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第22話 五カ月。

 エドワードがルトック村に住み始めて五カ月が経った。


 ここはアルブゥの森。


 冒険者服を着たエドワードとシルビアが訪れていた。


 エドワード、シルビアの順で隊列を組んで森の中を歩いる。


 うす暗い森の中で灯りを確保するためのランプを持ったエドワードが口を開く。


「んーここら辺も変わったところはないよなぁ」


「そうですか。この辺りで休憩に入りますか? いや、もう昼食にしますか」


「そうだな。三時間くらい経ったか」


 辺りをキョロキョロと見回しながらエドワードが頷き答えた。


 シルビアはカバンを下して、手早く昼食の準備を始める。


 焚火を作り、水を温め始める。


 料理を始めながら、エドワードに問いかける。


「何か気になることがありましたか?」


 エドワードは難しい表情を浮かべて、息を吐く。


「ふう……もう数えるのか面倒なほどにアルブゥの森の探索をしているが、気になるところはないなぁ。唯一あると言えば、チョビが一瞬感じ取った気配……警戒に値するほどの化け物は見当たらない」


「確かに、あのチョビが警戒するほどの魔物は見当たらないですね」


「いや。そうか、これだけ探索して見当たらないのは、すでにこのアルブゥの森に居なくなった可能性もあるか。強い……化け物みたいな魔物の中には魔物の領域……つまりマナの豊富な土地に縛られない奴も聞くし」


「その可能性もあるんですね。領域に縛られない魔物がいるのは初耳です」


「魔物のことをすべて理解している訳でもないから、その詳しい理由は分からんけど」


「そうですよね。では、もうグレイソンさんに報告しますか?」


「いや、まだ行ってないところあるし……。そこの探索は一応やらないとな。ただ、その前に酒……いや違った。魔物の素材が大量に集まっているから、それをエルグランドの街へ売りにいかないと」


「ですね。確かに魔物の素材でダーリラムの鞄がいっぱいになってきましたね」


「うむ、エルグランドの街まで五から六日……行くのが面倒で魔物の素材が溜まってしまっているし。それに酒も無くなりかかっている……これは行かねばならんな」


「いや、お酒だけを買う訳じゃありませんからね。一応釘を刺しておきますが」


「酒以外に何を買うもんがあるって言うんだ? あ、もしかして酒のつまみか?」


「いや、話をお酒の要素から離れましょうよ」


「酒以外に必要なモノがあるんだ? 酒さえあれば、世の中のこと、ほとんどうまく行くんだぞ?」


「いや、他にありますよね? それとお酒さえあれば世の中のことがほとんどうまく行くと言うのは迷信です。実際にエドワードはお酒を飲み過ぎという一因があってギルドを追放されたんじゃないですか?」


「え? お酒のおかげでギルドから辞めることが出来た。すべてうまく行っていると思うけど……違ったかな?」


「いや、それは一般的に見たらうまく行っていません」


「そうかな?」


「更に言いますと、食事を任されている私としては調味料とか、紅茶の茶葉とかいろいろありますよね?」


「仕方ないな」


「仕方ないではないでしょうに……まったく……ほら、もうすぐで昼食の野菜スープができるんでそれを飲んでください」


「へ? 野菜スープ? いつの間に」


 エドワードがいつの間にか出来上がっていた野菜スープへと視線を向けた。


 シルビアは野菜スープを木の皿に注いで、エドワードの前に差し出す。


「はい。エドワードの分です」


「あぁ、ありがとう。ただ肉も焼かない? 肉」


「スープの中に入っていますよ? お肉」


「小さいな」


「小さくありませんよ。このくらいの肉がスープに入っていたら普通の家庭のお子さんは大喜びですよ?」


「いやいや、さっき狩った魔物の肉だってシルビアの『ダーリラムの鞄』に入っているだろ?」


「エドワードの食事は肉といい、お酒といい、食事が偏りすぎなんですよ。まったく。本当にまったくですよ」


「そうか? そうかな?」


「そうなんです。それよりも冷めてしまうので早く食べてください」


「うむ」


 エドワードが野菜スープを食べ進めた。


 残さずに野菜スープを食べるエドワードをシルビアは微笑みながら見ていた。


 それから一日、エドワード達はアルブゥの森の探索を進めたのだった。




 アルブゥの森を探索した翌々日。


 エドワードは馬車に飛び乗る。


「よっこいしょ」


「行くのか?」


 エドワードの家の屋根の上で日向ぼっこをしていたチョビが起きて、近づいてきた。


「おーそんなところで寝ていたのか?」


「うむ、なかなか寝心地がよいのだ」


「そうか。まぁ、ちょっと買い物をしてくるから、留守を頼むぞ……食事は置いてある」


「では、少し食べてくるか」


「多めに用意しているが。あまり最初に食べ過ぎると、すぐになくなるからな? 気を付けるように」


「うむ。くはー」


「じゃあ、行くから」


 エドワードはチョビに軽く手を振ると、馬達に鞭を入れた。


 自宅から馬車を進め、ルトック村でいくつかの荷物を預かると……。


『行きたい。行きたい』と駄々をこねるフィリーとカーラ、村の子供達に見送られてルトック村を後にした。


 ゴトゴト。


 ゴトゴト。


 ゴトゴト……。


 ここはルトック村からエルグランドの街方面に続く街道。


「せーかいじゅうのぼーくらのなみーだで」


 馬車の御者台にはエドワードがご機嫌な様子で、鼻歌を歌っていた。


 青空を見上げている。


「ふんふん~今日はいい天気だなぁ」


 エドワードは馬車に揺られながら、エルグランドの街へと向かうのであった。




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