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第16話 村人A。

 エドワードがルトック村に住み始めて二カ月が経った。


 ここはルトック村の端の方にあるボロ小屋のような木造平屋建ての家。


 家の中には茶髪をボサボサにした二十歳後半と思われる男性が一人。


「はぁ、仕事か……本当に楽しみのない村に当たっちまったぜ」


 茶髪の男性はボロの服に着替えながら、ため息を溢した。


「あまり口に出すんじゃないよ」


 茶髪の男性以外に誰も居ないと思われた家の中に茶髪の男性以外の声が響いた。


 茶髪の男性は一度ゴクンと喉を鳴らす。振り返ることなく口を開く。


「驚くから気配を消して近づいてくるなよ。ゾッタ」


 茶髪の男性の背後に影からスッと姿を表した全身黒ずくめの人物……ゾッタがケタケタと笑う。


「ヒヒ、気配読みが相変わらず下手くそだね。ガストビア」


「けっ悪いな。だから、こんなところで内通者をやらされているんだけどな」


「あと一年したら別のモノと変われるよ」


「はぁーこのつまらない村であと一年はなげーよ」


 茶髪の男性……ガストビアが不満げな表情を浮かべてため息を漏らした。


「そう? けど、この前の報告変な連中が移住してきたって言っていただろ?」


「調べはついたのか?」


「そりゃ、私の仕事は早いよ」


「はいはい。さすがですね。それで? やっぱりヤバいヤツだった?」


「あぁ、すごいヤバいヤツだったよ。関わっちゃいけないよ。あの爺さんは十字星の第四団長エドワード・ホワイトだったよ」


「ん? なんで? なんで……十字星ってハンブルク王国でも数少ないトップギルドの一つじゃねーか」


「あぁ、なんでも辞めたみたいよ」


「そうなのか。けどよ、トップギルドの十字星で団長になれる程のヤツなら、王都とかで仕事はいくらでもあっただろう。いや、働かなくても十分に貯蓄があっただろうし……こんな何もない田舎に移住って何か理由が?」


「理由? 分からん。そこら辺をお前に調べて欲しいと思ったよ。ただ、ここに来る前にお頭に報告したら絶対に関わるなと言っていたよ。凄く警戒しているようだったよ」


「ふーん。そうか。お頭が」


「どうやら、お頭は昔会ったことがあるみたいよ」


「へぇーなんか因縁でもあったのかね」


「知らんよ。なんにしても、お頭の決定は絶対よ。お前はなるべく関わらず、変わらない生活を続けてくれよ」


「はいはい、分かりましたよ」


「じゃあ。よろしくよ」


 その一言を残すと、ゾッタはスッと姿を消して居なくなっていた。


 ガストビアは後ろを振り返って、溢す。


「普通に出入り口から出て行けばいいのに……さてと、今日も農作業に行きますかね。俺って農作業するために暁一家に入ったつもりはないんだが……」


 十分ほどで農作業に行く準備を整えた後、ガストビアは家から出て行く。


 家を出たところでくわを持った初老の男性と出くわす。


 初老の男性が軽く手を上げて、ガストビアへと声をかける。


「おう、ガストビア」


「タド爺、今日はなんだか元気そうだな。何かいいことあったのか?」


 ガストビアは初老の男性……タドの隣に並んで歩きだした。


「そう見えたか?」


「まぁーそうだな」


「聞きたい? 聞きたいか? 聞きたいよな?」


「いや、別に話してくれなくていいぜ?」


「なんだよ。つれねーな。話をさせてくれよ」


「話したいのかよ。なら、聞いてやる」


「そうか。そうか。そんなに知りたいか。ならば、教えてやるか……今日の夜飯はこんなデカい肉なんだよ。今から楽しみでよぉ」


 タドがジェスチャーで肉の大きさを示してみせた。


 ガストビアは少し関心を示して、問いかける。


「へぇ、そりゃ良いな。森で猪でも狩ったのか? 春になったとはいえ、まだまだ森の獲物はあまり多くないだろ」


「いやー。ウチの母ちゃんが野菜籠かご一つと交換してもらったんだと」


野菜籠かご一つと? ずいぶんと有利な物々交換じゃねーか」


「だよなぁ。けど、そのおかげで肉が腹いっぱい食えるんだ。感謝感謝」


「誰だよ? 物々交換持ちかけてきたのは……野菜と物々交換するほどということはよっぽどデカい獲物を取ったんだよな? 昨日はそんな話聞かなかったが」


「あぁーちょっと前に引っ越してきた変わった連中が居っただろう?」


 タドの言葉を耳にしたガストビアはドクンと心臓が大きく跳ねた。動揺を表に出さないよう慎重に問いかける。


「あのちょっと怪しい黒髪の爺さんか?」


「いや、あの爺さんについてきた……あの世話役って言うのか? 別嬪の娘がおっただろ? その娘が肉を持ってきたそうじゃぞ?」


「へぇー」


「なんでも、その黒髪の爺さんは冒険者崩れだったそうじゃぞ? だから、肉が取れるとか?」


 ガストビアは『冒険者崩れどころじゃねーし』と内心思いつつ平静を装って返す。


「冒険者だったのかぁ。そりゃ、狩りが出来て当たり前か」


「まぁのう。しかし、あんな別嬪さんに面倒を見てもらっとる上、狩りで肉を食べ放題……羨ましい隠居生活じゃのぉ」


「隠居生活……?」


「ん? どうした?」


「いや、俺んところの麦とは交換してくれねーかな。肉食いてーと思っていただけ」


「かっかっかっ、今日も来るかのぉ? 儂としてはあの別嬪さんの顔をもう一度拝みたいところだが」


 ガストビアとタドはそれから何気ない会話を続け自分達の農地へと向かったのだった。


 彼らの何もない日常は続いていく。



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