八話
暑い日々が続いている。
だが、横には一緒に汗を流すアリアがいる。
素振りをするアリアは美しかった。
10歳にしては大人びて見える。
フィルターが掛かっているかもしれないがアレンの中でアリアは神聖な物だった。
今日も夕方まで素振りをして帰路につく。
門ではアリアが笑顔で手を振ってくれている。
ウキウキ気分で帰路を急ぐ。
前からは黒いフード付きのローブを着た人物が歩いていた。
見るからに怪しい人物であるがアレンは気付かない。
黒いフード付きのローブを着た人物がアレンの行く手を遮る。
「リーリッドに死を」
アレンは咄嗟に避けようとするが頭を固い何かで殴られた。
リーリッドはアレンの習っている流派だ。
後ろから誰かが駆けてくる音がする。
黒いフード付きのローブを来た謎の人物は慌てて逃げていった。
「おい。大丈夫か」
「せ、先輩・・・」
駆けつけてくれたのは不良の先輩の1人だった。
アレンの意識はそこで途切れる。
次に目を覚ました時、家のベッドの中だった。
「アレン。目を覚ましたのね」
「母さん・・・。僕は・・・」
「怪しい奴に襲われたって聞いた時は驚いたんだからね」
頭に触れると布の感触がある。
「たまたま同門の方が助けてくれたからいいものの」
だんだんと状況を思い出す。
リーリッドに死をとはどういう意味だったのだろうか。
「先輩は・・・」
「さっきまで待っていてくれたのだけど時間が時間だし帰ったわよ」
もし、あの時に先輩が通りかからなければ死んでいたかもしれない。
次に会ったらお礼を言わないと。
「襲われた心当たりはないの?」
「リーリッドに死をとか言ってたけど何のことやら」
「そう・・・」
母さんには心当たりがあるようだけど何も言わなかった。
数日を寝て過ごす。
頭を殴られているため絶対安静でトイレに行くのすら心配される状況だった。
それでも嬉しかったのはアリアが見舞いに来てくれたことだ。
どこか元気がないようだったけど沢山の話をした。
助けてくれた先輩も様子を見に来てくれた。
お礼を言うとそういうのはいいと苦笑いをしていた。
アリアには言わなかったが先輩に相談をした。
両親が道場を辞めさせたがっていると。
「まぁ、そうなるわな。リーリッドはそれなりに流行ってる流派だ。門下生の中には衛兵になったり兵士になった奴だっている。どこで恨みを買ってるかわかんねぇからな」
「そうなんですか」
「まぁ、しょうがねぇ。俺達がしばらく送り迎えしてやる」
そう言って先輩は笑ってみせた。