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クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~ほんとは猫なんじゃないの?~  作者: 猫野コロ


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第354話 美しい男の名。ギルド職員の熱い想い。頑張れば足くらいはいける。

 現在クマちゃんは、彼の想いに感動している。


 きっと、頑張ればできるちゃん、と。



 一部の金髪から鬱陶しいと言われているギルド職員は、まるで神に祈りを捧げるように、神聖なポーズで、みつばちの可愛い姿を思い浮かべていた。


 ――マスターのところにまで、可愛いクマちゃんが。

 自分のもとには来てくれるだろうか。

 いや、もしかすると、アイスを配っている彼のところへ行ってしまったかもしれない。

 諦めて、美しい己だけで考えるべきか。


 ――否、それを決めるのはまだ早い。美しい『俺』が美しいポーズで、神と恐ろしい魔王と美しいクマちゃんペンに祈りを捧げていれば、神経由か恐ろしい魔王経由か美しいクマちゃんペン経由で、美しい『俺』の美しい祈りが、『愛らしいクマちゃん』、あるいは『カタログ』へと届くだろう。


 そうして、金髪の店長よりも芸術的で、可愛いクマちゃんが思わず『クマちゃ』――うちゅくちいちゃ――と言ってしまうような、美しい花畑を作るのだ。

 

 ギルド職員は、己の妄想のなかでヨチヨチするもこもこに、そっと尋ねてみた。

 一番好きな花は――いえ、一番好きなお菓子は何ですか?


『クマちゃ……』


 なるほど、大好きなのは……『一番美しい俺』、ですね――。


「クマちゃ……」


 ああ、まるですぐ近くで、そっと寄り添ってくれているみたいだ――。

 きっと、彼が美しい目を開けると、眼前で、もこもこのお口がもこもこと動き、「クマちゃ……」と――。


 至近距離で可愛らしい声が!


 鬱陶しいギルド職員はカッ! と目を開いた。



「クマちゃ……」

『ぎるど職員ちゃ……』


 まだ赤ちゃんで、すぐに大人の真似をしたがるクマちゃんは、仲良しのリオと同じように、ギルド職員の男を『ギルド職員ちゃん』と呼んだ。


 美しいが鬱陶しい男が、恐ろしい魔王を視界に入れぬよう気を付けながら、「本当に可愛らしい声ですね……ああ、その美声で美しい俺の名前を……いいえ、なんでもありません」若干暴走しかけ、すっと姿勢を正した。


「クマちゃ……!」


 クマちゃんはハッとした、クマちゃんが役職ちゃんをつけて呼んだせいで、ギルド職員ちゃんは寂しくなってしまったらしい。

 心優しい赤ちゃんは反省し、彼の名前をそっと呼んだ。


「クマちゃ……」

『ギルちゃ……』


「くっ……可愛すぎて『違います』なんて言えない……」


 ついでに何だか聞き覚えがあるような。

 本当は名前で呼んで欲しかったが、長いと赤ちゃんには覚えられないかもしれない。

 ヴァレンティノは己の美しい名前の紹介を諦め、魔王にしか聞こえぬほどの小声で「ヴァレンティノ……いえ、ティーノです」と名乗った。


 クマちゃんには聞こえなかった。だが、ルークは一瞬だけ男を見た。

 もしかしたら一生に一度くらいは、魔王が彼の名を呼ぶこともあるのかもしれない。



 彼はクマちゃんにオススメされた商品を見て目を輝かせた。

 腕のなかのふわふわが可愛すぎて少し集中しにくいが、こうなったら両方見るしかない。

 小さな妖精クマちゃん達はヨチヨチ、と歩き回り、小さな手を動かしながら、キャンバスに絵を描いている。


 この商品を、自分の花畑のどこにでも、好きなところに置けるのだ。

 これはとんでもないことである。

 頭の上のベレー帽のようなナッツチョコ、イチゴクリーム、キャラメルチョコ帽も、指先でつまんでみたくなるほど愛らしい。


「クマちゃ……! クマちゃ……!」


 続けてクマちゃんが出してくれたのは、小さなアトリエだった。

 その中でも、妖精クマちゃん達が、絵を飾ったり、床でお絵描きをしたりしている。

 妖精クマちゃんは、絵の端にサインを入れた。肉球で。ぽむ――と。


「…………」


 ギルド職員が鬱陶しい声も出せず、ぐっと下唇をかむ。

 最高だ。こんな風に愛らしい生き物と、一緒に絵を描いて生きて行けたなら――。


 美しく鬱陶しいギルド職員は『イーゼル付きキャンバス、お絵描き妖精クマちゃん付き』をじっと見つめ、まなじりの涙をキラリと光らせながら誓った。

 

「俺も……。今日からこの小さなアトリエに住みます……!」と。


「クマちゃ……!」


 クマちゃんはハッとしたように、もこもこのお口を押さえた。

『ちゅむちゃ……!』と。少し離れた場所から渋い声が聞こえる。「おい、仕事は」



 一人と一匹はプニっとした握手を交わし、「くっ……!」人間は興奮をおさえ、別れた。


 そうして、クマちゃんと魔王が、自分達の花畑の準備を始める。

 仲間達が中央にあけておいた、クマちゃんのための地で。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] クマちゃんは相変わらずカワイイし皆との触れ合いを描きたいのは分かるんですが、話は進まないけどキャラは色々増えちゃって散らかってるというか停滞感というかを感じます。というかそもそも何でこ…
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