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第23話 エルグランドの街。



 ルトック村を離れ、エルグランドの街へと向かい始めて五日目。


 ここはエルグランドの街を望むことのできる丘。


 その丘の頂上付近に馬車が止められていた。


「休憩だ」


 馬車を止めたエドワードは御者台から降りた。馬に近付いて拘束具を外してやった。


 馬達は機嫌よく鳴き声を上げる。


「「ひひーん」」


「お疲れ。キエドワ、ドダイス」


 エドワードが労うように馬達……キエドワ、ドダイスを撫でた。


 シルビアが馬車の荷台から顔を出した。エルグランドの街を眺めながらエドワードに近付いてくる。


「あ、もうエルグランドの街が見えますね」


「もうすぐだ。エルグランドの街に着いたら、浴びる程に酒を飲むんだぁ」


「ご主人様、お酒はほどほどにしてください。本当に」


「えーだけど、あそこには俺に飲まれることを心待ちにしている酒達がいるぜ?」


「気の所為です」


「いやいや、気の所為じゃない。テレパシー的なヤツで呼んでいるんだ。俺を」


「何を言っているんですか。通信系の魔法はまだ研究途中だと、ご主人様自身がこの前話していたじゃないですか」


「まぁ、そうだが」


「そうです。気の所為なんです。おっと……キエドワ達のおやつを忘れていました」


 シルビアが手に持っていた人参をキエドワとドダイスの前に出した。


 人参を目にしたキエドワとドダイスは機嫌よくダッタと前足で足踏みをする。


「「ひひーん」」


「もう慌てて食べないでください」


 シルビアがキエドワとドダイスに人参を食べさせ、頭を撫でた。


 エドワードはスタスタと丘を歩いていき、体をグーッと伸ばす。


「さてさて、もうひと頑張り。酒の為に頑張ろう」


「そこはお酒の為であってほしくなかったです」


 苦笑したシルビアがエドワードの隣に立つのだった。




 エルグランドの街に到着して一日目。


 エルグランドの街にたどり着いた後、宿に荷物を預け。


 シルビアは買い物。


 エドワードはここ……冒険者協会のエルグランド支部を訪れていた。


 そして、冒険者協会の買取カウンターにて、エドワードはとんでもない量の魔物の素材で山を作っていたのだった。


 魔物の素材を積み上げたエドワードはニコリと笑って口を開く。


「これ買い取ってくれ」


「……」


 冒険者協会の職員は魔物の素材のあまりの多さに呆気に取られているようだった。


「アレ? 聞こえなかったか? これ買い取ってくれ」


「あ、は、はい。えっと……あの……冒険者カードをお見せいただけますか?」


「あぁ。そうだった。そうだった。いつもは部下に任せていたから忘れていたな……えっと、どこに仕舞ったかな? んーあったあった」


 エドワードがいろいろ漁ったのちに、胸ポケットで見つけた銀色のプレート……冒険者カードを取り出して、冒険者協会の職員へと手渡した。


「はい。ありが……これ、エドワード・ホワイト……え? エドワード・ホワイトってええ?」


 冒険者協会の職員が驚きの表情でエドワードの冒険者カードを何度も見返し……最後にエドワードの顔を見てギョッとした。


「なんだ? 俺の顔に何か付いているか?」


「い、いえ、S級ギルド十字星の第四団長エドワード様ですよね?」


「? いや、元な。十字星からは脱退しているから関係ない」


「あ……そういえば、そんな話が流れていましたね。本当だったんですね」


「そう。だから、個人的に狩った魔物の素材の買取をしてほしいという訳」


「な、なるほど……エドワード様はこのエルグランド周辺に拠点を移してくださるので?」


「ハハ、拠点って大層なモンじゃない。運動不足解消の為、軽く冒険者活動をしているに過ぎない」


「えっと、これで軽くですか」


 冒険者協会の職員がエドワードの言葉を受けて、山となっている魔物の素材を見上げた。


「あ……ちなみにこの魔物の素材は何カ月も溜まっていたものだから。ちょっと今住んでいるところはエルグランドから遠くてな」


「なるほど……なるほど? ちなみに今はどちらに?」


「んー言った方がいい?」


「いえ、無理にとは言いませんが」


「じゃあ、なんか面倒事を押し付けられそうで怖いから、内緒にしておこうかな」


「ハハ……」


「ところで、これだけの魔物の素材の鑑定には時間が掛かるだろ? どのくらいかかりそう?」


「そうですね……三日ほどかかるでしょうか」


「三日。そうか分かった。よろしく頼む」


「はい。それで冒険者協会の支部長が丁度いるので……その……」


「いやいや、そういうのいいから。一般的なソロの冒険者として扱ってくれ」


 不穏なモノを敏感に察知したエドワードはじゃあっと手を上げて、急ぎ冒険者協会を離れるのだった。




 ここは酒屋。


「この棚の酒をここからここまで三本ずつくれ」


「まいど。ダンナ。この不景気に気前いいですね」


 店主がニコニコとエドワードに話しかけた。


「酒が生き甲斐よ」


「ハハ、それは良いですね」


 店主はエドワードにススッと近づいてきて、小さく声をかける。


「そうそう、高いので表には出していないのですが。ドワーフが丹精込めて作ったさ……」


「買う」


「冗談抜きにうまいですが、高いですぜ?」


「買うな。絶対に買う。幾らだ?」


「ドワーフ特製の火酒一本金貨五枚です」


「おう、何本あるんだ?」


「え、えっと……五本ありますぜ」


「うん、四本くれ。さすがに全部は悪いか」


「四本ですかい?」


「あぁ、なかなか買いに来られないからな」


「へぇーダンナはあまり見ない顔……いや、ちょっと前に二、三回来たことありますかね?」


「おう、覚えていたか? エルグランドに寄った時に数回、直近だと半年前くらいに一回来たな。うん」


「そうでしたかい。まぁいいですぜ。売りやす」


「そうか。じゃあ包んでくれ」


「あいよ」


 店主が頷き答えると、酒瓶をいくつか持って離れて行った。


 エドワードは店の天井へと視線を上げ……自然と笑みがこぼれてくる。


「ドワーフ特製の火酒かぁ。大事に飲もう。俺の酒コレクションに加わるできる酒だろうか? 楽しみだなぁ」



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