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クマちゃんと森の街の冒険者とものづくり ~ほんとは猫なんじゃないの?~  作者: 猫野コロ


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第351話 可愛いみつばちクマちゃんのガーデニング講座

 現在クマちゃんは、お困りのみなちゃんにアドバイチュをしている。



『クマちゃんリオちゃんハウチュ』の左隣。

 ピンク色の草むらが広がる場所をながめ、ざっくりと己の持ち場を決める。


「俺めっちゃ壁際じゃん」


 リオは職人のように難しい表情で腕組みをした。

 だが最初にこの場所に花畑を置いたのは自分である。

 菓子の家の壁とも仲良くやっていかねばなるまい。



 仲良しのリオちゃんがお困りちゃんのようだ。

 察知した天才ガーデニングデザイナークマちゃんは、ハッとしたようにお口を押さえ、魔王ルークと共に、彼のそばへと近付いた。


 うむ。まずは『壁ちゃん用のアイテム』もたくちゃんありますよ、と紹介しよう。

『わー、これ格好いいジャーン。クマちゃん最高ダネー』と喜んでくれるだろう。


「クマちゃ……」

『リオちゃ……』


 可愛い声で我が子に呼ばれた新米ママが、柔らかい表情で振り向く。


「なに、クマちゃん。どしたの」


 すると、もこもこを抱えたルークが、右手にのせたカタログをみつばちクマちゃんの目の前にスッとよせた。

 

 嫌な予感しかしない。


「クマちゃ、クマちゃ……」 

『リオちゃ、壁ちゃ……』


 だが可愛いみつばちが、彼の名前を呼びながら、肉球でカタログをテチテチしている。

 そうして、『リオちゃ、みてくだちゃ……』と潤んだ瞳で見上げてくるのだ。


「えぇ……」


 断れる人間などいないだろう。

 それに、心優しいもこもこは、リオが壁際の飾りつけで困っていると察してくれたに違いない。

 ――壁際の飾りつけもなにも、まだ花畑をひとつ置いただけなのだが。


 カタログに近付くと、建物らしきもの、というには壁のない何かの立体映像が映っている。


「なにこれ」


「クマちゃ、クマちゃ……」

『お菓子ちゃ、サンルームちゃ……』


 こちらは、壁際に設置するのにぴったりな、お菓子のサンルームちゃんです……。

 色々なアイテムちゃんがありまちゅ……。


 みつばちの被り物をした可愛いクマちゃんが、そう言って深く頷き、肉球でクマちゃんマークをテチテチテチ! とタッチする。


『サンルーム!』リオの心の中で甲高い声が響く。なんというお洒落な響き。

 そこら中すべてがサンルームのような空間で過ごす森の街の人間には縁のない言葉だ。

 森の街風に言うと『あそこの日除け』『屋根だけあるとこ』『日陰』『木陰』だろうか。


「クマちゃ……! クマちゃ……!」


 テチテチテチ! 


 肉球により次々と増えていく『サンルームちゃん』を素早く閲覧してゆく。

 白、焦げ茶、薄茶といった落ち着いた色の柱はチョコレートとクッキーだろうか。

 菓子の家と合わせるならば焦げ茶か――。否、白……。否、薄茶も捨てがたい。

 なるほどこれはキャンディの柱。


「クマちゃ……! クマちゃ……!」

 

 植物の蔦が巻き付いた柱もある。あれは、ドーム型? 中に置くベッドはケーキ……。

 菓子の家とくっついたものが非常に気になる。あれを購入すると『サンルームちゃん』から出入りできるのでは。

 蔓バラにそっくりな菓子の柱。あれに可愛いクマちゃん像を合わせると――。


 リオの心のサンルームはどんどん豪華になっていった。

 買い物に迷ったことなどなかった男が、危険な『カタログちゃん』の迷路に迷い込んでゆく。


「クマちゃ……! クマちゃ……!」テチテチテチ! 


 目を限界まで細め、思い悩む。

 クマちゃん像の数は減らしたくない。

 屋根にも置ける『サンルームちゃん』は必須だろう。

 

「クマちゃ……! クマちゃ……!」


 柱に『クマちゃん像』を飾れそうな棚が付いている素晴らしい商品を見たリオは、分かった、と頷いた。


「クマちゃん一旦お手々止めよ。そんなに買ったら俺の『お菓子カード』パキーンて割れちゃうから」


 大事なことは『欲しいものを増やしすぎるな』ということだ。



「何から購入すべきか――」


 庭造りなどしたことがない死神にも、子猫のようなクマのみつばちちゃんは忍び寄る。


「クマちゃ……」

『クライヴちゃ……』


「白き天使――」


 可愛いもこもこの気配を感じ取った男が、赤子に凍てつく眼差しを送る。

 なんという愛らしさだ、と。


 もこもこもこもこ震えるみつばちちゃんを抱えたルークは、視線で『赤子のカタログ』を見るよう告げた。


「……――」


 幼きもこもこは彼のためにアイテムを選んできてくれたらしい。

 クライヴは震えるみつばちへ視線を向けぬよう気を付け、カタログも見過ぎないよう細心の注意を払って、さっとそれに目を通した。


「……素晴らしい――」


 心臓に負担をかけぬよう一瞬視界に入れただけでも、まぶたの裏に焼き付くほど芸術的なアイテムの数々。

 氷の結晶によく似た美しい花も、飴でつくられているのだろうか。それとも氷菓子か――。

 青や水色の花と合わせて置けば、さぞや素晴らしい花畑が完成するに違いない。


 もこもこへの愛に苦しむ男が胸を押さえていると、可愛いみつばちがそっと「クマちゃ……」とクライヴに心配そうな声をかけてきた。


『問題ない――』


 答えようとした彼の目に、もこもこの選んだもこもこアイテムが映る。

 あれは、『もこもこ像がふわふわの帽子とマフラー、肉球手袋を――』


 そうして、ふらついた彼をルークがささえ、彼の肩にそっと、ピンク色の肉球がのせられた。


「クマちゃ……!」


 だいじょうぶちゃんですか……! と。

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