第25話 噂話。
シルビアの噂をしていた冒険者達が立ち去った後、今度はまだ若く見える別の冒険者達が。
「さっきの黒い鳥はなんだったのか」
「ここら辺では見ない鳥だったな」
「もしかして、魔物か?」
「んーん、魔物でも見たことがないぞ」
「確かに……ではなんだったのだろうか?」
「正直、上空過ぎて、大きさを測ることもできなかった」
「……関りないことを祈るしかないか」
「それしかできない。おそらく、関わったら俺等だけではどうしようもないからな」
「まぁどうしようもないことを話しても仕方ないか……では現実問題として、拠点を変えるかって話だろ? リーダー?」
「……ここの狩場は結構気に入っていたんだがな」
「それは俺も同意。だけど、稼ぎ以上にこの街の物価が上がり過ぎて……生活に困るって話よ」
「確かに……では、どこを検討する? 王都はここ以上の物価だろう?」
「まぁ、その分王都は魔物素材の買取金額もいい……ただ、S級ギルドがいい狩場を独占していて、稼ぎを出すならコネと賄賂が必要だと噂だが」
「……では、ここと同じ規模の中都市フォル、ストックロス、モンペール、コルマヨットってところか?」
「そうだな。このギルドは西部の出身者が多いからフォル、ストックロスって言いたいところだが。そこら辺は魔物がなぁー」
「まぁ、そこで稼げているならここ……エルグランドには来てないわな」
「ではモンペール、コルマヨット辺りになる訳だが、モンペールは今度の戦争の戦地から近いから遠慮したいところだが」
「そうなると消去法でコルマヨットってなる訳だが……。これは、さすがにギルドメンバー相談する必要があるな」
黒い鳥?
そんなの居たかな?
後で探してみるか。
それにしても……S級ギルドがいい狩場を独占していて、稼ぎを出すならコネと賄賂が必要?
そんなことあったかな?
んーあ……アレか?
俺はあんまり気にしてなかったが、魔物や素材を採取しようとした時に他のギルドの奴らが邪魔してくることがあったな。
自由を信条とする冒険者が狩場の独占とかどうなんだか。
まぁ、人間が集まれば、さまざまな考えを持つヤツが居るのは当然か。
エドワードが考えを巡らせていると、エドワードの前に居た冒険者が居なくなった。
冒険者協会の職員から呼ばれる。
「次の方ー」
「はいよ」
エドワードは買取カウンターに進み出た。銀色のプレート……冒険者カードを取り出して、冒険者協会の職員へと手渡す。
冒険者協会の職員は冒険者カードに書かれていたエドワード・ホワイトの名に目を見開く。
「エドワード様でしたか」
「……買取査定は終わっている?」
「ええ、ただすべてを買い取ることはできなかったです」
「そうか……まぁ買い取れるだけで良い」
「協会としてはすべてを買い取ってしまいたいところなのですが、買い取ってしまうと魔物素材の価値が一時的に下がって、他の冒険者が……」
「あまりモノがあふれても、困るか。うむ」
エドワードは顎に手を置いて……黙った。
うむ、そりゃそうか。
それに先ほどの冒険者の噂話を聞く限り、物価は上がり続けて……狩りで取った素材を売って、生活するには苦しくなっている。
俺だって、趣味とは言え、狩った魔物の素材が買い取ってもらえなくなるのは困る。
後々金が尽きて酒が買えなくなってしまうから……。
んーん。
そもそも、今日買い取ってもらえなかった魔物の素材をどうするか?
後日にまたきて、買い取ってくれる訳ないだろうし。
王都まで売りに言ったら、買い取ってもらえるだろうが……そんな遠くまで行くのは面倒だし。
んー魔物の素材で何か作る?
何を売るか……それはシルビアに相談してみるか。
この後は、金属や生地の相場を少し見て回るかな……。
「あのエドワード様」
エドワードが考えを巡らせていると、冒険者協会の職員が声を掛けてきた。
「おっと、すまない。買い取れる素材の換金を。買い取れなかった魔物の素材は持ち帰る」
「あ、買い取り金の方、ご用意します」
エドワードが魔物の素材を鞄に仕舞い始めると、冒険者協会の職員は慌てて……金の準備を始めた。
「それじゃあ」
「あ……」
エドワードが魔物の素材の買取金……金貨四十枚ほどを受け取り、買取カウンターから離れようとしたところ。
冒険者協会の職員は呼び止めるように手を伸ばす。
「あ、それで……リンガイル伯爵が是非にお会いしたいと」
「俺が今更貴族と会ってどうするんだよ。面倒は勘弁だ。本当に悪いんだが、適当に……病気とか言ってはぐらかしておいてくれない?」
「い、いいんですか? もしかしたら、貴族に目を付けられるかも」
「仮に貴族から目を付けられたとしても、一切困らん。それじゃ帰るわ」
エドワードが不満げに鼻を鳴らした。
手を軽く振って、買取カウンターから離れるのだった。




