十八話
1人取り残されたアレンはもう少しだけ素振りをして帰ろうと集中する。
どれぐらい素振りをしていたのか辺りはすっかり暗くなっていた。
「おいおい。まだ素振りしてたのかよ」
そう言って声をかけてきたのは先輩だ。
「時間が経つのを忘れてしまって」
「はぁ・・・。家まで送っていってやる」
「そんな悪いですよ」
「お前に何かあったらこっちも困るんだよ」
「なんだかすみません」
「そう思うんなら時間の管理ぐらいしっかりしてくれよな」
「はい・・・」
アレンは木刀を戻し門で待っていた先輩と歩く。
「先輩はさっきまでアリアと居たんですか?」
「嬢ちゃんなら結構前に戻ったぞ」
「なら先輩は何を・・・」
「いやな。家に居づらいんだわ。農家の三男だからな」
「へぇ・・・」
「両親はまだいい。けど、兄貴がなぁ・・・。結婚して奥さんとイチャイチャしてやがる」
「仲がいいんですね」
「お前なぁ・・・。って、餓鬼に言ってもわかんねぇか」
「大人って色々あるんんですね」
「剣術を習ってみたものの中途半端。剣の腕で食ってければまた違ったのかもしれねぇけど」
「僕は先輩達に勝てませんでしたけどね」
「おいおい。拗ねるなよ。経験の差もあるしお前は成長期前だ。力もリーチも全然違う。お前の歳なら十分だと思うぞ」
「えへへ。そうですかね」
「調子に乗りやがって」
そう言って先輩は頭はわしゃわしゃしてくる。
「ちょっと。痛いですよ」
「まぁ、剣の腕が全てってわけでもねぇけどな」
「剣の腕が全てじゃない・・・」
アレンの生活は剣術道場が中心だ。
「まぁ、強さにも色々あるってことさ。それを考えると嬢ちゃんはすげぇ強いな」
「そうなんですか?」
「大切なもん守る為に嫌なことでも頑張ってるよ」
「それをアリアにも言ってあげればいいのに・・・」
「俺が?いやいや、俺から言っても嫌味にしかならねぇよ」
「修練に参加してるのに?」
「修練に参加してるからこそだな」
「そういうものですか」
「っと。家に着いたな」
「今日は送ってくれてありがとうございました」
「いいってことよ。次からはちゃんと時間気にしろよ」
「はい」
アレンは帰宅が遅くなり両親から怒られた。
親切な先輩が送ってくれたというとちゃんとお礼を言うように言われた。
御飯を食べて横になる。
アレンの頭の中には先輩の言葉が繰り返し再生されていた。
強さにも色々ある。
剣術だけが全てではないのだと・・・。




