十三話
アレンはお祭りが楽しみすぎて中々寝付けなかった。
起きたのは9時30分。
待ち合わせまでもうあまり時間がない。
急いで広場の噴水まで走る。
広場の噴水にはアリアと先輩達がもう待っていた。
「おいおい。遅刻寸前かよ」
先輩の1人がそう文句を言うがアレンには聞こえていなかった。
お洒落をしたアリアに目を奪われていたからだ。
「アレン・・・。どうかな?」
「とっても可愛いよ」
それだけ言うのが精いっぱいだった。
「ありがとう」
「さて、どこから巡るかねぇ」
そう言って先輩の1人がさり気なくアリアの肩に手を置く。
アリアを盗られたような気がしてムッとするが声には出せない。
アリアが普段からお世話になっているし今日だって自分達の時間を削って付き合ってくれるのだ。
「そうだなぁ・・・。まずは食事からってのはどうだ」
朝ごはんを食べ損ねたアレンとしては嬉しい提案だ。
「アリアちゃんは何食べたい?」
「いきなりそんなこと言われても・・・」
「ほら、毎日食べたいって言ってる好物があるだろ」
「ええっと・・・」
アリアが困っていると先輩の1人が何かを耳打ちする。
「わ、私。先輩達とフランクフルトが食べたいなぁ」
「アリアってフランクフルトが好きだったんだね」
「最近、大好物になったの・・・」
「そういうわけだからアレン。並んで買ってきてくれよ」
「わかりましたけど結構並んでますよ?」
「男は黙って並ぶ物だぜ。俺らはあっちでアリアちゃんと待ってるからよ」
「はぁ・・・。わかりました」
そう言ってアレンは列に並んだ。
中々列が進まない。
列に並びつつもアリアが気になって見てみるがアリアどころか先輩達も見当たらない。
これは買ってからも探すのが大変そうだ。
ようやっとフランクフルトを買ってアリア達を探す。
見つけた場所は喧噪が届かないような路地裏だった。
「おっ。ようやっときたか。遅かったな」
「すみません。見つけるのに時間がかかってしまって」
「いや、まぁ、楽しめたからいいんだけどな」
「楽しめ・・・?」
「あぁ。お前は気にしなくていいんだよ。それよりアリアちゃん待望のフランクフルトだぜ」
「アレン。ありがとう」
そう言って笑顔を向けてくれる。
アリアはフランクフルトを受け取ったが中々フランクフルトに手を付けない。
「ほら、いつもみたいに食べていいんだぜ」
「はい・・・」
アリアはどこか恥ずかしそうだった。




