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第37話 ジェミニとオリオン。



 シャノーラが慌てて長屋を出て行った。少しして長屋の外が騒がしくなる。


「な、なんだよ。まだ途中だったんだぞ」


「いいから! 早く来る!」


 シャノーラによって赤髪の男性……グレゴリーが無理矢理連れて来られた。


 長屋に入ったところでグレゴリーはエドワードに気付く。


「あれ? エドワードさん。こんにちは」


「ようやく気付いたのか」


「へ?」


「なんでもない」


 エドワードとグレゴリーが話していると、シャノーラが急かすように割って入る。


「それよりも。それよりも……エドワードさん。剣を……剣を見せてください」


「あーはいはい……」


 エドワードは鞄を漁って、二本の剣……ロングソードとダガーを取り出した。


 まずロングソード。


 全長百二十センチほど。


 つかさやつばが白銀の金属。細かく炎のような装飾は黒に近い赤色の結晶を埋め込まれされていた。


 次にダガー。


 全長八十センチほど。


 つかさやは青白く素材で作られていて。つばは黒銀色の金属で子供の小指の先ほどの大きさ赤の石が埋め込まれている。


 一般的なラガーと異なり、両手で持てるほどに柄が長く作られていて、


 グレゴリー、シャノーラは二本の剣の存在に圧倒されたのか、ゴクリと息を飲む。


「これは……」


「ダニエリック・コダード作の剣」


「な、この剣が……ダニエリック・コダード」


 エドワードは二本の剣へ視線を向ける。


「この白い方の剣の名前が『ジェミニ』。青い方の剣の名前が『オリオン』」


「あの少し……見させてもらっても?」


「良いぞ。ほら」


 グエドワードが頷き。二本の剣を前に置いた。


 グレゴリーはジェミニを手に取ると、横で見るシャノーラと共に再びゴクリと息を飲む。


 若干震える手で、まずはジェミニを。


 柄を持ってカキンッ金属音を鳴し、刀身を鞘から抜く。


 ジェミニの刀身は黒かった。


 歪みなど一切ない直刃すぐは


 刀身の厚みは一ミリもなく向こう側の光が若干透けるほど薄く、身幅は二センチほど。


 光に透かすと、刃面にびっしりと幾何学模様が見て取れる。


 グレゴリーはジェミニを凝視する。


「なんだこの剣は……」


「うわー綺麗」


 シャノーラがどこか顔を赤くし、魅入られるように溢した。


「まさか……このジェミニの刀身に使われている素材は黒王石では?」


「黒王石? 何? そんな素材聞いたことないよ?」


「昔、読んだ本に少し記述があっただけで。俺も詳しくないが。貴重と言われる黒石の中でも、更に貴重と言われる黒王石……あまりに貴重過ぎて幻の素材の一つと言われている」


「そうなんだ……。けど、黒石との違いが私には分からない」


「俺も絶対にそうだとは断言できないが。この艶やかで吸い込まれそうな黒……何よりもこの薄さに加工しても、折れず強度を保つことが出来る鉱石は黒王石しか思い付かないのだが」


「なるほど……これって魔導具なのかな? なんか刀身に魔法式が刻み込まれているように見えるけど」


「そうだろうな。しかし、細かすぎてどんな魔法式なのか分かりかねるが」


 グレゴリーとシャノーラとが、二人で話していたが。


 グレゴリーは酒を一人飲んでいたエドワードに問いかける。


「あの。この剣……ジェミニは魔導具なんですか?」


「魔導具だぞ」


「どういった機能なんですか?」


「んー少し震える」


「え?」


「だから、震えるんだって。ぷるぷる」


「?」


「……分からない程の超微小且つ超高速の振動を刃に伝えることで、すごく切れるようになる」


「? 震えると切れ味が上がるのですか?」


「俺も詳しくは知らんよ? 俺が作った訳でもない。その凄さは、実際に使わないと分からないだろけど……とにかくすごい切れ味になるぞ? 岩とかマナを帯びていない普通の金属とかなら、温めたバターのように切れる」


「それはすごいですね」


「あーこれは切れ味が凄いからか分からないが、その剣に切られたヤツ曰く、切られたことに気付かないほどに痛みがないとか? まぁ、俺自身は切られたことがないから分からんがな。クハハ」


 グレゴリーは頷き、再びジェミニへと視線を向ける。


 造りを満足するまで見たところで、ジェミニを鞘に仕舞って。


 続けてオリオンを手に取る。


 ほっそりとした柄を掴むと、ひんやりと冷たさを感じる鞘から引き抜く。


 オリオンの刀身はよく作られていた。しかし、ジェミニを見た後だと……ただ高価なラガーにしか見えなかった。


「「……」」


 グレゴリーとシャノーラとは、黙ってオリオンを注意深く見ていた。


 一見、高価なラガーにしか見えないが、ダニエリック作の剣である何があると。


 ただ、どんなに注意深く見ても、何の変哲もない……。


 根を上げたシャノーラが。


「あの、これ……オリオンはどういったラガーなんですか?」


「んーコイツは特別だからなぁ。教えてあげない」


「えーいいじゃないですか」


「お酒が無くなっちゃったし。もう帰るよ」


 グレゴリーはオリオンを鞘に仕舞って。


 不満げなシャノーラの肩に手を置き、静止すると。


「いや、素晴らしいモノを見せていただきありがとうございます。俺もこの剣達と負けない剣の作れるように精進しますよ」


「クハハ、無理しないようになー。設計図書いたらまた来るー。よっと」


 エドワードは酒の影響か、若干よろめきつつも。


 ジェミニとオリオン……そして数打ちの武器を鞄に仕舞って帰っていく。


 グレゴリーとシャノーラとは馬で帰るエドワードを見送りつつ。


 シャノーラは胸に手を当てる。


「すごかった。あの剣……」


 グレゴリーは頷き、肯定する。


「あぁ、さすがはダニエリック作だ」


「名工ダニエリックは気に入った人にしか、剣を打たないんじゃないの?」


「エドワードさんを気に入ったんだろう……剣を二本も作るほどに」


「そうなのかなぁ? 私には、ただの飲んだくれにしか見えないんだけど?」


「俺に剣士の強さは分からないが。あの剣を使いこなすのには相当の技量がいるだろうな」




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