七話
アレンが次に目を覚ましたのは朝だった。
横にいるはずのアリアを見ればこっちをみて嬉しそうに笑っている。
起きたのを見て驚いたようだが笑顔はそのままで朝の挨拶をしてくる。
「おはよう。アレン」
「おはよう。アリア」
どういった経緯であれ、アリアと時間を共有出来てアレンは嬉しかった。
手は強くアリアに握られている。
「アリア。大丈夫だった?」
「うん。疲労からだって。心配かけてごめんね」
「修練頑張ってたもんね」
「そ、そうだね・・・」
少し変な間があったけどよっぽど厳しく先輩達にしごかれたのだろう。
倒れるぐらいだし負けてられないな。
「アレン。目をつぶってくれる?」
「うん。いいけど・・・」
「いいっていうまで、目を開けたらダメだからね」
「うん・・」
目をつぶるとごそごそ音がする。
そして唇に柔らかい何かがそっと触れる。
今のってなんだろう・・・。
再びごそごそ音がして声をかけられる。
「もういいわよ」
「今のって・・・」
「おまじない。明日からも頑張れるように」
「そうなんだ・・・。よくわからないけど明日からも頑張るよ」
2人で他愛もない話をしている。
こんな時間がいつまでも続けばいいいのに。
だが、アレンの両親が迎えに来たことで2人の時間は中断される。
「アレン。また、明日ね」
「うん」
そう約束して家路に着いた。
両親には凄い心配をかけてしまった。
前に怪我をして帰ってきたことや今回、倒れたことでお説教もされた。
だが、道場には通い続けたいと懇願した。
最後には両親が折れてくれて道場に通えることになった。
翌日、両親に心配されつつも家を出て道場の門をくぐる。
アリアがいるかもと思ったがいなかった。
木刀を取りに行く時に道主からも謝られた。
自分の監督不行き届きだと。
「アリアは大丈夫なんですか」
「念のために数日は休ませる。本当は君も休んでほしいけどね」
「少しでも強くなりたいですから」
「そうか。でもほどほどにな」
道主は笑って見送ってくれた。
素振りを開始してしばらくすると道主がちょくちょく様子を見にきてくれた。
悪い部分やコツなどを教えてくれる。
本来であれば道主が自らこうして教えてくれるのは年に数回とかだったりする。
特別扱いを受けているようで少し嬉しかった。
数日経った。
アリアも修練に復帰し日常が戻ってきた。
変わったことはアリアが先輩達との修練を断りずっと一緒にいてくれることだった。