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第44話 ラルク・シュタイン。



 姿を表した褐色の肌の男性は三十歳前後で。


 鋭く鷹のような目つき。目の上のところに傷が。


 アップバングにした金色の髪。


 細身ながら、鍛え抜かれた体躯の持ち主で……いくつも修羅場を乗り越えた強者の風格があった。


 相手の強さを察したシルビアは警戒心を露わにし、魔法をいつでも放てるように右手を向ける。


「どなたですか。村人ではないですよね?」


 褐色の肌の男性は警戒を解くように両手を上げて。


「物騒だな。いや、悪い悪い。さっきからノックしても何の返事がなかったんでな」


「名乗ってください」


「名を聞く前に、自分から名乗れと言いたいところだが。まぁ調べて知っているからな。俺は……ラルク・シュタイン。エドワードさんとは昔の知り合いだ」


 やれやれといった様子で褐色の肌の男性……ラルクは名乗った。


 ラルクの名に反応したのはエドワードだった。


「ラルク・シュタイン……ラルク・シュタインって……あのラルクか? あの若造が、ずいぶんとオッサンになったなぁ」


「ハハ。そりゃ、エドワードさんと会ったのは俺が十代後半の頃だったからな。まぁエドワードさんは逆に若くなって驚いた。話を盗み聞いていなかったら信じてないぞ」


「ノックしたって言ったのは嘘だったな。俺が油断し過ぎていたってのもあるだろうが、気配を消すのが上手くなったな。まぁ、お前が用心深くなるのも分かる。俺も体が小さくなったことをまだ信じられないからな。寝て起きたら、元に戻っていることを強く願っているくらいだし」


「せっかく用意した土産に美味い酒を持ってきたんだが」


 ラルクが酒瓶を放り投げた。


 エドワードは顔を綻ばせ、酒瓶受け取る。当たり前のように酒瓶の栓を開けよう……。


「あ、ありがと……うっ?」


 エドワードの手をシルビアが掴む。


「ご主人様。体に悪いです」


「えぇ。あぁ……ぁwせdrftgyふじこlp」


 エドワードがあからさまに落胆し、酒を掲げるように突っ伏し……聞いたこともない声が漏れてきた。


 ラルクは苦笑し、シルビアへ。


「エドワードさんが王なるなら面白いだろうが。エドワードさんの血筋は普通だぞ? 世の中の連中ってそういうの気にするんじゃないか? 尊いとかなんとか言って。まぁ、エドワードさんの経歴を晒せば周りも黙るだろうが」


「いや、今、ご主人様の経歴を晒して……確かに周囲は一時的に黙るかも知れないですが、英雄国のこともあります。余計に警戒さてしまう可能性が……判断に迷います」


「確かに、あの国は領土拡大のために戦争を吹っ掛け回っている」


「最初から警戒されては面倒です」


「周囲に高い防壁を築かれるか。早い段階で攻め込まれるか……。それから今のエドワードさんはどう見ても子供だが。……どのようにエドワードさん本人だと証明するんだ? いや、冒険者カードなんかで証明することはできるか? それでも時間が掛かるのでは? するといらんことを考える奴らが増えるぞ?」


「……そこの考えが抜けていましたね。まさか、若返ったことが、裏目になるとは」


 シルビアが悔し気な表情で視線を下げた。


「あ……そうだ。一ついい案があるんだが?」


 ラルクが一度言葉を切った。


 得意げな表情で人差し指を立てて見せる。


「ここでエドワード・ホワイトに死んでもらうってのはどうだ?」


「なんてことを言うんですか」「なんてことを言うんだこら」


 シルビアが眉間に皺をよせ……少女が放ったとは思えない濃密な殺気を放ち。


 右手をラルクへと向ける。


 次いで、寝室の入り口からバッと青髪の女性……リナリー・シャルロットが顔を出し。


 右手をラルクへと向ける。


 ラルクは両手を上げる。


「おー二人とも怖いなぁ。魔法を準備するのはやめてくれよ。お嬢ちゃん達……話は最後まで聞いて欲しい。エドワードさんを死んだことにすればいいんじゃって話だよ。そして、シルビアと言ったか? お前は元貴族で、正式な書類でエドワードさんの養女である。つまり、エドワードさんが死んだら、お前にすべてが転がり込んでくる。そんで、今の小さくなったエドワードさんはお前の子供にでもすれば……貴族の子ということになるだろう?」


 ラルクの言葉にシルビアは口元に手をあてた。


 少しの間の後、口を開く。


「なんで、ラルクさんは私が元貴族とか、ご主人様の養女であることまで知っているのか不思議ではあるのですが……。なるほど、名案かも知れませんね。いやいや、待ってください。私の問題と……って親子にしては歳が近すぎますよ」


「え?」


「十九歳の私に十二歳前後に見える今のご主人様が子供になれる訳がないでしょう。なんですか? もっと年上に見えましたか?」


 シルビアはキッと視線を鋭くして、ラルクを見た。ラルクは地雷を踏んだと、苦笑する。


「ハハ……」


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