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第15話 昔話。



「ま、魔法の研究?」


 カーラが戸惑いの表情を浮かべた。


「俺は普段魔法を使ってないから分からんだろうが、魔法に対して他の人より多少詳しくてな。まぁー誰よりも知っているがゆえに教えてくれる人も居ないから自分でいろいろと研究している訳なんだ」


「エドワードさんって魔法使えるんですね。どんな魔法の研究をしているんですか?」


「どんな研究か……最近は重力を操る魔法の研究を主にしているな」


「? 重力って何ですか?」


「重力とは物質に対して重力加速度9.8066……いや、この世界にはまだない考え方だったな。重力とは簡単に言うとモノを落としたら地面に落ちるだろ? アレは地面に見えない力で引き付けられている。その見えない力と言うのが重力だ」


「?」


「今、俺はマナを重力加速度の作用を増加させる。ただ巨大な魔物を簡単に圧し潰すことが出来るが大量のマナを消費してしまう。そのマナの量をどうにか減らすことが出来ないか。マナの効果を面ではなく点で絞ることで効率的に……」


「??」


 エドワードが顎に手を当ててブツブツと話始めた。対してカーラはずっと首を傾げていた。


「マナの効果点を一点に集中させて、一つの球体を作り出し。さらに魔導具で持続的に重力を発生させて……実際にもう一つの星を作ることもできるのではと考えて……」


 三十分ほど、エドワードは周囲が見えなくなるほどに集中してブツブツと話していた。


 もちろん、カーラも見えなくなって……カーラは困惑した表情でエドワードを見ていた。


「……」


「宴の準備が整ったので呼びにきてみたら。あー……カーラさん、これは長くなりますね」


 リビングに入ってきたシルビアがカーラに声を掛けた。


「あ。シルビアさん。えっと……」


「ご主人様は一度集中すると長いです。しばらく放っておいてあげてください」


「そうなんですか」


「何をしていたんですか?」


「魔法の研究のことを聞いていたんですけど。私、エドワードさんの言っていること、ほとんど分からなくて」


「ふふ。何度も聞いている私も……ご主人様の魔法の研究のことはほとんど分かりませんので安心してください」


「そ、そうなんですか」


「はい。まったくです。しかし興味があるんですか? 軍略チェスを教えていた時も思っていましたが、カーラさんは年齢以上に頭がいいですね」


 シルビアがカーラの頭をヨシヨシと優しく撫でた。


 カーラは首を傾げる。


「え、頭がいいですか?」


「自覚ありませんか? まぁ、いいです。ちなみに他に何か聞きたいことがありましたか? 私で答えられることがあったら、答えますよ?」


「えっと……えっと……じゃあ、エドワードさんは普段魔法を使わないのに、なんで魔法の研究をしているんですか?」


「んーん。誰にも言いませんか?」


 シルビアがカーラへと真剣な眼差しを向けた。


 その眼差しを受けたカーラはビクッと体を震わせて、コクンと頷く。


「はい。言いません」


「絶対ですよ?」


「はい」


「そうですか。ご主人様が魔法の研究している理由は後世……私やカーラさんの子供の子供……未来に生きる人達のためです」


「未来?」


「そう。未来に生きる人達のためです。そこで疑問になるのは未来の人達のために自分ではほとんど使わない魔法の研究しているのかですよね。それを話すには少し話が長くなります……」


 シルビアが言葉を切った。そして、その場にペタンと座って、思いふけるように視線を上げる。


「昔、ご主人様は怖い化け物達と戦っていました。何年も戦い、多くの仲間の犠牲の果てにその化け物を封印することに成功しました。……世界は平和になったのです。ただ封印と言うには時間とともに弱くなり、壊れてしまうのです。それがいくら強力な封印だからと言っても。封印が壊れてしまった時……対抗できる英雄の手助けができるように魔法の研究をしています」


「えっと。えっと」


 カーラは理解が追い付かないのだろう、髪で隠れている目が左右に揺れていた。


 対してシルビアが小さく笑いかける。


「ふふ。まぁ今を生きる私達はほとんど関りない事なので、カーラさんが深く考えなくてもいい事ですよ。さて……そろそろご主人様に声を掛けますかね。このままだと日が暮れてしまいます」


 シルビアがスッと立ち上がって、エドワードへと視線を向けた。


「しかし、重力魔法は強力なのだが……問題として上げられるのは強力過ぎることなんだよな。術者も巻き込むほどになってしまう。作用がまっすぐだから……影響を捻じ曲げ難くて……そういった部分で扱い辛さがあるんだよなぁ」


 エドワードは相変わらずブツブツと呟いていた。対してシルビアが近づいて、ポンポンと肩を叩く。


「ご主人様」


「一度作用方向を決めてしますと」


「ご主人様」


「事前に作用方向を……ってうお、どうした? シルビア?」


 シルビアに数度肩を叩かれ、ようやく我に返ったエドワードがビクンッと体を揺らした。


「そろそろ切り上げないと、せっかく作った料理が冷めてしまいますよ?」


「あ、そうだな。お酒も冷めてまうわ」


「お酒は冷めませんよ」


「冷めんかっとカーラすまない。ちょっと研究のことを考えてしまった」


 エドワードが椅子から腰を上げたところで、カーラへと視線を向けた。カーラはブンブンと首を横に振る。


「だ、大丈夫です。大丈夫です。シルビアさんと話していたので」


「そうか? まぁ、とりあえず酒……いや飯を食おうか」


「はい」


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