲を確認した。ハートのマークが消えていた。
「ふう」
「あのお、もう一回しませんかあ?満足感が全然違うんです!」
不意にジャンヌが器用に体を捻ってアシュラの顔を正面から見た。そして、首に手を回してキスをした。
「「大胆」」
「ねえ。良いですよね」
「これが、ギャップ萌え、否、ツンデレか」
「ねえ。いいよね。ね?」
ジャンヌがオーラを纏ってもう一度、時間を区切ろうとした時、ドアが開かれた。もちろん、ドアが開かないように外のドアはなっている。こんな芸当ができるのは、
「ダメよ。アシュにこれ以上触れないで!」
インドラが十人の龍人を引き連れて片目を星をずらして重ねたような紋様を刻んで大きな声で叫んだのだった。
「呆れたわ、ジャンヌ。まさか、メイドが女王であるカナの夫を寝取るなんて」
インドラたちが駆け付けた後、とりあえず、あのピンク色の部屋から出て癒しの部屋に戻った。癒しの部屋は体の傷をいやすだけではなく心を落ち着かせる効果がある。そこでは、インドラがアシュラを膝上に乗せて、隣にカナ、キララを据えて横並びでカナの姉妹が並んでいた。カナの方にはハナ、ナナ、サナ、ユナがキララの方にはセナ、モナ、リナ、アナが並んで向かい側にはケイとアイがくっついて、ジャンヌは少し一人分開けて座っていた。そして、カナがまず、インドラの許しを得てジャンヌに説教をしていた。
「だって、もう、カナさんは女王ではなくなりますし。それに、私から誘ったわけではありません。ツリトさんの方から来たんです」
「急に生意気になったわね。待って。でも、前からカナに指図してたから急ってわけじゃないか」
「「一人で疑問を勝手に出して、一人で勝手に解決してる。だったら、話さなかったら良かったのにね。ふふっ」」
「そこ、黙りなさい。今回の件で一番危険視してるのはあなたたちなのよっ!」
「そうだそうだ!」
カナはウサギ人の弄りに理不尽に怒り、キララは相の手を入れた。この二人がケイとアイに危機感を抱いているのにはもちろん理由がある。しかし、リナたちは事前にツリトの情報を得ていたがカナとキララほどの危機感は抱いていない。それは、何故か?カナとキララは王都のワッフル店のウサギ人の亜人にツリト=アシュラが視線を向けていたことから、ツリト=アシュラはウサギ人の亜人が好みだと思っているからだ。一方、事前にツリトの情報を得ていたリナたちがカナとキララほどの食いつきがないのにはツリト=アシュラはウサギ人が特別タイプではないと分かっているからだ。では、何故、ツリト=アシュラがあの時、視線を向けたかと言うと、ミニスカメイドの格好にうさ耳が似合っていて、尚且つ、顔が可愛かったからであった。インドラはこの異常なカナとキララの熱に不思議に思い、両目にハートの紋様を刻んでアシュラの記憶を遡った。そして、その理由が分かり、インドラはカナとキララと同じ反応を取ることを選んだ。
「あなたたちは危険ね。今後一切、アシュに近づかないで」
ちなみに、ここにいるメンバーはツリト=アシュラであることは既に分かっているがアシュラが好きなように呼んでくれと言ったため、バラバラに皆好きなように呼んでいた。
「アイちゃん。ツリト君をこっちにケイたちの間に移動させて」
「うん。何か、あの三人ムカつくよね」
アイはオーラを纏うとツリト=アシュラをケイとアイの膝上に移動させた。この対応にカーとなった人が三名、少し嬉しく思った人が八名、凄く喜んだ人が二名、疑問に思った人が二名いた。
「アイさんのシックスセンスは何なんですか?さっきのといい、今のといい、全く分かりません」
「愛だよ。愛さえあれば何でもできるの」
「アイちゃんはケイとツリト君のためなら何でもするよ」
「ふーん。だったら、これからはカナたちのことも愛しなさい」
「「これからって、いいの?」」
「うん。ジャンヌは新興国にいないとダメだけど、ケイとアイは行く宛がないでしょ」
「待ってください、カナさん。私は、ツリトさんについて行きますよ。だって、ツリトさんは私のおっぱいが好きですから。さっきも自分から私のおっぱいを執拗に揉んで揉んで揉んで」
「……そのちっぱいでよく言うわね。でも、ジャンヌがいないとこの異空間が利用しにくくなるんじゃない?」
「ツリトさんが好きなちっぱいです。それで、大丈夫です。この異空間の維持自体はオーラを全く消費しません。出入りする時や新しい部屋を作る時とかに消費しますから」
「カーンとアレクはいいの?」
「大丈夫です。私の役目は彼らが安全に誰にも邪魔されずに活動できる環境を整えるだけで後は何もすることはありませんから。だから、この異空間にはたくさん部屋があるのですよ」
「まあ、良いんじゃないか。本人が決めたなら。ただ、カーンたちに話す時は理由を変えた方がいいだろうがな」
「ねえ、アシュ。よく平気でいられるね?」
インドラが急に怖い笑みを浮かべた。ジャンヌ、ケイとアイの説教が終わりアシュラの番になったということだ。その場の雰囲気も重くなった。
「俺が平気に見えるか?」
「「「見える」」」
アシュラ以外の全員が声を揃えて反応した。確かにアシュラはキララやカナの時ほど慌てふためいていない。だが、決して平気なわけではないのだ。ただ、自分の力でどうにもならないことは一人で解決しようとはしないだけだ。だから、アシュラは騒ぐのを我慢して受け入れたのだ。
「逆に俺はよく、お前らが殺し合いをしていないなと思うぜ」
「アシュ。もし、したとしても止めるでしょ?」
「まあ、うん」
「まあ、いいわ。カナたちはフロンティアに一緒に行くってさ。ジャンヌ、ケイ、アイはどうしたい?」
「「ツリト君が行くところには必ずついて行くよ」」
「私も行きます。それに、私がいた方が安全じゃないですか」
「意外だ。インドラはてっきり、俺と二人で行くかと思っていたから」
「そのつもりだったけど、カナたちは天空に連れ戻してもきっとすぐアシュに会いに行くから無駄かなあって思ってね」
「まあ、インドラがいいなら俺は構わんよ」
「「「やったー」」」
アシュラの許可が出てインドラ以外は声を大にして喜んだ。インドラはどうして、こうなったんだと今更、頭を抱えていた。
「アシュ。絶対二人きりの時間を作るからね。絶対の絶対」
「出発は明日の昼か?」
「うん。今日はもう遅いし、疲れてるでしょ?」
「まあな。今日は色々ありすぎた」
「じゃあ、アシュラ。カナと一緒にご褒美を改めて貰いに行くよ」
「おう」
「やはり、私はパワードスーツがいいと思うんだ。アレクに急遽作らせたよ。さっきの二倍の重さの二千キロの重り。そして、男用と女用の二人分だ。どうだ、満足したかい?」
「ああ。さすがカーンとアレクだ。更に良くなってるよ。決めた。これにする!」
カナは最後まで聞き終えてからもう一度頭に強烈な一撃を食らわした。
「カーンさん。冗談はいいの。本気で選んでね。明日の朝もまた、ふざけてたらカーンさんにも食らわすよ」
カナは敢えてアシュラを殴った拳をカーンに見せて優しく笑った。それが不気味さをだして余計に怖さを増させていた。
時刻は零時日付が変わった頃、カーンとアレクを除いた一同は夕食を取っていた。ジャンヌ達一行がアシュラとカナがカーンとアレクに会いに行っている間に全員で作った。インドラは当然の如くアシュラの右隣で腕を組み、左隣りはカナが腕を組んでいた。インドラの隣は龍人は誰も座りたがらなかったためジャンヌが隣に座り更に隣にはキララ。ケイ。アイ。カナの左隣りはハナが。向かい側はハナの正面からナナ、サナ、ユナ、セナ、モナ、リナ、アナが座っていた。
「式神を降ろそうかな」
「アシュ、燃やすよ。さあ、皆頂きます」
「「「頂きます」」」
「まあでも、キュウリが多いな。相変わらず」
「カッパーのキュウリは好きですからね。安くて美味しいですし。私は一度食べてから毎日食べていますよ」
「毎日か。そういえば、急にこれだけの食料、どうやって手に入れたんだ?」
「それは私の異空間で栽培していますし、飼育しているからですよ。私って結構便利な女なんですよ」
「確かに便利そう」
「アシュ、私に嫌がらせしてるの?」
「何で?」
「さっきから私の隣のジャンヌとばっかり話してるじゃん」
「俺の両腕が使えないから口を使ってるんだよ」
「なら、私と多めに話しなさい。今も継続してるんだから」
「はあ。面倒だな。ちゃんとインドラのことは常に視界に入れてる」
「はあ?当たり前だよね、それは。もういいから、食べな。はい、あーん」
食事はそれぞれ近くの人と話しながら食べていた。カナはアシュラと腕を組んでいたがあーんを一切しなかった。全てインドラが食べさせていた。そして、食事が終わり、お風呂の時間になった時、事件が起こった。アシュラがしれっと姿を消したのだ。トイレに行くと帰りにカーンとアレクにちょっとと誘われたのだ。それはカナとジャンヌも一緒について来るように伝えられた。
新興国では、全世界では危険が去って、歓喜して興奮していた。王国と帝国は朝から騒いでいた。宗教国は宗教による支配がなくなり、更に歓喜し、国全体がウールフへの期待に揺れていた。そして、新興国、特に人口過密のニューフロンティアでは皆、外食をし、今日の興奮を語らい合っていた。それは小さな子供にも無理させて起こさせるほど熱狂していた。そんな光景をロンギヌスの中からアシュラとカナ、ジャンヌとアレクとカーンは見ていた。アレクが手に持ったボタンを押した。すると、各地のロンギヌスから花火が打ち上がった。そして、ロンギヌスの中間地点が花びらを咲かせるように開いた。そこにはスーツ姿のアシュラとウェディングドレスを着たカナが腕を組んで現れた。新興国民は全員その光景を見ていた。各地のロンギヌスはその様子を中継して映した。それに加えてアレクが各地のメディアをジャックした。そのため、全世界の人がこの光景を見ていた。そして、司会はカーンが執り行った。カーンの手にはマイクが、そして、ロンギヌスの周りには空中を羽を生やして飛んでいるカメラが何台もあった。
「この度、新興国としての女王の結婚と新興国の皇室の撤去のためのお別れを同時に行います」
ニューフロンティアだけではなく全世界が揺れた。それは激震と驚嘆、悲嘆、祝福、憤怒、など色々な感情が世界で最も起こった瞬間だった。二人はその叫びを全身で感じた。アシュラは一人一人の国民の顔を見た。彼ら彼女らの中には泣いている者、ツリトを睨んでいる者、これからの新興国のことを思い顔を曇らせる者、その人たちを励ます者など、様々いた。カナは怖くてその人たちの顔は見ていなかった。やはり曲がりなりにも一年間誕生したばかりの新興国で黒として国民の精神的な柱になって信頼されて愛されて来ていたのだ。それを個人の都合で勝手に女王の座から降りて、しかも、自由の身になることに罪悪感を感じていた。だから、カナは震えていた。どんな罵声が飛んでくるか怖がっていたのだ。それをアシュラはじっとしてずっと感じていた。
「笑えよ、カナ。それに皆、カナがいなくても大丈夫だ。分かりやすい敵を作っているからさ」
アシュラはわざと大きく口角を上げて歯を見せた。
「アシュラが悪者になるの?」
「いや、もっと悪い奴がいるだろう?」
「二人の結婚祝いとして我が国の天才発明家アレクがプレセントを用意しました。そして、僭越ながら私からも用意させて頂いております」
ここで、アレクの顔が世界に初めて晒された。その驚嘆で全世界が沸いた。今回のアレクのロボットは全世界に晒されて注目の的になっていた。
「では、まず、私から。私がプレセントするのは謂わばカナヤ新興国として送るもの。だから、この国を象徴するものとして水の魔鉱石をプレセントしようと思います」
「「「ウォー!」」」
「そして、アレクの方のプレセントですが、これは正確に言うと私個人としてとアレクの共同でのプレセントとなります」
「「ウォー!」」
「アレク、出してくれ」
アレクはボタンを押した。足元からせり上がったのはお揃いの服だった。長袖のシャツには変な輪っかのサスペンダーが付けられていて、ズボンに変な帯的な物がありおかしな服だった。
「私たちがプレセントするのはこの服です。もちろん、ただの服ではありません。この服にこのようにオーラを流すと特別な効果を発揮します」
カーンとアレクは同時に黒色のオーラを纏った。ニューフロンティアにいた人全員が黙った。いや、言葉が出なかったし、酔いも醒まされた。そして、アシュラとカナに手渡す前に下に落とした。
ドン!
ロンギヌスがぐらついた。カーンとアレクの腕がプルプルと震えていた。
「このように凄い効果があります。まるでエージソンの黒シリーズです」
この一言を聞いた時に全世界の人達は正気に戻った。そして、一斉に怒号が飛び交った。
「ふざけるなっ!」「このクズどもっ!」「カナ様は皇室を抜けて正解だっ!」「よくぞ、今まで黙っていた」「最低っ!」「ツリト様、カナ様をよろしく頼むぜっ!」
などなど、一斉に怒号が飛んだ。これは、今まで国民に黒であることを黙っていたこと。そして、贈り物を地面に落としたこと。特に後者で国民の怒りが爆発した。そのため、国民はカナが皇室から抜けることの悲しみよりも、カーンとアレクへの怒りが爆発した。
皆大好きなカナ様に今まで黒としての国民の期待を一身に背負わせていたこと、そして、そのカナ様への贈り物を足元に落とすこと。この二つで怒りを生ませて爆発させるのはカーンとアレクがカナのために考えたことだった。これは以前から考えていたことだった。カナの新興国の人気は凄まじい。だから、カナが自由の身になる時、誰にも反発されないように悪者になろうと。なぜ、悪者になることに決めたかと言うと、現在の人は他人の幸せな話題より不幸な話題の方が感情が一つに纏まりやすいからだ。今回、カナが結婚したいから皇室を抜けるではどうしても、国家公認の黒の存在、そして、身勝手だと罵られる。
だが、今の状況だとどうだろうか?実は新興国には二人黒がいるのに黙っていたこと、カナが黒であるために心労となった期待と中傷とお見合いの報道、個人としての贈り物を目の前で足元に落としたこと、そして、ロンギヌスが揺れたことからも分かる服の異常な重さ、などなど。これらの情報と状況はカーンとアレクに憤怒を向けさせるのに十分だった。
「ここは私たちが何とかするからジャンヌの異空間にいきなさい」
「僕たちに任せて。国民が疲れた時に一気に気持ちを宥めさせるから」
「ジャンヌには黙ってやったのか?」
「ああ、ジャンヌに嫌われ役は似合わないからな」
「それに、ジャンヌはツリト君、君にぞっこんだったからね。僕がガーンダムを見るのとジャンヌが君の解体ショーをニュースで見るのをよく争っていたからね。ジャンヌをよろしく頼む」
「おう。でも、このパワードスーツは貰ってくぜ」
「えっ⁉いらないんだけど」
「まあまあ、ちゅっ♡」
アシュラはパワードスーツを拾ってロンギヌスの中に入った。ジャンヌはロンギヌスの中から涙を流して二人を見ていた。




