四話
僕は怪我を治す為、1週間ベッドの上で過ごした。
剣術道場を辞めさせるという話も出たが何とか頼み込みそれだけは回避する。
そして道場の門をくぐるとそこにはアリアがいた。
素振りをしているがどこか顔が曇って見える。
僕は迷わずアリアの前に行く。
「アリア。ごめん」
「ちょっと、どうしたのよ」
「怪我のことアリアと喧嘩したってことにしちゃったから・・・」
「あぁ。それは私も助かったから・・・」
「助かったって・・・。何かあった?」
「あぁ。うん。何でもないの。気にしないで」
「そう・・・」
言いたくないなら無理に聞き出す必要もないだろう。
木刀を取ってきてアリアと一緒に素振りする。
1週間とはいえ、結構体が鈍っている。
1本1本を丁寧に振っていく。
お互いに無言だがそれでも日常が戻ってきたのだと実感した。
1時間ぐらいそうしていただろうか。
「嬢ちゃん。そろそろ時間だぜ」
そう言って不良の先輩が声をかける。
「もう、そんな時間?」
「皆、待ってるんだ早くしろよ」
「アリア、どっか行くの?」
今までこんなことはなかった。
「ええっと・・・」
「何、特別に俺らが鍛えてやってるのさ。そうだろ?」
「そうそう。あれからずっと相手をしてもらってるの」
「そうなんだ・・・」
「アレンは気にせず続けて」
僕はこの時のアリアに不信感を覚えて聞いてみた。
「僕も参加したらダメかな」
「ダメよ。見っともないところは見せたくないの」
「嬢ちゃんもこう言ってるんだ。諦めろよ」
先輩の顔はどこかにやにやしている。
「それじゃぁ。急ぐからまたね」
そう言ってアリアと先輩は奥へと向かっていった。
アレンは1人、黙々と素振りを繰り返していた。
3時間ほどした頃、アリアが1人で戻ってくる。
「あっ。アレン、まだ練習してたんだね」
「うん」
アリアを見れば少し着衣が乱れているがそれだけだ。
「う~ん。私ももう少し頑張ろうかな」
そう言って横に並ぶ。
するとぷ~んと何か匂う。
「あれ?なんか変な匂いしない?」
「そう?何も匂わないけどなぁ」
アリアの顔を見れば少し赤くなっているように見える。
「うん。きっと気のせいだね」
何故かはわからないけれど触れないようにした方がいいと気になりながらも触れないことにした。
2人で素振りを行う。
アリアの剣筋はどこか安定にかけていたがきっと厳しく指導されたので疲労が溜まっているのだろうと思った。