【朝起きたら家なんてなかった】第四話
そもそも、今までが都合良すぎたのだ。
思い出せる記憶は全て、温かな笑顔で溢れてて、爽やかな影が髪を揺らしていた。
毎日、家メンと他愛もない話をして…
一緒に門の前で駄弁って…
くだらない話で笑って…
家に帰れば、面白かった出来事を共有しながら温かいご飯を食べて…
風呂に入って、明け方まで通話しながら笑い合って…
あの幸せは…どこにいったんだ
ふと、透花の言葉を思い出す。
前日の通話で、最後まで二人は残っていたのだ。
「ねぇ、難波ちゃん」
「ん?」
「家メンって実在するのかな?」
「何言ってんのw?この間も会ったじゃんw」
あの時は、そんなわけないと自負していた。
突拍子もない発言に、面白さまでも感じていた。
「でもさ、全部妄想かもしれないでしょ?」
「だからそんなわけないって」
「もしかしたら、家メンなんて存在しなくて、全部難波ちゃんの妄想かもよw?」
冗談のように言う透花の声が、今は何故か思い出せない。
「もしも、明日起きたら家メンが消えてたら…どうしよっか」
空間が、襲いかかってくる。
何もないのだ、何も
思い出してしまう
記憶を
見たくなかった景色を
頭から消し去ったはずの現実を
知らぬ間に、部屋に戻ってきていた。
手元には空になった瓶があって、コップこぼれた水がパーカーを湿らせている。
溢れ出た涙を拭くこともせずただ座り込んだ優の目は、驚く程暗く、沈んでいた。