第17話 三カ月。
エドワードがルトック村に住み始めて三カ月が経った。
ここはエドワードが暮らす家の前の庭。
「「「「「はあ! やあ!」」」」」
フィリーを含むルトック村に住む十歳前後の子供達が木刀を手に素振りしていた。
まだ小さい子供もいると言うのに汗を流していて、黙々と素振りを続ける姿からは真剣さが覗い知れる。
彼らの少し離れたところでエドワードが声をかける。
「ほら、こなすだけの素振りは意味ないぞ」
「「「「「はい」」」」」
フィリー達が素振りを続けながら、元気よく声を上げた。
「力任せは木刀でならそれでもいいかも知れないが、剣を今後使うなら力任せだけではもったいないぞ」
「「「「「はい」」」」」
「それから、戦う相手を常に意識して一刀一刀を丁寧に振れ」
「「「「「はいっ!」」」」」
素振りを続けるフィリー達の様子を横目にエドワードは椅子に座いた。
「よっこらせと……最初に比べたら、ずいぶんとみられるようになったな。まだまだだけど」
今行われている剣の稽古はフィリーがエドワードの元で剣を習いに通ったことで始まった。
集まる子供の数も徐々に増え、今では十人以上……村に居る子供のほとんどの子供が集まるようになっていた。
「本当に多く集まるようになったもんだよ。剣の稽古って言うより、昼飯を食いに来ていると言った感じだが」
エドワードの家の扉が開く。カーラがポットやティーカップの乗せたお盆を持って姿を表す。
「エドワードさん、シルビア姉ちゃんに頼まれて紅茶を持ってきました」
エドワードの元にやってきたカーラがエドワードの隣にあった机の上にお盆を置いた。
エドワードはフィリー達の剣の稽古へと視線を向けたまま問いかける。
「んー? カーラはシルビアに勉強を見てもらっていたんじゃないのか?」
「今、シルビア姉ちゃん、昼食を準備しながら、別の子の勉強を教えていて忙しそうだったので、少しお手伝いを……はい、紅茶です」
フィリーがポットに入っていた紅茶をティーカップに注ぎ、テーブルの上に置いた。
エドワードはティーカップを手に取ると一口飲む。
「ありがとう。カーラは偉いな。ところでカーラの勉強はどこまで進んでいるんだ? 金の数え方だったか?」
「簡単お金の数え方は終わりました。今は読み書きの勉強を進めています」
「そうか。シルビアに聞いていた通りカーラは物覚えがいいな」
「えへへ」
カーラは長い前髪で分かり難いが嬉しそうに頬を赤らめてほほ笑んでいた。
エドワードが口角を上げて小さく呟く。
「……最初はおどおどとしていたのに、ずいぶんと明るくなったものだな」
「ん? どうしましたか?」
「いや、なんでもない」
「あの……それで」
カーラが何か言い難いのかもじもじとしていた。
「なんだ? カーラはまだ酒は早いぞ? もう少し精神年齢を上げた方がいい」
「なんで、お酒の話を?」
「てっきり、美味しそうにお酒を飲む俺を見ていて羨ましくなったのかと」
「違いますよ」
「そうなのか? フィリーにはこの前せがまれたんだが」
「お兄ちゃん……そんなことを言っていたんですか」
「うむ、諦めさせるのに苦労した。アイツは諦め悪すぎるな」
「お兄ちゃん、昔から頑固で諦めが悪いのは変わらないです」
「まぁー諦めの悪いヤツは嫌いじゃないがな」
「そうですね」
「……」
「……」
「……ん? それで? 何か言いたいことがあったんじゃないか?」
「え、あーっと。そのー読み書きできるようになったら、魔法を教えて欲しいです」
「んー。俺に魔法を習ったこと、俺が魔法を使えることを言わないと約束するなら教えてもいいぞ」
「はい、約束します!」
「いや、待て……そもそも魔法の適性があるか検査しないとな。いくらやる気があっても才能がないとどうにもならないな」
「そうなんですか……今からその検査して欲しいです。どうやったら分かるんですか?」
カーラが急かすようにエドワードの服を掴んで揺らした。
「ちょいちょい、今は剣の稽古を見ているから……後でな」
「はい……あ、わがまま言ってごめんなさい」
「いや、良いんだが。俺の体は一個しかないからな。けど、勘だが……お前には才能がありそうだな」
エドワードが目を細め……カーラの頭をポンポンと優しく叩いた。
結果として、エドワードの勘は当たっていた。
カーラには魔法の才能があって……エドワードから魔法を習うことになる。




