三十一話
街に着くと先輩達はそれぞれ所用を済ませてくると散っていった。
アリアと2人きりになりびくびくしながらも手を繋ぐ。
アリアもぎゅっと握りかえしてくれた。
道場までの短い距離だけどそれだけで凄く嬉しかった。
道場についたが手を放したくなくてそのまま母屋へと向かう。
「アレン・・・。大好きだよ」
そうアリアが耳元で囁いて離れていった。
食事の準備をする。
といっても子供だけで火を使うのは危ないのでパンと買っておいたドライフルーツだ。
アリアは美味しそうに食べている。
見つめているとアリアが顔をあげる。
「どうしたの?」
「幸せだなと思って」
「私も・・・」
自然と2人の距離が近づく。
肩と肩が触れてアリアの匂いがする。
胸がどきどきしてくる。
だが、甘い空気は長続きしなかった。
母屋の扉が開く音がする。
慌ててアリアとアレンは離れた。
「おっ。食事中か。丁度よかったな」
そう言って現れたのは先輩だった。
「これ、頑張ってる2人にご褒美だ」
そう言って差し出された袋には串焼きが入っていた。
「ありがとうございます」
アレンは袋を受け取ってアリアに串焼きを渡す。
アリアが食べたのを確認してアレンも串焼きに手を付ける。
肉汁にタレが絡んでとても美味しかった。
「先輩。これ凄く美味しいですね」
「そうだろ。タレが秘伝らしくてな」
串焼きはあっという間になくなってしまった。
「よし。食い終わったな?他の連中も戻ってきてるだろうし嬢ちゃんそろそろ行くぞ」
「あれ?まだ修練するんですか?」
「あぁ。今日は帰りのことも考えて軽めだったからな」
アレンの感覚では結構長時間していたように思えたけど手を抜いていたらしい。
「アレン・・・。ごめんね」
「ううん。修練頑張ってね」
アリアと先輩は母屋から出て行ってしまった。
先輩達のおかげで付き合えることになったけど恋人を盗られたようで少し面白くなかった。
アリアが戻ってこないかなと待ってみたものの戻ってこない。
修練の様子を見られるのをアリアは嫌がっているし様子を見に行くわけにもいかない。
気持ちを持て余したままアレンは布団をゴロゴロする。
扉の方からがする。
入って来たのはアリアだった。
「アレン。まだ起きてたんだ?」
「うん。迷惑だった?」
「ううん。うれしいよ」
「アリアももう寝るの?」
「私は忘れ物とりにきただけだから・・・」
「そっか」
アリアは自分の部屋に戻りすぐに出てきて戻ってしまった。




