第二章 02 エージソンの遠い遠い子孫
星形の壁に囲まれた街は未開拓の地フロンティアに因んでニューフロンティアと名づけられている。なぜ、ニューフロンティアと呼ばれているかと言うとその街の見た目にある。まず、星の中心にロンギヌスという超巨大で千メートルを超える避雷針の役割を持つ女王の家兼、大統領の家兼、議会場兼、大統領室と新興国の重要な施設がたくさんある建造物があること。次に交通網だ。ロンギヌスの周りを渦巻き状に移動する空飛ぶ車の通り道の渦巻き、地上では高速で移動する空飛ぶ車の通り道のスパイダーネットが一切の交通事故を起こさないように整備されていること。ちなみに、空飛ぶ車は完全自動運転である。そして、超高層ビルや超高層住宅が立ち並んでいること。それらを支えている、ロンギヌスからの電気を増幅する施設。この圧倒的科学技術の進歩をわずか一年で成し遂げた異様さからこの星形の壁に囲まれた土地を未開拓の地であるフロンティアに因んでニューフロンティアと呼んでいるのである。
「凄いな。これほどまでに王都と違うか」
「だね」
ツリトとキララは驚きの余り開いた口が塞がらなかった。一方、カナは見慣れているのかツリトの左腕に抱き着いたまま右手の人差し指でツリトの頬を押していた。そして、ロンギヌスから一台の空飛ぶ車がやって来てそこからロングスカートのメイド服を着た一人の女性がやって来た。その女性は銀髪ロングで紫紺の瞳をしており耳が長かった。エルフだ。体の大きさはカナと同じぐらいで胸はぺったんこだった。清楚感がありスカートを少し持って引き上げて軽く礼をした。しかし、表情は明るくなく、寧ろムスッとしていた。
「やっぱり、怒ってる。キララ、欺いて頂戴。今からでも逃げれるわ」
「え⁉ホントにいいの?」
「良くない!いい加減にしなさいよ、カナ!自由奔放に振舞うのは止めなさいっていつも言ってるでしょっ!」
開口一番怒気を含ませてロングスカートのメイドはカナとキララを叱りつけながらもツリトを獣を見る目で睨みつけていた。
「まず、ツリトさん。カナとキララから離れなさい。やはりネットで飛び交っていた二股疑惑はホントだったんですか⁉はあ。このクズ男が!」
「おいおい。急に来たな。カナ、俺も何か逃げたくなって来た。ホントに逃げるか?」
「やっぱりそうなって来たよね。開口一番に挨拶なしだよ。このまま、駆け落ちしちゃおうよ。三人ならきっと逃げ切れるよ」
「ふう。残念ながら問答無用であなたたちは連れて行きます。失礼」
黒色のオーラを纏ったメイドは一塊になった三人の足元の空間を歪ませて異空間に落とそうとした。しかし、キララとカナは宙に浮くことで異空間に落ちなかった。
「締まらないなあ。今のはちゃんと異空間に落とさないと」
ツリトの煽りにメイドは顔を真っ赤にさせて地団駄を踏んでいた。そして、ツリトの両腕に抱き着いてツリトを浮かしているカナとキララに怒るのではなく、ツリトの胸倉を掴んで顔を近付けて睨み付けて来た。
「五月蠅い。五月蠅い五月蠅い五月蠅い!五月蠅いわよ。大体、カナを寝取っておいて何よ!新興国はまだまだ、発展途上でカナがいて各国にも睨みを効かせることができていたのにツリトさんのせいで全て台無しになってしまったのよっ!カナヤ新興国にまた、大きな危険がやって来るかもしれないじゃないっ!」
「そんなことより今、黒だったよね?}
「そんなことより?そんなことよりじゃないわよ!折角、折角、誰にも邪魔されずに発展して来ていたのにそれを台無しにしておいてそんなことより⁉」
「はあ、これか。カナが帰りたくなかった理由。我が強いのね。我が」
「我が⁉」
「そう。我が。だってそんなの全部そっちの都合じゃん。カナの変わりなら君が務めれるだろうよ。それに、どっちにしろ新たな危険がやって来ている。カナから聞いているだろう?」
「むう。新たな危険?」
「カナ、もしかして、言ってなかったの?」
「うん。王国に行ってから一切、連絡を取っていないから。こんな風に五月蠅いから」
「それで、新たな危険とは?」
「実は……」
場所をメイドの作った異空間に移した四人は密閉空間の白い部屋に来ていた。そして、今、新興国の偉いさん二人を待っていた。メイドはそれぞれ紅茶を入れて席に着いた。机は丁度六人掛けでこの部屋の会話は誰にも聞かれる心配はないみたいだ。ちなみにメイドがカナとキララに挟まれて座っている。ツリトたちはいつも通り座ろうとしていたがメイドが五月蠅かったから仕方なく座っている。
「それで、そろそろ名前と、誰を待っているのか教えてくれない?」
メイドはツリトにとにかく突っかかて来た。ここまで来るまではすんなり行ったがツリトの分の紅茶は入れようとしないし、ツリトがカナとキララから離れるまでずっと喋り掛けてくるしと面倒臭かった。
「名前はジャンヌ。待っているのはアレクとカーンよ」
「分かった。ジャンヌ。カーンは大統領だから分かるけど、アレクって?」
「来たら話すわ」
「そうか。それで、カナ。気になったんだけど俺がカナを寝取ったことになってるの?」
「そうじゃないの。あんなに情熱的にカナを求めてくれたじゃん?」
「ここではそれで通すつもりなのか?」
「みっともないぞ、クズ男。カナをピンチと騙して王国に連れて行かせておいてなんだ、その態度は!」
「はあ。こっちではいい顔すんのね、カナ」
「別にいいじゃん、そんなこと。でも、ツリトがそこを気にするならキララはここではっきり言ってあげるよ。ジャンヌさん、キララはねツリトを…」
「止めろ!」
「止めろ?まさかクズ男、カナだけでは飽き足らずマジシャンのキララにも。創造を絶するクズだな」
「はあ、ここでは俺はクズになるのか」
ドアがノックされた。四人はコップの紅茶は既に飲み干していてもう空になっていた時だった。入って来たのは焦げ茶で碧眼の若禿の男、カナヤ新興国大統領カーンと、桃髪翠眼の猫背の作業服を着た男だった。
「失礼する。お待たせしてすまないね。ツリト殿。横にいるのはアレクだ。この国の発展に大きな貢献をしている」
ツリトは立ち上がりカーンに握手した。
「いえいえ、そんなに待っていませんよ。お会いできて光栄です」
「なるほど。つまり、エージソンが生きていて、クローン技術を保有していて、人体実験もしていて、新たな発明を生前を遥かに超える水準で作っていて、おまけに過去の偉人も味方に付けている可能性が高い。こういうことでいいかい?」
「ああ。これが、王国で分かった事実だ」
「ほうほうほう。ちなみにエージソンはどんな武器を作っているんだ?見せてくれ。今後の参考にしたい」
「待て、アレク。それは、後でだ。それで、ツリト殿。王国で近いうちに行われる会議はこのことを中心にってわけだね。やはり、即刻話し合うべきものだったようだ」
「そういうこと。だから、カナと俺の問題で争うべきではないわけさ。それに、ジン王のシックスセンスによるとカナを女王にしていたらエージソンとは別で問題が起こるみたいだ」
「ふむ。そろそろ潮時か。元より、時が来たらカナを女王から退けるつもりだった」
「どういうこと?」
「実はもうそろそろでニューフロンティアの防衛システムが完成しそうなんだ。それができたらカナをツリト殿に渡してもいいと考えていた。なんせ、公務をまともにしなくて私たちは困っていたからね」
「カナ、妙に粘っていたのはそのためか?」
「てへぺろ」
「なるほど。一つ気になってたんだけどジャンヌって黒じゃん。何で隠してたの?」
「もちろん、外国から目を付けられないようにするためさ。それと一番の理由はアレクのためだな」
「アレク?」
「そう。さっき言った通り、この国の発展に大きな貢献をしているのはアレクだ。アレクは黒だ。見せてやってくれ」
「はいよ。創造の設計ペン」
アレクは黒のオーラを纏ってペンを具現させた。キララとツリトはもちろん驚いた。だが、ツリトはこの場にいる誰よりも衝撃を受けていた。だから、ツリトは黒色のオーラを纏った。
「ちょっといいか?創造の設計ペン」
「「「「「なっ⁉」」」」」
「どういうこと、ツリト君?」
「俺は王都での戦いでエージソンのシックスセンスをたまたま手に入れることができたんだ。それより、アレク。これは偶然か?それとも必然か?」
「なるほど。これは驚いた。確かに僕はエージソンの隠し子の遠い遠い子孫だ。だが、このシックスセンスは偶然だ。僕はこの国を作るためにこの力に目覚めたんだから。それにだね、おそらくおんなじペンでも効果が違うはずだよ。僕のはカッコつきでロボット特化がつくからね。僕がロボットに魅せられて他人に魅せるようになったのはあの大ヒットアニメガーンダムの影響さ。今、凄いのを作ってる最中でね。いつか見せて上げるよ。それと良ければでいいんだけど、さっき言ってた黒シリーズを全て見せてくれないかな?参考にしたいんだ。僕が今作っている巨大ロボの装飾品のね。ん?もしかして、その指に着けている指輪、一つは親愛の指輪だけど、もう一つも似たような感じなんじゃないかい?見せてくれ、見せてくれ。それと…」
カーンが見かねてアレクの頭上に軽くチョップした。アレクは「ほえ?」と言って周りの様子を伺い、他の四人は引いていた。
「失敬。ついつい興奮してしまってね。ツリト殿、僕の発明を手伝ってください」
「時間があったらね。でも、エージソンの黒シリーズを後で少し、見せてあげよう」
「マジ⁉ありがとうございます」
「ふう。まあ、とにかくこの国の発展はアレクの貢献が大きいんだ」
「でもさあ、貢献で言ったら国民が混乱しないように一番頑張っているのはやっぱりカーンじゃないか。僕の拡声器を使って僕が新しい発明品を実用化するときに国民に分かりやすく説明すると同時に不安を消してくれてるじゃないか。それに外交の時は…」
カーンはもう一度アレクの頭をチョップした。ジャンヌは何やら「ああ。あああ…」などと言って慌てていた。
「失敬。私から申し上げようと思っていたのだが、実は黒だ」
そう言ったカーンは黒色のオーラを纏った。つまり、マジだ。カナは知っていたのか驚いていなかった。キララは知っていないはずだが、驚いていなかった。ツリトは少し驚いたと同時にずっと疑問に思っていたことを聞きたくなった。
「なるほど。じゃあ、どうして、カナをカナヤ新興国の黒にしたの?}
「それは……戦略、かな?知っての通りカナは新興国の英雄だ。国民受けが良かったんだよ。私たちの存在を公にしなかったのは聞かなくても分かるだろう?」
「ほう。じゃあ、アレクが次のカナヤ新興国の黒になるのか?」
「ああ。今の大型の発明品が完成したらな。このペースならあと二週間ぐらい掛かりそうだ。ついでに言うと王様の制度はなくすよ。アレクにはずっと発明をしてもらいたいからね」
「なるほど。楽しみにしてるよ。今後のことは決まったし、話し合いは終わりでいいんじゃないか?観光したい」
「ああ。私たちも話すことはほとんど終わった。ジャンヌに観光案内させよう。黒のマジシャンキララの力で難なくできるんだろう?」
「ん?ちょっと待って。どうして、キララが黒だって分かったの?」
「実はツリト殿。これを見てくれ」
ツリトは黒のキララとカナに逆レイプされて子供を作られた。証拠写真もある。我々はこの事実を公に発表しようと考えている。そこで交渉がしたい。ツリトに会わせなさい。尚、ツリト以外の人がついて来ていたら問答無用で公に発表する。
「証拠写真は私は見ることはできなかった。だが、ここに書かれていることは事実なんだろう?行って来なさい。私は漢としてこのことは黙っておくし、君を尊敬している。待ち合わせ場所が書かれている紙はここにある。行って来なさい」
「カーンさん。ありがとう」
カーンとツリトは熱い抱擁をした。ツリトはカーンの配慮、カナのためもあるがツリトの男としての尊厳を守ってくれた、に感動してしまった。カーンは三十歳で禿げているが男前だ。ツリトはその男前の顔がより一層にかっこよく見えて輝いて見えた。
「ちょっと、どうしたの?」
「ツリトに何があったの?」
「どうせ、カーンが何か悪知恵を教えたんでしょ」
「ツリトさんツリトさん、黒シリーズを置いて行ってください」
「あっ、ああ。カナ、キララ頼んだ」
ツリトはたくさんあるチャック付きのポケットの一つから小さな縛っている布をカナに投げ渡して走って部屋から出て行き手紙に書いてある電話番号に電話を掛けた。




