六十二話
アリアは先輩達とユーリを連れてすぐに戻ってきた。
「もっとゆっくり買ってきてもよかったんだぞ?」
ユーリはそう言ってくれるがあまり待たせるのも悪い。
人数分の飲み物は結構重く、アレンは全身に汗をかいていた。
「いえ、これぐらいなら」
「ふふ。強がりを言って。やっぱり男の子なんだな」
「アレンは休んでて。配るのは私がするから」
そう言ってアリアは飲み物を先輩達に配って回る。
先輩達は配られると美味しそうに飲み物を飲んでいた。
一番最後にアレンも受け取り大切に飲む。
それを見ながらユーリが告げてくる。
「頑張った少年には私がご褒美をあげよう」
ユーリは木刀を構え1つの剣舞を踊りはじめた。
各所にリーリッド流の技が散りばめられておりその姿は美しかった。
剣舞が終わった時、アレンは知らず知らずのうちに拍手をしていた。
「どうだったかな?」
「凄く綺麗でした」
「あはは。そう言われると照れてしまうね」
「僕もあんな風にできるかな・・・」
「全てを一度に覚える必要はないさ。この水晶をあげるから練習してみるといい」
「この水晶は・・・?」
「先ほどの動きを録画したものだよ」
「ありがとうございます」
ユーリは周囲を見渡して告げる。
「よし。休憩は終わりだ。修練に戻るぞ」
先輩達は文句を言うわけでもなく修練に戻っていった。
「ユーリさんって凄いですね」
「んっ?」
「あの先輩達が大人しく言うことを聞いてるので・・・」
「あぁ。あいつらを上手く使うコツがあるだけだよ」
「コツですか?」
「駄馬でも餌をぶら下げてやればよく走るって言うだろ」
「餌ですか?」
「餌は秘密だけどね」
ユーリはただ笑っていた。
アレンも修練に戻る。
先ほどユーリが見せてくれた動きを真似してみる。
素振りの動きが基本ではあるが連続した動作となると繋げるのが難しい。
自分なりに考えてみるが体は思ったように動いてはくれない。
アレンは何度も何度も繰り返す。
時間はあっという間に過ぎていくもので夕方となっていた。
「よし。今日はここまでだ」
ユーリの宣言で先輩達は溜まり場の方に引き上げていく。
アリアとアレンもユーリにお礼を言ってから母屋に引き上げた。
お互いに井戸で汗を流す。
アリアは裸体を見られても恥ずかしがることはなかった。
アレンは我慢できずその様子を見たアリアは嫌な顔をせず相手をしてくれた。
遅くなってしまったが夕食をとりのんびりと過ごす。
ユーリがいる間は夜の修練はお休みとのことで2人でユーリのくれた剣舞の水晶を眺めていた。




