第24話 冒険者協会。
ここは宿屋の一室。
「ご主人様……」
シルビアがソファに座るエドワードの目の前で仁王立ちした。不満げな表情で腕を組む。
エドワードはシルビアが怒っていることに対して心当たりがあるのだろう
「えっと……はい。なんでしょうか?」
「買い過ぎです」
「そうかな? いや、当分エルグランドには買い物できないだろう? だから、張りきっちゃった」
「あのですね。お酒でダーリラムの鞄が丸まる一つパンパンじゃないですか?」
「ダーリラムの鞄はまだいくつか作っているし……足りるだろう?」
「私はダーリラムの鞄の容量の話をしているではなくてですね。お酒を買い過ぎだと言っているんです。お店でも開くんですか?」
「お店なんか開かないよ。全部俺が飲むに決まっているじゃん」
「あのですね……」
「まぁまぁ。とりあえず、まだ買っただけだから」
「むう」
「さぁ、飯を食べにいこう」
「はぁーまったくですよ。まったく」
「そんなに怒るな。シルビアの料理は毎日美味しいけど、たまの外食もいいだろう?」
「わ、私の料理が美味しい……そ、そんなことは当たり前ですが」
エドワードに褒められたシルビアが機嫌を良くして、頬を少し赤らめた。
「さあ、行こうか」
「ええ、行きましょう。二人で」
エルグランドの街に到着して三日。
ここは冒険者協会のエルグランド支部。
「朝早くに来れば人も少ないと思ったが……読みを外れたな」
買取カウンターの前にできていた列の最後尾にエドワードが並んでいた。
「早起きして損した。ふぁあー」
エドワードは大きく欠伸を溢した。
腕を組んで俯くと、周りの噂話が聞こえてくる。
「はぁー」
「どうしたんだ? 朝からため息吐いて」
「恋だ」
「え? 恋?」
「あぁ、恋だ」
「ほー珍しい。お前は戦いにしか興味ないと思っていたが……。ついに気になる異性が? それでどこのどいつだ? 口説いたのか?」
「い、いや、名前しか知らん。口説いてなんて……」
「まぁ、何にせよ。次に会った時にでも声をかけてみるんだな」
「そうしたいところなんだが……彼女を目にすると体が上手く動かなくなって」
「何をガキ見たいなことを言っているのか? お前は……エルグランドでも一二を争うギルド『銀胡蝶』のギルマスなんだからな。もうちょっと堂々としたらどうだ?」
「恋愛に銀胡蝶のギルドマスターとか関係ないだろ」
「いや、関係あるだろう? ギルマスのお前は金持ちだし、貴族連中にも顔が効く。大体の女が靡くだろう」
「んーそうだろうか? んーん」
「それで名前は? どこで見かけたんだよ? とりあえず、うちのギルドのメンバーじゃないんだよな?」
「見かけたのは市場だな。食料を買いに行った時に……名前はシルビアと名乗っていたな」
「ごほっ」
噂話を聞いていたエドワードは一度せき込んだ。
周りの視線がエドワードへと向かうが、視線を受け流すように口元に手を置いた。
いやはや、今のはシルビアの噂だったのか。
ルトック村でもそうだが、シルビアはモテるな。
確かにどこに出しても恥ずかしくない綺麗さと教養を持った……美人に育った。
俺の世話の為に村に付いてくるのはやはり勿体ないよ。
しかし、シルビアは一度言い出したら聞かないなぁ。
「それで? その子に告白するのか?」
「いや、一度見かけただけだし……」
「告白しないと始まらないだろ」
「そうなのだが……次にまた会えるとは思えないし」
「じゃあ、そのシルビアちゃんを見かけたところで待つしかないだろ? 見つけ次第告白だ」
「なっお前……それだと俺に心の準備をする時間がないだろ?」
「そんなことを言っている場合かよ。レスラーネ共和国と戦争が近いんだぞ?」
「分かっているが……せめて戦争が終わった後じゃないと駄目だろ? 俺は絶対に生きて帰ってくる自信はあるが」
「確かに、もし死んだら彼女だけ残されることになる。ただ戦争で……『戦争から帰ったら、彼女へ告白する』って死亡するのでは?」
「うぅ、それは聞いたことがあるな。では、どうしたら?」
「出会ったら、速攻で告白それしかないだろ? バカだな」
「いや、それだとさぁ……俺の心の準備が」
「面倒くせーなぁ。戦いの場で、頼りになるお前が、恋愛は全然かよ」
うふ、レスラーネ共和国との戦争か。大変だな。
ルトック村で徴兵の話は聞かなかったが……誰か戦争に行くのだろうか? 辺境の村過ぎるから話が回ってこない?
帰ったら、グレイソンに聞いてみるか。




