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第358話 うちゅくちい家具。花畑の有効活用。子だくさん。

 現在クマちゃんはこだわりの家具をみつめ、感想をのべている。


 うつくしいちゃんですね……と。



 まるで子だくさんのように、野良妖精クマちゃんを抱える桃色美青年頑固親父。

 リオはかすれ声で呟いた。

「だから言ったのに……」と。

 まつ毛を伏せたまま、お洒落で甘くてもこもこした『サンルームちゃん』から菓子の家、室内へ入る。


 背後でウィルの涼やかな声が聞こえた。


「桃色の君。抱えきれない子達はこちらで預かるよ。僕の花畑には素敵な空き家がたくさんあるからね」


「すまない……。迷惑をかける。うちの子供たちは皆大人しい。いたずらはしないはずだが、何かあれば俺に言ってくれ」


「あ~、そうか……。お前の子か。……随分と急にふえたな。もしかして、その子らは職を持つ妖精より幼いのか? ならお前の家が建つまでは大人が見ていたほうが――」


 マスターの言葉の意味に気付かず、野良ではなくなった赤子クマ妖精たちとアイスとの関係に想いを馳せる。


 ――アイス購入。開封。

 可愛らしいたくさんの子らにアイスを渡す。

 そしておそらく食べるのがへたくそな赤ちゃん妖精のお口をやさしく拭いてやる。

 もこもこへの愛に満ちた重要な活動だ。ひとりで勝手にやってろなどとはとても言えない。

 手伝いはあとでどうにかしよう。我が子の『宣伝カー』よりもうるさい男に暇な冒険者でも連れてこさせるか。

 

 すでに一匹の子を持つ新米ママリオ。

 彼にとって、ヤツの大惨事は他人事ではなかった。



「まずはこれでしょ」


「クマちゃ……」


 真剣な声の一人と一匹が、インテリア選びを開始する。

 赤子界の頂点に立つクマちゃんを抱っこしているのは当然麗しの魔王様だ。


〈甘い作業台ちゃん、お手伝い妖精みつばちクマちゃん付き〉――最大レベル、五――。

 お値段。


 クッキーちゃん、五個。クマちゃんキャンディ、五個。 

 白いチョコレートちゃん、一個。

 黒いチョコレートちゃん、一個。 

 クマちゃんはちみつちゃん、三個。


『購入ちゃん』の文字は、金色にキラキラと輝いている。

 今度こそ、問題なく買えるようだ。『クマちゃんはちみつちゃん』は大量にある。可愛い生産者への報酬も。

『妖精クマちゃんカフェ。マスター花畑店』にカネ(菓子)を払い続ければ、無限に入手できるはずだ。


「はい、クマちゃん」


 リオは『お菓子カード』を持ったまま、『お菓子の国、商品カタログ』を差し出した。


「クマちゃ」


 仲良しのリオちゃんの『クマちゃんの出番ジャーン』を感じ取ったクマちゃんはうむ、と深く頷いた。

 クマちゃんにボタンを押して欲しくて仕方がないようだ。

 ボタンちゃんもキラキラしながら待っている。

 

 クマちゃんは子猫にそっくりなお手々をスッと伸ばした。

 肉球と肉球ボタンがふに、とふれる。


 ぽち――。


 ――クマちゃーん――。

 ――お買い上げちゃーん――。

 

 可愛らしい音声が響いた。

 ポン! カタログから作業台の模型が飛び出す。半分透き通ったまま、ふよふよと浮かんでいる。

 見本の横でヨチヨチしていたちっちゃい幻影クマちゃんが、一生懸命猫かきをしながら、早く置いてくだちゃい……と設置を楽しみにしている。


「大きさどれぐらいなんだろ。どこらへんに置く?」


「クマちゃ……」


「うーん。では、こちらのテーブルを少しずらしておこうか」


「ありがと。んじゃ真ん中でいいよね」


 リオはウィルの気遣いに感謝し、あけてもらった場所に念願の『作業台』を設置した。

 大きさを見てから場所を決めればいいだろうと。そればかりを考え。


『え、自分の花畑にちっちゃい子連れてくのどうなった感じ? っつーかなんでそんないっぱい妖精抱えてんの。託児所みたいになってんだけど』と彼が言いそうな状況になっているとも知らずに。


「うわ、めっちゃいいじゃん!」


「クマちゃ……」


 蜂の巣のように六角形をやや丸くした天板。作業の邪魔にならぬよう、中央から伸びる脚。そこから繋がる美しい猫足。

 天板の下にはちょっとした小物や作業に使うものを入れるであろう引き出し。


 テーブルの上に置かれた飴色に輝くまな板。やや透けているところに『アメ』の存在を感じる。

 複数置かれたガラス(おそらく飴細工)のツボにはたっぷりのはちみつ。金色に輝きに、美しさと高級感が。


 どこに置いても可愛いクマちゃん像が、テーブルの上、はし、引き出しの取っ手、あちこちに座ったりぶらさがったりしている。

 クッキー素材とはちみつ素材、チョコレート二色、クマちゃんキャンディを組み合わせた豪華な商品である。


 はちみつをすくうときに使う名称不明の棒。きっと『ハニークマちゃん棒』だろう。

 それを握った小さな『はちみつ妖精クマちゃん』二匹が、テーブルの上に立ち、つぶらな瞳でリオを見上げている。


『お手伝いでちゅか……?』と。


「完璧すぎる……」


 たとえこの『お手伝い』がはちみつを掬おうとしてこぼすことだとしても、悔いはない。


「これは……さすが、高級素材を必要とするアイテムだね。森の街の職人に見せたら悔しがるほど、芸術性の高い作業用テーブルだと思うよ」


 ウィルは腕に抱えていた小さな妖精クマちゃんをそっとテーブルに降ろした。

 そのままカタログを開き、美しい指先で流れるようにボタンを押す。


 ぽち――。


 ――クマちゃーん――。

 ――お買い上げちゃーん――。

 

「なに? なんで急にそれ買ったの? いやいいから、ドアは置かなくていいから」


 リオは鳥のように自由な男の腕を掴んだ。しかし『モンスターを拳でぶん殴る系魔法使い』の動きを阻止するには本気度が足りない。


「でもこの子達が自由に動くためには必須でしょう? 床にもいくつか設置したほうがいいだろうね」


「クマちゃ」

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