二十話
アレンは荷物を持って道場に急いだ。
今日から1か月、アリアと過ごせるのだ。
そう思うと足取りも軽い。
道主達はもう出かけたようで道場はとても静かだった。
アリアを探して敷地内を探すがどこにもいない。
もしかしてと先輩達の溜まり場の方にいくと先輩の1人が立っていた。
「先輩。アリアを知りませんか?」
「嬢ちゃんなら修練中だぜ」
「そうなんですね・・・」
せっかく2人きりだと思ったのに残念だ。
でも、修練の邪魔をするわけにもいかない。
「嬢ちゃんの食事とかはこっちで用意するからお前は自分のことをしろよ」
それだけ言うと先輩は溜まり場の建物に入ってしまった。
道場の前で歩法の練習を繰り返す。
どれだけ待ってもアリアが顔を出すことはなかった。
きっと先輩達に厳しく指導されているのだろう。
気持ちを切り替える為に走り込みをすることにした。
先輩達の溜まり場の後ろを通りかかる。
窓が開いていてアリアの声が聞こえてきた。
「先輩の……ありがとうございます」
よく聞き取れなかったけれどお礼をしているということは何か貰ったのだろうか。
先輩達は厳しく指導するだけじゃなくてご褒美も用意してるんだな。
ずっと来ないから心配してたけど問題ないようだ。
安心したアレンは走り込みに戻った。
何度か先輩達の溜まり場の裏を通りかかったが謎のパンパンという音が時折響いているだけで普段通りだった。
アレンは疲れて休憩をしていた。
そこにアリアが顔を出した。
少し疲れているように見える。
「アリア。大丈夫?」
「うん。私は平気だよ。元気元気」
そう言って笑って見せる。
「そう言えばアリア。先輩から何か貰ったの?」
「えっ?なんで?」
「走り込みの時にアリアがお礼を言ってるのを聞いちゃって」
「そうなんだ・・・」
アリアの顔が少し赤い気がする。
「それで、何を貰ったのかなって思って」
「ええっと・・・。そうそう、先輩が特別な牛乳をくれてね」
「牛乳かぁ。健康にいいもんね」
「そうそう。健康にとてもいいんだよ」
「それにしても特別かぁ。どんな牛乳なの?」
「そんなに気になるの?」
「うん」
「濃くて、ドロドロしてて喉に絡んできて少し飲みにくいんだけどね」
「へぇ。それって腐ってたりしないよね?」
「それは大丈夫。新鮮な採れたてだから」
「採れたてをくれるなんて先輩達も優しいんだね」
「うん。優しいよ。だから心配しないでね」
「うん」
「それじゃぁ。私はそろそろ戻るね」
アリアはそう言って先輩達の元に戻ってしまった。




