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第32話 スターチスシリーズ。



 昼過ぎ……少し涼しくなったところで、グレイソンがエドワードの自宅にやってくる。


 村の子供達の三分の一は昼食を食べて帰ったが、残った三分の二の子供達はシルビアが勉強を教える青空教室に参加していた。


 まぁ三分の一は夢の中にいるが。


 エドワードとグレイソンは屋根の付けられた木製の椅子に腰かけていた。グレイソンはエドワードが作った魔導具……スターチスの剣を手に取る。


「これが魔導具か」


「まぁ一般的な魔導具はもっと豪勢な装飾があるから」


 エドワードはグレイソンとテーブルを挟んで、椅子に座り……コップに注がれたワインを飲みながら答えた。


「このスターチスシリーズは二回しか使えないって言う制限があるから……普通の魔導具に比べて高く売れなくてもいいんだが。どう売ればいいかな?」


「んーこの魔導具はどんなことが出来るんだ?」


「あー今、お前が持っている剣は【ファイヤー】……下級レベルの魔法が使えるようになっている。一度使ってみたが、なかなか格好良かったぞ。いや、格好いいだけじゃなくて、そこの木とか綺麗に焼き切ることはできないものの、真っ黒になったし……。戦いでもそれなりに用途があると思う」


「……後で見せてもらっても?」


「良いぞ。ただ攻撃魔法の魔導具は子供が変に興味を持つのもアレだから……今度にした方いいだろうが」


「そうだな。子供らには危険だ……」


「子供でも簡単に使える作りだからなぁ」


「それで……どう売るかについてだが、一番はエドワードさんがエルグランドの街に出向いて、あちらの商人と交渉して売るのがいいだろうな。戦争は終わったばかりだが……戻って来た者の話だと、ハンブルク王国がレスラーネ共和国へと侵攻したはずなのに……逆に攻め込まれた。領地を奪われるまではいかなかったが、ずいぶん死んだそうだ」


「おいおい、ちょっと待て。村から行った奴らは全員帰ってきたのは聞いていたが……。押し込まれた形になったと言うことはずいぶん死んだのか? あのルトヴィヒ将軍が?」


「いや、ルトヴィヒ将軍の他に将軍が二人いて、今回の戦争はその三人の将軍での連合軍だったとか」


「……んーん、ルトヴィヒ将軍に並ぶような将軍が何人も居たかな?」


「俺は軍内部の軍編成のことまでは知らんが。今回の戦争でかなり人が死んだ。つまり、かなり見舞金を払うことになった……。それで帰りの行軍中に噂になったそうだ。今回の見舞金を補鎮するために、また戦争をするんじゃないかと」


「戦争で失った金を、戦争で取り戻すのか? そんな、バカな」


「俺も冗談であって欲しい。村から戦争に行ったヤツも怪我を負っていたんだよなぁ」


「冗談だよ」


「しかし、その噂は多くがしていたらしく……それはエルグランドの街にも広まっているだろう。だから、この魔導具は高く売れる」


「皮肉なもんだな」


「更に以前の戦争までは冒険者として参戦していた歴戦の勇者であるエドワードさんの名があったら、最初でも買いたたかれることはまずない」


「いや、俺の名前は出したくないな」


 グレイソンは腕を組んで、首を傾げる。


「何かあるのか?」


「別に魔導具技師を本職でやる気はないから。冒険者仕事で出た魔物の素材を有効活用したいだけ……。まぁ、ぶっちゃけるとあまり働きたくない」


「ハハ……」


「あ、少し呆れたか? けど、ちょっと考えてみてくれよ。もう老人の俺が頑張って働いてどうするよ?」


「ハハ、確かに。それでは話を戻そう、エドワードさんを魔導具の製作者としないにしても、エドワードさんがエルグランドの街に出向いて商人と交渉した方がいいかと」


「エルグランドの街にいちいち行くのが面倒なんだが」


「んーエルグランドの街まで早くて五日……この季節は雨が多いから六日、七日を見た方がいいから、面倒だよな。もう少し前なら戦争行ったヤツに、くっ付いて行ったヤツに頼んで売ってもらえたら……いや、それだと商人に言いくるめられる可能性と、売りに行ったヤツが金をちょろまかす可能性もあるよなぁ」


「まぁ、売りに行ったヤツが多少金をちょろまかしてくれてもいいし、商人に言いくるめられてもいいけどね。俺は酒を日用品が買えるだけで満足だ。ただ口が堅いヤツではあって欲しいか」


 グレイソンは考えを巡らせるように、唸り声を上げた。


 パチンと指を鳴らす。


「じゃあ、アイツ……ゴウィンが適任だな」


「ゴウィンって?」


「今度連れてくるよ。ゴウィンは真面目で力持ちだが……不器用でぶっきらぼう。まぁ、口下手だから……エドワードさん一度は一緒にエルグランドの街へ行った方がいいと思うぞ?」


「まぁ、それは仕方ないな。それか、口の回る女性とかも付けたら丁度いいんじゃない? その女性に俺の存在を言わずにすれば、俺の存在は漏れ出ない」


「それは良いかも知れんが、そうすると収入が……いや、それなりの稼ぎがあればいいのか、なるほど」


「そもそも、エルグランドの街へ一人では行けないだろう?」


「確かに。では、誰にするか。ゴウィンに嫁でも居ればよかったが。ならば……エーヴィーがいいか。ゴウィンと歳が近く。口は回る……いや、ずっとしゃべっていて騒がしいくらだが。家の仕事もサボりがちで、両親に怒られていた。それに村の外に興味があるようだった。丁度いいか? ……ゴウィンとの相性もあるだろうが、一度任せてみるのもいいか。とりあえず、俺からゴウィンとエーヴィーに声を掛けてみるでいいのか?」


「うん。そんな感じでいい……よろしく」




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