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第200話 可愛い置物の謎。「なにこれ」

「また動く絵本見る?」


 リオが尋ねると、腕の中の子猫のようなもこもこが「クマちゃ……」と可愛い肉球で目の前のテーブルを指した。

 

 もこもこした愛らしいお手々の先には、非常に見覚えのある置物。

 クマちゃんにそっくりなそれは、黄色いヘルメットを被り、小さな黒いネクタイを身につけ、声が大きく響く魔道具を持っている。

 ――その横にあるのは、出掛ける前に作ったポテトチップス。やや塩味。


「なにこれ。可愛いんだけど」


 不思議に思ったリオは『子供に優しいやや塩――』の横に置かれた可愛らしい何かを手にとり、「クマちゃんなのに硬い……」と不満を漏らした。


 硬くて冷たい――。


 彼はハッと気が付き、


「さっき作ったやつ?」


腕の中のもこもこに尋ねた。

 彼を見上げているもこもこが「クマちゃ……」と愛らしくもこもこと頷いている。正解らしい。


 もこもこと見つめ合い、ゆっくりと頷いたリオが、

 

「……可愛い。あ、もしかしてくれるってこと?」


と質問し、腕の中のもこもこが「クマちゃ――」と肉球でテーブルを指す。


『魔道具ちゃん、テーブルちゃん――』


 その魔道具をテーブルへ戻してください、という意味のようだ。


「えぇ……、見せるだけなんだ……」


 かすれた声で呟き、若干残念そうな顔をするリオ。

 もこもこの指示に従い、実は魔道具だったらしいそれをカツ――、とテーブルへ置いた。


 愛らしいクマちゃんが子猫のような声で「クマちゃ――」と言った。

  

『時間ちゃん――』と。



 何でも凍らせる手品師な死神と、酒場の渋いマスターのような秘宝の番人が「…………」「おい、氷を飛ばすな」と静かに戦い、南国の青い鳥が「ねぇ、マスター。会議室が涼し過ぎるような気がするのだけれど」と邪魔のような参戦のような何かをしていたときだった。


「ん? ――光ってるな。置物じゃなく魔道具だったか」


 死神から秘宝を護っていた渋い男が、自身の手元へ視線をやった。

「……何に使うんだ?」マスターは難しい表情で顎髭をさわっている。


 彼の疑問に答えるように、魔道具がキュオーと鳴いた。


『――クマちゃーん!――』


 薄暗い会議室。明るく響く『――クマちゃんニュース!――』



「……いや、可愛いが、なんの魔道具なんだ……」


 眉間に皺を寄せたマスターは、目元を隠すようにこめかみを押さえた。

 とにかく可愛い魔道具なのだろうか――。

 癒されないわけではない。しかし音量を調節する機能が欲しい。



「え? ねぇ、今クマちゃんの声しなかった?」「何? クマちゃんニュースって」冒険者達がざわつくなか、輝くヘルメットクマちゃん像から、もこもこした映像が浮かび上がった。

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